橋本聖子の発言 (本会議)
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○橋本聖子君 自由民主党の橋本聖子でございます。
私は、自由民主党・無所属の会を代表して、安倍総理の所信表明演説について質問をいたします。
質問に先立ちまして、この度のアルジェリアでのテロ事件で犠牲になられた方々の御冥福をお祈りするとともに、御遺族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。
さて、本日、私からは、教育とスポーツの分野を中心に総理に質問をさせていただきます。
現在、教師やスポーツ指導者の体罰が大きな問題になっております。大阪市の高校で生徒が自殺した事件については、尊い命が犠牲になったことが残念でなりません。市長と教育委員会は、体育科の入試を中止するという判断をし、教員の入替えも検討されているということでありますが、こうした対処だけが問題解決ではないと思います。なぜこのような事件が起きてしまったのかという点について、もっと調査や議論が行われる必要があります。
安倍総理は、最初の教育再生実行会議で、いじめ、体罰の問題を取り上げられました。それだけ重要な課題であるという認識をお持ちなのだと思います。
我々自民党も、今国会でいじめ防止対策基本法案の提出を目指しております。法案では、幅広いいじめを対象とし、学校に対して警察への通報や第三者機関による調査などを含む積極的な対応を求めることにしております。
総理は、いじめや体罰の問題が続出していることについて、どのようにお感じになられますでしょうか。そして、これらの痛ましい事件を政府は今後の教育政策にどのように生かしていくべきとお考えでしょうか、御見解をお伺いしたいと思います。
学校教育の中で生徒に体罰を加えるような指導が行われてしまうことの根本的な原因として、私は、教員側に生徒に言って聞かせることができる指導力の欠如、更に言えば人間力の欠如があると考えます。
怒るということと叱ることは違います。例えば、世界の頂点を目指すような人材を育てる過程では、当然厳しい指導が行われます。しかし、それは、怒っているのではなく叱っているのであります。叱るというのは、相手の成長を目的として最も効果的な言い方で指導することです。真の教育者であれば、目標や相手によって叱り方を変えていく必要があります。また、叱ることを恐れてもいけません。正しく叱るということは、成長する者にとって必要なことであります。叱ることをためらって、子供が必要としている指導ができない国になってはいけないと思います。
今回の事件を機に、教員や指導者が萎縮してしまわないように、体罰に関する考え方、どのような指導なら許されるのか、そういったことについて国が明確な指針を作り、教育委員会から校長、教員まで認識を共有してもらうことが必要だと考えますが、いかがでしょうか。
次に、家庭教育について伺います。
私は、まず、子育ては苦労するものだということを申し上げたいと思います。苦労しなければ親として育ちません。苦労して子供を育てることで親としての喜びも生まれ、親子の絆も生まれます。多くの教育評論家は、親子の絆が薄い子供ほどいじめなどの問題が早く起こると言っています。子育てに苦労がなければ親が育たず、子供の心も育たないため、いじめなどの問題が起きやすくなるのであります。
子育てで頑張っているお母さん、苦労しているお母さんに対して、子供を預かって直接苦労を取り除くという形ではなく、一歩引いたところから支えてあげるという支援が必要です。もし何かあったときには助けてくれるんだという安心感を与えてあげるのが、行政に求められている役割だと思います。
総理の家庭教育に対する基本的な考え方はいかがでしょうか。また、苦労しながら子育てをしているお母さんを政府としてどのように支援していくお考えか、お聞かせください。
これだけ少子化が進んでいる中で、毎年保育所をつくり続けているのに、いつまでも待機児童はゼロになりません。もっと保育所を増やしていくべきという意見もあります。しかし、ゼロ歳から二歳までは親子の時間をできるだけ多く取れるよう家庭での子育てを支援し、三歳以上は無償での幼児教育を提供する、これを家庭教育、幼児教育の基本的なビジョンとすべきだと私は考えております。
幼児教育の無償化は我が党の公約でもあり、昨日、中曽根議員会長からも質問をされましたが、財政的な問題から、すぐに完全な無償化は難しいのは確かであります。それでも、まずは第三子から無償化する、あるいは五歳児を無償化するなど、段階的に進めていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。政府の方針を伺います。
子供たちの手は小さくても、大きな夢をつかむことができます。環境や努力によって、その未来における可能性は無限大です。できる限り環境を整え、成長に従って努力を促し、その可能性を守ってやるのが私たち責任世代の使命と言えます。
ここで、特に福島の子供たちのスポーツ環境について伺います。
昨年十二月、福島で肥満傾向の子供が増えているという調査結果が発表されました。五歳から九歳、十四歳、十七歳で肥満傾向児の割合が全国一位だったということであります。原発事故による屋外活動制限の影響だと考えられております。子供たちの成長には食事と運動が欠かせません。屋外で運動できないことは子供にとっても大きなストレスになります。それは、大人の場合よりもはるかに大きなストレスです。単に肥満だけの問題ではなく、心と体の成長全体に影響がある、非常に深刻な問題であります。
私の地元北海道でも、福島の子供たちを夏休みや春休みにキャンプで受け入れるという取組が行われております。こうした活動を希望する自治体は全国に数多くあります。子供たちの旅費や滞在費を支援するなど、政府としても積極的な支援を行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。
次に、地域医療について伺います。
全国の多くの地域で病院の閉鎖や医師の減少が相次ぎ、地域医療は危機的な状況になっています。地域医療の立て直しのためには、人材育成の問題、病院の配置の問題、救急車やドクターヘリなどによる輸送体制の問題など、総合的な対策を取ることが必要であります。
その中で、総合診療の充実が必要だと考えております。現在の医療は、専門が細分化して高度になっている一方で、患者さんの状態を全体的に診ることが大変難しくなっております。また、対症療法ばかりでなく、生活習慣を改善し、病気を予防することや自然治癒力を高める食事や運動を指導し、健康寿命を延ばすことも必要であります。
総合診察ができる医師を増やしていくこと、自然治癒力を高め、病気を予防することは、増え続ける医療費を抑制することにも資する大きな取組だと考えますが、総理のお考えはいかがでしょうか。
医療だけでなく、公共事業も地域を支え、命をつなぐ大切な役割を果たしております。地方経済の現状を見ると、公共事業が増えてきたのは確かに有り難いことですが、これが今後も継続していかなければ地域経済を本当の意味で支えていくことはできません。
安倍政権が国土強靱化を掲げ、公共事業の予算措置も行われておりますが、建設業に人が足りないという地域もあります。数年の間に事業が大きく増減を繰り返すようでは、建設業の人材確保は困難になります。
特に、地方においては道路は生命線と言えます。北海道のように雪の多い地域では、道が狭かったり除雪が十分でなかったりすると、救急車や消防車が通れないということがあります。道路の整備や維持管理が人の命を大きく左右するわけであります。
地方の公共事業は、その地域の医療を支え、雇用を支え、農業を支え、教育も支え、更に地域全体を支えています。そして、地方に人が暮らしているということは、日本の国土を守り、農業を守ることに貢献をしております。
このように、国や社会全体として重要なものは何かという観点から、命をつなぎ、地方を支える公共事業、しっかりと推進するべきだと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。
次に、オリンピック・パラリンピック招致について伺います。
東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた招致活動は、既に立候補ファイルの提出が行われ、これから佳境に入っております。今年の九月七日にはブエノスアイレスで最終プレゼンテーションが行われ、開催地が決定をいたします。最終プレゼンテーションには各候補地から国家元首や首相クラスが登場いたします。前回のコペンハーゲンでも、スペインのフアン・カルロス国王、アメリカのオバマ大統領、ブラジルのルラ大統領、そして日本の鳩山総理がプレゼンテーションをいたしました。
そこで、安倍総理にも、九月七日の最終プレゼンテーションには是非出席をしていただきますよう、今からお願いをしておきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。
オリンピックは、単なるスポーツのイベントではありません。開会式には世界各国から国家元首が集まり、これ以上ない外交の場になります。参加国は世界二百か国以上です。今年、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まれば、開催までの七年間は世界が日本を注目いたします。オリンピックに備えて、世界中のチームが東京で、また日本全国で合宿をするようになります。開催が近づくほど、観光客も増えてまいります。
招致の実現は震災復興にも資するはずです。サッカー、ラグビー、バレーボールなどの予選は各地方に分散をして行うことが可能であり、被災地でも開催できます。そして、聖火リレーも被災地を巡ることになるでしょう。日本の復興を世界にアピールする機会にもなります。
一九六四年の東京オリンピックは、高度成長の真っただ中に行われ、戦争による荒廃から見事に復興し、力強く成長する姿を世界に示しました。二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックは、日本が、科学や技術が最先端の国、文化的にも最も成熟した国家として、世界に向けて我々の生き方や価値観を示していく機会にすることができると確信をしております。そのためにヒントになるのは、日本の伝統文化だと私は思います。健康的な食生活、助け合いの精神、自然との共生など、伝統的な日本の価値観はこれから高齢化を迎える世界の国々のモデルとなり得るものであります。
したがって、オリンピック招致を、単にスポーツにとどまらず、外交、文化、経済、教育、観光、健康医療、幅広い分野を含む国家戦略として位置付け、推進していくべきだと思いますが、総理のお考えはいかがでしょうか。
これだけ実り多いオリンピック招致ですが、国民全体がやる気にならなければ実現いたしません。オリンピック招致に向けて機運を盛り上げるため、東京都のみならず、政府としても主体的な取組を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
次に、障害者スポーツの振興について伺います。
オリンピックとともに開催されるパラリンピックは、我が国ではこれまで余り注目をされておりませんでした。しかし、パラリンピックの選手は病気や障害と闘いながらプレーをしております。日常生活でも苦労があるのにかかわらず、それを乗り越え、自立して収入を得て税金も納め、さらに、世界のトップを目指してトレーニングをしているわけですから、想像を絶する努力であります。
パラリンピックのほかに、知的障害者のためのオリンピックとしてスペシャルオリンピックスもあります。ちょうど今、韓国の平昌で冬季の世界大会が開かれており、日本からもコーチ、役員を含め八十四名の選手団が参加をしております。私も、先日、羽田空港での選手団の結団式に参加をしてまいりました。
障害者にとって、スポーツは、健康や体力、集中力の向上に役立つばかりでなく、自立に向けた意識と自信を養い、様々な人との交流の機会にもなります。社会への参加と自立に向けた大変有効な手段であると言えます。障害者スポーツが盛んな国は、障害者の社会参加が進んだ、文化力が大変高い国だと言えるでしょう。
私たちは、障害者スポーツを含むスポーツへの支援を拡大するため、スポーツ振興くじ法を改正する議員立法を提出する予定であります。政府も障害者スポーツへの支援を更に拡大すべきだと考えますが、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
スポーツ以外でも、我が国では障害者が外に出る機会はまだ限られております。欧米諸国のように障害者が日常的に外出できるような社会と比べると、我が国は支援体制もインフラ整備も社会の意識もまだ十分とは言えません。障害者がもっと気軽に外出できる国づくりについて、総理のお考えをいただきたいと思います。
オリンピックや障害者スポーツを含め、スポーツ振興を総合的な国家戦略として推進するためには、政府の中にスポーツ庁を設置し、省庁横断的な取組を推進する必要があります。スポーツ庁は、スポーツ基本法の附則にも検討が盛り込まれており、我々自民党の公約でもあります。総理は、昨年末、スポーツ庁の設置について検討するよう下村文部科学大臣に指示されたということでありますが、現在の検討状況はどのようになっておりますでしょうか。
振り返ると、我が国は経済より文化が重視されない傾向にあったと思います。文化の中でも特にスポーツは軽んじられてきたように思います。
フランスの元文化大臣であるジャック・ラングは、文化とは経済と同じ戦いであると言いました。彼は、フランス文化省の使命の一つを、世界の様々な文化との対話の中でフランスの文化と芸術の威光に貢献することと定義いたしました。彼らにとって文化とはまさに国家の威信を懸けた戦いであり、国家戦略そのものであります。
安倍総理は、所信表明演説で、今こそ世界一を目指していこうと呼びかけられました。我が国は、文化と、その文化に裏打ちされた経済において世界一を目指すべきであります。オリンピックは、スポーツのみならず、文化力や経済力、科学技術力など、総合的な国力を懸けた戦いであり、国家全体の発展につながる一大イベントであります。
日本は、経済が長きにわたり停滞し、財政的にも厳しい状況にあり、震災によって心にも傷を負いました。オリンピック・パラリンピック開催を起爆剤として、我が国が再び夢と希望を手に入れ、輝きを取り戻すことを心から願い、質問とさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕