辻琢也の発言 (地方創生に関する特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○辻参考人 本日は、地方創生に関する特別委員会におきましてお話しできる機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私は、行政学、地方自治論を専攻しております一橋大学の辻でございます。本日は、よろしくお願い申し上げます。
 まず、まち・ひと・しごと創生法案を中心にお話しします。
 私は、現在の日本にとっての最大の危機の一つは人口減少であると考えております。高度成長期やそれに続く安定成長期におきましても、過疎や辺地といった条件不利地域は人口減少に悩ませられてきましたが、地方圏全体や地方都市においては、人口の自然増加に支えられて、一定の人口水準を維持することができました。
 しかし、今後は、死亡者数が出生者数を大幅に上回る、人口の自然減少の時代となります。これまでは人口を維持できていた地方都市や地方圏全体でも、著しく人口減少が進むことが予想されます。現時点では、日本全体の総人口が、約五十年後には現在の三分の二程度、百年後には現在の三分の一程度にまで減少することが予測されております。人口減少は日本全体にとっての喫緊の課題であると思います。
 先ほども言及がありましたが、実際、ある民間機関の調査は、半数の市町村が消滅可能性都市であると指摘をしました。また、この調査結果はさまざまなメディアで広く取り上げられるなど、今後の地方のあり方を強く問われる状況となっております。こうした警鐘を、よい意味で今後のまちづくりに生かすことが求められていると思います。
 今日の人口減少問題は、出生率の低下に伴う人口の自然減少に起因するものです。そして、出生率が最も低い東京圏に相対的に出生率の高い地方圏から人口が流入することによって、日本全体で人口減少がさらに進むと同時に、人口の社会減少と自然減少が同時進行する地方圏において人口減少問題が顕著になります。
 したがって、地方圏から東京圏への人口流出に歯どめをかけ、今でも相対的に出生率の高い地方から、出生率をさらに高めていくという政策が最も効果的であると考えられます。
 今回は、人口減少に歯どめをかけることを初めて明記した画期的な法案であると思います。そして、この画期的な法案が、総人口のピークを若干過ぎたばかりの現時点で早くも提起されているという点に御留意いただきたいと思います。
 かつて、過疎に歯どめをかけるために過疎法が制定されました。過疎地域の自治体にとっては、今日に至るまで、過疎債は最も強力な事業手法の一つです。しかし、過疎法が制定された一九七〇年は、歴史的に振り返りますと、既に農村から都市へという人口移動が大きくピークを過ぎた時期にあり、やや遅きに失した感があります。
 これに対して、現時点で懸念されている人口減少や超高齢化は、今後、さらに加速度的に進行することが予測されています。今であれば、まだ、レトロアクティブではなく、プロアクティブな対策が可能であると考えられます。時期を逸することなく今回の法案が提出されましたことは、後世、高く評価されるものであると私は確信しております。
 出生率の回復は、政府の政策によっては困難との見方もあります。しかし、フランスは、半世紀以上の長い時間をかけて、じっくりと出生率の回復を図り、今や二%程度の水準を確保しております。また、スウェーデンは、経済的支援等を充実した結果、一九九九年の一・五から二〇一〇年の一・九八へと劇的に合計特殊出生率を回復させています。出生率の回復は、決して実現不可能な政策課題ではないと考えております。
 ただし、仮に劇的に出生率が回復に転じたとしても、一定程度の人口減少は避けられません。医療、福祉を初めとする日常生活の基盤となるサービスを確保していくためには、法案第二条第二号にあるとおり、その需給を長期に的確に見通した上で、地域住民の負担の程度も考慮し、事業者や地域住民の理解と協力を得ながら、改革を進めていくということが重要になります。
 さらに、人口減少社会において、住民サービスの提供を効果的、効率的に行うためには、あらゆる局面において、地方公共団体間の連携が重要となってきます。法案においては、その趣旨を第二条第六号で定めており、この点も評価できます。
 ところで、今回の法案は、国に、まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定を求めており、それは五カ年計画とされています。人口減少克服や地方創生は構造的な課題であり、その達成のためには、効果の高い取り組みを継続的に実施することが必須です。
 人類史上かつてない超高齢大国となる日本が、今後、高齢化が進む各国の先進事例となるためには、しっかりとPDCAサイクルを回して、関連施策の検証と改善を不断に行い続けることが必要です。この点も今回の法案には明示されており、高く評価できます。
 ところで、超高齢社会において地方創生を図るためには、単にリスクと責任を地方に押しつけるのではなく、国を挙げて、国も一緒に取り組むことが必要です。その際、各地域にはそれぞれの特性があり、その特性を踏まえて、地方と国が一体となって取り組むことが肝要です。国が一方的に方向性を示すということではなく、地方の声を積極的に聞きながら対策を検討していかなければなりません。
 さらに、今回の法案は、国とともに、地方にも総合戦略の策定を求めています。この地方版総合戦略は、地方創生のかなめであると思います。地方の提言を受けた国の制度の改善や、規模が小さい自治体への体制面での支援など、地方の創意工夫を生かすための支援策も欠かせないものと考えられます。
 法案は、市町村に関しては、総合戦略の策定について努力義務を課しています。これには、国からの適切な情報提供や支援が必要です。特に、規模の小さな市町村には人的支援も含めたバックアップ策を国が講じていく必要があると私も考えております。
 以上、まち・ひと・しごと創生法案は、地方への人口流入と出生率の回復を前提に、個性あふれる地方の創生を求めるものです。このためには、縦割りの所管争い意識を超えて、国と地方が一丸となって継続的に取り組む必要があります。このことから、まち・ひと・しごと創生本部を法定設置し、内閣を超えて長期間、継続的に推進できる政府体制を整備したことにも大きな意義があるものと考えます。
 さて、まち・ひと・しごと創生法案は、創生の基本理念や政策推進の体制等の基本的な事項を定めるもので、これに続き、各種支援策が法制化、具体化されていくことが期待されています。そして、その一つが、本日提案されているもう一つの地域再生法改正案にほかなりません。この二つは相互に補完しながら、地方創生という課題に取り組むことになります。
 さかのぼって言えば、地域の取り組みを国が後押しするために設置された地域活性化の推進に関する閣僚等会合が本年五月に三十三件の先進的なモデルケースを選定しました。私もこの選定作業の一端にかかわりましたが、各省庁の縦割りの支援策に地方、現場の目線から横串を刺すという役割を一定程度果たすことができました。
 こうした地域政策のプラットホームの実績を生かし、意欲ある地域を政府一体となってさらに強力に支援する仕組みを構築する必要があると私は切に感じています。
 現在の制度では対応できないすき間を埋めてほしい、各省所管の地域活性化の関連計画を各省ばらばらではなくワンストップで運用できるようにしてほしい、事業実施に当たっての各省との協議がまとまらないときにどこかで総合的に調整してほしい、こういった地方の切実な願いに的確に応えていくことが必要です。
 この点に関して、地域再生法改正案は、大きく二つの点を提起しています。
 一つは、認定・提出手続のワンストップ化です。地域再生計画に記載し認定を受けることによりまして、中心市街地活性化基本計画、構造改革特別区域計画、産業集積形成等基本計画と地域再生計画を同時発効させることができます。また、地域再生計画に記載することによって、都市再生整備計画、立地適正化計画、地域住宅計画、農山漁村活性化計画、広域的地域活性化基盤整備計画、地域公共交通網形成計画、観光圏整備計画と地域再生計画の認定申請とを一括で提出できるようになっております。
 今日、ともすれば、ふえるばかりの支援メニューに、そのための計画策定ばかりに地方が追われがちになる可能性があります。これに対して、地域再生計画は、そのワンストップ化を図ろうというものです。単に行政事務コストの削減につながるばかりではなく、住民にわかりやすく情報提供を図るという意味でも私は評価すべきであると考えます。
 さらに、高いハードルを越えて地域再生に取り組む地方公共団体への支援を強化することも考えなければなりません。必要とされるのは、財政的支援ばかりではありません。内閣総理大臣が地方公共団体からの照会や提案を一元的に受け付けるとともに、事務の調整や勧告を行うなど、国が地方の声に耳を傾け、その自発的な取り組みを政府一体となって支援する仕組みが必要であり、そうした地方創生を進めるための重要な環境整備を行うというのが今回の改正案の骨子であると受けとめております。
 以上、世界で先頭を切って超高齢化に取り組む日本に必要不可欠な今回の二つの法案が成立しますよう、改めて切にお願い申し上げまして、私の意見陳述を終わりたいと存じます。
 本日は、御清聴いただきまして、ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 118704773X00620141030_004

発言者: 辻琢也

speaker_id: 34451

日付: 2014-10-30

院: 衆議院

会議名: 地方創生に関する特別委員会