山本由美の発言 (文部科学委員会)

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○山本参考人 初めまして、和光大学の山本由美と申します。本日はこのような場にお招きいただき、どうもありがとうございました。
 私は、教育行政学と教育制度論を専攻としています。二〇〇九年ごろから、各地で小中一貫校による学校統廃合に反対する地域の市民集会に呼ばれることがふえ、現在、約四十以上の自治体に伺っています。また、二〇一二年から、心理学研究者と共同で科研費で全国の小中一貫教育の調査を行っていまして、それを踏まえて、本日は反対の立場で意見を述べさせていただきたいと思います。
 お手元に資料があると思いますが、一枚めくっていただきますとグラフなどがたくさんございますので、それをごらんになってみてください。
 義務教育学校、小中一貫教育の最大の問題は、一貫校と非一貫校を同一条件で比較した調査研究がほとんどなく、その教育的効果とデメリットが検証されていないという点だと思います。それで制度化に踏み切るということに非常に危惧を覚えております。
 まず、予想されるデメリットについて幾つか述べていきます。
 まず最初に、奪われる小五、小六期。
 初等教育と中等教育を一体化させた学校は国際的に見てもかなり例外なもので、なぜならば、児童期と思春期の発達段階に対応した学校制度は性格が異なるからです。
 二〇一一年に私どもが主催した学校統廃合と小中一貫教育を考える全国集会におきまして、この奪われる小五、小六期というテーマが浮上いたしました。従来であれば、小学校の最高学年、リーダーとして活躍して大きく成長する高学年期が、その役割を発揮できない、自信が持てず有能感が育たないといった問題が指摘されました。また、中学校文化の小学校への前倒しによって、早くから競争的、管理的な、中学校のような学校生活を強いられるといった点も指摘され、子供へのダメージが懸念されました。
 お手元にあります資料一、これは二〇一三年に朝日新聞が全国で行った調査で、全国の施設一体型小中一貫校の校長先生が多分答えていると思う調査です。成果は上がりましたかという質問、資料一では、九四%が成果があったとお答えになっています。しかし、その理由は記述がばらばらです。中には、教員の成果は感じるが、子供の成果ははっきりしないといった正直な回答もありました。
 それに対して、資料二、課題あり、こちらも八六%が課題ありと答えていました。こちらは記載が六、七年生、七年生とは中一のことですが、この接続部の問題に集中していました。七年生の対応に教職員、児童も戸惑い、六、七年生が一番の課題、七年生の充実、七年生が中学生としての自覚を持つ工夫を、成長の切れ目の小中の切れ目がうまく機能しない、卒業式にそれぞれの思いで合同卒業式に難しさといった、この接続部、そして小学校高学年期にどうやら制度的な問題があるのではないかということが示されています。
 次に、この制度の導入理由といたしまして、中一ギャップの解消と発達の早期化が挙げられています。
 お手元の資料三、四のページをあけていただければと思います。
 この中一ギャップの解消と発達の早期化は、必ずしも、教育学、心理学などで共有化され検証された概念ではございません。
 資料三にありますが、資料三は、小学校六年生から中学校一年の児童生徒を対象にいたしました、発達心理学の都筑学氏の研究ですが、小六のときに中学校に期待があった、不安があったというそれぞれの生徒が中学に行ってからどう変化したかという、縦断的な心理学の大量アンケート調査でございます。
 これを見ますと、小学校六年のときに中学に対して期待があって不安があったという層が、中学に入ってから最も変化した。熱中していることがある、将来に願いがあるというふうに、不安がある層が逆に中学に進学してから成長している。中学に対する不安は決してネガティブなものではなく、一つの段階から次の段階へジャンプさせ、子供の成長を促す機能を果たしている。これは、中一ギャップの解消という提起とは逆の意味を持っています。
 実際に中学校で不登校やいじめが起きるのは、中学の競争的、管理的な性格が問題で、段差に問題があるわけではないというふうに考えていますし、それは実証されていません。
 また、資料四に見るように、子供の自己肯定感というのは、一般的に小学校から中学校にかけて下がっていくのが正常な発達の姿であり、思春期でだんだん社会が見えてきて、自己肯定感が中学で下がって高校で上がるというのが正常な発達であって、必ずしも、自己肯定感が下がっていくことはまずいという問題でもございません。
 最初の小中一貫校、二〇〇〇年の呉市では、子供の自尊感情が五年生から落ちるということで四・三・二制のカリキュラムが考案され、それを現在の小中一貫校の七〇%が採用しております。しかし、この五年生からの下降というデータ自体、学問的に共通理解のあるものではないです。
 しかし、それ以上に今回の法制化は、根拠となる発達に基づいたカリキュラムさえ提示されず、六年が前期課程、三年が後期課程と、あえて一貫校にしなければならない根拠すら消えてしまいました。例えば小中教員の連携などはよくなると思いますが、それは、一貫校にならなくても実現可能なことだというふうに思っています。
 さらに、発達の早期化についても、現代の子供たちは、例えば性的な早熟化は指摘されています。しかし、体力や社会性についてはむしろ発達がおくれているといったような実態があり、トータルな早期化ということはあり得ないと、共同研究者の、障害児教育を専門としている研究者は指摘しています。
 それでは、一貫校と非一貫校を比較対照した調査はあるのかと申しますと、国立教育政策研究所が一度だけ行っておりますが、そこでは有意差は出ていませんでした。
 そういった意味で、資料五から紹介させていただきます。私どもの研究チームが文科省の科研費で行いました、全国の一貫校と非一貫校を比較した大規模なアンケート調査は、大変貴重な意味を持っているというふうに思います。
 まだ一回目の調査しか行っておらず、これから縦断的な調査になる予定で、最初のものだけなんですけれども、全国の約八千人の児童生徒、小中一貫校が約千三百名の児童生徒、普通の小学校、中学校が約七千名に聞いた、心理学としては大変大きな調査でございます。
 資料五を見ていただきますと、四年生、五年生、六年生の子供の自信、全体的に子供の精神的健康とか適応感について質問しているんですけれども、小学校のところで、子供の自信の数値が一貫校で低い結果が出ております。普通の小学校、中学校よりも子供の自信が低く出る。
 さらに資料六では、子供の運動能力へのコンピテンス、これは、私は運動ができるという感情、そして自分は自己価値があるという、これも、小学校段階で一貫校の方が非一貫校よりも低い結果が出ております。
 さらに資料七、子供の総合的適応感覚、自分には居場所がある、それから疲労、これも、一貫校の方が普通の小学校、中学校よりもネガティブな結果が出ています。
 このようなはっきりとした結果が出ることは、予期してはいないところもあったんですけれども、私ども研究チームとしましては、五、六年生が最上級生として扱われることによる自信、責任感、教師からの期待などが欠けているのではないか、身近に自分よりも大きな中学生がいることによる、有能感覚の獲得の機会がないのではないか、さらには、一貫校は統廃合が行われている場合が多いので、統廃合の影響があるのではないかと推測されていますが、これから縦断調査で、一人の子供の成長が年を追ってどう変わっていくのかが、追加して確認していきたいと思いますが、いずれにせよ、法制化の前の検証が緊急課題だと思っています。
 また、資料八と九は、今回、義務教育学校法制化の根拠として挙げられました、学力テストが上がった、不登校率が下がったというデータの反証をさせていただいております。
 資料八では、小中一貫教育を全市導入している京都市で学力テストが上がったということが根拠になっていますが、左側の京都府の学力テスト結果と比較いたしますと、京都府は一回も下がらず、高い。京都府は、方針的に小中一貫校は入れないという、統廃合をやっても一貫校にしないという自治体なんですけれども、京都市は、一貫校にして一回下がって、上がっている。
 この下がったという理由については、平成二十一年ごろ、研究会に呼ばれたときに、学テ対策のやり過ぎで中学校が荒れてしまったという答えを聞いたことがあるので、もしかしたら別の影響があるのかもしれません。
 ちなみに、京都は、小学校は全国四位という非常に優秀な成績でいらっしゃいます。
 資料九、品川区の小中一貫導入後の不登校率の変化ということで、文科省の資料では、小中一貫が入ってから不登校率が微妙に下がったという資料が出ておりましたが、長いスパンで見ますと、品川区は、東京二十三区の中で、小中一貫校が導入された二〇〇六年以降、不登校率の上昇度が二十三区の中で、小学校で第二位、中学校では第九位と、むしろ、小中一貫になった二〇〇六年度から不登校は上昇している。微妙に上がったり下がったりしているところだけを使われているわけなんですけれども、長いスパンで見ると、よくない結果が出ているのではないか。
 では、このようにまだ検証が不十分なのに、なぜ小中一貫校が急がれるのか。それは、何といいましても、学校統廃合を促進するために非常に有効なことだというふうに思っています。
 一月、文科省が五十八年ぶりに学校統廃合の手引を改正され、単学級以下の速やかな統廃合、スクールバス利用おおむね一時間以内の通学条件など、全国で今後統廃合が急増することが予想されます。小中一貫校はその方途として極めて有効です。資料十、朝日新聞調査をごらんになりましても、小中一貫校の導入理由、栄光の一位は、学校統廃合の中で計画されたというものです。
 また、今年度から教育委員会の首長権限の強化により学校統廃合を行いやすい条件ができて、自治体では、早速、大綱の筆頭に学校統廃合の実施を書いたところも出ております。
 2といたしまして、公教育制度の複線化、序列化を進めることができる。誰にでも平等な公教育を提供するのが六・三・三制学校体系の理念、教育の機会均等原則を制度化したものでした。それを、小学校から異なるタイプの学校を準備して、学校体系全体に重点的に予算をかけたエリート校と安上がりな非エリート校に序列化していくことが目指されます。
 グローバル社会のエリート人材に重点的にお金を配分していくことこそが平成の学制大改革の全体像で、この義務教育学校はその一つのパーツ、ただ、多分、主に統廃合をやるのがメーンな目的で、エリート校づくりはほんの少しになるのではないかというふうに思われていますが、そのような教育の複線化を進めるためにこの義務教育学校の法制化が利用されかねない。
 もう一点は、この複線化により、接続は非常に複雑になってくる。都市部の小中一貫校の接続では、多くが私立や国立に抜けてしまうために、そのまま中学に進む層は五割を切り、例えば品川区などでは、四〇%台しか一貫校でも上に進まない。
 例えば、二〇一二年の、七年生のいじめ自殺事件が起きた品川区の伊藤学園では、小学校から中学校への進学率は四四%で、周辺の中学受験に失敗した児童が進学してきて、非常に七年生の指導が難しくなっているという事態が生じています。
 何で進めるか。三点目といたしまして、教育課程の弾力化により、教育内容に財界や政府の望む内容が容易に導入できる。小学校の英語というのもこのような形で拡大してまいりましたが、子供の生活やニーズから必ずしも出発した内容ではなくて、トップダウンでマニュアル化された教育内容が学校現場におりてくることが多々あります。例えば品川区の市民科といった新しい教科などは、その典型的なものと言えるのではないでしょうか。
 最後に、国際的な動向について少しだけ触れさせていただきたいと思います。
 最後の資料十二、十三になりますが、日本が教育改革を後追いしておりますアメリカにおいては、学力テスト体制のもと、学校統廃合が速やかに進められておりますが、その中でも、最も大きな統廃合が行われましたデトロイト市のデータが資料十二に掲げられております。
 デトロイト市は、二〇〇三年に二百六十六校あった公立学校が、二〇一三年には三分の一の九十七校にまで減らされています。中学校は三十校から一校に、小学校は百二十五校から十六校に減らされていますが、それは、小中一貫校をつくることによって、このような公立学校数の劇的な減少をもたらしています。
 このように、義務教育学校は学校統廃合に非常に有効に機能するわけですが、その制度的な課題についてはまだ検証が不十分だと思いますので、そのような点を十分検証されてから法制化に踏み切っていただければと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 山本由美

speaker_id: 10946

日付: 2015-05-27

院: 衆議院

会議名: 文部科学委員会