岩永裕貴の発言 (本会議)
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○岩永裕貴君 維新の党、岩永裕貴です。(拍手)
初めに、地震、火山噴火、水害そして土砂災害など、近年頻発している自然災害によりとうとい命を亡くされた方々の御冥福を心よりお祈り申し上げます。また、もとの生活を取り戻そうと多くの困難に立ち向かわれている被災者の方々にお見舞い申し上げます。
私の生まれ育った滋賀県甲賀市信楽町多羅尾という山奥の小さな集落は、昭和二十八年、局地的な豪雨に襲われ、当時、山津波と言われた土砂災害により四十四名もの命が奪われ、約四割の家屋が全半壊したという大変悲しい厄災を経験した地域です。約七十年が過ぎた今なお、その爪跡は住民の心に深く残されています。
また、先月には、広島市の土砂災害現場を訪れ、筆舌に尽くしがたい状況を実際に目の当たりにいたしました。
我が国は、国土の約七割が山地という特有の地形を持ち、過去に山が崩れてできた平地に多くの国民が住んでいるという事実を直視し、改めてこれからの国土づくりに取り組んでいかなければならないと痛感をいたしました。
今後も必ず発生するであろう自然災害から、一人でも多くの命を守り抜かなければならないという使命感を持って、以下、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案に関する質問をいたします。
土砂災害防止法は、一九九九年六月に死者三十一名を出した広島市などで起こった土砂災害の翌年に制定され、二〇〇一年四月一日から施行されました。
しかし、本年八月の広島市の災害地域は、大半が警戒区域外で、避難勧告も遅かったという結果を鑑みると、十五年前の教訓は、大変残念ながら十分に生かされなかったと言わざるを得ません。
警戒区域に指定されれば、市は、地域防災計画をつくり、ハザードマップの公表をしなければなりません。しかし、広島市の場合は、特別警戒区域指定予定ではありましたが、住民説明会の前に災害が起こってしまいました。
そこで、警戒区域の指定を促進し、住民への円滑な情報提供のためにこのたびの法改正となったわけでございますが、今回の法改正では、基礎調査に関する改善しか行われておらず、肝心の土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域の区域指定そのものについては、何ら手だてが講じられておりません。
基礎調査結果の公表だけでは、その結果をどのように防災に役立てるのかは、最終的に住民任せという中途半端な情報提供に終わってしまう可能性があります。
区域指定されれば、不動産取引の重要事項説明に含まれるようになりますし、地域住民の意識、認識の醸成や、命を守り切るという観点からは、あくまで区域指定が本筋であると考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。
次に、警戒区域の指定のおくれについてお尋ねいたします。
法律施行より十三年が経過いたしましたが、土砂災害警戒区域と特別警戒区域の指定が完了しているのは、わずか三県。土砂災害警戒区域のみの指定を終えた三県を加えても、指定ができているのはわずか六県にとどまっております。
一方で、区域指定が年間二百件ペースで、大幅におくれている都道府県があるのも明らかであり、これを放置していては、二十八年度末までに区域指定を全国四十六万カ所にするという、社会資本整備重点計画に書かれた国の数値目標は、到底達成することができません。都道府県への是正要求は、基礎調査だけではなく、区域指定のおくれにこそ行うべきではないでしょうか。
国の目標達成が危ぶまれるペースであることがわかった場合、都道府県の区域指定を加速するために、国として具体的にどのような対策を講じるのか、お伺いいたします。
平成二十三年の政策レビューの結果を見ると、都道府県の基礎調査が進まない理由として、一地域で約二十万円から四十万円もの費用がかかるとされる予算確保ができないことを挙げる都道府県が最も多く、次いで、マンパワーの不足といった理由が主になっております。
このたびの法改正で、そうした予算不足、マンパワー不足といった都道府県の現状をどのように改善されていくおつもりなのか、あわせてお伺いいたします。
警戒区域を指定するには、都道府県の基礎調査が前提となります。基礎調査が既に終わっているのに、警戒区域の指定に至っていないケースが非常に多くあると言われています。
政策レビューでは、市町村が警戒区域の指定に反対する最も大きな理由として、住民が反対しているが六〇%を占めております。
法律の附帯決議では、住民との調整をして指定を行うことになっており、住民の方々の理解は、自分たちの住環境にかかわる非常に大切なことだと思います。
しかし一方で、不動産価値が下がる、風評被害への懸念などの理由から、住民の方々は警戒区域指定を望まれないケースが多々あり、区域指定がなかなか進まないことがうかがえます。
こうした状況を打開するための方策をどのように考えておられるのか、大臣の御見解をお伺いいたします。
次に、指定の基準の見直しについてお尋ねいたします。
広島の災害では、特別警戒区域に指定することを想定していた区域以外でも災害が発生しました。現在は、斜面の勾配や地質などを決められた計算式に当てはめ、機械的に警戒区域に指定する手法で行われておりますが、この基準自体の見直しを広島県は求めておられます。
より現実に即し、的確に災害の発生に備えることができるように、指定の計算式の見直しは行われているのか、お伺いをいたします。
また、土砂災害防止法は、土砂崩れなどの自然災害による被害を防止するための法律ですが、近年、地域住民の生命と財産を危険にさらしているのは、自然災害だけではなく、人為的に積み上げられた建設残土が崩落することによっても大きな被害が発生しております。例えば、本年二月に大阪府豊能町で発生した土砂崩れは、民間事業者が積み上げた建設残土が崩壊し、幅約二百メートル、高さ二から三メートルにわたって府道を覆い尽くしました。
今般の土砂災害防止法改正案や、いわゆる急傾斜地崩壊防止法は、自然の地形を念頭に、土砂災害による被害を最小限にするため制定されておりますが、人為的な土砂の積み上げ等には何らの規制も存在せず、全く法益の異なる砂防法や森林法を援用しながら何とか対処しているのが自治体の現状でございます。国における所管関係も明確ではなく、結果、対応が後手に回りがちな状況になっています。
人為的な土砂の埋め立てや掘削等一般を規制する法律が存在しない中では、再び同じような人災が起こる蓋然性は小さくないと考えます。特に、リニア中央新幹線の建設や外環道といった大規模土木工事が本格化する前に、積み上げた建設残土が大雨などで崩れる事故を防ぐことは喫緊の課題であると考えます。
こうした建設残土の埋め立て等を背景とする土砂災害の防止について、大臣の見解を伺います。
次に、移転勧告制度についてお尋ねいたします。
特別警戒区域における移転勧告制度について、これまで勧告が行われた実績は一度もなく、勧告の対象となるのかどうかの調査すら行われておりません。今回の法改正では、この課題についての改善が含まれておりません。
移転をみずから希望する住民に対する補助制度については、これまでのところ六十件の実績がございますが、法律にある勧告を行わなければ、当初の立法趣旨をないがしろにしていることになるのではないでしょうか。特に、移転勧告すべき危険な住居があるかどうかの調査すらしないのは、国民の安全に無責任であるとのそしりを免れないと思います。
本年八月二十八日に開催された災害対策特別委員会で、この指摘に対して政府は、調査については、その方法がどういうものがあるかということをしっかり検証して進めてまいりたいと答弁をされております。その調査を促進するという答弁が本改正案にはどう反映されているのか、お伺いをいたします。
続いて、危険地域からの移転と農地転用の関係についてお尋ねいたします。
私の地元の滋賀県近江八幡市には、県が指定する土砂災害警戒区域と土砂災害特別警戒区域が計百五カ所あります。広島市で発生した土砂災害を受けて、これまでの市の防災の中心は水害と地震だったが、土砂災害も加える必要があると、危険性の高い地域は、市が補助や土地の準備を行って転居を促す条例の検討に入りました。
法の施行以来十三年、全国で一度も移転勧告が行われてこなかったことを鑑みると、地域住民の命を守り切るんだと覚悟を決められた近江八幡市の行動は、非常に勇気あるものだと考えます。ただ、同市が現在直面している課題は、移転を促す平野部の市街化区域に移転先となる宅地が残されていないという現実であります。
今後は、農用地区域の転用が必要になってきますが、これまでの経緯を踏まえると、農用地区域の転用については非常に多くの条件を乗り越えなければなりません。国内自給率向上に向けた農地保護の必要性は十分に理解をいたしておりますが、農地を守って命を守らずということにならないよう、こうした移転の必要性がある地域に対しての農地転用の許認可の柔軟性、手続の簡素化、短縮化が必要だと考えます。
今後も全国的にこのような事例が少なからず出てくる可能性は十分に考えられます。農林水産大臣の御見解をお伺いいたします。
最後に、災害対策と都市計画の観点から政府の方針をお尋ねいたします。
広島で大規模な災害地域となった八木地区は、七〇年代に市街化地域に指定され、高度成長の中で住宅化が加速していった背景を持つ地域です。
こうした地域で、住民の理解のもとに土砂災害の警戒区域に指定するのは、調整上難しい面もあるかと思います。実際に、広島県も、基礎調査に取りかかって九年がたって、やっと住民への説明会のところまで来ていたやさきに、今回の災害が起こってしまいました。
しかし、今や、高度成長期とは多くの面で状況が異なっております。
少子高齢化、インフラの老朽化、自治体財政の悪化という社会の変化に加えて、昨今の異常気象のもとでは、今まで安全だからといって今後も安全だという経験則は通じなくなっている状況にある中で、安全を最優先し、危険地域から移り住むことを促し、インフラ強化地域を選択していけるような仕組みもしっかり検討されなくてはなりません。それはまさに、国交省が進めているコンパクトシティーの発想にもつながることではないでしょうか。
広島市は、このたびの災害を受けて、都市づくり全体を踏まえた復旧復興ができる制度、法律をつくるべきとの要望をされているとお聞きいたします。
土砂災害特別警戒区域の指定がされると、建築物の移転等の勧告ができるようになりますが、もっとスムーズな方法で、都市計画の見地から移住を促すような措置を検討していけないものか、大臣の御見解を伺います。
近年の世界的な気候変動は、日本にもこれまで経験したことのない災害をもたらし始めております。今まで何事もなかったから今後も大丈夫といった常識が今や通用しなくなりつつある現実を直視した上で、国民の命を守り抜くために実効力ある法整備に努めるべきであることを改めて申し上げ、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣太田昭宏君登壇〕