林宜嗣の発言 (国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会)

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○参考人(林宜嗣君) 時間もありませんので、もう早速お話をさせていただきたいと思います。二十分たちましたら途中でももうそれで打ち切らせていただいて、後の質疑のところでお話をさせていただきたいと思います。
 私の申し上げたいことは、財政再建のためには地方の再生が不可欠だという点がまず一点。そして、その地方の再生のためには条件整備が不可欠であるということ、これが二点目であります。このお話をさせていただきたいと思いますけれども、先ほど菊池先生のお話の中にもありましたように、国の財政と地方の財政がもう非常に密接につながっていて、太いパイプの中でいろんな関係を持っていると。
 実は私、今大学で国と地方関係論という講義を持っております。国と地方関係論というので、学生にどのようなイメージを持ちますかと言うと、仲が悪いとかといったような話が出てきます。ですけれども、重要なことは、やっぱり財政を両輪でやっているということをきちんと捉えて、そして議論をしていかなければならないということでございます。
 資料を配付していただいておりまして、この右下のところにスライド番号が書かれております。このスライド番号を申し上げますので、そこを御覧いただきたいという具合に思います。
 三つ目、三枚目のスライドでございますけれども、国の財政改革の諸側面ということで、実は私は財政学者でございます。したがって、社会保障改革とか行政改革とか税制改革、ここをメーンに今まで研究をしてまいりました。しかしながら、一方で、国と地方の関係がこれだけ密接になっているときに、しかも国から地方への財政支出が非常に大きな規模に上っているとき、この国と地方の関係を改善しなければ国の財政改革も実現しないと、こういうことの中で国と地方の関係について研究をしてまいりました。
 五ページ目を御覧いただきたいという具合に思います。
 これは、国の財政支出の中で地方に対して行われている支出がどれぐらいの大きさになっているかということを示したものでございます。比率でいきますと、大体三割弱ぐらいのところを横ばいで推移していると。つまり、国の財政支出のうち三割は地方交付税だとか補助金という形で地方に流れていると。
 これにメスを入れなければ国の財政改革というのはなかなか進まないということで、今まで交付税改革であるとか補助金カットだとか、こういうようなことが議論になってまいりました。しかしながら、その金額を削減すればよいという話ではどうもなさそうだと。結果的に削減できるようにしなければいけないと。そのためには、地方の再生を図ることによって、地方が国に頼らないでも、あるいは頼り方が少しでも減るような形で地方の経済を持っていかないことには駄目だろうということで、今日のお話をしているわけでございます。
 六ページ目を御覧いただきたいと思います。
 アベノミクスによってマクロ経済が随分回復をしてきている。今後、構造的な改革をどのように進めていくのか。ディマンドサイドの、菊池先生はどちらかといいますとディマンドサイドのお話をなさいました。金融サイド、供給サイドの経済学では私はありませんけれども、やっぱり構造改革ということを考えていくということになりますと、マクロの国の指標でいきますと、要するに平均値で議論をすることになります。しかしながら、景気回復には非常に地域間格差が存在するんだということで、この六ページを御覧いただきたいと思います。
 地価の減少率が随分歯止めが掛かってきたという具合に言われておりますが、地方に参りますと、やはり依然として地価の減少率がまだ高いままになっていると。これは明らかに土地需要によって地価が動きますから、この土地需要がこれからどのように動いていくかということでございます。
 七ページ目は、歯止めが掛からない東京一極集中。
 社会保障・人口問題研究所が人口予測をいたします。それが、後になればなるほど地方の実態がますます悪くなるという、そういう予測が出ます。もう詳細は申し上げませんけれども、例えば秋田県は、総人口がこの二〇一〇年から二〇三五年の二十五年間に約三割減少する。若い人たちが出ていっておりますから、生産年齢人口ベースで考えますと二十五年の間に約四割減少してしまうと。これはもうとんでもない話だと。確かに日本全体でも少子化で人口が減少しますけれども、地方においてはいわゆる転出が非常に大きな人口減の原因になっている。これをどうやって止めていくのかというところが最大の課題でございます。
 八ページ目に、人口減少は財政力の低下に直結と。
 この全国の都市のデータを見ますと、人口減少率が大きければ大きいほど財政力指数が低くなる、これは当然のことでありますが、この右上がりの傾向が明確に見られると。したがって、財政力が弱くなり、国からの地方交付税に頼らないで済むようにするためには人口減少を抑制しなければいけない、止めなければいけないということでございます。
 現状推移のシナリオがこのまま続いたとするならばどのようなことになるか、これが九ページでございます。
 今、私は、地方によってはもう負の連鎖、負のスパイラルが起こっているという具合に捉えなければならないだろうという具合に思います。人口が減少する、それによって産業が衰退する、雇用の受皿、雇用がない、したがってまた若い人たちが減少するというような負の連鎖、これが起こっている。この負の連鎖をどうやって断ち切るかということが地方の最大の課題でございます。
 人口減少、産業の衰退、これは地方税源の縮小につながる。そして、経費は人口減少ほどには減少いたしません。その結果、財源不足額が増加する。そして、これをそのまま交付税で補填するということになりますと、もう当然のことながら交付税を増やしていかなければいけないと。
 従来、これまでは交付税あるいは公共投資でこの負の連鎖を事後的に断ち切っていたと。しかしながら、この事後的に断ち切るということであれば、もう常に巨額の資金を投入しないことには、これをちょっと緩めるとまた負の連鎖に陥ってしまうということになりますので、この辺りを何とかしなきゃいけないということで、この財源不足額を少なくするためには、九ページに書きましたように、義務付けを縮小するだとかそういうようなことがありますけれども、一番最後のところに書かせていただいております地方力の強化、人口、企業の流出を食い止める、負の連鎖を根本から遮断するということが必要になってまいります。
 そこで、少しイギリスのお話をさせていただきたいと思います。
 イギリスは、前労働党政権のときに、ヨーロッパ大陸の国々の都市に比べるとイングランドのロンドン以外の都市の力が非常に弱いと、これを何とかしなきゃいけないということで、かなり力を入れて調査研究をいたしました。そして、ヨーロッパ大陸の都市を研究するなどすることによって、地方力の推進要因って何だろうということを研究したわけであります。ここに、十ページ目のところに載せておりますように、経済的な多様性だとかあるいは生活の質だとか、こういうものがやはり総合的に備わっていかなければ、地域力がなくなり、地域の魅力がなくなり、人が出ていき企業が出ていく、競争に勝てないと、こういうような調査結果を出しました。
 そこで、重要なことは、十一ページに書かせていただいておりますように、いわゆる経済と社会、この二つの要素が地域力を支える両輪だということでございます。つまり、その両者の要素の相乗効果によって地域の力が付いていくと。ですから、今までのように純産業政策的な、補助金を提供するとかあるいは企業誘致のために税の軽減を行うとかといったような純産業政策的なやり方では地域の力というのは大きくならないんだということがこの研究から出てまいりました。
 よく最近では、いわゆる内発型の発展と、このように言われているのは、企業を誘致する、あるいは公共投資を呼んでくるということに期待したいわゆる外発型の地域の活性化、これはインパクトとしては重要なのでありますけれども、それをいかに内発型に変えていくかというところを議論していかなければならないというのが内発型の発展でございます。
 十二ページ。これはOECDのレポートに書かれているものをまとめたものでございます。つまり、国土政策、地域政策のパラダイムが大きく変わってきているんだということがもう明らかだというのがこのレポートの結論でございます。
 新しいパラダイムでは、古いパラダイムが弱いところを何とかかさ上げするというような政策であったものが、地域競争力向上のために全地域を対象にして地域のポテンシャルの掘り起こしをやろうと、これが新しいパラダイムだというようになりました。そのためには、支援の地理的範囲を行政区域という単位から経済活動という機能上の圏域単位に変えていかなきゃいけない、こういうことも言われております。部門別アプローチ、つまり縦割りのアプローチから総合的な開発プロジェクトあるいはアプローチに変えていかなきゃいけない。
 そこで、じゃ、その実施主体は誰なんだという具合に考えたときに、これは、今までは中央政府が中心になって地域の活性化あるいは地域の下支えをやっていたけれども、これからは、国は国の役割を果たす、広域自治体は広域自治体の役割を果たす、基礎自治体は基礎自治体の役割を果たすというように、複数の段階の政府がパートナーシップを築いて地域の活性化をしていかなければならないというのが新しいパラダイムだというように認識が深まってきております。
 そこで、十三ページを御覧いただきたいと思いますが、自治体が、じゃ、どのような役割を果たしていけばいいのかということでございます。
 まず左側から申し上げますと、いわゆる財政収支のバランスを何とか改善したいというのが今の地方自治体の最大の緊急課題でございます。しかしながら、財政収支のバランスが実現したら住民がハッピーになるのかというと、実はそうばかりとも言えない。そこで大事なのは、財政収支のバランスもさることながら、いわゆる最少の経費で最大の効果を上げなければならないという、地方自治法に規定されているまさに民間企業経営的な自治体経営をしていかなければいけない。これが次の課題として自治体経営が重要だというように言われてきております。
 しかしながら、私は、この自治体経営すらもう時代遅れだと思っております。つまり、自治体経営というのは、現行の行政の守備範囲を前提にして、それを最少の経費で最大の効果を上げるということを考えていかなきゃいけない。しかしながら、今や、地域の課題を民間部門や他の地域と協力して解決をしていく、そして地域力の強化と魅力の向上を図るということが地域の大きな課題になっていると。
 だから、自治体経営ではなくて、地域経営であったり都市経営というような発想でなければいけない。そのためにも、他の地域、民間を巻き込んでパートナーシップを築いて地域づくりをやっていく。それはまさに、今までは地域というのは民間の経済活動の入れ物でございました。この入れ物をどうやって修復をしていくかというのが大きな課題であったわけでありますが、今や地域や都市というのはプロダクト、つまり製品、商品だと。つまり、それを総合的に売り出していけるかどうかというところが、このグローバル時代にその地域が勝ち残れるかどうか、維持できるかどうかというところだという具合になります。
 そうすると、自治体の役割というのは、今までは自治体はガバメントとして考えられておりましたけれども、これからはそういう自治体だけではなくて、いろんな主体を巻き込んだ形で考えていかなければならないとするならば、これを、ガバナンスをどのようにしていくのか、あるいはマネジメントをどうするのかというところにもう視点が移ってきているという具合に思います。
 ちょっと飛ばしてまいります。十五ページを御覧いただきたいと思います。
 時代がたつにつれて、そもそも自治体の役割というものが、あるいは自治体の行動原理が管理主義的であった。つまり、行政サービスを提供するという、こういう目的の中でむしろ管理をする、土地利用計画についてもできるだけ管理をするといったようなやり方であったものが、今や、地域をプロダクトとして捉えるということになりますと、やはり企業家主義的な行動をしなければいけないと。そのためにも公民連携と地域連携、この二つを同時に実現をすることによって、自治体だけではなくて民間も巻き込んだ形で地域のプロダクトとしての価値を高めていかなければならないということでございます。
 十八ページを御覧いただきたいと思います。
 連携がこれからの私はキーワードだと思います、地域連携、公民連携。しかしながら、この連携にも様々なレベルがございます。研究者によっては、日本の場合にはパートナーシップだとか連携だとかという場合は連携なんですけれども、英語でいきますと、ネットワークだとかコーディネートだとか、あるいはコーポレートだとかコラボレートだとか、このように連携の中身が随分違う、そういう表現がございます。
 今までの日本の連携というのは、どちらかといいますとネットワーキングあるいはコーディネーティング。だから、例えばイベントを共同で開催しましょうとか、情報のやり取りをしましょうとか、時々意見交換やりましょうとか、あるいは一部事務組合のような形で行政サービスを共同で提供しましょうと、これはまさにコーディネーティング、せいぜいコーポレーティング。これからの連携というのは、公民も地域間もいわゆるコラボレーティングでなければいけない。つまり、相手側をもっと幸せなものにするために自分たちはどのように行動していかなければいけないのかということをお互いに考えながら連携をしていくというのがコラボレーションでございます。こういう時代にもう入ってきているのではないかという具合に思います。
 そこで、イングランドで今地域連携、公民連携の動きが非常に活発化しているというお話を残った時間でさせていただきたいと思いますが。
 このシティーリージョン政策というのは、前労働党政権の時代から、先ほど申し上げましたような、イギリスの都市の力が弱くなっている、ロンドンは別にして、他の地域の都市の力が弱くなっている、これを何とかしなきゃいけないということで、今までの行政区域単位ではなくて、核になる都市とその周辺を含めたいわゆるシティーリージョンという単位で様々な政策、これはとりわけ経済の活性化にターゲットを絞った政策、これをシティーリージョンでやろうということが言われました。そして、新しい今連立政権に変わっておりますけれども、このシティーリージョン政策はそのまま引き継がれております。
 次に、新しい連立政権の改革でございます。
 二十ページ。リージョナル・ディベロップメント・エージェンシー、これ日本語で訳しますと地域開発公社という具合に訳していることが多いわけですけれども、労働党政権時代にいわゆる総合出先機関として国がつくった、それをもって地域の開発をやるということをもうやめようと。むしろ、連立政権は民の力を強くすることが最大の課題である、目的であるということで編み出したものがローカル・エンタープライズ・パートナーシップ、LEPでございます。このLEPは、もう既に御承知の先生方いらっしゃると思いますけれども、政権ができてすぐに地方の代表あるいは経済界の代表に手紙、書簡を送っているんですね。そして、もう短期間の間にシティーリージョンを対象にしてLEPの計画のフレームワークをつくれというようなことの要請をいたしました。そして、その要請に応えたところに対して様々な地域開発のインセンティブを与えていくと、こういうやり方を連立政権が取りました。
 そこで私はすごいなと思ったのは、このLEPのガバナンスをどうやってやるかというところで、ボードをつくるわけです。そのボードをつくるときに、自治体の代表者と同数の民間の経済人を委員にすると。そして、座長はビジネスパーソンが務める、原則ビジネスパーソンが務める。その中で、いわゆる戦略をつくり、そしてインフラの優先順位をつくっていくと。こういう役割を果たすのがLEPでございます。
 ちょっともう時間がなくなってまいりましたので、東京一極集中を抑える勇気も必要というのは、これはちょっと後ほどお話をさせていただければという具合に思います。
 そこで、いわゆる分権国家というところが今ヨーロッパではキーワードです。今までの地方分権というのは、どちらかというと現在の行政の守備範囲の中で、補完性の原理だとか、より効率的な住民のニーズに合ったサービスを提供していくということが地方分権の目的だという具合に言われておりました。しかしながら、最近では地方分権と地域の活性化、経済力、魅力、こういう関係の中で地方分権が捉えられているというのが一般的になってきております。
 二十四ページを御覧いただきますと、これは二〇〇九年度の労働生産性の国際比較をしたものでございます。ここに日本の各地方の労働生産性を挿入をしております、購買力平価を使ったものでございますけれども。左側で労働生産性の高いところ、ルクセンブルクだとかノルウェーだとか、アメリカはちょっと別にして、北欧の国々が非常に生産性が高い。この北欧に位置する国々というのは、国民負担率が非常に高い国であります。にもかかわらず労働生産性が高い。
 一体これはどこに秘密があるんだろうというふうなことを考えたときに、様々な理由があります。その一つは、北欧というのは分権国家だと。そして分権国家ということは、つまり実験ができやすい国家だということなんであります。人口九百万余のスウェーデン、それを分権をする。分権をした地域ごとに実験をすると。これ、日本の場合だったら、やはり実験をしたときに一億二千万、三千万の人口に影響を及ぼすことになりかねませんから、やはりなかなか実験ができにくい。だから特区でやろうという話になります。しかしながら、分権国家は実験ができる。といったようなこともいわゆる小国が一人当たりの生産力が高くなっている理由の一つだと私は思っております。
 二十五ページ、地方分権が進んだ国ほど経済的成果が大きい、これもアカデミックな研究成果の一つでございます。最近はこのようなことが研究されている。つまり、分権度が高くなればなるほど経済パフォーマンスが大きいということでございます。
 地方分権推進こそ地域の成長戦略ということで、二十六ページ、これはイギリスの政府が労働党政権時代にプロジェクトチームをつくった、そのプロジェクトチームの研究成果の中に書かれていたものでございます。
 地方分権は地方に対してより大きな自治と政治的な裁量を与え、それによってヨーロッパのダイナミックな都市や地域の多くのリーダーに対して、自らが新たな政治的役割を展開し、地域のための新たな経済戦略を展開させることになった。対照的に、地方分権が余り進まなかった国では、都市や地域の権限は小さく、経済の再構築に対して地方の対応力は小さいままであった。地域そしてその核を成す大都市を強化することが私は国民経済の再生につながるんだという国の強い認識が今求められているのではないかという具合に思います。
 イギリスでは、連立政権の樹立後、かなり積極的に地方分権、財源と権限の移譲が行われております。二十七ページにも書かせていただきましたように、元副首相のヘゼルタイン卿に、連立政権は、イギリスの経済力強化のための研究をしてくれということでプロジェクトチームを立ち上げてもらって、そしてレポートを提出をさせております。このレポートの中で八十九の勧告があります。その八十九の勧告のうちのかなりの部分は、地域への財源、権限移譲、地域の活性化が重要である、そのことがイギリス全体の活性化につながるんだというような調子が貫かれております。そして、この八十九の提案のうち、政府は八十一をそのまま実行するということを約束をしております。今現在、その約束が進行中だということでございます。
 以上であります。

発言情報

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発言者: 林宜嗣

speaker_id: 33482

日付: 2014-04-16

院: 参議院

会議名: 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会