水島朝穂の発言 (憲法審査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(水島朝穂君) 御質問ありがとうございました。
 芦部教授を含めて、憲法の目的は人権の保障にあって統治機構はその手段であるという理解は司法試験のほぼ共通のものでしたし、これは、実は今年八十年を迎える天皇機関説事件のときの東大を始めとする全ての、早稲田も含めて、教科書の、高等文官試験を受ける、試験を受ける人たちのベースは天皇機関説でした。つまり、当たり前のことが書いてあった。ゲオルグ・イェリネックが、いわゆる国家に主権がある、天皇はその最高の機関なりと、これは当たり前の通説だった。この通説を当時の軍部や貴族院で、この貴族院などがああいう形になって、天皇機関説になって、今年、そういう歴史的なターニングポイントですね。つまり、大学の通説だったもの、天皇機関説が通説だったのは、あれは立憲主義的説明なんですよ、基本的な戦前における。公務員もみんなそうやって試験に受かって天皇の官吏になっていた。
 ところが、戦後は、まさに憲法の目的は人権にありということが価値、まさに前面に押し出された日本国憲法の下で、それが当たり前のように司法試験の教科書として公務員も受験してきたから、先生おっしゃるようなものが頭から生まれてくるのは私は当たり前のことであって、価値中立的でないといった意味は、まさに人権保障が目的だということ。だから、自民党草案がある九十七条は削除しちゃいけないのは、あの九十七、九十八、九十九がそういう関係で公務員も縛っているから、制限規範性を過度に強調して言わば授権規範性を無視するのは全くもって議論に成り立たないのでありまして、制限規範性と授権規範性は裏表の関係なんですね。
 つまり、その意味でいうと、これを説明するために教科書的にやったんであって、本質的の憲法の立て付けというのは、基本的人権の保障という目的に対して統治機構をどう組み立てるか、その際の近代立憲主義を今の憲法の下でどのように組み立てるかというときの説明として出てきている、そういうものが過去の説明も生きてくるわけでありまして、そこを抜きにした一般的な権利義務、裏表とか、そういう議論と同じではないと私は思っております。
 最後になりますけれども、憲法の役割でいいますと、四十四ページ開けていただきますと、私の資料ですけれども、これはゲオルグ・フォルケという人の書いた論文から簡単に引用したんですけれども、憲法の最も重要な働きは制限引き出し機能だ、つまり制限規範だということを言うと同時に、実はもう一つ、方向指示機能も持っていると。リヒトゥンクスバイゼンクスフンクツィオン、方向指示機能とは何か。それは国家の基本的な目標、環境保護であったり社会権だったりする。そういうものを方向指示する機能もあるんだよということを言っていまして、ドイツの場合、それを動物保護まで入れちゃったんですね、近年。それはいろいろ議論あります。
 日本国憲法は、実はそういう形で憲法の中に社会権を含めて、実は本来的な憲法の近代立憲主義の中にその後新たなそういうものが膨らんでいったのは、この憲法の二つ目の私の言う方向指示機能というのがあって、その国がどういう国を目指すのかということなんですけれども、それは決して国柄とか伝統とか文化とか、そういうものには解消されない。そのときの言わば人権を目的とした国を運営する中で出てくる、次々に現代的な課題が出ますよね。ですから、将来、日本国憲法を改正してこういうことを国家目標規定で入れようじゃないかという議論があれば、私も参加したいと思っています。
 でも、被害者の人権を入れようという議論には参加しません。なぜならば、被害者の人権は極めてミスリーディングであって、実は、そもそも端的に言えば、憲法は加害者の人権しか保障しないのが憲法なんですよ。なぜなら、個人は検察、警察に対して圧倒的に弱者ですから、その人間が拷問されないとか令状抜きに逮捕されないとかというのを立て付けてあるんであって、決して被害者となった個人と私人間におけるそういう対応において、そこに、それを人権とした場合、ここに人権の設計が非常に難しくなってくるわけです。
 これは同じことが環境権にも言えていまして、私は、環境権を権利と入れることについては実は賛成しておりません。つまり、権利としてしまった瞬間、環境は、私も環境を侵していますから、権利と権利の調整がすごく難しくなる。
 だから、この方向指示機能と四十四ページに書いたのは、それは専ら人権とかそういうところを膨らませるよりは、先ほど言った統治機構の国家目標規定のようなところを豊かにしていくと、今後日本も変化していく中で。そういう議論の中できちっと議論をすれば僕は十分にあり得るし、それを九十六条で改正しようという議論は私も十分あり得ると思っておりますので、決して制限規範性だけを言っているわけでもなければ、そういう改憲は全部反対だと私たちが言っているわけでもないことを是非、与党の先生方にも知っていただきたいと思いました。

発言情報

speech_id: 118914183X00220150304_012

発言者: 水島朝穂

speaker_id: 18911

日付: 2015-03-04

院: 参議院

会議名: 憲法審査会