杉本まさ子の発言 (経済産業委員会)
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○参考人(杉本まさ子君) 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の杉本と申します。
本日は、電気事業法等の改正法案の審議で、消費者の意見を申し上げる機会をいただいたことに感謝申し上げます。
主にガス自由化に関する家庭用ガス料金の消費者保護について発言いたします。
なお、今回の法律改正に含まれる電気の議論は、私と同じ団体の辰巳常任顧問が参加しております。私は制度の経緯に詳しくありませんので、御質問には家庭の電気消費者の感想程度となります。御容赦ください。
電気は、国民の意識調査も行い、昨年に家庭用自由化の法改正をしましたが、ガスは、電気の一年半遅れの審議開始で、多くの内容が急ぎ足で議論された感があります。
電力の自由化は、東日本大震災による電力不足や、値上げに際して地域独占への不信感もあり、小売の選択肢拡大には家庭消費者からの期待が大きかった点はガスの自由化と背景が違うと思います。
審議会での事業者ヒアリングが終了した四月に、経産省有識者会議でガス料金規制撤廃大筋了承と全国紙に報道されました。それに対して、主婦連合会の学習会では、電気と違い消費者の誰がガス自由化を望んだのか、消費者の知らない改革だ、自由化で保安は大丈夫か、料金が下がるのかと紛糾しました。同様の意見は、ガス保安審議会でも、複数の消費者委員からも噴出しました。
また、消費者活動をしている方たちへの緊急アンケートでも、七割がガス自由化を知りませんでしたし、八割以上が料金規制や供給義務など消費者保護の維持を希望しておりました。
家庭における電気とガスの受け止めは違い、ガスは安全で安定的な安い料金のための選択肢の拡大だと思います。お手元の資料の二ページ、「参考」に家庭用における電気とガスの違いを整理してありますので、御覧ください。
私は、資料末尾にもありますように、各消費者団体の強力な御支援、御協力をいただき、また、緊急内部アンケート結果を踏まえてガス審議会に臨みました。
それでは、お手元の資料三ページから、ガスシステム改革に関する意見を申し上げます。
三ページです。
生活に必需のガスと家庭消費者保護。
全国五千万世帯の暖房は灯油やエアコンが多いのですが、都市ガス約三千万、LPガス約二千万世帯の台所やお風呂ではガスが利用されております。いずれのガスも、他エネルギーに転換しにくく、日常生活に必要不可欠なライフラインです。
そのガスは、一般ガス二百社、簡易ガス約千社、またLPガス二万社が供給しています。大手ガス会社が大都市圏で供給する約二千万世帯と同様に、ほかの一般、簡易ガスやLPガスが供給される残り三千万世帯も消費者利益を得るべきです。
海外では、自由化当初、料金メニューが多いなど苦情も多発しました。今回の法律では、悪質な小売事業者による被害防止のため、書面交付義務など消費者保護策や、電力・ガス取引監視等委員会による監視制度があり、非常に安心しております。
他方、書面交付義務があり自由化しているLPガスでは、料金など不透明な取引に数千件も相談があります。我慢できずに相談する件数は氷山の一角で、潜在的な不信は大きいと思います。二十九日の本会議で、総理や大臣の御発言に、エネルギーの一体改革で縦割り市場の垣根を越えて消費者メリットを享受できる、電力・ガス取引監視等委員会では自由化後の消費者利益保護に万全を図るとありました。そのとおりに消費者が安心してLPガスも選択できるよう、縦割り行政ではなく、LPガス販売もその委員会で監視して、自由化による不利益な実態を撲滅する制度にしていただきたいと思います。
五ページです。
地方の家庭消費者は、一般ガス会社を選択できるか。
ガスは、電気や水道と同じく、配管や器具の設備負担をして安くて安全で継続した供給を望んできましたので、公益事業として料金や保安規制があります。それにより、低所得者や高齢者など生活弱者も含めた家庭消費者全体が、安心して一般や簡易ガスを利用してきた背景も大切です。
台所や風呂のガス消費量は、世帯の収入ではなく人数により異なります。生活保護、年金生活など生活弱者も年々増加しており、自由化に伴う料金値上げは打撃となり、本末転倒です。
ガス自由化は、一般ガス会社同士の活発な競争が起こり、その結果、多数の家庭消費者に安くて安全にガスが継続的に供給されるのであれば賛成です。しかし、電気は風力など地方でも発電され、送電線は全国につながります。大半が輸入のガスは、輸入者も限られ、全国に輸送導管もつながらず、大口の新規参入件数は全国でも僅か二%のみです。特に輸送導管から孤立した地方一般ガスには、新規事業者は参入のしようがないと思います。
また、約五十の地方卸先一般ガス事業者の約三百万世帯につながる国産天然ガス導管の託送料金には認可制による事前査定もなく、更に卸先ガス事業者圏内は託送料金が累積加算されます。その地域では少量かつ利益の少ない多くの家庭まで戸別にLPガス会社などの新規参入が進出すると思えません。その意味で、小売自由化で新たに二千四百万軒を超える一般家庭が都市ガスの供給事業者を自由に選択できるようになるとのガス審議会報告は、絵に描いた餅のような気がいたします。
七ページを御覧ください。
自由化に関する地方家庭消費者の不安は。
ガス審議会では、あるガス会社が、料金はある程度シークレット部分が自由化のだいご味で、それを明確にしたら自由化ではない、消費者が納得しなければほかに行くのが自由化という発言をしました。それを聞きまして、自由化とは、消費者が事業者を選択できる一方、事業者にも値上げや公開情報、消費者自体を取捨選択する自由があるもろ刃の剣だと再認識させられました。
地方で一般ガスへの新規参入がないまま自由化すると、LPガス販売と同様に、既存の一般ガス会社の独壇場となります。料金コストなど情報公開もせず、他燃料との競争が激しい大口の値下げコストを交渉力のない生活弱者や少量使用世帯に転嫁した値上げや、それに難色を示すと供給拒否をするなど、家庭消費者に不利益が生じる懸念があります。簡易ガスでも戸建て世帯は同じLPガスの事業者変更は比較的容易ですが、アパートでは戸別に転換が困難なため一般ガス世帯と同じような課題があります。
LPガス自由料金は、削減し難い硬直的な小売費用のために料金規制のある一般ガスの約二倍です。今年二月の北海道新聞でも社会問題として一面に大きく報道されました。地方の家庭や飲食店、中小企業の一般ガスや簡易ガスの料金が自由化で値上げされれば、アベノミクスの地方創生に大きく逆行すると思います。
十一ページです。
一般ガスの競争がなくてもガス料金は下がるのか。
海外は、自由化後も家庭用ガス料金が上昇し、欧州ではガス自由化の効果を検証しているとの大和総研のレポートがあります。複雑な自由料金で、透明性も低下しているようです。海外でも小売競争による原料費高騰や公租公課を除いた小売費用が低減したデータを示されれば、消費者の納得感もあると思います。しかし、自由化した結果、それらが情報公開されないので、規制料金の残る国のほとんどの消費者は、自由料金ではなく規制料金を選択していると思います。日本でも、原料等による値上げが抑制されたとの抽象的な説明だけで、固定的な小売費用が低減した客観的データが情報公開されなければ、家庭用消費者はメリットを実感できません。
そもそも自由化の目的は、都市ガス同士の競争活性化を通じ、ガス事業者の選択肢拡大と低廉な料金の実現であったはずです。電力同様に供給者変更の費用が不要なことも大前提です。それを、都市ガス同士の競争の可能性が低い従来のガス事業者も他燃料との競争があり料金規制は不要と決め付けて、他燃料転換の負担を前提として、都市ガス間競争のない事業者にも料金規制の廃止対象を拡大したことは、消費者目線とは言えず、到底納得できません。
例えば、賃貸やマンション五階の世帯は、配管等の造作で家主の了解を取ることも、また戸別でベランダにLPガスや電気温水器の設置やそのための電源引込みは困難です。新築時と違い、持家戸建てでも他燃料設備への変更に負担を感じ、また継続的に一般ガスを利用せざるを得ない大半の既存住宅に住む家庭消費者の利益を考えるべきだと思います。
十三ページに移ります。
自由化に伴う家庭消費者の今後の不安は。
昨年も、ガス器具関連では四百件以上の事故と三十人以上の死傷者との報告があります。家庭消費者は保安知識が乏しく、ガス漏れや器具の誤使用着火、無臭の一酸化炭素中毒など、ガス事故対応は料金低下よりも最優先です。
自由化後は、家屋に立ち入る器具点検は小売事業者や委託会社となります。しかし、点検能力が低いと、リコール器具の一斉巡回点検不備、マンションや飲食店等の一酸化炭素中毒は広範囲の死傷事故になり、また高齢者への点検詐欺も予想されることから、点検員はLPガスと同様に国家資格にすべきです。
ガスは一般商品と違い、品質が同一で給湯などに代替性もないために、安全を前提での消費者の期待は、低廉な継続料金を選択できることです。最大の不安は歯止めのない料金値上げですが、今回、経過措置として海外の多くと同様に規制料金が残り、それより安い料金設定も自由に可能となり、安心しました。
しかし、今後の最大の懸念は、経過措置の対象及び解除となる既存の一般ガス事業者の選定基準となる競争状態に関する指標の実質的な骨抜きです。例えば、競争状態の指標は、都市ガスの利用率七五%以下との意見もあります。そうなると、家庭消費者が百万件の西部ガスも含めた九割のガス事業者の料金規制は一斉に廃止されることになり、七五%が独占率の基準とは全く容認できません。
十四ページに移ります。
料金規制経過措置の撤廃基準は骨抜きにならないか。
台所などでは一般ガスの競争力も大きく、家庭消費者件数も順調に増加している導管卸ガス事業者も多数あります。また、同じガス事業者でも地方により供給区域内の市街地と郊外では独占力も違うことから、特に一般ガスの新規参入がない地方ガス事業者に対する他燃料との競合基準による経過措置の対象範囲は、電力料金のような事業者エリア全体ではなく、市区町村単位でのガス利用率や新築ベースの都市ガス採用率など、きめ細かく厳格な基準とすべきだと思います。
既存一般ガス事業者に関する独占率の基準策定は、消費者団体とともに公正取引委員会や消費者庁も参加した委員会で決めると事務局からも御明言いただいています。その上で、経過措置の撤廃後も電力・ガス取引監視等委員会で競争状態を監視して、再び基準未達となった場合は速やかに経過措置に戻すことを国会附帯決議していただくよう強くお願いする次第です。
最後に、熱事業は都市ガスに比べ約三万世帯と少ない家庭消費者ながら、集合住宅給湯の必需性や熱料金への受け止めを十分に踏まえた安心できる改革案だと評価いたします。
以上です。ありがとうございました。