渡辺弘美の発言 (財政金融委員会)
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○参考人(渡辺弘美君) アマゾンジャパン株式会社の渉外本部長をしております渡辺弘美と申します。
本日は、貴重な機会をいただき、心より感謝申し上げます。
私からは二点申し上げます。配付資料はございません。一点目は、課税事業者番号がない中で、提供される役務の性質や取引条件等により消費者向け取引と事業者向け取引とを区別せざるを得ない場合に生じ得る問題点。二点目は、法律の施行時期についてでございます。
まず一点目です。
本法案では、国内において役務の提供を受ける者が消費者か事業者かを区別する方法については明らかにされておりませんが、平成二十六年六月二十六日の政府税制調査会において財務省から提出された資料では、事業者向け取引とは次のように定義されています。
事業者向け取引とは、電気通信回線、インターネット、電話等を通じてクロスボーダーで行う役務の提供など国内外にわたる役務の提供等のうち、提供される役務の性質や取引条件等から、役務の提供を受ける者が事業者であることが明らかなものをいう。これを受けまして、消費者向け取引については、提供される役務の性質や取引条件等から、事業者向け取引に該当しないものをいうと定義されております。
課税事業者番号の代替策としてこのような考え方を取らざるを得ない面があるのかもしれませんが、役務の性質や取引条件によって判断する方法では役務の提供を受ける国内の事業者が経済的に不利益を被るおそれがありますので、そうならないように、より丁寧なきめの細かい対応をすることを国会において御審議いただきたく存じます。
どのような不利益が生じるのか、二つの事例を取り上げて御説明いたしますが、これはアマゾンのサービス固有の問題ではなく、同様の役務を提供されている国外事業者にとっても共通の問題であると推察いたします。
最初の事例は、ソフトウエアのダウンロードやデジタルコンテンツの配信を国内事業者が利用する場合です。これらの役務提供は一般の消費者も利用されますので、役務の提供を受ける者が事業者であることが明らかなものとは言い切れず、提供される役務全体が消費者向け取引であるとみなされ、消費税が課されます。
本来であれば、役務の提供を受ける者が国内事業者であれば仕入れ税額控除の適用を受けることができますので、国内事業者に実質的な負担は生じません。しかしながら、先ほどの財務省の説明資料にはこのように記されています。
国外事業者が執行管轄の及ばない国外に所在することから、税務執行を通じて適正な申告納税の履行を促すことにはおのずと限界があり、結果として、納税なき仕入れ税額控除という問題を生じる可能性がある。こうした課税の公平を阻害する新たな事態を制度的に防止する観点から、国内事業者が国外事業者から受ける消費者向けの役務提供については、仕入れ税額控除を認めないこととする。
要すれば、国内事業者が国外事業者からワープロや表計算のソフトウエアのダウンロードをする場合には、消費税は課されるが、仕入れ税額控除は認められないというわけです。
一方で、現行法下では、国内事業者が国内の事業者からソフトウエアのダウンロードをした場合には、消費税は課されますが、仕入れ税額控除が適用されます。また、国内事業者が国外事業者からパッケージに入ったソフトウエアを購入する場合には、消費税は課税されますが、仕入れ税額控除の適用を受けることができます。
このように、国内事業者から見れば仕入れ税額控除の適用にそごが生じ、課税の中立性、公正性が担保されないような現象が起こり得ます。
このような仕入れ税額控除の適用の有無に係る問題を解決するために、例えば国内事業者が国外事業者からソフトウエアのダウンロードやデジタルコンテンツの配信を受けた場合には、消費税について記載のある国外事業者が発行する領収書を保管すれば仕入れ税額控除の利用が認められる仕組みにすることはできないものでしょうか。是非、国内事業者が消費者向けの役務提供を受ける場合の救済策について御審議をお願いしたいと存じます。
次の事例は、企業等の情報システムとして利用されるクラウドサービスに関するものであり、国内事業者にとってはより深刻な問題が起こり得ます。
ここではクラウドサービスの厳密な定義は避けますが、簡単に申し上げれば、コンピューターのリソースを、利用者の要求に応じてネットワークを通じて提供する情報サービスのことでございます。例えば、通常、個人がよく利用されるクラウドサービスの中には、趣味で撮影した写真を保存したり、記憶に残したい情報をスクラップブックのように保管したりするサービスがありますが、一方で、クラウドサービスの中には、民間企業、政府機関や教育機関などが、従来であれば自社でサーバーを調達しソフトウエアを導入して情報システムを構築していたものを置き換えるような、言わばプロ向けのクラウドサービスがあります。
このようなクラウドサービスは、その利用には一定の技術的知識が必要であるために、一般の消費者が利用することは通常想定されていません。しかしながら、これから起業を検討している情報科学を専攻している学生がこのようなクラウドサービスを利用する事例があるかもしれません。したがいまして、プロ向けのクラウドサービスであっても、その取引条件において、事業者しか利用できないような契約や約款にはなっていないのが通例です。
取引条件で事業者向けであることが明示されていない場合には、役務の性質から見て事業者向けかどうか判別することになると思われますが、これまで財務省からは、性質から見て事業者向け取引であると言えるための判断基準は示されておりません。かかる判断基準が不明確なままですと、各地の税務署による判断に違いが出るおそれがあります。
税務署の判断により、明らかに事業者向けであるとは言えないので消費者向け取引であると事実認定された場合、日本の中堅、中小から大手に至るまでの国内事業者が仕入れ税額控除を使えず、深刻な経済的損失を被るおそれがあります。さきの事例で取り上げましたソフトウエアのダウンロードやデジタルコンテンツの配信は数百円から十数万円程度の価格でしょうが、プロ向けのクラウドサービスの場合には数十億円レベルの情報システム投資になる場合もありますので、その消費税分が仕入れ税額控除できないとなりますと、国内の事業者の負担は決して無視できる規模ではありません。各税務署により判断の違いが出ないように、事業者向け取引と消費者向け取引の区別を公平、中立にし得る判断基準の整備の必要性について御審議をいただきたいと思います。
大変僣越ながら、具体的な判断基準として考えられるものを御提案させていただきますと、例えば、役務提供の広告等において事業者向けの表示がされている場合、役務提供に付随して事業を行うに当たり有益となる機能が付加されている場合、役務提供の利用に一定程度の専門技術的な知識を必要とする場合など、いずれかを満たせば事業者向け取引とみなすような運用が可能ではないかと考えます。
第二点目として、法律の施行時期について申し上げます。
本件、越境役務提供に係る消費税問題に係るこれまでの背景としては、来年十月に消費税率の引上げがなされる可能性もあるがゆえに、課税事業者番号が存在しない中での対応策を中心に早々に検討なされてきた面があると思います。報道によれば、二期連続のマイナスGDPの中で、来年十月の消費税率引上げを一年半延ばすことも検討されているようですが、御案内のように、法人番号が二〇一五年十月から各法人等に通知され、二〇一六年一月から利用されることが予定されております。法人番号の付番の対象ではない個人事業主についても何らかの手当てが必要ではないのかという議論もなされております。
仮に消費税率の引上げが延期されるのであれば、拙速に提供される役務の性質や取引条件等による対応策を採用することなく、国内外の事業者の負担軽減に配慮した上で、法人番号の利用の可能性も念頭に置いた越境役務提供に係る消費税問題の解決方法について丁寧な審議をされることが必要であるように思います。
なお、仮に提供される役務の性質や取引条件等による対応を前提とした法改正をされるのであれば、改正法の施行時期については、先ほど申し述べました消費者向け取引と事業者向け取引の区別に係る判断基準の提示など、所要の法令、通達が出された後、十分な期間を経てからの施行となるようにお願いいたします。
法令、通達の内容によっては、現在提供している役務取引を消費者向け取引と事業者向け取引に区分することが必要なものも出てまいるかもしれません。その場合、システム開発に掛かる期間や多数のお客様への周知期間を十分に取る必要がございます。現場での混乱が起きないように、施行時期についての御高配を賜れれば幸いです。
私からの意見陳述は以上でございます。