鷲見賢一郎の発言 (厚生労働委員会)
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○鷲見参考人 鷲見です。
お手元に、「「生涯派遣・正社員ゼロ」法案の仕組み 何故、私たちは労働者派遣法「改正」案を「生涯派遣・正社員ゼロ」法案と呼ぶのか?」という冊子を配らせていただきました。あるいは、違う、そうじゃないというぐあいなお考えの方もおられるかと思いますが、私はそう思っております。
自由法曹団常任幹事、弁護士、鷲見賢一郎ということで出させていただきましたけれども、自由法曹団といいますのは弁護士の団体でして、全国で二千名ほどの弁護士でつくっている団体でありますが、今回の労働者派遣法改正案については廃案をお願いしたい、要求したいという決議も何度か上げておりまして、私もそういう考えではあります。
そういう考えではありますが、私はこれから、改正案の条文に即して、この条文がどういう意味を持っているのかということを中心に発言させていただきたいと思いますので、私が廃案をという考えを持っている人間だから、おまえの言うことは違うというだけではなくて、条文が何を意味しているかということで、ぜひ私の話を聞いていただけたらと思います。
皆さん、今回の派遣法改正案では、期間制限がどうなのかということが問題になっておりますよね。
従来は、専門業務については期間制限なし、自由化業務、一般業務については一年から三年の期間制限があるということでございます。それで、今までは業務単位の期間制限なんですね、業務単位の期間制限。
今回の改正案は、事業所単位で三年ごとの、まあ、聞くだけじゃないかという話もありますけれども、三年ごとの期間制限。あともう一つは、それとは別個に個人単位、組織単位、職場ですよね、職場単位で上限三年という、二つの期間制限を改正案は設けているわけです。
私は、その期間制限を、今までと対象が違うじゃないかとか手続が違うじゃないかということではなくて、もちろんそれは違うんですよ、違うんだけれども、一番大事な問題は、機能が違うんです。期間制限の果たす役割が違うんです。
今までは業務ごとの期間制限でしょう。業務ごとの期間制限といいますのは、例えば私が経験した例でいいますと、工場のライン労働者でいえば、その二十名なら二十名のライン労働者の中には、派遣社員が、まだ来たばかりで一カ月の人もいるんですよ、だけれども、三年の人も出てくるわけです。ですから、そこでは業務単位の期間制限ですから、三年になれば全員がもうその職場では派遣はだめだよということ。その職場では、一カ月の人も三年の人も、とにかく業務単位の期間制限三年に来たら、もう派遣労働者を使っちゃだめだよということになるんです。
皆さん、派遣労働者を使っちゃだめだよということになると派遣労働者は困るじゃないか、だから期間制限はよくないねと言う人がいるんですよ。私は、そこは違うと言うんです。期間制限が来たら直接雇用しなさいという仕組みに、今の法律は一応なっているんです。
機能としまして、例えば百名の製造ラインで三割、三十人の派遣労働者を使っていたら、期間制限が来たからといって三十人の派遣労働者がいなくなったら製造ラインは回らなくなりますから、事業を続けたいと考える限りは、期間制限が来たら派遣労働者を直接雇用せざるを得ないという、私は、業務単位の期間制限というのはそういう機能を果たしていると思うんです。
これは実は、この問題になったときに、継続かどうかということで、皆さん、クーリングオフというのを御存じでしょう。要は、私は短いと思うんですけれども、三カ月間のクーリングオフを置けば、三カ月間の冷却期間を置けば、再度雇っていい、再度派遣労働者を使っていいとか、脱法になったらだめなんですけれどもね、いろいろあるんです。一応そういう指針があることはあるんですよ、派遣先指針が。
このときに、労働省の方がどういうぐあいに答弁しているかというと、クーリングオフが一カ月では余りにも短い、それだと企業が何とかやりくりしちゃう、だけれども、三カ月ぐらいをあければ企業が何とかしのぐというには限界があって、やはり労働者が必要だということであれば常用労働者をそこに配置するんじゃないかということで、私は三カ月も短いと思うんだけれども、一カ月じゃだめだと。
三カ月のクーリングオフにしたというのは、とにかくそれ以上はそこではゼロにしないとだめなんだから、派遣労働者を。ということは、自動的に、あるいはほぼ直接雇用するんじゃないか。だから、業務単位の期間制限というのは私は直接雇用につながっていると思うんですよ。
事実、私が体験した例でも、ある製造メーカーなんですけれども、二つの工場で千五百名の派遣労働者を使っているんです。だけれども、期間一年だと。一年が来たんですよ。その中には一カ月、二カ月の労働者もいますよ。ですけれども、その千五百名の労働者全員に対して直接雇用の申し入れをしたんです。
それで、その派遣先が何と言っていたかというと、とにかく派遣労働者をゼロにしないとだめなんだ、派遣法の業務単位の期間制限からいったら派遣労働者をゼロにしないとだめなんだ、だから、皆さん、派遣先と労働契約を締結して直接雇用になるか、それとも、それが嫌だったらやめるか、どっちかを選択してくださいと。全員にですよ。その後、ほぼ全員が直接雇用になりました。
もちろん、その後、クーリングオフとかいろいろな問題はあるんですけれども、私は、今の業務単位の期間制限というのは、そういう直接雇用を促進する機能を持っている、そもそもそういうものとして定められたというのは、労働省の当時の答弁からも明確だと思うんです。
今度の期間制限というのは事業所単位でしょう。大きい事業所単位で、そこにいっぱい労働者がいる。それは三年に一回だけれども、過半数労働組合の意見を聞きさえすれば延長できるということになっているから、そこからどう見たって、私は意見聴取だけというのは非常に問題があると思っているんですけれども、いずれにしろ、そういう制度があるからといって、派遣先が直接雇用にしないとだめだなんという機能は私は全くないと思います。
それから、個人単位の上限三年ですよね。職場で個人単位の上限三年。だけれども、今度の派遣期間制限というのは、職場には、三年になった人は上限だからだめだけれども、二カ月、三カ月、六カ月の人は幾らいたっていいんですよ。あるいは、三年になった人も、別の労働者に取りかえれば。だから、その職場としては派遣労働者をゼロにする必要は全然ないんですよ。ずっと派遣労働者を使い続けることができるという制度なんです。
そういう意味で、今度も期間制限があるといえば私はあると思いますよ。あると思うけれども、事業所単位の期間制限は機能しない、個人単位の期間制限は個人の労働者が取りかえられるだけということで、直接雇用につながるような役割は全然ないんじゃないかなと思います。その辺はぜひ皆さんに御理解いただけたらと思います。
ちなみに、個人単位の上限三年というのは、派遣先が、あなたを配置転換してほかのところで使うか、それともあなたにやめてもらうかという、派遣先が非常に権限が強くなりますから、非常に派遣労働者の従属化を進めるような役割を果たすんじゃないかなと思っております。
そのほか、この私の論文というのか文章というのかに書いておきましたけれども、今の条文にある四十条の四とかあるいは四十九条の二の関係とか、直接雇用を促進するような条文は、改正案では全てなくなっています。そういう機能の点だけではなくて条文の点でも、直接雇用に向けての条文は改正案ではなくなっているということが言えるんじゃないかと思います。
それから、あと一点だけこの関係で申し上げたいのは、四十条の六で、違法派遣の場合の労働契約申し込み制度、派遣先が労働契約を申し込む、直接雇用に自動的にするという条文があるわけですけれども、それが十月一日から施行ということになっています。九月一日でこの改正案は施行するということですから、現行法のみなし規定が全然施行されないうちになくなっちゃう。
目玉は、業務単位の期間制限の場合の直接雇用みなし、自動的にみなしになるという部分がなくなっちゃうということです。
これは、例えば、専門二十六業務で、偽装だったとか、一割を超えて一般業務をやっているときは、専門二十六業務じゃなくて期間制限が出てきますから、そういう方は、十月一日になれば自動的な直接雇用が請求できるようになる方が多数おられると思います。
そういうふうな制度を、三年間待たせた上で、二年十一カ月をもってあなたには一切適用しないよという形でしてしまうような改正案というのは、私は、派遣労働者に対する裏切り行為、背信行為ではないかなと思っております。この点については、三年間待たせて、直前のあと一カ月になって、いや、あなた、いろいろ期待していたかもしれないけれども、法律を変えるから、あなたの自動的に直接雇用される権利はなくなるよというのは、立法政策としても全く間違っているのではないかなと思います。
あと、簡単にします。
読んでいただきたいんですけれども、九ページから、改正案の均衡待遇の推進やキャリアアップ措置は直接雇用や正社員化につながるかということなんですけれども、二点だけ言います。
やはり、均等待遇になっていないというのは、私は日本の派遣法の最大の問題だと思いますよ。
私が知っている派遣労働者は製造関係が多いんですけれども、大体、正社員と同じ製造ラインですよ、同じ仕事をしているんですよ。だけれども、賃金は、私が知っているあれだと、製造ラインで同じ仕事をしていて、夜勤、残業を目いっぱいやって、派遣労働者は年収三百万、有期の労働者は年収四百万。有期の方がいいんですよ、直接雇用だから。正社員になると、年齢によって違いますけれども、平均五百五十万とか六百万なわけで、派遣労働者の低賃金というか、人の嫌がる夜勤、残業、人の嫌がる仕事をやって年収三百万ですからね。それで田舎に仕送りしているんですから。それが均衡待遇の名のもとで許されているんですよ。
ですから、私は、日本の派遣法の悪いところはいっぱいあると思うんですけれども、一番悪いところは均等待遇がないからなんです。均等待遇があれば、まだしも、やはり安上がりの労働者を使うという話じゃないからということで違った展開になると思うんですけれども、それが一つ言いたい。
それから、キャリアアップ措置とか正社員化ということを言っているでしょう。条文上はそういう法律になっていないということは今言ったんですけれども、皆さん、正社員化を嫌がるのは誰だと思いますか。派遣労働者の直接雇用、正社員化を嫌がるのは誰だと思いますか。
私が知っている限りでは、派遣先は嫌がりますよ。それは、自分のところの労働者にしたくないから嫌がるんです。だけれども、それだけじゃないんですよ。派遣元も嫌がるんです。それはそうですよ。自分が全国から集めてきた派遣労働者で、自分の事業のもとになる、自分が苦労して集めてきた派遣労働者を何で自分の手から離して派遣先のもとにやらないとだめなんだ、そんなことをしたら自分の派遣会社が成り立っていかなくなるんじゃないかと。私が経験した範囲では、派遣会社も、派遣労働者が直接雇用、自分の手を離れることを嫌がるんです。
ですから、キャリアアップ措置とか教育訓練ということで、自動的に正社員化につながるなどということは私は全くないと思っています。
それから、実効性のない雇用安定措置ということでいろいろ書いておいたんですけれども、一つは、確かに、現行法よりは改正案の方が表現は厳しくはなっているんですよ。それは認めます。だけれども、やはり法的な強制力とか、こうなった場合は法的にこうだということは一つもないんです。それはないんです。
ですから、結局、さっきの話、派遣先に直接雇用を頼んだって断られたらそれまでだ、自分のところで新しい派遣先を探すといったって派遣先がなければそれまでだというふうな形で、私は実効性がないということなんじゃないかなと思います。
最後に、十二ページに書いておいたんですけれども、派遣労働者激増の可能性ということで、実は皆さん、派遣労働者の方のカウントの仕方には、一つは総務省と厚労省で違うみたいですし、厚労省の中でもカウントの仕方が二種類ぐらいあるんです、いわゆる常用換算とかいいまして。ここに書いているのは、これも厚労省が発表している数字なんですけれども、いわゆる自由化、一九九九年に自由化される前の一九九八年には約九十万人だった。それが、二〇〇八年には、それの四・四三倍の三百九十九万人、四百万人。その後、リーマン・ショックがあったり、世論の批判が強くて、確かに今、派遣労働者は減っています、そのころよりは。
ですけれども、一旦は三百九十九万人まで行ったわけですので、この改正案が通れば派遣は激増して、むしろこの改正案というのは、リーマン・ショック時の労働者派遣法より悪くなる改正案だと私は思っています。ですから、ますます激増して、残念ながら、正社員ゼロ法案という名にふさわしい事態ができるのではないかなと思っております。
最後に、私、ある方にこういう話をしたんです。賛成の方でしたよ。今度の改正案というのは、あなたの立場に立ってあえて言えば、派遣労働者のままで派遣労働者を大事にするという法律なんでしょうと。その方は、我が意を得たりという形で、そうだとおっしゃっておられました。
派遣労働者を大事にするという面が、私、全くないとは言いません、この法律に。しかし、それはあくまでも派遣労働者のままで大事にするということであって、しかし、皆さん、派遣労働者が、派遣先から雇用されているわけでもなく、一番低賃金で、いざというときには真っ先に首を切られる存在だというのは、残念ながら、動かしがたい事実だと思います。
そういう意味では、派遣労働というのは、低賃金、不安定雇用の宿命を持った法律だと思います。それを派遣労働者のままで大事にするなどといって、正社員化とか直接雇用の道を全く塞ぐということでは、日本の雇用は本当にひどくなるのではないのかなと思っております。
私たちは廃案ということで希望しておりますけれども、私が言ったことは自分では客観性のあることだと思っておりますので、ぜひよろしくお願いします。(拍手)