谷口信和の発言 (農林水産委員会)

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○谷口参考人 ただいま御紹介いただきました谷口です。
 きょうは、日本の農業の今後のあり方を大きく左右する農協関連の法案についての参考人ということで呼ばれましたことを大変光栄に思っております。
 この後の参考人の中に、二名ほど私と同じように大学の教師をしている方が入っていますけれども、二人とも農協問題の専門家、農協そのものの研究者であります。私も同じようなことで、農協について深い関心を持って研究はしておりますけれども、三人が似たような話をしても余り役に立たないなというふうに思いましたので、私としては、今の日本農業のそもそもの問題は何なのか、その中で農協はどういう役割を果たすのかという視点から話してみたいというふうに思います。
 お配りしてありますレジュメに即しまして、かいつまんで話したいと思います。量が多いわけで、全部話していると多分時間が足りませんので、要約いたします。
 まず、大きな枠組みは、現在の農政改革をめぐる全体像、これと農協改革の位置というものを少しはっきりしてみたいと思います。どういう意味で農協改革が必要なのか、あるいはしなきゃいけないのかということだと思います。その上で、二番目に、農協改革の個々の論点について私なりの考え方を、一番で述べた大きな枠組みの視点から述べてみたいというふうに思います。
 現在の日本農政が直面する課題の構図というのを図に示しました。これは、多様な担い手との関係であります。
 私が強調したいことは、この四つの枠組み、四方にある四つの枠組みの問題が、それぞれ個別に扱われて、農水省の事業で既に取り組まれております。大事な点は、個々の課題を個々に取り扱うのではなくて、これをまとめて、束ねて取り扱うことが今求められている、そのことを抜きにしては現場の問題が片づかないということが私は重要だというふうに思います。
 具体的には、耕作放棄地があり、この耕作放棄地の再生、復旧、活用ということを通じて新規就農者というものを結びつけていくことが大事だと思います。
 同時に、新規就農者は、系統出荷という枠組みの中だけでは、必ずしもみずからの成果を実現できる場というのは得られない可能性があります。そういう中では、直売所といったものも活用する。つまり、販路として、従来の市場出荷、系統出荷という枠組みだけではなくて、地産地消ということをベースにした直売所をも重視した体系に持っていかなきゃいけないだろうというふうに思います。
 大事な点は、直売所というと、従来、高齢者、女性、小規模、つまりプロフェッショナルでない生産者のための組織というふうに認識されておりますけれども、これはもう実態を踏まえない古い議論だというふうに私は考えております。全国全てというわけではありませんけれども、非常に出荷額の多いような直売所、販売額の多いような直売所においては、例えば北海道においてもそうだと思いますけれども、一番大事な点は、専業的な生産者が積極的にこれを位置づけて、市場出荷と同等の、あるいはそれ以上の位置づけを与えてこれに参画しているという事実であります。
 例えば、A県の施設園芸をやっている方は、七千万から一億円の売り上げがありますけれども、そのうちの過半を直売所に出しています。農協営の直売所に出していて、市場出荷よりも安定しているということで喜んでいる。どこが彼を引きつけているかというと、非常に単純です。それは、価格が自分で決められる。
 価格が自分で決められるということの意味は、生産費と価格との関係が自分の中で明確になっていて、市場価格が高くてもある一定価格で売る、市場価格が安くてもある一定の高い価格で売る、つまり、自分の経営の再生産ということを前提にして、一カ月、二カ月単位ではなくて、一年、二年単位でもって生産が可能になるような仕組みに組織していく、そのために規模拡大していく、そういう形の中で直売所が位置づけられている。
 この最大の問題は、やはり価格が非常に安定しているということで、経営の再生産が非常に円滑に進みやすい土台が与えられている、そういう位置づけをしております。ですから、大規模な経営は直売所と関係ないんだという議論はもう古いだろうというふうに思います。
 と同時に、その直売所は、みずからの直売で、自分の経営体のところで売るという形だけではなくて、今言ったように、直売所という形でもって多様な生産者が集まることによって、都市の、あるいは農村の需要者との関係を結びながら展開するような、比較的大規模な直売所というところが位置づけになると思います。
 そういう三つの枠組みのもとで、恐らく、左側の下にありますように、水田農業、畑作農業、あるいは酪農、果樹といった日本の広範な農業が再生されていくという仕組みがあるんだろうと思います。
 そういう真ん中のところに、担い手として家族経営がいて、これがなかなか困難を抱えているというのが実態だろうと思います。そういうものの一つの代替、補完、支援という政策の一つとして、農協が出資する農業生産法人や、あるいは農協が直営といったような経営があるというふうに思っております。
 大事な点は、今、そこでは農協との関係でその大体の姿を描きましたけれども、そこに多様な担い手が存在しているという事実なんです。
 下の方に描きました日本農業における担い手というのは、この図の真ん中にありますように、家族農業経営が基本であることは間違いありません。しかし、家族農業経営だけで成り立っている姿は既に過去形であります。
 現在形では、右の方に、企業化を進めて会社法人になる経営、あるいは地域の協同組合的な性格を色濃く残した農事組合法人型の生産農協型のもの、そして、さらに、実は今度の都市農業基本法においてもそういう方向が目指されると思いますけれども、市民農園や自給的市民、自給的農家あるいは副業農家といった方々が、積極的に直売所なんかとの関係を結びながら農業生産を発展させていく、場合によっては、規模拡大して新規参入して登場してくることは十分に起きております。
 同時に、もう一つ大きな流れとして、家族農業経営の補完として、先ほど言いましたようなJA出資法人等々の流れ、あるいは集落営農、市町村農業公社。
 大事な点は、こういう多様な担い手があって、どれか一本だけで日本農業の将来を語るということはできない時代なんだということであります。こういう多様なものを束ねて、初めて地域農業の問題は解決できる、そういう段階にあるんだということを我々がどこまで正確に認識するかということが鍵だということであります。
 そういう観点に立ったときに、二ページに行きますけれども、一方で、規模の経済を重視し、労働力を排除してコストダウン、薄利多売という方向は、地域経済の活性化とある意味では対立的な側面があります。つまり、一部の経営だけが伸びるという側面があります。他方で、六次産業化からいく流れは、労働力を吸収し、高付加価値化、相対的な高価格化ということでありますから、地域経済の活性化と親和的であります。大事な点は、AかBかどちらかということではなくて、この両者を適切に組み合わせて地域農業を組織化するということになります。
 全体としては企業的性格の深化に向かっておりますけれども、組織原理においては、多様な差異を含む多様性を重視しながら地域農業の組織化を図ることが大事だというふうに思います。その限りでは、ボトムアップ型の地域農業再編成の方針が非常に大事だということになります。
 その上で、アベノミクス農政の枠組みと農協改革の位置ということでありますけれども、一年目が農政改革、四つの改革、そして今年次は農協改革、農業改革ということで三つの改革。大事な点は、全体を総括する名称がないんですね。恐らく、基本計画がそれだということになりますけれども、基本計画という言葉では余りに味気ないだろうというふうに思います。
 他方で、農林水産業・地域の活力創造プランということになりますと、これは中身があるようでないような一般的な名称です。そういう意味で、農政全体をこういう方向で将来やりますよということを農業者のハートに訴えかけていくようなネーミングがないんですね。この点が非常に残念だと思います。
 全体の構図は、私が年報の方に描きましたように、その図にあります。基本的な枠組みはこのとおりだと私はつかんでおりますけれども、大事な点は、TPPの参加と、そのもとで、これを前提にして、これでも耐えられる農業者をどうつくるかということに収れんし過ぎているんですね。ですから、企業的な経営を参入させて、そこでもやれるような経営体をつくるということになっておりますけれども、一方で、右側の方の地方創生との関係が甚だ希薄になっています。つまり、地方創生と農業のかかわりは非常に希薄で、創生は訴える形になっております。この点は非常に重要な問題だと思います。
 そして、二つあります。重大な弱点として、四つの改革を阻害する全中、農協という説明がされてはいるんですけれども、極めて不十分ではないかなと思います。TPP締結のためのややスケープゴートにされているのではないかなというふうに私は思っております。
 同時に、TPPを締結した場合に、どういう日本農業の未来が描かれるのかという点については、残念ながら、影響についてはほとんど触れられていない。
 しかし、現実的には、ことしも五月になって、またバターが足りなくなりました。去年、一年前も同じように足りなくなりました。北海道の酪農経営を含む日本農業の最優等生が、TPPを含む将来を憂えて次の後継者にバトンタッチしにくい、諦めている、本当に展望がない、これが象徴的だと思います。そういう点で、TPPのもとでも生き残れる農業についてはどんな姿があるのか、もっともっときちんと描くことが大事だと思います。
 それから、地域協同組合論、これを排除して地方創生が語れるかどうか、これも大事な論点だというふうに思っております。
 三ページに入ります。
 アベノミクス農政の第一弾の目玉として、中間機構が一年度過ぎました。そして、中間評価が最近農水省から発表されました。何か失敗したかのような議論が多いんですけれども、私はそう単純に見ておりません。一進一退だと思います。現実問題として、六万三千ヘクタール、流動化がふえました。しかし、目標と比べると、残念ながら低調だということが一つです。
 そして、もう一つ大きい点は、中間機構ではなくて、むしろ集積円滑化団体ということで、地域の農協を中心とした組織の方が流動化に大きな貢献をしているという現実があるということなんですね。これだけ金と、政策的に人も動員して、農水省を挙げてやったにもかかわらず進まなくて、さほど進めていない方が進んでいるというのは一体何なのかということを我々はもうちょっと考えることが大事だと思います。
 と同時に、二十七年度はある程度進むというふうに見ておりますけれども、これは借り入れが先行しております。そして、やがてそれは貸し付けと結びつくということになると思いますけれども、実は、一番大きいのは、例えば例を一つ挙げますと、某県では、こういう状況に合わせて集落営農をやっとつくりました。つくった途端に、さあ、みんなで土地を出して担い手を一緒にドッキングさせようと思ったらば、出したけれども、自分のところに戻ってくる保証が全くないということで、円滑化でやっているんですね。
 つまり、せっかくつくって構造改革を進めようという政策が、円滑化団体の昔の仕組みの方に乗っていて、中間機構に移動していない、こういう問題が現実にあります。これはやはり大きな問題だろうというふうに思います。
 制度設計上の問題としては、売買と所有権移動の問題の差を理解し切れていないのではないかなというふうに思っております。
 売買は永久的に離れますから、どこに行こうと勝手だという面があります。しかし、賃貸借の場合には、やがて自分のその土地が相続にひっかかるかもしれない、転用にひっかかるかもしれない、とにかく何か戻さなきゃいけないことが生じる可能性は十分にあり得るわけです。しかし、現実的には、一旦貸したものを引き戻すという例は非常に少ないんです。少ないけれども、その可能性は留保しておきたい、担保しておきたいということになります。
 となると、自分が参画している農協の人ならば、自分も組合員なわけですから、返してくれと言えば返してくれるという点で安心感があります。ですから、お上に預けるよりは農協に預けた方がよいというこの感覚は、現場の農民のごく普通の感覚としてあります。だとすると、そういうところの力を十分に使わずに、上から、全部土地を召し上げるような雰囲気でやられると、どうも現場の人はついていきにくいという感じがあるのが実態だろうと思います。
 決して、中間機構の政策が間違っているというふうに声を上げて言う人は多くはないと思います。しかし、何かフィットしないなというこの感覚を十分に酌み上げないと、二年目以降、十分な成果を上げられないのではないかなというふうに思います。恐らく二年目は一年目の刈り残しを刈るだけであって、二年目に新規にどっとふえるという流れにつながっていかないんじゃないかなというふうに心配しております。
 そういう意味で、賃貸借が市町村レベルで行われてきたという過去のことを踏まえるならば、もっと中間機構の機能を市町村、農協レベルにおろして、つまり地域の現場におろすような形に組織的な変更も含めて修正を加えていかないと、大目標を達成することができないのではないかというふうに思います。
 同時に、人・農地プランとの連動を切ったということが非常に大きいと思います。建前上は一緒になっています。しかし、これは、繰り返し、人・農地プランと一緒にやるかどうかが論点になりました。なぜ論点になったかというと、結局、全国企業が公募でもってどこでも入りたいという要求に応えるために公募制度というのを導入してしまったわけです。しかし、現場に担い手がいるのに、なぜ公募しなきゃいけないのかというのは余りはっきりしません。
 そういう意味では、ここに書きましたけれども、順番が、序列が必要だと思います。つまり、地域内の人から順番に、遠ざかるに従って優位性が下がっていく。地域にいるなら、そこに任せればいいじゃないかというふうに思います。そのあたりの序列がないまま、全て一緒にして、力の強い人、計画のすばらしい人となると、全ての計画を電通がつくって、それを全国に配ればオーケーという農政改革になってしまうのではちょっと寂しいのではないかな、もうちょっと地域の声を酌み上げていくことが大事だというふうに思います。
 さて、その次に、四ページのところですけれども、くどくど言うつもりはありませんので、一番大きい問題は、農地市場に対するミスリーディングがあったのではないかなということです、中間機構に関しては。
 それは、現在は農地の担い手市場なんですね。出す方は、出しても借りてくれる人がいないという状況です。ですから、借りる方はどこでも借りられる。極端に言えば、借りたくないというより、借りないということもできます。ですから、耕作放棄地は、この数年間、再度ふえ出してしまっていて、かつてずっと減ってきたんですね。それが逆になってきている。これは大きな問題だと思います。
 そういう点で、ここに書いたように、担い手の序列も含めて、地域内から遠ざかっていくような形での組織化に変えていくことが大事だと思います。
 全体の対策の評価については、aからfまで書きました。やや上から目線、強権的、補助金での政策誘導が過ぎるのではないかな。そして、下からの組織化にもっともっと切りかえていくことが必要ではないかなということであります。
 そして、現在、農協陣営が取り組んでいる地域農業振興プランや地域営農ビジョン運動、こういうものと連動しながら、具体的に、人に農地を張りつけるだけではなくて、地域農業をどのように組織化するかという大局的な観点からの政策構築、再構築が必要ではないかなと思います。
 農協の方については、以下、細かく述べております。もう時間が来ておりますので、ごく簡単にポイントだけを述べて、まとめたいと思います。
 一つは、農協、農業委員会、農業生産法人制度改革が一本になっておりますけれども、これを束ねる論理が必ずしも明確ではありません。
 前半と後半の議論もはっきりしないんですけれども、この後半の議論、後半というのは、アベノミクス第二弾のこの三法案でありますけれども、これについても明瞭じゃない。そういう点では、もう少し丁寧な議論をしてほしい。通すか通さないかではなくて、現場の方々が、これでやりましょうという気持ちになるような政策体系にすることが今一番求められていて、そういう意味での丁寧さが必要な段階にあるのではないかと思います。
 それから二番目に、協同組合としての農業協同組合が本当に不要なのかどうか、これが非常に論点だと思います。
 というのは、協同組合の株式会社化という全体を貫くトーンがはっきりとした太い線であります。だとすると、協同組合法の議論をしてもしようがないのであって、農協を会社法に変えればいいという話になってしまいます。
 そうではなくて、その下にいろいろ書いてあります。事業運営原則の明確化等々も賛成ですけれども、これについても、利用高配当、つまり配当に重点を置くような組合組織ではなくて、利用、結集そのもので利益が発生する、そういうふうにすることの方が基本であって、何か出したものが戻る、金利生活者のような生活を農民に求めるのは余り妥当ではないんじゃないかなというふうに思います。
 そして、利用高配当の重視という方向自体は、既に大口割引制度等々を通じて、現場の農協では取り組まれております。問題は、これが十分に隅々の農協まで行き渡っていない、つまり公平原則と平等原則が十分に区分されていない。それをしっかりさせながら、現場に浸透させることが大事だというふうに思っております。
 そして、農協の組織変更についてですけれども、これも、なぜ一般社団法人や生協、あるいは医療法人、こういうものに変えなきゃいけないのか。余りはっきりしていないというふうに思います。特に、全農の株式会社化ということと、その全農の下にぶら下がる単協、株式会社の下に農業協同組合がなぜぶら下がって一つの組織になるかということは、余りわかりやすい説明はされていないんじゃないかなというふうに思っております。
 それから、農協改革がなぜ全中改革、解体として構想されねばならないのか。中央会不要論で農協運動が実際に束ねられるんだろうかという不安があります。
 実際、私が今やっている農協出資法人についても、当初は単協のレベルでの運動から始まりましたけれども、これを全中がきちんと位置づけることによって、一挙に全国的な運動に広がりました。一九九〇年代にはたかだか数十件の事例しかなかったわけですけれども、現在では五百件、恐らく、日本の農業生産法人の三%弱までが、農協出資法人という一つの経営体が占めるようになってきております。その最先端には、三百ヘクタール、四百ヘクタールの規模の経営体すら、水田農業において成立しております。売上高も、五億円、十億円といったものも出現しております。そういう意味で、全中がそういうことの旗振りをしてきた役割をもっともっと積極的に評価することが大事ではないかと思います。
 それから、担い手を中心とした職能組合論というのは非常に重要なロジックでありますけれども、これはそういうふうになった場合、それらの方々は協同組合でやらないんじゃないか。つまり、力の強いものは伸びましょうという論理でいった場合に、やはり株式会社のように、票がいっぱいある、つまり、株をたくさん持っているものの発言権が強い組織の方がいいというふうに行くわけですね。それは、そもそも協同組合の枠とは違う話でありまして、株式会社でやればよいという方向で行ってしまいます。
 ですから、協同組合の枠の中での職能組合の強化という議論が、今の、一般企業の参加しているような法人の方々の利益に本当に合っているかというと、どうもそうではないんじゃないかな、ちょっとずれがあるのではないかなというふうに思います。
 さらに、六ページのところで申し上げたいのは、職能組合としての農協にとって准組合員は不要な存在なのかということであります。
 今回は結論を出しませんでしたけれども、准組合員については、どちらかといえば、やや冷たい仕打ちで、農協から排除する方向に向かっているかと思います。
 しかし、農協の准組合員制度というのは、そこに細かく書きましたけれども、実は農協にとって不可欠の存在だというのは、単純に農協運営にとって不可欠ではなくて、専業的農業者にとっても、彼らがいることによって自分たちの事業や何かが支えられているという側面があるわけですね。つまり、地域においては、両者が相互に役割を果たしているという事実があります。こういう点をどう評価するかということです。
 同時に、実は、准組合員制度を地域農協論という枠組みでのみ論じられておりますけれども、私は、担い手問題の観点からしますと、多くの土地所有者、農家の方々を包含するところに准組合員というのはいるんだと思います。かつては大規模な農家だったけれども、分家、相続等々の関係でもう農家の資格もほとんどないが、実質的な土地所有者である、そういう方々の農地を抜きにして地域農業は語れないわけです。また、農地流動化も語れないわけです。
 だとすると、それらの方々が入っている農協という枠組みを活用する形でもって、実は農業構造改革は進みやすいという事実があるとすれば、これを専業的な農家も含むような形でもって内包することの方が、現実の農政改革、農業構造改革を進める上では役に立つのではないかなというふうに思います。
 そして、職能組合と地域組合の二つの性格をあわせ持つ総合農協だからこそ、高齢化、少子化が進む日本社会の今後について、さまざまな事業を通して、都会の方々にこういう道もあるんだよということを指し示しているという点では、実は一周おくれだったんですけれども、今や農協が先頭に立ってしまっている、そういう現実があります。このことをどう生かすかということであります。
 最後のところにちょっと書きましたけれども、例えば佐久総合病院は、長野県においては、篠原さんは詳しいわけでありますけれども、信州大学の医学部の附属病院よりも病床数が多いんですよね。最大の病院なんです。これは農協、JAがつくってきた病院なんですね。これは要らないという議論でいいのかどうか。そうじゃないんだろうと思います。そういう点で、これが総合農協の枠組みの中で、その支援のもとにでき上がってきているということですね。例えば、神奈川県においても、伊勢原に農協病院が最近できました。こういうものを我々はもっともっと評価することが大事だと思います。
 その上で、最後に三点つけ加えて、終わります。
 一つは、農協と農政運動の関係です。
 これは、野党の提案の方で、政治的中立性の問題が出されています。私はそうすべきだと思います。農政運動と協同組合運動そのものをごちゃごちゃにするというのはやはり正しくない。時代の要請からすれば、これは別にして考えるべきだ。その中で、自民党を支持し、公明党を支持し、あるいは、場合によっては共産党を支持するということもあってもいいかもしれません。それはそれらの運動の方々が決めればいい話であって、農協そのもの、本体がそれをどう支持するかということは別の話だろうというふうに私は考えております。そういう点で、この点について野党提案が触れているのは非常にいいと思います。
 それから、今大きな問題として飼料用米の政策があります。この問題は、瞬く間に百十万トンというレベルに、一年目、二年目で到達しかかっています。そのときに全農、全中が果たしている役割は極めて大きいです。これから本格的にやろうという声が出たところで初めて進んでおります。
 私は飼料用米について詳しいので、中身について言いたいことはいっぱいありますけれども、とりあえず前に向かって動き出したことは事実です。ですから、これをさらに中身、内実を充実させていくことが、日本農業の再生にとって極めて重要な切り札になると思っております。そういう観点から、全中、全農のイニシアチブをそぐような方向というのはどうなのかなというふうに疑問があります。
 そして最後に、地区重複農協の設置可能規定が野党提案で出ておりますけれども、これも非常に重要な点で、なぜかというと、現実には、多くの先進的な法人農業経営は一地区だけで存在しているわけではありません。複数地区に存在しております。A市にある法人がB市にも支店を持っていたりするわけですね。そのときに農協が違うと、いろいろやりにくいことがいっぱいあります。
 そういう点で、アラカルト方式で選択できるような状態になっていくということ自体は、農協の中に競争原理をある程度持ち込んで、刺激し合うという関係から見ても大事ですし、それを生かしていく方向で構造改革を進めることができるのではないかと私は思っております。そういう観点で、これは、実は法人化等々を含む日本農業の構造改革にとって極めて重要な問題提起だというふうに受けとめております。
 ちょっと尻切れトンボでありますけれども、大事な点は、こういう議論をぜひ国民全体に広げてほしいなと。農林水産委員会だけの議論ではなくて、マスコミを含めて積極的に開示して、日本農業の方向について、TPPを含めて議論することが大事だというふうに思っております。
 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 118905007X01220150527_007

発言者: 谷口信和

speaker_id: 8427

日付: 2015-05-27

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会