北口明代の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(北口明代君) こんにちは。生協労連の北口と申します。
私は、雇用形態の違いによる差別はもう常々人権侵害だと思っており、同一価値労働同一賃金原則を日本に根付かせたい、そのためには職務評価が必要だと考えているので、今日のような発言の場をいただいたことにまず感謝を申し上げたいと思います。
非正規労働者の待遇改善を願って生協労連で実施している取組について発言をさせていただきます。
まず、今回の労働者派遣法の改正案のことなんですけれども、不安定な雇用である派遣労働者を増大させるもので、私は、もう絶対に反対だと思います。むしろ、均等待遇原則を盛り込み、派遣労働は臨時的、一時的業務に限定させるよう法改正すべきだと思います。
また、本日のテーマである本法案でございますけれども、調査研究の後、三年以内に法改正を求めており、その道筋を付けたことについては一歩前進だと考えておりますが、しかしながら、実効力については大いに疑問を感じております。そのことについては後で述べたいというふうに思います。
それでは、まず生協労連の活動について御紹介したいと思います。
生協労連は、全国の地域生協、大学生協、学校生協などで働く労働組合の連合会です。約六万五千人の組合員のうち七割がパートなど非正規労働者です。私自身もパートタイマー出身です。初めて女性で非正規出身の中央執行委員長として三年前に選出をされました。これは、生協労連が二〇〇四年から全ての労働者のディーセントワークの実現とジェンダー平等社会の実現を目指して、そのために、増大する非正規課題を生協労連の主軸とすることと、七割を構成するパート労働者が運動の真ん中に立ち上がるように取組を進めてきた結果です。
現在、中央執行委員、中央委員、大会代議員など、約四割がパート女性が参画をしております。最低賃金の大幅引上げ、均等待遇の実現、無期雇用への転換などを中心に、社会対話、法規制、そして春闘、秋闘での理事会要求を出し、大きな前進を勝ち取ってきているというところでございます。
最低賃金につきましては、いつでもどこでも誰でも今すぐ千円以上にと運動を続け、昨年は全国平均七百八十円と、この十年間で百十五円を引き上げる牽引役を果たしてきたと自負しております。
今年の七月の末に今年度の最賃の目安改定、全国平均十八円の目安答申が出されましたけれども、今、地方の最賃の決定協議が進められているところでございますが、一番高い東京でも、今年十九円ということで九百七円にはなりましたが、低いところではまだ六百円台の半ばだということで、政労使で合意した二〇二〇年までに千円、早期に八百円にほど遠い状況だと。地域間格差も二百十一円から更に広がるということで、この最低賃金の大幅引上げも非正規労働者にとっては大きな課題だというふうに思っております。
もう一つは無期雇用への転換でございますけれども、こちらについては、労働契約法が改正されたことを力に、二〇一二年秋から理事会へ強く要求をして、従前より無期雇用だったところも含め、法律より前倒しで、三十五の生協で約三万五千人のパートやアルバイトなど非正規労働者の無期雇用を実現させました。無期雇用契約というのはパート労働者の長年の要求でしたので、本当に大きな岩が動いたという実感をしております。これは、やっぱり法律を作ることがいかに効力があるのか、そして労働組合があればそれを実現できる、このことに確信を深めております。
ですので、残された課題は均等待遇の実現なんですね。福利厚生や特別休暇制度などの均等待遇については一歩一歩着実に前進させていますし、労契法やパート法も改正されたのを力に活用させていただいているところでございます。したがって、本当に残された課題は賃金の均等待遇の実現でございます。
生協労連は一九八〇年にパート部会を結成し、パートの主体的な運動と組織化を促して、法整備、パート法ですとか労契法ですとか、こういった法律の整備を求めてきました。しかし、パート法につきましては、制定時から都度都度の改正運動を続けて、二〇〇三年には差別禁止規定も盛り込ませましたけれども、残念ながら、抜本的な改善には至っていません。これは、やっぱり法律上の不備があるのだということを言わざるを得ません。
パート法も労契法も法律上の強制力がない、このことが大きな要因だと思っております。しかも、パート法や派遣法では正規と非正規が人事管理上違うとし、雇用形態差別を認めています。昨年のパート法の改正では、差別禁止の三要件、一つには職務と責任が同じ、人材活用の仕組みが同じか、無期か有期かのうち、無期か有期かの要件については削除をされましたけれども、依然として人材活用の仕組みが残っており、ほとんどのパートは残念ながら対象外だと。ここを突破しないと均等待遇は望めないと思います。
だからこそ、人に付く賃金から仕事賃金へ移行し、同じ価値の仕事をしていたら同じ賃金を支払うようにしないと、非正規労働者の待遇改善は一向に進みません。パートや派遣は安くて当たり前は世界の非常識です。早急に導入すべき時期に来ていると思います。
その理由としては、一つには、多くの国では同一価値労働同一賃金原則、仕事を基準として、同じ価値の仕事をしていたら同じ処遇にする、これによって仕事を決めている。性、年齢、人種、信条、雇用形態などを理由とした賃金格差は差別に当たるというのが国際社会の常識だと。
二つ目には、ILO条約適用専門家委員会、国連女性差別撤廃委員会からも男女・雇用形態間の賃金格差の是正が求められています。非正規労働者は女性に多いことからも間接差別に当たるのではないかという指摘もあり、女性の地位向上のためにも非正規労働者の待遇改善は有効です。
三つ目、男性の片働き、女性は家計補助的な労働とのこれまでの家族モデルは崩壊しつつあり、非自発の非正規労働者が増大しています。
四つ目、約四割の非正規労働者はもう既に職務賃金です。終身年功賃金制度の正規労働者の比率は減少しています。生協の中でも、職能資格制度から役割等級制度へ移行している生協もあります。
五つ目、グローバル経済の下、多国籍企業も増え、日本だけの固有の制度を持つのは限界が来ています。先ほどのイケアさんの御報告でもそうだなと本当に思いました。国際基準で一本化することが企業にとってもプラスだと思います。日本ではヨーロッパのような職務給ではない、産別の労働市場が形成されていないという意見がありますが、だからこそ、仕事の価値を点数化することで客観視できる職務評価が有効だというふうに思います。
次に、生協労連で実施した職務評価について説明をしたいというふうに思います。
パート労働黒書の下に一つぺらで資料を付けておりますので、そちらの方を見ていただければというふうに思います。
職務評価というのは仕事の価値を測るもので、やり方としては、評価の基準として職務評価ファクターを作成します。この職務評価ファクターという表を見ていただければいいと思いますが、この四つのファクター、仕事の負担、知識・技能、責任、労働環境、この四つのファクターは国際的な基準でございます。そして、それを十二のサブファクターに分けており、それぞれにウエートを千点満点で配分を決めています。これは、サブファクターから点数については生協版として作成をしています。ここでは、労働者からアンケート方式で労働者に回答をしていただきました。
これは、跡見女子大学の禿准教授の御指導でコープあいちでの調査でございます。調査の結果としましては、後ろのページを見ていただければというふうに思います。生協は、共同購入とか個配とかの配送を正社員やそれからパート社員や、それから最近では委託労働者もしているんですけれども、ここで配送をしている正社員とパート職員にアンケートで聞いていただいた結果でございます。見ていただければ明らかなとおり、正規職員の平均点は六百三十四・二点、パート職員は五百六十二・八点。つまり、仕事の価値は正規一〇〇に対しパートはほぼ九割でございます。表にはありませんけれども、担当者レベルの正規と中核を担うパートとの比較では一〇〇対九八との結果になりました。
では、賃金はどうなっているのかといいますと、時給換算で正規職員は二千五十一円に対しパートは千百五十九円、正規一〇〇に対しパート五六%と、六割にも届いていないと。これを一時金を含めると格差はもっと広がり、ほぼ半分になってしまうと。これは、パートや非正規のところは一時金がない、あっても月数がほんの僅かということで格差が広がる。ほぼ九割の仕事に対し賃金は半分との結果になっています。これを職務の価値に見合った賃金にすると、パートは千八百二十円、一時金込みならば二千百三十八円が妥当との結果になります。店舗の場合についても同様でございますので、見ておいていただければというふうに思います。
このように、正規は仕事の価値の数値が高くなるのは当然ですけれども、パートだからといって単純定型作業ではなく、責任ある仕事をしている。今、正規が店舗ではもう一割もいるかいないかという状況の中で、ほとんどがパートが担っているということでございますので、この賃金格差の実態が明らかになっているということでございます。
次に、生協で働くパートの実態について御紹介したいので、お手元のパート労働黒書の方を御参照いただければというふうに思いますが、時間の関係がございますので詳細は省きますが、離婚後のシングルマザーやリストラ後の中高年とその家族が、非自発のパート、非正規労働者が増大して、ダブルワーク、トリプルワークで生活し、自身の健康や子供の教育の権利を奪う実態が広がっています。格差の縮小、貧困撲滅のためにも、パートや非正規労働者の待遇改善は待ったなしの課題だというふうに思います。
次に、この法案についての実効性について懸念があるということについて幾つか意見を述べさせていただきます。
一つには、雇用の多様化とありますが、これは、企業にとって使い勝手が良いだけで、実際に労働者は選択ができません。シングルマザーや青年の多くが非自発的に非正規雇用を選ばざるを得ない実態からも明らかです。一旦正社員を辞めてしまうと非正規の就職口しかない、これが今の日本の現状です。
また、均等待遇に加え均衡待遇という概念が盛り込まれていますが、この均衡というのはバランスという意味であって、その水準も明確になっておらず、有効ではありません。削除すべきだと思います。
また、意欲、能力に応じてとありますけれども、職務評価ファクターを見ていただければ明らかのように、仕事の価値評価にはこういった文言はありません。意欲や能力というのも人に付くものなんですね。ですので、同一価値労働同一賃金原則には当てはまりません。
したがって、厚生労働省に要請したいのは、今作っている職務評価マニュアルではなくて、同一価値労働同一賃金による職務評価のひな形を作成して広報していただきたいというふうに思っております。明治大学の遠藤先生等々も作成しておりますので、是非参考にしていただければというふうに思います。
最後に、賃金は労使でとよく言いますけれども、しかし、日本における組織率は年々低下しており、残念ながら、労組の力は弱くなっているのが現状です。特に、非正規労働者は九割以上が未組織です。派遣労働者は解雇を覚悟の上で労組に加入し闘わなければならないのが現状です。法律による規制が必要です。
この法案はフルタイムで働く人を対象にしていますけれども、三年以内に同一価値労働同一賃金原則が盛り込まれた有効な法律が施行されれば、パート法への影響は大きいと思いますし、非正規労働者の待遇改善には本当に必要な法律だというふうに思います。是非、的確な調査を行い、三年以内の実効ある法改正を望みます。
あと一分ありますね。では、あと一分あるので、ちょっと実際にパートの労働者の声を聞いていただきたいというふうに思います。今年、春闘で団交で出されたパートの声です。是非、皆さん、経営者になったつもりで、団交の向こう側にいるつもりで聞いていただきたいというふうに思います。
これはある店舗で働く仲間です。
今、人手不足の中で働いています。レジのオープンは二人でしています。体調不良でも休むと一人になるので休めません。熱があっても出勤しています。休めばいいと言われるかもしれないけれども、急な休みに人の補充ができないことが分かっているから休めないのです。一時間早出と一時間残業が最初からシフトに組まれていることはしょっちゅうです。節分のときはグロッサリーから二人レジ応援に一日中入っていました。グロッサリーの仕事は誰がするのでしょうか。夕方の五時からグロッサリーの人が仕事をしていました。また、農産はリニューアルをして売場も増えているし仕事も増えているのに、二十時間のパートが辞めてしまいました。その代わり、二十時間で働いていた人を三十時間に契約を変更しました。週十時間増やしただけで、十時間分は誰かがやらなければいけない。こういう実態になっている、何とかしてほしいという中身なんですけれども。
このように、パート労働者といっても、要するに単純定型でやっているわけではないし、残業ももちろんやっているし、請われればそういう状態で働いている。それなのに、この人たちは千円以下で働かせている実態があります。
是非、有効なる法改正を望みます。
以上でございます。