前川清成の発言 (憲法審査会)
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○前川清成君 民主党憲法調査会で事務局長を務めております前川清成でございます。
民主党会派を代表して、憲法審査会が取り組むべき課題について意見を述べさせていただきます。
さて、かつて五五年体制下にあっては、自民党はいわゆる自主憲法の制定を党是とし、これに対して革新政党はいわゆる護憲を主張してきました。この自主憲法か護憲かの表現を借りるならば、私たち民主党は、自主憲法、護憲、いずれの立場にもくみいたしません。
まず、いわゆる護憲に関してですが、既に二〇〇五年十月に民主党が取りまとめた憲法提言には、今、求められていることは、二十一世紀の新しい時代を迎えて、未来志向の憲法構想を、勇気をもって打ち立てるということであると述べています。また、二〇一三年一月に改定した新しい党綱領においても、自由と民主主義に立脚した真の立憲主義を確立するため、国民とともに未来志向の憲法を構想していくと明記をしております。
私たちは、戦後七十年、日本が一度も戦争に巻き込まれなかったことや、経済成長など、現行憲法が果たしてきた役割を高く評価しています。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という現行憲法の基本原則は、国民各層に定着をし、法的確信を形成しています。今後も堅持し、さらに具現化の努力を続けなければなりません。
と同時に、戦後七十年が経過をし、やがて憲法も七十歳を迎えます。社会の変化に応じて、今の憲法に足りない点はないのか、改めるべき点はないのか、建設的な議論を尽くすことは当然であり、衆参の憲法審査会はその主導的役割を果たすべきです。
その際には、憲法九条も例外とはなり得ません。戦後七十年間にわたり日本が培った平和主義を堅持し、専守防衛に徹しながらも、仮に安全保障を取り巻く環境が変化をし、憲法九条に足りない点、改めるべき点があるのなら、正々堂々とこの審査会において提案し、議論するべきです。
政府・与党はこれを怠り、昨年七月一日、戦後七十年間積み重ねられてきた政府の憲法解釈を閣議決定により便宜的、意図的、恣意的に変更してしまいましたが、この歯止めのない憲法解釈の変更を許せば憲法がルールではなくなります。憲法の空洞化を許すことは、法の支配の否定、立憲主義の破壊であり、つまりは王様の時代への後戻りです。
次に、自民党の自主憲法に関してですが、憲法改正には衆参両院で総議員の三分の二以上の賛成をもって発議することを要するのであり、自民党が真実、憲法改正を実現したいと願うのであれば、何よりも広範な合意の形成にこそ意を用いるべきです。
ところが、安倍総理は現行憲法について、GHQの憲法も国際法も全くの素人たちがたった八日間で作り上げた代物だと述べ、さらには憲法の制限規範性に関して、それはかつて王様が絶対的権力を持っていた時代の主流的な考え方と述べて否定しています。
しかし、憲法の制限規範性は憲法の存在理由そのものです。人類の歴史を振り返ったとき、国家権力こそ国民の自由や平等にとって障害でした。王様の時代には、王様の政治を批判するだけで殺されてしまいました。つまり、自由がありませんでした。殿様の時代、殿様の家の長男に生まれたならば殿様になり、百姓の家に生まれたならば百姓になりました。つまり、身分によって縛られてしまい、国民は平等ではありませんでした。
これら封建的呪縛を解き放った近代市民革命とともに誕生した憲法は、何よりも国家権力を制限することで国民の自由や平等を保障する制限規範であり、自由の基礎法です。選挙で選ばれた為政者であっても、時にはナチス・ドイツのヒトラーのように暴走してしまいます。したがって、憲法の制限規範性と民主主義とは決して相反するものではありません。
故芦部信喜教授も、現代国家においても権力の制限、人権保障という立憲主義の基本原理は依然として憲法の核心を成すものと言わなければならない、現代の国家権力を、単純な国民代表の論理からそれが全く擬制化している事実に目を覆い、国民ないし国民の自由と敵対関係にないと考えるのも安易な形式論である、明日の多数者となる可能性を持つ今日の少数者の権利、自由が守られない限り民主政治は成立し得ないだろう、権力の制限と権力からの自由はこの意味で現代民主主義を支える基礎そのものと言ってよいと述べておられます。
憲法改正に向けて広範な合意を形成するためには、積み重ねられた国会の議論や立憲主義の思想とその歴史、学説、判例など、すなわち憲法の良識を尊重するべきです。素人発言や制限規範性の否定、憲法に国柄なるものを盛り込むべきだなど、独自の見解を声高に叫ぶだけでは憲法改正に対して警戒感を強めるだけであり、広範な合意形成の障害になります。
それゆえに、我が党の岡田代表も、安倍総理の素人発言に関して次のとおり発言しています。日本国憲法をここまで蔑んでいいのでしょうか、私はそういう安倍総理の下で憲法改正の論議をすることは慎重でなければならないと思いますと。しかし、さきに述べたとおり、我々は憲法の議論を拒絶するものではありません。それゆえに岡田代表も、これに続いて、まず、こういう憲法観を撤回して、そして日本国憲法の果たしてきた役割をしっかりと評価する、その上での議論でなければならないと私は思いますと述べておられます。
各党各会派が積み重ねられてきた憲法の良識を尊重することによってこの審査会が国民とともに未来志向の憲法を構想する場となることを切望して、民主党を代表しての意見表明といたします。
ありがとうございました。