原英史の発言 (内閣委員会)
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○原参考人 おはようございます。政策コンサルティングの会社を運営しております原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
国家戦略特区ワーキンググループの委員、また大阪府、大阪市の特別顧問なども務めております。そうした視点も含めて、国家戦略特区法案について意見を申し述べさせていただきます。
今回の国家戦略特区、もともと、産業競争力会議において、成長戦略に向けての議論を行う中で、民間議員から提案がなされました。私は、産業競争力会議の民間議員のサポート役も務めておりまして、この提案には当初からかかわっておりました。
八田参考人のお話と若干重なる部分があるかと思いますが、当初の提案の考え方に触れつつ、今回の法案に関する留意点を指摘したいと思います。
まず、国家戦略特区という制度を創設する目的についてであります。
目的は、規制改革の実験場として、特区で突破口を開くということであります。
我が国には、さまざまな分野で、自由なビジネス活動を阻害する、合理性が必ずしもない規制が根強く存在しています。こうした規制を取り払うことこそ経済成長を最も効果的に実現する方策である、先ほどの山口参考人の御意見とは若干異なるかもしれませんが、こう考えております。
いわゆる岩盤規制と呼ばれるような領域など、これまでも改革の必要性が指摘されながら、なかなか手をつけられずに来ました。
そこで、全国一斉で前進を目指してもなかなか達成できないようなハードルの高い規制改革について突破口を開くということが、今回の国家戦略特区の根幹であります。
これに関して、留意しておくべき点を二つ挙げたいと思います。
第一に、特区は規制改革の場である、すなわち、ビジネス活動の自由度を高めるための場であります。この観点で、自由度が最大限に生かされるような運用が肝要であります。
今回の法案では、例えば、特別区域計画を定めて認定を受けるといった仕組みが法定されています。こうした仕組みの必要性そのものはもちろん否定いたしませんが、問題は、こうした制度は、役所に運用を任せておくと硬直的な運用になりがちであるということだと思います。すなわち、事前に詳細に計画を確定して役所の認定を受け、民間事業者は役所のコントロールのもとでのみ活動が認められるといった運用になってしまうことがしばしばあります。これでは、国家戦略特区の価値は大きく損なわれます。
政府は、自由なビジネス活動の環境を整えることに徹し、ビジネスへの介入は最低限にとどめるよう、十分な留意が必要と考えます。
第二に、主眼はあくまで規制改革ということであります。ここでいう規制改革には、最大の規制である税制の改革も含まれます。規制改革の実現、これを徹底して追求することが重要と考えます。
仮に、政策メニューとして規制改革と支援措置という両方が目の前に示されている場合、官庁は往々にして支援措置の方に力を入れがちになることがあります。なぜならば、規制と支援、これはどちらも役所にとっては権力の源泉というようなものであります。権力の源泉を減少させようという規制改革より支援措置に傾くというのは、いわば当然のこととも言えるわけであります。
一方、現場の事業者なども、本当は規制改革が必要とわかっていながらも、短期的には、あえてハードルの高い規制改革に挑むより、補助金をもらうといったことの方を志向しがちなことがあります。
このように、政策の供給主体、受け手双方において、規制改革より支援措置につい流れがちであるという傾向がある中で、今回の特区制度で本来の目的を達成するためには、あくまで規制改革が主眼ということを明確にして運用していくことが重要と考えます。
次に、こうした目的を実現するための制度の枠組みについてお話しいたします。
産業競争力会議における当初の民間議員の提案では、特区担当大臣、国、地方、民間の一体となった統合本部、それから特区諮問会議という三つの仕組みを提案いたしました。
私の配付した資料の最後のページに、提案のイメージ図を添付しております。
この枠組みでございますが、これまでの長年にわたる規制改革の取り組み、構造改革特区、総合特区といったものにおける成功と失敗を踏まえて、どうしたら規制改革を実効的に実現できるのかという視点で、これまで規制改革にかかわってきた方々のお知恵もかりながら、我々の考えるいわば理想形の枠組みをつくって提示したつもりであります。
具体的には、まず第一に、特区担当大臣の創設です。
かつて、構造改革特区、これは初期には、例えば農業へのリース方式での企業参入など、大変大きな成果が上げられました。この時期には特区担当、ほぼ専任の大臣が置かれていて、その果たされた役割は極めて大きかったと考えております。
第二に、特区ごとに、国、地方、民間、この三者が一体となった統合推進本部、これは法律上の用語では特別区域会議ということになっておりますが、これを設けることであります。これは、特区内におけるいわばミニ独立政府と考えております。
従来の規制改革や特区の運用では、現場レベルの規制改革ニーズが抑え込まれてしまって、なかなか表に浮かび上がってこないということもありました。これを防ぐため、この提案では、特区担当大臣、首長、民間代表で構成する統合本部を設け、現場の規制改革ニーズを特区担当大臣がダイレクトに吸い上げる、さらに、制度の運用、推進を行っていくという仕組みをつくっています。
第三に、特区諮問会議です。
過去の歴史を振り返れば、やはり規制改革における最大の難関は、規制を所管する省庁の壁をどう突破するかであります。特区諮問会議は、そのため、特区担当大臣と規制担当大臣で民間有識者も交えて議論をし、その上で最後は総理が決定をするという枠組みを設けるものであります。
今回、政府で提出された国家戦略特区法案、ここでは、こうした当初の提案内容が基本的に全てそのまま反映されていると認識しています。法案の検討プロセスにおいては、一時、当初の提案とややずれた方向に向かいかけたこともあったやに聞いておりますが、自民党における議論、あるいはさらに安倍総理のリーダーシップ、例えば、規制を所管する関係大臣は意思決定には参加させないという方針を総理が明確に示されたといったことによって、理想形にほぼ近い形で法案化が達成されました。これは大いに評価すべきと考えます。
ただ、留意点もあります。
第一に、統合推進本部の運営に関してです。
この本部は、先ほど申し上げたように、国、地方、民間が一体となったミニ独立政府となるべきであります。国、地方、民間がばらばらに、それぞれの立場を主張し合う会議であってはならないと考えます。まして、それぞれのメンバーが会議において拒否権を有するような運営がなされれば、特区におけるスピーディーな意思決定と推進が大きく妨げられかねません。
この観点で見ると、法案第八条第六項で、特区会議における決定の仕組みとして、構成員の全員の合意という規定がなされていることには若干の危惧を持っております。三者が一体となってという基本に沿って制度が運用されるよう留意が必要と考えます。
第二に、特区諮問会議での意思決定については、最後は総理が決定する仕組みとすることが重要です。
この点、法案第八条第九項で、特区諮問会議での審議を経て総理が意思決定を行う際に、関係大臣の同意を得なければならないという規定があります。これは運用次第では、関係大臣が反対すれば物事が何も進まないという仕組みにもなりかねませんので、ここも運用上の工夫、留意が必要かと思います。
枠組みに関して、さらに今後の課題として二点申し上げます。
第一に、今回の法案では、国家戦略特区の枠内で制度を組み立てております。その先の課題として、全国レベルでの規制改革との統合ないし一体的運用をどう確保するかも重要だと考えます。
今回、個別の規制改革項目について各省と議論する中でも、特区にはなじまない、特区ではできないといった議論があちこちで出てきました。例えば雇用ですとか地方議会の被選挙権といったものでありますが、私自身、これらについて特区にはなじまないというようには考えませんが、ただ、こうした主張が出てきた際に、特区でできないなら、それでは全国でと迫れるようにしておくことは重要と考えます。
このため、規制改革会議との緊密な連携、さらに、将来的には事務局や組織の統合一体化といったことも課題でないかと考えます。
第二に、情報公開のさらなる徹底であります。
これは、八田参考人や八代参考人が過去になされてきたことでありますが、過去の規制改革会議などでは情報公開の徹底を大きな武器としてきました。つまり、議論を国民の前に公開し、どちらに理があるか国民が判断できるようにして議論を進めていく。これによって、表で堂々と言えないような理由で頑張り続けることは難しくなり、結果として、規制改革の前進につながってきたと思います。
今回の法案決定に至るプロセスでは、時間的な制約がやや厳しかったこともありまして、情報公開がやや後手に回ってしまった面があり、これは反省点だと思っております。
例えば、雇用ルールについて、特区ワーキンググループで首切り自由化を検討しているといった、全く誤った報道がなされたことがありました。もともとワーキンググループで議論しておりましたのは、一貫して、ルールの明確化、これによって雇用の拡大を図るということでしたが、この意図が全く誤解されて、報道がなされました。
さらに、政府の結論として雇用ルールの明確化が実現したわけですが、そうすると、今度は、首切り自由化という当初の提案から後退したから問題だといって、再び批判を浴びました。私から見れば、二重に誤った批判であります。
八田座長は、何度かの記者会見を行うなど、極めて丁寧な対外発信をなさっていたと思いますが、今後の課題として、やはり、こうした誤解を生むことのないように、議論の情報公開をより一層徹底していくということが課題かと思います。
最後に、規制改革の各論について触れます。
今回の法案決定に至るプロセスでは、特区諮問会議などの正式な枠組みはまだスタートしていない段階ながら、ワーキンググループを使って相当の成果が得られたと思っております。
先ほど八田参考人から、今回の成果が小粒だというのは不見識だというお話がありましたが、この点は私も全く同感です。八田参考人が挙げられた、最後の、表のつけられていた十五項目には、これまで長年にわたって、問題提起されては何度もはね返されてきた課題が幾つも含まれています。例えば、外国医師による診療、病床規制、医学部新設、雇用ルールの明確化、公設民営学校、容積率規制の転換、農業委員会、農業信用保証など、いずれもそうした例だと思います。
もちろん、抜けている例を探すことは簡単です。一回の国会の会期で日本の岩盤規制全てを解決し切ることはできるわけがなくて、残された課題は、当然、数多くあります。そのために、先ほど申し上げた、統合本部や特区諮問会議などの枠組みをつくって、さらなる規制改革を引き続き推進できるようにしているということだと思います。
その上で、今回抜けている課題を私なりに幾つか挙げますと、配付資料にも書いておりますが、抜けている課題として、例えば、税制、金融、空港などの交通インフラ、外国人労働者など。それから、今回、取り上げたが十分に実現できなかった課題として、雇用、これは労働時間の問題ですとか、農業の企業参入といったような課題があるかと思います。
今後、この特区制度がよりよく運用され、さらなる規制改革が強力に推進されていくということを強く期待いたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)