花井圭子の発言 (厚生労働委員会)

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○花井参考人 おはようございます。連合の総合政策局長の花井と申します。
 本日は、国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対しまして意見を述べる機会を与えていただきましたことに感謝申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
 法律案に対する意見を述べる前に、医療保険制度に関する連合の考え方を述べたいと思います。
 日本は、国民皆保険、強制加入で、全ての国民が安心して良質な医療サービスを受けることができる公的医療保険制度の構築を目指してまいりました。その方向性は今後も変わるものではなく、社会連帯に基づく公的な医療保険制度を維持発展させていかなければなりません。
 そのためには安定的な財源確保が必要であり、質の高い雇用の創出やワーク・ライフ・バランスの確保、短時間労働者への社会保険の適用拡大をさらに進めていくことが重要です。
 今国会では、労働者保護ルールの改悪法案が審議されようとしています。これは、労働者の働き方のみならず社会保障の安定化をも損ねるものであり、まことに遺憾であることを申し添えておきます。
 さて、医療費は毎年約一兆円ふえ続けています。今後も医療費が増加していくとすれば、ある程度の負担増は避けられないと思います。
 しかし、その負担増を受け入れるためには、制度への信頼と、保険料を支払う労使、国民、医療費を支払う保険者など、負担する側の公平感と納得感、国の丁寧な説明による合意形成が重要であると思います。そのような観点から、今回の法律案は、労使、被用者保険者の納得性が得られているとは到底思えません。
 以下、被用者の立場から意見を述べたいと思います。
 まず第一に、国民健康保険の安定化についてです。
 法律案では、安定的な国保の財政運営や効率的な国保事業の実施の確保、その他健全な国保運営について、二〇一八年度より都道府県が中心的な役割を果たし、制度の安定化を図るとされています。また、市町村は、地域住民と身近な関係の中で、資格管理、保険給付、保険料率の決定、賦課徴収、保健事業などの運営を引き続き担うとされています。この改革案につきましては評価したいと思います。
 理由は、次のような点です。
 仮に都道府県が保険料徴収を担うとすると、住民との関係が市町村ほど密接ではないため、収納率の低下が懸念されます。また、保険給付や保険証の発行など、加入者の利便性が悪化しかねません。保健事業につきましても、住民と密接でなければきめ細かな指導は難しく、健診率も低下しかねません。
 一方、所得水準の違いや小規模の保険者など、財政リスクを分散するとともに、地域医療構想など医療提供体制への積極的な働きかけを推進する観点からも、財政面は都道府県単位に広域化すべきと考えます。
 第二は、全面総報酬割の導入と、そのことによって生じる国庫補助の使い道についてです。
 全面総報酬割については、高齢化の進行で拠出金の負担増が避けられない状況にある中、被用者の保険者間の支え合いという観点からは所得再分配機能の強化が必要であること、また、短時間労働者への社会保険の適用拡大を推進していく上で加入者割では所得水準の低い保険者の負担が重くなること、これらの理由からやむを得ないと判断いたしました。
 しかし、被用者保険では、保険料収入に占める高齢者医療への拠出金の割合は平均で四割強であり、既に五割を超えている健保組合も多数存在しています。非常に厳しい財政状況になっていると言えます。
 これまで、保険料の引き上げや加入者の健康増進、医療費の適正化など、労使でさまざまな努力を積み重ねてきたにもかかわらず、財政の硬直化が進み、保険者機能の発揮が困難になっています。
 一方で、頻回受診や多剤投与の是正、重複投薬や残薬の削減、後発医薬品の使用促進、生活習慣病対策の強化など、国の医療費適正化の取り組みは不十分です。また、病床数は都道府県によって大きな地域差があり、病床数が多い地域ほど医療費も高いという傾向が見られます。この地域差の要因は、十分に解明されていないというふうに思います。
 加えて、大都市の国保を中心に、保険料を低く抑えつつ、法定外繰り入れで決算の補填をしている実態もあります。
 こうした課題への取り組みを抜本的に強化することなく、被用者保険にさらなる拠出を求めることについて、政府より納得できる十分な説明はされていません。
 そもそも、職域保険の被用者保険と地域保険の国保との間には、稼得形態、所得捕捉、保険料設定のあり方など、違いがあります。今回、全面総報酬割導入によって生じる国庫補助の多くを国保の財政安定化の財源とすることは筋違いであるというふうに考えております。国保に対する国の財政責任を被用者保険の負担増に転嫁するものであり、国費の肩がわりという以外にないかと思います。
 連合を初め、経団連、日商、健保連、協会けんぽの被用者保険関係五団体は、このような財源の捻出策は容認できないとする意見書を二回にわたり提出してまいりましたが、顧みられることはありませんでした。労使、保険者の意思が反映されないまま法律案が国会に提出されたことは、極めて問題が大きいと思います。
 連合は、この国費の肩がわりの撤回を強く求めます。
 第三に、紹介状なしで大病院を受診する場合に、患者に定額の自己負担を求めることについてです。
 定額負担については、二〇二五年の地域包括ケアシステムの構築という大きな目標に向けて、医療機関の機能分化を推進するためにはやむを得ないのではないかと考えます。
 ただし、患者が医療機関の機能分化に対応した受療行動に変えるためには、いわゆる家庭医などのような医師を身近で選択できることが必要です。そのため、家庭医などに関する情報提供のあり方を早急に検討すべきであると思います。
 第四は、被用者保険の標準報酬月額の上限引き上げについてです。
 医療保険制度の給付額は、保険料負担に比例していません。そのため、納得性を確保する観点から、際限なく徴収することのないよう、標準報酬に上限が設定されています。
 現在は、二〇〇六年改正で定めた政令による上限改定ルールの条件を満たしていません。にもかかわらず、法改正をしてまで上限を引き上げることは、社会保険としての信頼を失うことにつながりかねず、賛成することはできません。
 第五は、協会けんぽについてです。
 協会けんぽには、中小零細企業で働く人が多く加入しており、財政基盤は脆弱です。今回、国庫補助率を一六・四%で当分の間維持することは評価いたしますが、本則の下限を一三%に引き下げることに合理的な理由は見当たりません。
 また、法定を超過する準備金残高に応じて国庫補助を削減するとされていますが、これは保険者機能の発揮を阻害するものです。
 第六に、被保険者の所得水準が高い国保組合への国庫補助は廃止すべきと考えます。ただし、所得水準の低い国保組合に対しては一定の国庫補助を行うべきと考えます。
 第七に、患者申し出療養についてです。
 まず、保険外併用療養は、患者の安全性確保を最優先に、保険収載を前提とし、低所得者が排除されない仕組みとすべきです。そのため、安易に保険外併用療養を拡大すべきではないと考えます。
 その上で、患者申し出療養については、当初、昨年の規制改革会議では、保険収載を前提とせず、国の審査もないまま、混合診療を可能とする選択療養という仕組みが提案されました。その提案に比べますと、患者の申し出療養は、保険収載を目指すとされ、国の審査も関与されますので、改善された提案と受けとめております。
 ただし、患者の安全性を最優先に確保する観点から、さまざまな懸念を解消するべきと考えます。
 まず、審査についてです。患者申し出療養として初めて行う医療の場合、国が原則六週間で審査することになっています。短期間かつ持ち回りによる審議も可能とされていることから、十分な審査体制と審査の透明性の確保が不可欠です。また、前例ができた場合は、臨床研究中核病院が原則二週間で審査すること、国の関与がないというふうになっていることについて疑問が残ります。
 また、患者申し出療養に関するさまざまな医療機関の名称が出されておりますが、その役割と施設基準を明確にする必要があると考えます。
 さらに、実施状況の定期的な報告は、年一回ではなく年に数回は行うべきではないでしょうか。
 そして何より、広範な副作用被害や医療事故などの有害事象が発生した場合における国、医療機関、企業の責任を明確にする必要があると思います。患者の申し出が起点であることを理由に、責任の多くを患者が負うことのない仕組みとすべきです。
 同時に、患者が安全性、有効性を十分に理解した上で自己決定ができるよう、患者の申し出段階から医療の実施段階まで、医療機関における十分な情報提供と相談体制を確保すべきではないかと考えます。
 最後に、幾つかの要望を述べたいと思います。
 まず第一に、今後も高齢化が進行していく中で、現行の高齢者医療制度では、現役世代からの高齢者医療への拠出金はますます増加することになります。根本的な解決のためには、高齢者医療制度の抜本改革が必要と考えます。ぜひ今法律の検討規定に盛り込むよう要望いたします。
 また、二〇〇二年の健保法改正で三割負担の導入が審議された際に、附則の第二条に、「被保険者及び被扶養者の医療に係る給付の割合については、将来にわたり百分の七十を維持する」ということが規定されました。これは今後とも堅持すべきであると考えます。
 今回の法律案の検討規定に、「医療保険の保険給付の範囲」という文言が盛り込まれています。これが、二〇〇二年改正の附則を見直すという意味であれば、この検討規定からは削除するよう求めたいと思います。
 今回の法律案には、多岐にわたる内容が盛り込まれています。国民皆保険を堅持し、将来にわたり持続可能な医療保険制度を確立するためには、労使、保険者の納得を得ることが不可欠です。
 そのために、今国会において丁寧な審議が行われるよう要望いたしまして、私の意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 花井圭子

speaker_id: 34011

日付: 2015-04-23

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会