藤原悌の発言 (環境委員会)
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○藤原参考人 野村興産の藤原と申します。
まず初めに、きょうは、水銀に関する環境汚染防止法案、それと大防法の改正法案の審議の場で発言させていただけることを感謝いたします。
まず、弊社の事業について、お手持ちの配付資料にあります順に沿って説明したいと思います。
弊社の事業は、主に水銀含有廃棄物の処理を行っております。水銀含有廃棄物といいましても、一般廃棄物にもございますし、産業廃棄物にもございます。これらの廃棄物を全国各地から収集運搬、処分しております。
その際、脱水銀という処理を行うんですけれども、脱水銀した後の残渣を、またその中からさらに有用物を取り出して、ここに書いてありますとおり、肥料用原料や亜鉛原料、カレット、レアアース原料、地金等の製造並びに販売をしているというような状況でございます。
会社沿革については、まず、弊社については、本社は東京にございますけれども、主要事業所というのは、イトムカ鉱業所というところがございます。
イトムカ鉱業所は、北海道の大雪山の麓東側にございまして、以前は東洋一の水銀鉱山として栄えた場所でございます。イトムカという地名は、アイヌ語で光り輝く水、つまり水銀を意味する地名でございます。
鉱山は、昭和十四年に硫化水銀を含んだ辰砂を発見したのが始まりでございまして、その時代、水銀はその特異な性質からさまざまな用途に使われており、防腐剤、殺菌剤、医薬品また工業材料、多くの分野で利用されてきております。
しかし、一九五九年に水俣病は有機水銀が原因であることが判明したことをきっかけとして、国内では水銀を使用しないプロセスへの転換が進んだ結果、水銀の需要は激減、鉱石中の水銀濃度低下といった要因もあり、昭和四十八年に閉山し、鉱山会社である野村鉱業は解散しております。
しかし、同年、国内では、水銀触媒を使用したクロルアルカリ工業の運転停止指示命令が発令しました。製法転換後の水銀触媒や汚泥の処理並びに非鉄精鉱中に不純物として存在する水銀の処理を行う必要がありましたが、このような水銀を処理する工場は、住民反対などの立地の問題を含め、容易に建設できない背景もあり、各団体や行政機関からの強い要望もあって、同年、鉱山時代の製錬技術及び設備を買い取り、イトムカ興産、現在の野村興産として、水銀含有廃棄物処理業を開始しております。
創業当初は、先ほど言いましたように、非鉄製錬スラッジ等の汚泥の処理をしておりましたが、昭和五十五年代中盤に、地方自治体から排出される廃乾電池の処理が始まり、平成四年には、全国都市清掃会議から、使用済み乾電池の広域回収・処理センターに指定。そのころから、全国各地からの乾電池の受け入れ量が増加しております。
同時に、水銀を使用している廃蛍光灯の受け入れも始まり、現在は全国各地で廃棄される蛍光灯処理に対応するため大阪に蛍光灯の処理工場を建設し、二カ所の営業所と四十一カ所の収集拠点を持ち、現在に至っております。
水銀廃棄物についてですが、実際にどのようなものがあるかについては、配付資料にありますとおり、約二種類ございます。
まず一つは、水銀の特性を利用するために意図的に製品に使用したもの、これがライフサイクルを終えて廃棄されます。主に、電気機器、計器、電極、薬品、顔料、シールド材、あと、水銀を使用した工程から排出される水銀廃棄物がございます。
もう一つ、水銀を使用しない工程において、化石燃料や非鉄鉱石に付随した微量の水銀が濃縮されたもの、これは主に、火力発電、地熱発電、石油精製、清掃工場、また、天然ガス液化設備、非鉄金属、製鉄スラッジ、このようなものの製造工程から水銀が濃縮されてスラッジが排出されるというものがございます。
このような水銀汚染物の受け入れ量は、その下の表にあるような量でございます。
弊社においては、蛍光灯、ランプ類については年間八千トン程度、使用済み電池の廃棄物が一万二千トンです。そのほか、金属水銀が八トン、温度計、血圧計、圧力計が十五トン程度、水銀を含んだ汚泥、廃液その他が約七千トンということで、年間約二万七千トン程度の水銀含有廃棄物の受け入れがございます。
そこから抽出される水銀量としては、年変動はございますけれども、大体五十トン程度でございまして、その五十トンの水銀を販売しております。国内では約十トン、国外では四、五十トン程度の販売をしておりますが、その水銀の用途としては、ここに書いてあるとおり、水銀スイッチや圧力計、ポロシメーター、試薬、照明、電池、国内では伝統工芸とかそういうものに水銀が使われております。
そのような、約四十年間水銀廃棄物の処理をした中で、今回の条約の担保法案について、今までの経験から得た中で、いろいろな排出者の意見も聞いておりますので、少々意見を述べさせていただきたいと思います。
配付資料の一番最後に、一言、文章として書いておりますけれども、条約担保措置を行うに当たり、水銀の管理や規制等について不公平感のない合理的及び実行力のある対応をして、今まで築き上げてきた資源循環が滞ることがないようにすべきと考えております。
この文章一言なんですけれども、その中にはいろいろ意味がございまして、具体的には、まず、環境や健康リスクを防止するための法律でいろいろ検討がなされているところでございますが、それにもかかわらず、業種による対応に違いがあることに違和感を感じるところでございます。
また、水銀廃棄物のいろいろな管理はいろいろな規制がかかっているかと思いますけれども、現在の廃掃法については、なかなか国内における水銀廃棄物の実態に即していないところでございます。この秋までに政省令案等いろいろ検討がなされると聞いておりますので、その中で実態に即した改正がされていくことを期待いたします。
また、今、法案検討の中でいろいろな規制等の話を聞いておりますけれども、必要以上に過度の規制を行い、事業者への大きなコスト負担増加にならないことを期待します。
現在行われている非鉄スラッジ、電池、蛍光灯類の水銀回収のほかさまざまな資源回収が同時に行われており、資源の乏しい日本では重要な事業として考えております。このようなシステムは、他国にはない資源循環システムと考えております。このような資源循環システムが崩れることがないよう、今後も、事業者の意見を聞いて、政省令案の検討をしていただきたいと考えております。
条約によって、世界的な水銀の需要が少なくなり、現在売却されている金属水銀もいずれは廃棄物になることが予想されます。それが二年後か十年後になるのか百年後になるのかちょっとわからないですけれども。今の段階で、そのような処分のシステムというのを検討しているところでございますが、現在、廃棄物を処理する方法としては、バーゼルのガイドラインに基づき、安定、固型化方法について検討がなされているところですが、日本は欧米と比べて国土が狭く、地下の深い、四百メートル以下とかの岩塩坑もございません。また、地震や異常気象が多いことを考慮する必要があります。
水俣公害の経験から、国民の水銀に対するアレルギーというのが非常に強いと感じられます。それで、保管、処分場所確保の問題がございます。
水銀は、ダイオキシンやPCBのように分解してなくなるわけではございません。長期間水銀を処分するためには、十分な科学データによる検討が必要でありますが、それ以上に、処分場所の付近住民が安心できるような、国が積極的に関与する長期管理体制が必須であると考えますので、この点を考慮して今後も進めていただきたいと思います。
最後に、現在、一般的な生活の中で金属水銀を見る機会はほとんどございません。病院などで使用している血圧計や体温計に使用されているのを目にすることはありますが、それが水銀であることを知る人もほとんどおりません。
水銀は、人類にとって昔からとても身近な金属であり、日本の文化や工業を発展させ、また、水銀化合物のすぐれた特性を用い、薬品や農薬、防腐剤として多く利用され、たくさんの恩恵も受けておりましたが、しかし、人間が水銀の取り扱いを間違えたことで発生した水俣公害問題などの水銀中毒事故が原因で忌み嫌われる物質となり、国内の水銀需要は激減することとなりました。
それから六十年近くたった現在、水銀についての使われ方や取り扱い、廃棄方法について、正しく認識している人はほとんどいないと思います。現在、半数以上の自治体が自主的に行っている蛍光灯や電池の分別回収においても、なぜ有害ごみとして取り扱わなければいけないのかを理解している人は少ないのではないかと思います。
そのような中で、水銀使用廃製品の回収率を上げるため、法案では製品への水銀含有表示という対策も検討されているようですが、まずは、この水銀というものを個々人に啓発していくことが非常に重要だと思います。水銀に対して正しい知識を持つことが、水銀含有廃製品の取り扱いや廃棄方法、そして水銀の処分についての不安を少しでも取り除くことができるのではないかと感じます。
諸外国では、公共交通機関や不特定多数の方が出入りする場所、また、教育現場での啓発活動を官民で積極的に行い、回収率を上げている実績もあります。そのような取り組みについて、日本でも、その役割を自治体だけに任せるのではなく、国が率先して官民一体となる取り組みを行い、成果を上げることを強く希望します。
以上でございます。(拍手)