増田寛也の発言 (予算委員会公聴会)

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○増田公述人 おはようございます。この場にお招きをいただきまして、大変光栄でございます。増田寛也でございます。
 現在、野村総合研究所の顧問と、そして東大の大学院の方で教えているところでございますが、きょうは、来年度の予算案につきまして、賛成の立場から陳述をさせていただきたいと思います。
 そして、野村グループで、お手元に資料を用意してございますが、日本経済の現状と今後の見通しを我々の中で議論して、まとめております。その要点を本当にかいつまんで申し上げますと同時に、後半の、ページ数にいたしまして三十二ページ以降に、参考資料として、人口減少問題のテーマ、私が昨年の十二月号の中央公論の方にこの問題の論文を取り上げて書かせていただきました。この点についてお話を申し上げまして、また審議の参考にしていただきたい、このように考えております。
 初めに、我が国の経済の見通しを野村総合研究所の立場でどう見ているかということをかいつまんで申し上げます。
 お手元の資料の一ページから三ページまで、一言で言いますと、お金、資金の先進国回帰ということであります。
 一ページ目の一番左側に実質GDPの成長率が出ておりますが、世界で二〇一三から一四年にかけて、二・九から三・五に加速をいたします。先進国は一・二から二・二、これに対して新興国は、水準は高うございますが、四・七から四・九というふうに見ておりまして、ほとんど加速感が出てこない状況でございます。このように、資金の全体的な先進国回帰という現象が今後出てくるというふうに見ております。
 その上で、四ページに日本経済見通しの要約表が出ておりますが、一番上の実質国内総生産、今年度で二・二%、来年度一・四、そして再来年度一・九、ついこの間まではもう少し高く見ておりましたが、六ページの十—十二月期の実質GDPの成長率、先日発表になりました市場コンセンサスが二・八%ぐらいでございましたが、思いのほか低くて一・〇という、輸出が振るわなかったということでございます。そういったことで、今年度二・二と下方修正をしております。日銀の方での見通しは二・七ということでございます。恐らく二%台の前半ではないかというふうに見ております。
 そして、さらに少し行きますと、八ページに、ことしの四月からの消費税率引き上げの影響が出ております。このことによりまして、実質GDP、マイナス〇・六八%程度の影響が出てくるだろう。日本の潜在成長率が〇・五ないし一%というふうに言われておりますので、それを打ち消すぐらいのものでございます。
 したがって、九ページに、追加対策ということで補正予算五・五兆円を編成されたわけでございますが、的確な対応であったと思いますのと同時に、これを早期に、確実に執行していただくということが必要かというふうに思っております。
 なお、この関係では、十一ページに建設業の実態が出ております。
 特に、十一ページの右側でありますが、右側のグラフの左軸、黒い線が有効求人数であります。今、求人数が十五万人ほどおりますが、御案内のとおり、スペシャリストが特に足りない。型枠工を初めスペシャリストが足りないということでございます。外国人で今働いているのが実数で一万六千人ぐらいというふうに言われておりますが、こういった技能労働者不足は深刻な問題がございますので、これをどのようにするか、的確な御対応をいろいろとお考えいただければというふうに思うわけであります。
 そして、これまでが財政の問題でありますが、十三ページ以下は金融の関係でございます。
 この金融の関係は、足元でインフレ率は当初の予想を上回るペースで上昇しておりますが、一言で言うと、円安でエネルギー価格が上昇しているということでほとんど説明がつくかと思います。ただ、十四ページに書いておりますように、インフレの基調は変わらないと思いますが、今後、エネルギー価格が鈍化する、そして、消費税増税後、どうしても消費が低迷いたしますので、インフレ率が鈍化してくる。一五年中に二%という目標がございますが、その達成は、いろいろなことをしないとなかなか容易でないのであろうというふうに思っております。
 そして、問題は賃金です。十七ページ以下がその分析でございますが、労働需給の逼迫が賃金上昇にきちんとつながっていくかどうかということでありますが、十八ページに書いてございますとおり、マクロ賃金、雇用者報酬全体の伸びが抑制をされておりますが、その背景には、パート化の進展によっていわゆるベースの所定内給与が低下をしているという、十八ページ、左、右ともそれでございます。
 したがって、十九ページに書いてございますとおり、特に非製造業における雇用形態の変化ということがポイントではないかというふうに思っております。
 少し先を急ぎますが、あと、二十四ページ以下、二十三ページに生産が実質GDPの堅調回復を示唆しているというふうに分析をしておりますが、問題は、これだけの円安であるにもかかわらず、なかなか輸出の伸びにつながっていかない、この点でございます。
 なぜそうなのかということですが、二十五ページに少し書いておりますが、前回は、これが二〇〇五年から七年ぐらいはうまくつながっていったんですが、今回、一般機械、輸送機械、いわゆる自動車関係は勝ち組と言われていますが、電気機器が十分でない。ここに大きなイノベーションなどが必要になろうかというふうに考えております。
 そして、これが最後になりますが、二十九ページ、いろいろと、設備投資にこうしたことがつながっていくかどうかということでございますが、ひとえに、輸出がうまくいくかどうかということで、輸出の増が生産増につながって、稼働率が上がって設備投資に向かっていく、こういう好循環を生み出すことができるかどうかでありますが、当面はどうも、三十ページに書いておりますとおり、更新投資が中心のようでございます。この点が今後きちんとした政策によって打破できるかということだと思います。
 三十二ページ以下、きょうは、審議の御参考に、人口減少問題について幾つかポイントを申し上げておきたいというふうに思います。詳しくは、昨年十二月に出ました中央公論の方にいろいろ書いてございます。
 三十三ページに、「日本の人口減少は、簡単には止まらない」ということで、よくこの問題を議論するときに使います図でございますが、出生率が二〇〇五年に一・二六まで低下をし、現在、一・四一まで上がっております。
 このように、出生率が上がったにもかかわらず、棒グラフの縦軸の出生数の方が一貫してその後も減っているということは、要は、第二次ベビーブーム世代、一九七一年から七四年に生まれた方も、もう七四年生まれの方がことし四十歳ということで、若い二十代、三十代の女性の数が今急激に減り始めている。したがって、出生率が上がっても、全体の生まれてくる子供はふえないという大変深刻な状況にもう突入してきているということであります。
 そして、これを私どもは市町村別にきちんと分析してみようということで、昨年三月に公表されました、社会保障・人口問題研究所、いわゆる社人研の数字を、データを使って分析したんですが、マクロで、全国の数字で見ますと、三十四ページ、高齢者の数が二〇四〇年までにふえて、その後、横ばいから減少するということで、当面、この第一段階の様子にあるのが全国の傾向でございます。
 ところが、二〇四〇年あるいは二〇六〇年以降の第二段階、第三段階にもう突入している市町村が、実は全国でかなり存在をしている。大都市はまだ第一段階で、これから高齢者がふえるんです。地方の方は、岩手のところはおおむね第二段階、第三段階でありますが、高齢者も横ばいから減り始め、若い者はもっと減るという、全国の数字を三十年から五十年ぐらい先取りするような形になっております。それが、三十五ページ、三十六ページに出てございます。
 市町村別に分析をすると、このように、特に第二段階、第三段階にもう入ってしまっている市町村がある。これをどうするか。このままではすぐに、間もなく消滅をしてしまう。こういう地域によってのアンバランスがございます。
 この先進国での出生率の低下の問題は、実はこれはヨーロッパでも共通の問題でございまして、移民を実施したり、いろいろ婚姻制度などにもかわるようなことをしたり、それぞれの国の経験があるわけですが、これは我が国としても大いに学ぶべきところもあると思います。
 もう一つ、我が国の人口減少を急激たらしめているのは、三十七ページ以下の、これは日本独特の、特有の現象でございます。大きな人口移動が我が国ではあって、三十七ページに書いてあるように、これまで三回ございました。高度成長期には、地方圏から三大圏の方に移る、これは三十七ページの左側の大きな山であります。真ん中あたりにバブル期の山があります。このときは、地方圏から、関西圏や名古屋には移らず、東京圏に移っている。そして、その後、二〇〇〇年ごろから最近まで、だらだらと、同じように東京圏に若い人が地方圏から出る。これは恐らく、東京がさえていたというよりは、地方でもう生活していけない、端的に言うと、食っていけないということで東京の方に移ったのではないかというふうに思うわけです。
 三十八ページに二〇一一年の地域別の流入人口が書いてありますが、やはり東京都区部が非常に大きくて、特徴は、全国から東京は人を集めている、こういうことであります。
 それでは、特にこれは若い層が中心なんですが、東京に人が集まるというのは、これは首都だから当然どこでも見られるのかということであります。
 三十九ページにごらんいただきますように、実は日本だけの現象でありまして、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ、いずれも戦後一貫して人口を集めているわけではありません。むしろ、減らしていたり、ずっと横ばいでそのままでありますが、なぜかしら日本、これは、この間ソウルを調べたら、同じように人口が集中しておりましたが、途上国のようなことなのかもしれませんが、こういう状況であります。
 ところが、若い人が東京に行きますと、四十ページにございますとおり、東京の出生率は極めて低い。東京は一・〇九。一番上が全国平均で、一・四一。沖縄が一・九〇と大変高うございますが、東京は一・〇九。住宅事情もあると思います。保育所がない、教育費が高い、いろいろ子育て環境が悪い、さまざまな問題があると思います。この点は世界共通の問題でありまして、人口稠密な地域では出生率がどこも極めて低い、一を切っている都市もございます。
 したがって、東京で出生率が高くなるように、これは男側の意識もきちんと変えて、ここを改善していくのは必ずやらなければいけないことでありますが、しかし、その効果を期待するのはすぐにはなかなか難しいと思いますので、したがって、とにかく、東京に若い人が中心に人が集まるという状況、さらに言えば、人だけでなく、物、金が集まるというこの形態をどのように考えるかということ、ぜひこれは国全体として考えていかなければならないと思います。
 そして、四十一ページに、今までのことをまとめて少し簡単に図示してありますが、大都市への若者流入ということが、日本特有の大きな現象として、これまで三回ございました。
 今後また起こることになれば、どういうことが起きるかというと、地方部は、やはり若い人たちが東京に出ていくということ、プラス、全体として我が国が低出生率でありますので、それによって、今、人口減少に拍車がかかっている。一方で、三大圏、特に東京に若い人が行きますと、そこは、先ほど言いましたように、超低出生率、一・〇九ということで、そのことによって、さらに人口減少に拍車がかかるということです。
 四十二ページに少し書いてございますが、人口の再生産力ということで、これは人口学者が使う言葉ですが、二十代それから三十代の女性、二十から三十九歳女性人口を見てみますと、実はここで九五%の子供さんが生まれるのでこの年代を取り上げたわけですが、今、出生率が一・四。TFRというのは出生率です。
 左側の、人口流出がないとした場合でも、合計特殊出生率が一・四だと、自然に三、四十年後には女性の人口が七割まで減ります。したがって、人口規模を維持するためには、出生率を二に直ちに回復しないといけない。こんなに急激に回復するのは大変難しくて、二〇三〇年に出生率が二に回復する、これは実際にはなかなかあり得ないと思います。それでも、人口が安定化するのは六十年後の二〇九〇年でございますので、したがって、深刻さがおわかりかと思います。
 一方で、モデル二の、右側の方ですが、今まで起こったとおり人口流出が東京の方に行くということですと、さらに事態は深刻で、人口を維持するためには、TFR、合計特殊出生率を二・八から二・九まで上げなければいけない。先進国いずれも、頑張っても二そこそこまででありますので、これがいかに難しい目標かということはおわかりだと思います。
 したがって、最後に、四十三ページでございますが、今のこの傾向を各県別に、市町村別に全部分析をいたしますと、人口移動が収束をする、東京にもう若い人たちが出ていかないというのが国立社会保障・人口問題研究所の推計の前提になっていますが、それでも、二〇一〇年から二〇四〇年にかけて、若い女性の数が半分以下になる自治体が二〇・七%、三百七十三の自治体。このうち、二〇四〇年に人口一万人以下のものは実は二百四十三ございますが、ここはそのまま存続するのが極めて難しいのではないかというふうに私どもは推測をいたしました。
 さらに、これまでのとおり人口移動が収束しないという仮定を置きますと、この自治体数が四九・八%、何と半分、八百九十六までふえました。二〇四〇年、人口一万人以下のものが五百二十三でございます。消滅の危機に瀕するということでございます。
 私は、東京も、これからいろいろな意味でアジアの諸都市と競争して、もっともっと成長を遂げなければいけないだろうというふうに思うんですが、我が国の地方から若い人を集める形で全部そういうことをやっておりますと、地方も崩れる、そのことによって東京自身もまた困る。実は、東京は、介護が大変厳しい状況になってくるわけで、二〇四〇年、後期高齢者が二倍以上ふえて、若い人たちが四割減っていくわけですから、そういう問題も出てきます。
 したがいまして、やはり一方で、地方で、若い人たちが地域で雇用できるような仕組みづくりを何としてもすると同時に、東京の人材は、例えば国際金融センターになるのであれば、アジアのシンガポールやインドなどの優秀な人材で賄うような形でそれを維持するようなことも今後考えていく必要があるんじゃないか。
 これは、大変大きな議論で、私もまだまだ十分考えがまとまっているわけではありませんが、いずれにしても、この人口問題、これは先の話ではなくて、間もなく起こり得る問題でありますので、これを大きな国家戦略として考えていく必要があるのではないか。そして、そのために、アベノミクスなり、これからの予算を一つ一つ積み上げていく必要があるのではないか。このように考えているところでございます。
 以上で、大変雑駁でございますが、私の意見陳述とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 増田寛也

speaker_id: 24135

日付: 2014-02-25

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会