黒岩宇洋の発言 (本会議)

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○黒岩宇洋君 民主党の黒岩宇洋でございます。
 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。(拍手)
 今から四年半前の二〇一〇年九月二十一日が何の日か、御記憶の方はいらっしゃるでしょうか。法務省及び検察は、この日を決して忘れることはできないのです。
 この日は、いわゆる郵便不正事件の村木厚子被告の控訴を検察が断念した日、すなわち村木さんの無罪が確定した日であり、同時に、その日の全国紙朝刊一面トップに、郵便不正事件において大阪地検特捜部の検事が証拠のフロッピーディスクを改ざんしたという前代未聞の大事件が報道された日だったのです。
 そして、その日のうちに大阪地検特捜部の検事は最高検によって逮捕されるという、これも前代未聞の対応がとられた日でもあるのです。そして、たまさか私が法務大臣政務官に就任した日でもありました。
 この年の年末に、当時の検事総長が辞職をされました。在任わずか六カ月での余りにも潔いみずからの進退の決断は、検察よ、生き返れ、検察よ、もう一度よみがえれという思いと、私は深い感慨を持って受けとめた次第です。
 事件後直ちに、法務大臣のもと、外部有識者で組織する検察の在り方検討会議を立ち上げ、翌年三月には報告書をまとめました。この事件、この会議の報告書を契機に、四年がたち、今般提出されたのが、刑事訴訟法等一部改正案でございます。
 当時の担当政務官として、検察の在り方検討会議全てに出席し、また民主党政権時の法務省政務三役で唯一本院に在籍している者として、あの日からの経緯を踏まえながら質問をさせていただきます。
 今改正案は九つの柱から成り立っていますが、余りにも複雑多岐な膨大な制度、内容が積み込まれています。いかに法制審の答申を受けてといえど、制度ごとに分けて提出すれば、制度ごとの賛否が明確になりますし、論点をさらに絞り込めますから、一括審議ではなく、制度ごとに審議すべきと考えますが、法務大臣の御見解を伺います。
 また、一括審議するならば、相当なる時間と慎重な審議が必要と考えますし、法務大臣としても、当然国会に対しその旨を望んでいらっしゃると思いますが、いかがでしょうか。
 刑事司法の根源的な課題は、一人も無辜の者を有罪にしてはいけないという冤罪防止の要請と、真犯人は逃してはならないという真相解明機能の維持向上という要請と、ともすれば二律背反する原則を両立させなければいけないという点にあります。
 証拠改ざん事件発生後、まずは冤罪防止策を講じようというのが当時の法務省の考え方でしたし、国民からの要請でもありました。しかし、その後、可視化によって真相解明機能が低下するのではという懸念も示され、通信傍受の拡大、司法取引やおとり捜査などの新たな捜査手法の必要性も議論され始めました。冤罪防止機能と真相解明機能のバランスを保ついわゆる見合い論です。
 しかし、今回の改正案の要綱には、その見合い論に関する記述も、新たな捜査手法の導入という文言も一切明記されておりません。見合い論なら見合い論として率直な内容を国民に提示し、我が国に司法取引が新たに導入されたり通信傍受の拡大が盛り込まれる旨を国民に説明すれば、今法案がさらに国民の関心、注目を浴び、全国民的な合意を形成しながら議論できるはずであると考えますが、法務大臣の御見解をお伺いいたします。
 私は、検察が平成二十三年四月の法務大臣指示によって可視化の試行を始め、ここまで取り組み、そして、今法案において警察も含め制度化しようとしていることについては相当程度の評価をしております。
 そこで、お聞きしますが、この四年間の可視化実施、試行についての法務大臣としての評価はいかがなものでしょうか。
 法務省に問うたところ、経験を積んだことによって可視化自体になれ、問題はないとの見解でした。大臣も、去る三月二十日、法務委員会での大臣所信に対する質疑で、試行の結果、可視化は全体としては有用性が極めて高い、すなわち、事実認定の立証についても積極的に評価している旨を答弁されていらっしゃいました。
 このことは、当然、真相解明機能が全体として低下しなかったと理解してよろしいのですね。法務大臣、伺います。
 だとすれば、附則九条、三年後の見直し条項に、取り調べの録音、録画等に伴って捜査上の支障そのほかの弊害が生じ得る場合があること等を踏まえと、既に真相解明機能の低下が織り込み済みなのはなぜでしょうか。真相解明機能の低下があったのならば、その低下を示す根拠、何らかのデータはあるのでしょうか。ないのなら、附則九条に、生じ得る場合があることを踏まえと明記することはできないのではないでしょうか。
 真相解明機能の低下がないとすれば、本来の見合い論では新たな捜査手法の導入は必要ないということになりますし、逆に、解明機能が低下したとすれば、今までの取り調べに問題があったということになり、それについても徹底検証の必要性が生じます。法務大臣の御見解をお伺いいたします。
 次に、改正案の各柱、各論について質問いたします。
 まず、一本目の柱、取り調べの録音、録画の導入についてですが、可視化の例外事由として四点挙げられています。そのうち、二号の、被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときとは、また、四号の、被疑者もしくはその親族の身体、財産への加害行為または畏怖、困惑行為がなされるおそれがあるときとの畏怖、困惑とはどのような具体的、客観的基準で判断するのでしょうか。両号ともに、恣意的な運用によって可視化の例外とされない担保はあるのでしょうか。法務大臣、国家公安委員長の御見解を伺います。
 次に、二本目の柱、合意制度等の導入について質問いたします。
 この合意制度という名称は余りにも国民にわかりづらいのではないのでしょうか。この制度は、ある事件の被疑者、被告人が別件の他人の犯罪事実を明らかにすることによって検察官が不起訴や減軽等をする旨の合意ができるというものですが、これは米国で言えば明らかに、司法取引の一類型、捜査、公判別件協力型と呼ばれるものです。合意制度では、法律の専門家以外の方にはほとんど意味がわからないはずです。
 国民が制度を明確にイメージできるためにも、法案要綱では日本版司法取引との名称を使うべきではないでしょうか。法務大臣の御見解を伺います。
 また、合意においては弁護人の同意が条件であるから虚偽の供述は抑制されるとの説明ですが、被疑者、被告人は弁護人のクライアントであります。弁護人もクライアントの利益を望むでしょう。
 また、虚偽供述に対する処罰規定があったとしても、自己の利益のために虚偽の供述を行い他人に不利益を生じさせる、いわゆる引き込みの危険性があるのではないでしょうか。
 司法取引のもう一つの類型、自己の罪状について供述することによって自己の減軽等と取引をする自己負罪型司法取引ではなく、他人に不利益を生じさせかねない捜査、公判別件協力型から導入したことも合点がいきません。
 米国では、引き込みによる冤罪または可罰の事例がありますが、我が国での司法取引制度導入によって新たな冤罪を生む可能性が高まるとしたら、冤罪続出法案とも呼ばれかねず、大きな問題です。法務大臣の御見解を伺います。
 次に、刑事免責制度について質問いたします。
 この名称も国民には大変わかりづらいと感じます。免責とありますから、何か責任を免れてメリットがあるかのような響きです。しかし、この制度は、公判における証人は、刑訴法百四十六条によって、本来自己に不利益な事項については証言を拒否できるのに、裁判所の決定で不利益証言に対する刑事的免責を与える条件のもと、自己に不利益な事項を含め証言を義務づけするという制度であります。制度名を不利益証言義務づけ制度とした方が国民にわかりやすいと考えますが、法務大臣の御見解を伺います。
 憲法三十八条には、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」とあります。この不利益は刑事的な不利益を指すとの判例が下されていますが、証人は本来、刑事的に限定されていようと、自己に不利益な証言を拒否する権利があるわけです。しかし、その権利が裁判所による決定という権力作用で剥奪され、いかに刑事免責されるといえども、自己の犯罪などを証言すればそれが社会に公表されるわけですから、明らかに社会的には自己に不利益となるわけです。
 証人にとっては人権侵害の危険すら大きいと考えますが、法務大臣の御見解をお伺いいたします。
 次に、三本目の柱である、通信傍受の合理化、効率化についてお聞きいたします。
 現行の薬物犯罪や銃器犯罪など四類型の対象犯罪から、さらに新たに二十二もの対象犯罪が加えられました。一定の組織による犯罪という要件の網が新たにかけられましたけれども、対象犯罪は、殺人のほかに傷害や窃盗など、認知件数が相当見込まれる犯罪までもが含まれています。にもかかわらず、通信傍受の拡大という文言が一切要綱には記されていないのが不思議です。
 この対象犯罪の大幅な拡大でどれほど通信傍受の実施件数が増加すると予測されるのでしょうか。国家公安委員長にお伺いいたします。
 また、大幅な増加によって国民のプライバシー権侵害の増大の危険性についてはいかがお考えでしょうか。法務大臣の御見解を伺います。
 本改正案の九本の柱のうち、結局、代表質問においては三本の柱までしか聞くことができませんでした。余りにも改正内容が複雑多岐で膨大過ぎる証左であります。
 最後に、あくまでも真に国民のための刑事司法制度の確立、あくまでも真に国民のための刑事訴訟法等の改正を議論すべく、徹底した慎重審議を強く強く要請申し上げまして、私の代表質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

発言情報

speech_id: 118905254X02520150519_026

発言者: 黒岩宇洋

speaker_id: 24356

日付: 2015-05-19

院: 衆議院

会議名: 本会議