竹中登一の発言 (内閣委員会)

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○竹中参考人 おはようございます。
 竹中より、創薬、すなわち医薬品の研究開発面から意見を述べさせていただきます。
 私の資料の二ページをごらんください。
 私自身、約五十年間、製薬企業で仕事をしてまいりまして、若いときは研究者として高血圧や前立腺肥大症の薬をつくりました。そして、二〇〇〇年に経営者となりまして、日本発の研究開発型グローバル企業を目指して、山之内と藤沢を合併させてアステラス製薬をつくってまいりました。退任後は会社を離れて、現在、大学や研究機関で創薬研究の活性化の支援をしております。こうした背景から、きょうの御意見をさせていただきます。
 三ページをごらんください。
 欧州では、十九世紀の半ばに、有機化学によって創薬が成功しまして、例えばアスピリンを創薬したバイエルなどがグローバル企業となりました。
 日本は、戦前及び戦後間もなくは、欧米企業から輸入しました、導入しました薬を国内で製造して販売していました。
 一九六一年の国民皆保険制度の導入以降、日本企業は創薬研究を本格的に開始しました。大学の科学技術を企業に取り入れまして、そうした結果、七〇年、八〇年代には数多くの日本発の新薬が出ています。
 当時の日本の企業というのは、海外での販売機能あるいは開発機能を持っていませんでしたので、こうした発明品を全部海外の企業にライセンスアウトしておりましたが、九〇年代になりまして、一部の企業は国際化を進行させまして、自分のつくった薬はグローバルに売るという格好になっております。
 さらに、二十一世紀になって、市場はグローバル化をますますしております。そこに対しまして、国内企業同士の合併や、あるいは海外企業の、バイオベンチャーの買収などをして、研究開発の充実を図っております。
 スライド四をお願いします。
 この図は、二〇〇六年、八年、一〇年に世界売り上げ百番以内にランクされた製品を創薬した企業を国籍別に集計したものでございます。
 日本は、アメリカに次いで、スイス、イギリスとともに世界第二位の新薬創出国となっております。ドイツに百年おくれてスタートしたんですが、五十年で追いつき、追い越しました。その理由と申しますのは、日本のアカデミアに、創薬に必要で、かつ応用できる高度な科学技術力が醸成されていたからでございます。
 五ページをごらんください。
 製薬企業は、大体、売り上げの一五から二〇%を研究開発投資しております。規模の大きい欧米企業では、年間七千億円の研究開発をしております。一方、日本の大手企業は約二千億円前後であり、四社を合計しますと七千億円前後になります。欧米企業の一社分の研究開発費に相当いたします。
 右のグラフを見ますと、欧米三社は七千億円の研究開発費で大体二十から三十個の新薬をつくっておりますが、日本の四社は、同じ七千億円くらいで三十五個の新薬を創出しています。こうしたクライテリアでいきますと、日本の創薬力は欧米に負けておらず、比較的効率がいいということになります。
 スライド六ページをごらんください。
 二〇〇七年にグローバル販売で十億ドル、すなわち、一千億円以上売れた薬には日本発が十五製品ございます。前立腺肥大症とか、高血圧とか、アルツハイマーとか、成人病の多くの薬を日本企業がつくっております。私が若いときにつくりましたハルナールという薬も、二千億円も売れていた時代がございます。
 しかし、これらの製品の特許は、二〇一〇年にほとんど満了しております。特許満了しますとジェネリック医薬品に変わりますので、企業は常に次の新しい新薬の創出に挑戦しております。
 七ページをごらんください。
 二〇一二年までの十年間で、日本には新しいタイプのがんの薬、がんの分子標的薬が二十製品販売されております。しかしながら、二十製品のうち一製品のみが日本発の創薬で、あとは欧米発の創薬であります。その結果、日本のがん市場の六千億円のうち、八〇%が輸入品になっております。
 日本が新しい分野でおくれました原因について考えてみました。
 八ページをごらんいただきます。
 一九六〇年から九〇年ごろの創薬は、実験動物を使って、薬理・生化学で得られた、そうした創薬標的に対する低分子化合物というものを有機化学でつくってまいりました。
 当時の日本の大学、企業は、こうした科学技術力に非常にたけており、そして創薬に成功したわけでございますが、一九九〇年代、アメリカでは、国家プロジェクトとしてヒトゲノム計画を推進し、新しいタイプの創薬、ゲノム創薬が開発されました。患者さんの御理解をいただき、ゲノム解析を行い、病気の原因分子を調べ、バイオ医薬品を開発しました。アメリカでは、ゲノム創薬を大学あるいは大学発のベンチャーがリスクをとって進めたわけでございます。
 残念ながら、日本はこの手法でちょっと乗りおくれてしまったわけでございます。
 九ページをごらんください。
 具体的な図ですが、アメリカの大学では、患者さんからいただきました、例えばがん細胞の遺伝子解析を行いまして、同時に、患者さんの医療情報を利用させていただき、がんの原因となる分子を個人レベルで解析しまして、これを制御する薬をつくったわけでございます。特に、薬をつくる段階においてはバイオベンチャーと共同し、そして、臨床開発の後期、販売は既存の製薬会社に委託しております。
 日本に欠けておりましたのは、患者さんの医療情報と生体試料を創薬に利用するための法整備が未熟であったこと、それから、既存製薬会社の強みであった低分子化合物の創薬に固執し、新しいバイオ医薬品の研究に力を入れることがなかった、さらには、リスクの高い研究領域にチャレンジするバイオベンチャーが成長しなかったことなどが挙げられます。
 十ページをごらんください。
 現在、日本のアカデミア創薬は大変活発になって、いろいろなシーズが出ております。しかし、これらを医薬品で開発するためには、さらに、薬効、毒性、工業化など、GLP、GMPと呼ばれる法規制に適合した応用研究を行わなければなりません。アカデミアではこうした研究ができませんので、創薬の死の谷と呼んでおります。
 十一ページをごらんください。
 FDAは、二〇〇七年までの十年間で、新たに二百五十の新薬を承認しております。アメリカからの製品が百十八、日本は二十三であります。
 興味あることは、アメリカの百十八製品のうち七十三製品、六二%は大学かあるいはバイオベンチャーでありまして、既存の製薬会社の製品より多いわけでございます。
 一方、日本は、大学、バイオベンチャーはわずか四製品でございまして、ほとんど企業から出ております。このことは、日本でも、大学、バイオベンチャーの創薬を支援すれば、国の創薬力の強化が可能だと思われることでございます。
 十二ページをごらんください。
 末松先生からも御紹介ありましたが、昨年五月に、大学のすぐれた基礎研究を医薬品として実用化する支援をする創薬支援ネットワークが発足しました。
 医薬基盤研究所、理化学研究所、産業技術総合研究所、大学、国の研究機関が連携して、オール・ジャパンでアカデミア創薬を支援し、死の谷を克服する組織であります。私、もう既にお手伝いしておりますが、大学から多くの、百以上の御相談が来て、順調に進んでおります。
 今回審議されております日本医療研究開発機構に、このネットワークで働いている企業から来た人材も移行される予定ですので、我が国の創薬力の強化を期待しているところでございます。
 十三ページをごらんください。
 日本の製薬企業の集まりである日本製薬工業協会、製薬協の手代木会長は、産業界におきまして、健康・医療政策に関する司令塔機能の充実強化並びに健康・医療予算の拡充、重点化を強く要望されており、革新的新薬の創出体制として、今回議論されております日本医療研究開発機構の創設、創薬支援ネットワークの強化、臨床研究中核病院の整備を期待しております。
 製薬企業は、こうした御支援を活用して、革新的新薬の創出をさらに促進するんだということを力強く表明されております。
 十四ページをごらんくださいませ。
 総合戦略策定に当たりましては、製薬企業より、臨床研究の推進、活性化、レギュラトリーサイエンスの啓発、推進、戦略的な知財対応が要望されております。これらは、総合戦略の中に既に織り込まれているところでございます。
 最後のページをごらんください。
 製薬企業にとりまして、健康・医療研究開発促進に関する本二法案は、大変重要かつ意義のある法案でございます。この政策により、革新的な新薬が創出されることによる健康で安心な社会に貢献できること、研究開発活動が活性されることによる科学技術の発展へ貢献できること、そして、新製品の収益による日本経済成長への貢献が可能になります。
 ぜひ前向きに御審議をしていただきたく、お願いを申し上げます。
 本日はありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 118604889X01020140404_006

発言者: 竹中登一

speaker_id: 5483

日付: 2014-04-04

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会