石田正昭の発言 (農林水産委員会)
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○石田参考人 私は、龍谷大学の石田でございます。
参考人として、本日は、内閣提出の改正法案について意見を述べさせてもらいたいと思います。
お手元のA4しか用意していませんので、これに沿ってお話ししたいと思います。
ちょっと書いていないことがございまして、第一は、戦後農協のアイデンティティー、ここでは自己認識と書きましたが、おのれは何者ぞというものを今回の改正案は否定していると思います。
今回の改正案の根本は、私は、協同組合という普遍的な存在、これに対する配慮もない、それから、戦後農協という歴史的個体、これに対する配慮もない。本来的には、普遍的存在と歴史的個体の配慮のもとに改正案がつくられるべきだと思っておりますが、その両方ともないということは、根拠のない未来志向の改正案だ、一言で言っちゃえばそういうことになるのかなと思っております。
これは前置きでございまして、一に入らせていただきます。
おのれは何者ぞ、これは農協自身も理解しなきゃいけませんし、皆さん方もしっかり理解していただいて議論していただきたいと思っておりますが、戦後、農協法は昭和二十二年に制定されましたけれども、その制定の過程の中で、今から申し上げる四つのようなことが歴史的個体としては継承されてきたということが重要だと思います。
まず第一は、三元交配だということです。
戦前の産業組合と農会、それからアメリカの販売農協。協同組合として、形としてはどれが一番純粋なものかといえば、アメリカの販売農協だと思いますが、いずれにしても、この三つが交配されて出てきている。その結果はどういうことだったのかというと、生まれながらにして職能組合であり、かつ地域組合である、ここがあります。
今回の法律案は、先ほど歴史的個体に対する配慮がないと申し上げましたけれども、職能組合純化路線を強く打ち出しておりますが、先ほどからいろいろな参考人、谷口参考人が述べたと思いますが、職能組合としての協同組合というのはほぼ持続可能性がないというのが私の考えでございまして、あるとすれば株式会社に転換せざるを得なくなる、そういう法律のたてつけになっているというふうに思います。
それから、二点目でございますが、戦後農協はやはり小農、家族農業の組織だということでございます。
この家族農業というのは、太閤検地以来の四百年以上の歴史を持っている、代々続いてきている定住者の組織でございます。この人たちは、地域の資源だとか、環境だとか、文化とか、社会、経済、これの守り人というか担い手というか、四百年以上続けてきたわけでございます。サラリーマンがあちこち行ってビジネスを展開するような、移住者じゃないんですね。
この人たちを本当は盛り上げていく。この人たちは、本来はシチズン、市民、地域を守るぞ、こういう意思を持っている人なのでございまして、この人たちを否定して何で地方創生ができるんだということでございます。地方創生と今回の農協法改正は全然相入れない、そういうたてつけだと思っております。
それから、三つ目ですけれども、農協というのは、大きな海に例えれば、表層は経済原理で動いてございますが、海の深層は社会原理というか、地域の人的関係の中で動いてございます。
オーナー企業のように生き馬の目を抜くようなこととはおよそ正反対の組織だということでございまして、変わるとすれば世代交代が進む中において徐々に変わっていく。これを今回は、とにかく五年以内にこうしろというような形で言っておりますが、余りにも拙速であるというふうに思います。
四つ目でございますけれども、地域インフラであるということでございます。
これは、歴史からいうと、品川弥二郎内務大臣が信用組合、そしてその後、産業組合をつくりましたが、一九〇〇年に制定されましたあの法律はなぜつくられたのかというと、明治二十二年の町村制を確たるものにしたいということで産業組合ないし信用組合を構想したということ。
どういう意味か。地域には、役場、最低でも小学校をつくるために町村制がしかれたわけですから、それをしっかりしようという過程の中に郵便局、さらに産業組合というものが位置づけられた。つまり、これはそのレベルでいう地域インフラでありまして、地域の人にとってはなくては困るという基本的な性格を持っていると思います。
以上、四つ申し上げましたけれども、このことは当の農協の人たちもしっかり理解しなきゃいけないし、皆さん方が議論する上でも、このことをしっかり頭に入れた上で今度の改正法案はどういう性格のものかということを御議論いただきたいと思っています。
それから、もう少し細かく入りまして、農協法改正の問題点を申し上げます。
第一は、根本的に、協同組合原則、自由、自主、民主の原則に違反しております。協同組合原則の第四原則、自治、自立、それから第二原則、民主制の原則がございますが、これに違反している。
例えば、理事の割り当て制、クオータ制を今度導入いたしております。認定農業者であれ、実務精通者であれ、理事に入っていただくということは決して悪いことではないと思っております。それを、法律で半分以上入れろという、この割り当てが問題なのでございまして、認定農業者であっても、自分の経営が忙しいから入りたくないという人だっているわけですから、入って俺は協同という取り組みを頑張るぞ、そして、地域の組合員の皆さんから信任を得るという形で理事に上がってくるのが一番望ましいのであって、半分以上入れなさい、どんな人でも入れろなんて、こういう法律のたてつけは協同組合を全然理解していないというふうに思っております。
それから、今度の法律の中で、第七条、事業運営原則というのが私は最大の問題だと思っておりますけれども、これは、現行法の第八条、最大奉仕、非営利原則、これを修正したものですが、これ自体に法律上の不備があると思います。これは後に申し上げます。
それから第三に、これも皆さん方に議論していただきたいと思いますが、今回のは、食料・農業・農村基本法の精神に違反していると思います。
食料・農業・農村基本法の第五条、農村の振興には、農村は生産の場であると同時に生活の場である、こう述べられています。そして、生産条件、生活基盤、これをよくする、そしてさらには、その地域の福祉の向上を目指すというのが食料・農業・農村基本法です。さらに、その後に、第九条は、こういう基本的な理念を実現する上で、農業団体も鋭意努力しなきゃいけないと書いてあるわけですよ。農業団体が地域の生活基盤をよくする、地域の人たちの福祉を高めるという役割が法律でうたわれている。
しかし、今回、そんなことをやるな、農業者だけの役に立つ農協になれと。それであれば、この第九条、これは、皆さん方、あるいは提案した農林水産省ですか、内閣ですか、どういうことを考えているんですかという御議論をぜひしていただきたいと思っております。
もちろん、これは、協同組合第七原則、地域への関与というところでも抵触すると思っています。
それから第四に、規制改革に値しない規制強化が進んでいる。
私に言わせれば、地域農協の自由を縛っているのは中央会じゃありません、法律です。まさに行政庁なんですよ。この行政庁の権限、監督権、認可権、これを減らすことが地域農協の活発な活動を促進するわけです。それを抑えていくということは、もろに行政庁の力だけが強くなる。これは逆ですよね、規制強化。
一つ例を申し上げます。現在、既に正組合員資格は定款自治に委ねられているということになっております。では、現実に各農協が正組合員資格を緩めようと提案しようと思って県に行きますね、そうしたら、もう受け付けてくれないわけですよ。模範定款例はかなり自由に書きなさいというふうになっているんだけれども、行政庁が受け付けないわけです。それを受け付けてくれたのが東京であり、兵庫六甲、神戸市です。今回、岐阜が、二つの農協が変えてもらった、こういうふうに僕に情報が入ってきましたけれども、これは要するに、県がそういうふうに対応がばらばらなんですね。
いずれにしても、行政庁の認可権や監督権、これを縮小するということが、本当の地域農協の活性化に役に立つという御議論をぜひここではしていただきたい。
それから、第五番目でありますが、附則が多用されているということです。
附則というのは、私の理解では、本則と同じ効力を持つ、しかし、経過措置だ、こういうふうに理解しております。農協法上に措置された中央会は認めないというような御発言が安倍さんからあったと思いますが、この中央会の改革は今度全部附則に入っていますけれども、本則と同じ効力を持つということであれば、何だ、農協法に措置された中央会制度じゃないか、こう言えるわけですよね。
しかし、これは経過措置だと言ったら、五年後どうなるんですか、五年後になったら消えちゃうかもわからないですよ。そういうことを言ったら、都道府県中央会は連合会として措置しますよと書いてあるけれども、五年後どうなるんですか、これが消えちゃったら一体何になるんですか、もう自動的に一般社団法人になるしかないじゃないですか、こういうたてつけになっております。全中も消えちゃう、全部なくなってしまう、中央会制度が農協法から消える可能性があるというふうなことを御議論をぜひお願いしたいと思います。
次に、いろいろ文句はあるんですけれども、もうここが本当の重要な点だということだけ申し上げたいと思います。
三、修正を求める事項で、第一は、いわゆる戦後体制からの脱却ということで農協をこういう形で取り上げるのであれば、まず、本来的には目的から変えなきゃいけないんじゃないですか、事業運営原則からじゃなくて、目的、第一条から変えるべきだ。
第一条の何が問題かというと、私は、第一条の中で、最後でございますが、「もつて国民経済の発展に寄与する」、つまり、国があるよ、それから全国連があるよ、県があるよ、そして地域農協があるよというたてつけになっております。そうではないでしょう。皆さんたちがもしこういう戦後体制からの脱却と言うのであれば、お国のための農協から地域のための農協になるべきだ、こういうたてつけにしないといけないわけで、第一条のここに、「もつて国民経済の発展に寄与する」を、もって地域の発展に寄与する、ここから書き直さないと本当ではないと思います。
それから、第七条の修正を求めたいと思います。
第七条は、先ほど申し上げましたように、現行法八条、非営利、最大奉仕原則でございます。
行政庁の説明をいろいろ聞いて、皆さんは丸め込まれているんじゃないかなというふうに理解しておりますが、第一項は、これは現行八条を移したもので、組合員への最大奉仕をするとなっています。
六次産業化だ、輸出だとかといって、農業所得増大への最大配慮ということを言っております。それが実現できたかどうかを五年間あれすると言うんだったら、これこそ附則に持っていけばいい話で、それを第二項の中にどんと書き入れるわけです。
第三項は、従来の非営利原則をやや細かく書いただけで、我々専門家から見れば、何でこんなことを書く必要があるのかという内容でございます。最大に利益を上げて、それは組合員に還元する、あるいは将来のために内部留保する、当たり前のことでございます。これは非営利原則そのものでございます。
なので、私に言わせれば、最大奉仕、非営利原則、第一項、第三項だけでいいので、なぜ第二項を書き加えなきゃいけないのか。こんなのは削除した方がいいと思っております。
その削除の理由を申し上げます。
今回の農協法改正の一番の大きな問題点は、小泉郵政改革と同じ、要するに、安倍農協改革で信用、共済事業を分離しよう、これなんですよ。その前に中央会をたたきましょう、こういう構図でやっているわけで、それの手段が准組合員事業利用規制でございます。この規制が、今回は調査ということで附則に盛り込まれましたが、そもそもそういうものがどういう理由で入ってくるのかというと、この第七条第二項、農業所得増大への最大配慮をしていますか、県の人たちが検査に行って、あなた方はそういうことをやっていますか、きちんと書類を出しなさい、ついては准組合員の事業利用を出しなさい、こう言われるわけでございます。
ところが、考えてください、次の理由ですが、第一項と第二項は矛盾するということですが、准組合員といえども組合員でございます。現在の農協法では、第十二条で組合員資格が列挙されています。だから、その中に准組合員たるような人も入っているわけです。だから、そこは、組合員に最大奉仕しなきゃいけない、そういう人たちが、准組合員も入っているんです。第二項では、まさにそのうちの農業者だけの役に立つ、さらに認定農業者的な人たちの役に立っている、こういう発想になってございます。
現行法十二条の組合員資格と、十六条で初めて正と准の区分が、権限が違うよということが書かれ、十二条は、組合員は正、准ともに組合員。そうしますと、第一項では組合員へ最大奉仕、第二項では正組合員のみに奉仕しよう、こういうことで矛盾しているんじゃないかというふうに私は思っています。
それから、最後でございますが、要するに、表面上を捉えれば、農業所得の最大化、これは当然農協がやらなきゃならない仕事でございますから、組合員への最大奉仕の中に入ります。ですから、あえてここに二項で書き出す必要はないと思っています。
こういう三つの理由でございまして、この第七条第二項の削除、それから第一条の修正をぜひ御議論いただき、なぜそういうことを御議論いただかなきゃならないのかというのを今申し上げました。
いずれにしても、この法律そのものが根拠のない未来志向のものだということで、ここにお集まりの方々の立法府としての御議論を賜りたいなと思います。
以上でございます。(拍手)