井出庸生の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○井出庸生君 維新の党、信州長野の井出庸生です。
党を代表して、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)
質問に先立ち、おととい五月十七日に行われた大阪都構想住民投票について、〇・八ポイントという僅差ながらも反対多数となり、史上初の挑戦とも言える地域発の統治機構改革を実現することはできませんでした。
まだまだ力不足。しかし、硬直化した官僚主義と既得権益の厚い壁を打ち破って、納税者のための政治を実現してほしいという熱い思いと、我々に寄せられる強い民意を確認することもできました。
維新の党は、改革のスピリットを持ち続け、みずからイノベーションをしながら、不撓不屈の精神で一丸となって歩んでいくことを宣言いたします。国民の皆様、各党各会派の皆様、どうぞ引き続きよろしくお願いをいたします。
さて、本法案ですが、残念ながら、取り調べ可視化わずか三%、にもかかわらず司法取引導入、さらに通信傍受大幅拡大法案と言わざるを得ません。
厚生労働省事務次官の村木厚子さんが逮捕され、無罪となった事件で、真実と異なる供述を部下から引き出した密室の強引な取り調べと、人質司法とも呼ばれる捜査側の意向の大きく働く長期間の被疑者、被告の勾留、そして証拠の改ざん。この事件によって、日本の刑事捜査は一からの出直し、いや、ゼロからの再スタートを迫られたはずでした。
この事件だけではありません。
古くは大正時代、無実の強盗殺人の罪を他人の虚偽供述によって負わされ、二十一年間の拘留、五十年を経てようやく無罪となった吉田巌窟王事件を初め、最近でも、先日、十二人の無罪となった人たちに賠償判決の出た志布志事件、再審無罪となった足利事件、布川事件、そして再審決定した袴田事件など、日本の刑事捜査の問題を見直す根本解決の手段の一つが、この取り調べの可視化だったはずです。
それが、可視化は裁判員対象事件と検察の独自捜査事件、全刑事事件のわずか三%に限定をされ、刑事事件の第一次捜査権を持ち、事件の趨勢を決めると言ってもいい警察捜査の可視化に大きな前進が全くなかったことは、極めて残念であります。
まず、法案の取り調べ可視化について、警察サイド、国家公安委員長に伺います。
警察が長年取り調べ可視化について抵抗してきた理由は、主に三つあります。
抵抗する理由の第一は、組織の規模、扱う事件の多さです。各都道府県警察本部や警察署など、重大事件を取り調べる施設は全国に一千二百あり、録画機器は一体約百万円、全ての施設に十分な機器を設置するのは相当の予算が伴うと言われています。
抵抗する理由の第二は、警察の扱う事件はほぼ全てが検察庁に送致され、検察の独自事件のように一つの組織では完結をしない、別組織のチェックが働くから問題ないという主張です。
そして、抵抗する理由の第三、これは検察も言い続けてきた最大の抵抗理由でもありますが、取り調べをカメラで録画、録音すると、捜査員と被疑者の信頼関係が築けない、緊張して話ができなくなるなど、取り調べに支障が出るという主張です。
抵抗理由の第三について、地下鉄サリン事件の話をさせていただきます。
地下鉄サリン事件では、オウム真理教の信者ら百九十二人が逮捕され、その全ての被告人に判決が出ております。歴史上まれに見る重大な犯罪でしたが、全てを法の裁きにかけたことは、法治国家として誇るべきことだと思います。
この地下鉄サリン事件は、捜査開始直後、被疑者の多くがマインドコントロールされていたこともあり、皆取り調べに口を閉ざし、捜査が行き詰まったときがありました。
地下鉄にサリンをまいた実行犯の一人、林郁夫受刑者も、逮捕直後、口を閉ざしていました。このとき、林受刑者を取り調べ、サリンをまきましたと全面自供に導き、この事件全体の捜査を大きく進展させ、今も語り継がれている元捜査員がいます。
当時、警部補として林受刑者の取り調べを担当した稲冨功さんは、林受刑者が医師だったため、林受刑者のことを先生と呼び、上司から叱責されても先生と呼び続けたエピソードで有名です。
私は、昨日、稲冨さんにお会いしてきました。
稲冨さんは、取り調べの全事件、全面的な可視化に大賛成で、可視化は、被疑者だけでなく、取り調べに当たる刑事の仕事ぶりを裁判で客観的に見てもらう、また、取り調べ段階でも、状況の説明を求める上司に説明がしやすくなるなど、刑事を守ることにもなるとお話しくださいました。
私が、カメラで取り調べを撮影すれば、被疑者と刑事の信頼関係が築けないのではないかと聞いたところ、被疑者が刑事を信頼することは真実を話す一つの理由にすぎない、そもそも刑事は、被疑者を信頼することよりも、真実を引き出すために、被疑者の性格、様子をつぶさに分析し、心理学的なアプローチなどあらゆる手を尽くすことが大切だと強調されました。
稲冨さんが林受刑者のことを先生と呼び続けたのは、決して稲冨さんが優しいからだとか林受刑者に信頼してもらうためではなく、林受刑者の発言や様子、医師としての倫理観などを分析した上で、真相を引き出すために行った冷静な取り調べだったのです。
そこで、そもそも警察組織として、捜査員が被疑者から真実の自供を引き出す、例えば心理学的な研究や研修を実施してきているのか、信頼関係という抽象的な言葉で取り調べの科学的な研究を怠ってこなかったのか、その取り組みを伺います。
取り調べ可視化が必要とされたのは、そもそも、捜査側の意に沿った供述を認めさせる強引な取り調べが問題となったからであり、そのような取り調べには到底信頼関係があるとは思えず、可視化に抵抗する理由に被疑者との信頼関係を挙げることは筋違いであると考えますが、いかがでしょうか。
可視化をすると取り調べが緊張してしまうというのであれば、全ての捜査員にICレコーダーを貸与して、録音だけすればよいと提案をいたしますが、いかがでしょうか。
ICレコーダーを使った録音だけを実施する場合、緊張感の緩和に加え、さらに予算が抑えられると思います。ICレコーダーは現在二千円台から多数あり、全捜査員の分をそろえたとしてもコストが改善されると思いますが、見解を伺います。
さらに、ICレコーダーを使った録音の一番のメリットは、捜査員が全員ICレコーダーを持つことで、全ての事件の取り調べ、参考人の調べ、現場の聞き込みなどを記録できる大きな可能性があることです。
現在の法案では、取り調べ室にカメラを隠した物々しい黒い箱が置かれて、緊張しやすい状態をみずからつくった上で、わずか三%の事件しか可視化されません。
そうではなくて、できるだけ多くの事件を記録しておくという、いざというときの備え、つまり、裁判で供述の任意性が争われたときのために、多くの事件を全面的に記録する意識がなければなりません。
捜査員が、いつでもどこでも、大事だと思った取り調べや参考人聴取、聞き込みなどを広く録音できる制度を構築することこそが本質だと考えますが、いかがでしょうか。
このことは、裁判になったときに、警察や検察、捜査側にも大きなメリットをもたらすことを強調しておきます。
現在、裁判所側は、捜査段階の供述の任意性が裁判で争われた場合、客観的に録音、録画されたものを必ずと言っていいほど見るようになっています。
最高裁判所刑事局は、去年三月の法制審議会特別部会で次のように話しています。以下、要点を紹介します。
任意性立証のために最も適した証拠が取り調べの録音、録画の記録媒体であるということについては、おおむね共通認識が得られてきている。最終的には、録音、録画媒体がない場合には、その取り調べで得られた供述の証拠能力に関し、証拠調べを請求する側に現在よりも重い立証上の責任が負わされるという運用に恐らくなっていくのだろうと思う。この点は、録音、録画義務が課されていない事件についても、被疑者の供述が鍵となる事件においては、リスクの意味合いという意味では同様のことが言えるのではないかというふうに考えていると。
この最後のリスクという言葉は、捜査機関がリスクを負うという意味です。取り調べの可視化は、もはや捜査機関の主張を裁判所で認めてもらうために不可欠なのであります。
一次捜査を担当する警察は特に、この裁判所の見解を真摯に踏まえ、幅広く録音する意識が必要だと思いますが、この裁判所の見解について所感を伺います。
警察段階での自白が事件を決することが多いにもかかわらず、録画をしていませんでした、検事さんの調べにお任せします、そんな事件が九七%もあれば、現場で汗をかいている警察職員二十五万人の努力を裁判の場で無にすることにならないのか、見解を伺います。
抵抗理由の二つ目に、検察によって警察段階の供述をチェックされると言っておりますが、刑訴法上、検察の取り調べ権限と供述調書の証拠能力は同じとされております。警察と検察の捜査で可視化に差をつけるようなこの法案は、警察が、検察と同等の捜査権限をみずから放棄することに等しいと思えますが、それでよろしいのでしょうか。
ここからは法務大臣に伺います。
さきに挙げた裁判所の見解からすると、可視化に例外化が広く設定されているこの法案では、裁判を進める上で検察側に不利が生じると考えますが、いかがでしょうか。
供述の信用性が争われるケースは、裁判員裁判事件だと六十件に一件の割合、その他の事件は六百件に一件だからという理由で全事件可視化に反対する意見がありますが、捜査側にもメリットのある可視化を罪の重い裁判員事件に限定することは、罪の重さによって立証の方法にあらかじめ差をつけることになり、被疑者、被告に対し公平公正な立証が尽くされる制度ではないと考えますが、いかがでしょうか。
裁判員裁判という罪の重い犯罪に可視化を限定するのではなくて、供述の争いが生じる可能性の高い否認事件に対し、できるだけ広く録音を実施するべきだと考えますが、いかがでしょうか。
平成二十三年の一年間、刑事第一審、地裁における判決言い渡し人員の総数は五万七千九百六十八名、そのうち、否認事件の件数は四千七百三十四名、八・二%だったと法務省は話していますが、五千件程度を録音だけするというのであれば十分可能と考えますが、やりませんか。
録音を否認事件に拡大するべきだと提案をすれば、いつ否認を始めるのか、否認の程度もわからないなどとおっしゃいますが、少なくとも、否認に転じたら録音を始めるというだけでも、裁判で供述の任意性を証明する一端になるし、十分対応可能と考えますが、いかがでしょうか。
そもそも、裁判員裁判の対象事件は、国民の関心が高く社会的に重大な事件であり、一方、無実が推定される被告人にとっては、痴漢のような冤罪も仕事や人間関係を失う重大なものですから、裁判員裁判事件のみ可視化の対象とすることは、冤罪の防止という可視化の社会的要請を果たせないと考えますが、いかがでしょうか。
法案の附則に三年後に見直す規定がありますが、法制審の特別部会で委員だった村木厚子さんや、痴漢事件をテーマに冤罪を世の中に問うた映画監督周防正行さんは、可視化のさらなる拡大のための第一歩として、今回の案を不満ながら了承したと言われております。
今後の可視化対象の拡大を、見直し規定よりも強く、法律で確約、明文化するべきではないでしょうか。
次に、合意制度等の導入、いわゆる司法取引について。
本法案では、司法取引の真実性を担保するため、虚偽供述をした被告人を処罰する規定が新たに盛り込まれました。
現在は、裁判に出廷した証人に対する偽証罪しかありませんが、二〇一三年は、偽証罪が適用された件数は百三十八件。このうち起訴された件数は何件でしょうか。
また、この百三十八件のうち、検察側がみずからの主張を補強するために請求した証人が偽証をし、検察がこれを起訴した件数と、全体に占める割合がどれだけあるか、お答えください。
検察側証人が偽証罪に問われてきたかどうかは、今後、司法取引で、被告人や証人が検察に沿う虚偽の証言や供述をした場合に、検察が新しい処罰規定を使う意欲が本当にあるのかという根本的な問題にかかわります。
裁判所も、法制審の議論で、実効性としてはいささか足りないと思わざるを得ないと、この点を意見しております。
検察が、検察側証人の偽証をどれだけ立件してきたのか、過去を詳細に分析し、今後の法務委員会で明らかにするよう求めますが、説明するおつもりがあるかないか、伺います。
司法取引を裁判所は疑いを持って見ております。捜査側にとっても、リスクの高い捜査手法と言えます。
去年六月、新時代の刑事司法制度特別部会では、裁判所側から、裁判実務では、類型的にこの種の供述は警戒すべきものと考えられてきた、こういう形で証人が出てきた場合には、その証人の信用性には、最初から少なくともある種の疑問符といいますか、留保というものを持ってその証言を聞くということになるとの発言もあります。
この裁判所の発言を踏まえれば、司法取引の場面を可視化することは絶対に必要であって、検察が主体的にセットをしていく協議の場とやらを可視化することは一〇〇%可能であると考えますが、可視化するおつもりはありますでしょうか。
通信傍受については、聞きたいことが多々ありますが、きょうは後の質問者にお譲りをいたします。
最後に、保釈の考慮事情の明確化について。
村木さんは、検事から、私の仕事はあなたの供述を変えさせることだと言われたと話しております。真実を守り通した結果、百六十一日間も勾留されました。
一方、元部下は、検察の意向に沿う供述をし、起訴後すぐに釈放されています。この供述によって、村木さんは逮捕されたのです。
捜査側の立証趣旨を認め、立証趣旨に合った供述をしなければ保釈はない、そう言われた冤罪の被害者や被告の例は多数あり、いわゆる人質司法と呼ばれてきたことは、多くの人が知るところであり、改善が求められますが、本法案はこうした問題解決につながるのか否か、見解を伺います。
本日は、二十問、本法案の数多き問題点のほんの一端を伺ったにすぎません。今後の徹底審議をお誓いして、終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣上川陽子君登壇〕