寺内順子の発言 (厚生労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○寺内参考人 よろしくお願いします。
 私は、大阪社会保障推進協議会という大阪の社会保障運動団体の事務局長をしております、寺内と申します。
 この仕事を二十五年間やってまいりました。
 国民健康保険に関しては、大阪府、そして、大阪には四十三市町村があるんですが、その国保課長さん及び担当者の皆さんと毎年毎年くまなくお話をさせていただきました。
 それから、無保険の子供解消のための国保法改正の折には、二〇〇八年に私どもが行いました自治体調査の結果で、大阪に無保険の子供たちが二千人いる。この当時は、資格証明書発行世帯に未成年の子供が何人いるのかという調査をさせていただいたわけですが、その発信をしたことが端緒となりまして、マスコミが動き、そして自治体や厚生労働省も独自に調査をしていただきまして、そして法改正が行われました。現在は、十八歳まで、親の保険料の滞納に関係なく、子供たちには六カ月以上の国保証が発行されており、命が守られていることに対して、国会議員の皆様方に厚く御礼申し上げたいと思っております。
 本日は、国保の都道府県単位化により貧困世帯の状況がより悪くなる、そういう視点で、そして加入者の立場で反対意見を申し上げたいというふうに思っております。
 私が本日申し上げたいのは三点です。
 一つ目には、現在の国保料が限界を超える高さであるという実態、二つ目に、都道府県単位化では、この国保料は下がることなく、上がる可能性があるということ、三点目に、高過ぎる国保料だから滞納が起き、無理やり徴収しようとして、さらに違法な差し押さえが起きてしまうという、その三点です。
 一つ目です。前提としてですけれども、現在の国民健康保険制度は、一九六一年、昭和三十六年に、皆医療保険、つまり、全員が何らかの医療保険に加入することを義務化するために制度設計がされました。昭和三十年、そのころは国民の三分の一が無保険でした。その方たち、無職者、低所得者の方たちを全てどこかの医療保険に入れなければいけない、そういうことで、保険料だけでは運営することがもちろんできませんので、当初から、国が多くを国庫負担として賄いながら進めていく、そうしたことを条件とした制度設計で運営がされています。
 皆様方に資料集を配付させていただいておりますけれども、資料1をごらんいただきたいんです。
 これは、この五年間の国保の財政状況の割合を入れたものです。これでいきますと、現在、国庫支出金は二三%しかございません。もともと七割を超えるような国庫負担だったんですけれども、一九八四年を境にこれが下がりました。その国庫負担の穴埋めをするために、国が減らした部分を一般会計で賄っている、そういう状況になっています。
 さて、現在の国民健康保険加入者の構成ですけれども、三五%が被用者、労働者です。いわゆるワーキングプアの方たちです。
 資料2をごらんいただきますと、資料2の(3)のところにございますが、現在、一世帯当たりの所得は百十二万円でしかありません。この五年間で十七万円も下がっています。
 ここでは、典型的なワーキングプアであるシングルマザー世帯の国保料の高さについて述べたいと思っています。
 資料3から、幾つかの自治体の保険料を計算したものを載せています。
 大阪市が昨年実施しました平成二十五年度の大阪市ひとり親家庭等実態調査によりますと、大阪市のシングルマザーの平均総収入、手当も含めた総収入は、百八十四万円しかありません。
 シングルマザー像は、平均的にいいますと、母親四十歳、未成年の子供二人の三人家族です。それで計算をさせていただいております。
 大阪市のシングルマザー、百十万円で計算いたしますと、国保料は年間二十二万。これは、大阪市だけが高いのではなく、札幌市二十一万五千円、横浜市二十一万五千円、京都市二十二万円と、ほぼ同じ、同水準になります。国保加入者の方は、国民年金の保険料も払わなければなりませんので、それが年間十八万。両方足しますと、社会保険料だけで四十万円要ります。
 大都市のシングルマザー世帯は賃貸マンションに住んでおりますので、例えば大阪市でいきますと、月六万円の家賃が要ります。社会保険料と家賃を払いますと、もう七十万円ぐらいしか残りません。ということでいきますと、月六万円の生活費でさまざま、光熱水費などを払います。そうすると、一日千円も生活費がないということになります。
 シングルマザー世帯ですので、子供たちがいます。そういうところの子供たちは、一日二食。一食は学校給食、一食は御飯とふりかけ、そのような食生活をしている子供たちがたくさんいます。食べるものも食べずに、国保料、年金保険料を払うことはできません。ない袖は振ることができません。ですから滞納が起きる。それは当たり前のことです。
 二点目です。では、都道府県単位化でこの高過ぎる国保料が安くなるのかという問題です。
 厚生労働省は、三千四百億円投入で一人一万円の財政効果があると強調されていますが、三千四百億円は、現在の全国の市区町村による一般会計法定外繰り入れ三千九百億円よりも少ないです。ということは、現在の一般会計法定外繰り入れは全額そのまま維持しないと、財政効果は出ないということになります。
 さらに、三千四百億円のうち、ことしから投入する千七百億円ですけれども、これで低所得者の保険料が安くなるのかという点ですけれども、これは、そうはならないと指摘せざるを得ません。
 なぜならば、昨年度から実施の五割、二割軽減の対象世帯拡大、そういう形で投入された五百億円のように、直接低所得者の保険料が安くなるように投入するのではなく、政令軽減の割合によって交付するという方法では、市町村が現在の赤字補填に投入したり、また、保険料は下げないままに、黒字分を都道府県単位化以降の納付金一〇〇%完納のための基金にさらに大きく積み上げる可能性があるからです。
 さらに、もう一方の一千七百億円ですけれども、三年間で二千億円の財政安定化基金を増設するということになっております。この問題については後に申し上げますが、平成三十年からの千七百億円の約半分は都道府県調整交付金に投入されます。交付金の割合は、多くなるかといえば、現在と同じであると聞いております。今まで交付金に高額療養費の国庫負担分を肩がわりさせていたものを埋めるだけの話というふうに聞いておりますので、これを財政効果というのはどうでしょうか。
 さらに、残り半分は、保険者努力支援制度というものを創設して、医療費適正化や保険料収納率アップなどに努力した市区町村に交付するとされています。つまり、資格証明書発行や滞納処分に力を入れれば交付するというお金になります。
 収納率アップのために今、市町村が行っている差し押さえの実態は、おどしと違法行為そのものです。それを後押しするようなことになるのではないかと危惧しております。
 それから、分賦金方式、法案上は納付金と変更された、このお金の問題です。
 納付金とは、都道府県が、都道府県内の一年間の医療給付費から公費による収入を引いた必要額を市町村に割り振るものになりますけれども、これは、市町村は都道府県への一〇〇%納付が義務づけられます。簡単に言うと、市町村から都道府県への年貢ではないでしょうか。
 現在の平均収納率は、全国で九〇%です。一〇%足りません。一〇〇%納付するためには市町村はどう動くのか。四つ考えられると思っています。
 一つ目は、一般会計繰り入れで穴埋めをする。
 二つ目に、市町村が基金を持っている場合は、それで穴埋めをする。けれども、基金は、全国で現在三千億ぐらいですけれども、使ってしまえばなくなってしまいますので、市町村はさらに納付金以上の保険料収入を得て積み上げる、そういうふうな動きになるのではないでしょうか。
 三つ目に、新しくできる財政安定化基金ですが、これは、借りれば返さなければならない。返すための原資は、次年度の保険料に上積みとなります。既に介護保険、後期高齢者医療制度で経験済みのことです。
 四つ目には、分賦金より例えば一割増しの賦課総額にして保険料を計算し、九割の収納率で納付金一〇〇%を超える保険料を設定する。計算上、一一〇%の賦課総額にすればそうなりますが、このような動きになるのではないかと危惧しております。
 三点目です。今、全国の市区町村は、おどしのような形で社会保険料や税の公的債権の滞納処分、差し押さえなどにひた走っています。例えば、去年、朝日新聞で報道され、十一月六日の参議院厚生労働委員会で日本共産党の小池晃議員から質問があった群馬県前橋市の差し押さえは異常です。私たちが把握しているだけでも、年金や給与の全額差し押さえ、差し押さえのため持ち家が売却できず、結局、競売され、自己破産したケースや、児童扶養手当の差し押さえ、生活保護費の差し押さえなど、違法行為が行われています。
 前述した厚生労働委員会で塩崎厚労大臣は、ぬくもりを持った行政をやるべく徹底するとの答弁をされましたが、とてもそうした状況ではありませんし、差し押さえ禁止財産をも差し押さえるという違法行為がまかり通っています。塩崎厚労大臣が答弁された、ぬくもりを持った行政とは、税や社会保険料の滞納状況からその方の暮らしの困難さを察知し、自治体が行政の専門家として相談に乗りながら解決をしていく、商売や生活を成り立たせていくということではないでしょうか。
 国保の都道府県単位化により、国保料の高騰、そして、収納率アップ、滞納保険料の回収にひた走る余り、今よりも違法な滞納処分がまかり通る事態となる危険性を指摘します。
 最後に、国民、国民健康保険加入者の願いは、暮らしを成り立たせることのできる妥当な保険料、税で、安心して受診できる国民健康保険制度です。加入者は、保険料を払うために働き、暮らしているのではありません。
 暮らしを脅かし、貧困をさらに拡大する危険性のある都道府県単位化に反対する意見陳述を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 118904260X01120150423_008

発言者: 寺内順子

speaker_id: 13145

日付: 2015-04-23

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会