安永貴夫の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(安永貴夫君) ありがとうございます。
 日本労働組合総連合会、連合の副事務局長をさせていただいております安永でございます。
 本日は、このような機会を与えていただいたことに感謝申し上げます。
 私は、加盟組合員約六百八十二万人はもとより、全ての働く人たちの雇用と暮らしを守る取組を日々行っております立場から発言をさせていただきたいと存じます。
 まずは、基本的な見解を申し上げます。
 本法案は、労働者派遣制度の二つの世界標準であります臨時的、一時的業務に限ること及び均等待遇の両方を満たしておりません。したがって、派遣労働者の低処遇を放置したまま常態的間接雇用法制を実質的に導入するものであります。このことは、企業にとって安くて使い勝手の良い派遣労働を一層拡大させようというものであり、我が国の雇用の在り方に重大な悪影響を与えることから、反対であることをまずは申し上げます。
 衆議院の審議におきましても、雇用安定措置について実効性が全くないこと、また、現在、専門二十六業務に従事している派遣労働者が既に雇用打切りを予告されていることなどの実態が明らかにされております。
 雇用労働者のうち非正規労働者が四割近くになってしまっている実態の中で、これ以上、低賃金、不安定雇用の労働者を増やすことはGDPの約六割を占める個人消費の低迷につながり、経済の好循環にもブレーキとなることは明確であります。今取られるべきは、一人でも多くの労働者を安定した雇用に誘導する政策であるということを申し上げて、資料を使って具体的内容について述べたいと思います。
 それでは、私が提出しております資料の右下の番号に沿って御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、スライド一以降の労働者派遣の現状と問題点について申し上げます。スライド二を御覧ください。
 釈迦に説法の点も多くございますが、話の流れもございますので御容赦をお願いしたいと思います。
 労働者派遣は、元々、労働者供給事業を禁止しております職業安定法四十四条の例外として認められたものです。戦後長らく禁止されていたことの例外なのです。その考え方の下、一九八五年の制定時には、専門知識等を必要とする十三業務に限定されておりました。その後、一貫して規制緩和の流れで法改正が行われ、一九九九年には対象業務を五つの業務を除き全て自由化するという抜本的改正が行われ、二〇〇三年には製造業務も解禁されています。まさに、小さく産んで大きく育てられてきてしまったわけでございます。
 スライド三です。今申し上げた規制緩和によって労働者派遣が拡大しましたが、二〇〇八年、リーマン・ショックの影響などで、いわゆる派遣切りが派遣労働者を直撃しました。日比谷公園に年越し派遣村ができました。僅か六年半前の話です。このような社会状況の中で、二〇一二年に初めて派遣労働者の保護の方向にかじを切った法改正が行われました。
 この背景には、二〇〇八年の自民党、公明党による与党新雇用対策に関するプロジェクトチームが取りまとめた提言がベースにあり、その後の民主党政権下で自民党、公明党との修正協議を経て実を結んだものでございます。
 スライド四のとおり、前回の改正により、派遣労働者の雇用安定と処遇改善に向けた取組が一定の前進を果たしております。
 スライド五です。左の逆三角形が派遣です。派遣という働き方は、雇用責任、使用者責任が曖昧になり、派遣労働者の保護に問題が起きやすい実態がございます。労働者の権利も行使しづらく、私どもへ、生活費を賄う収入を得られない、せめて通勤費を支給してほしい、派遣というだけで社会に認めてもらえないといった切実な声が多く寄せられております。
 スライド六です。リーマン・ショックのときの状況を見てみましても、雇用が不安定であることは明確でございます。派遣先との派遣契約が中途解約された場合では、派遣元での雇用が継続したのは僅か一〇・九%しかなく、離職が八三・四%、うち解雇が八六・二%にも上ったのでございます。
 しかも、スライド七で明らかなとおり、派遣元で無期雇用であっても解雇されております。合理的な理由と社会的相当性が必要とされる解雇事由に該当しない違法な解雇が横行しました。雇用が不安定であることと、そういう処遇が低いということは、無期雇用であろうが有期雇用であろうが関係がないというのが実態でございます。
 スライド八に問題点をまとめてみましたので後に御覧いただければと思いますが、雇用の不安定、低い処遇を中心に多くの問題点がございます。以下、個別に申し上げます。
 スライド九は、処遇の低さを示しています。一番上の正社員は年齢や経験とともに処遇が上がっていくいわゆる賃金カーブを描いていますが、派遣労働者はカーブを描かず低空飛行、一直線になっております。しかも、ボーナスはおろか、通勤費さえもほとんど支給されていません。
 スライド十は派遣労働者の賃金の分布でございますが、七五%が年収三百万円以下であるとともに、無期雇用だろうが有期だろうが水準は変わらないことが分かります。
 スライド十一は、派遣料金と賃金の関係を示しております。Mとしておりますのは、派遣料金と派遣労働者の賃金とのギャップ、マージン率でございます。派遣労働者の賃金は、外部労働市場における派遣料金に大きく影響を受けます。特定労働者派遣、いわゆる常用雇用でも、平成十六年と十九年を比較すると、派遣料金も賃金も二割程度減少しております。しかしながら、マージン比率は一定の割合で取り続けております。
 スライド十二はアンケートの結果で、派遣労働を選んだ理由を聞いておりますが、四割近くが正社員として働きたかったが職が見付からなかったためとしており、最初から不本意という状況でございます。
 スライド十三は、同じアンケートでの今後の働き方についての質問ですが、派遣労働者の六割以上が正社員として働きたいと答えております。②の方は事業所経由で調査したもので、したがって、バイアスが掛かっていると疑われる調査結果ですが、それとて四割以上でございます。
 スライド十四以降に連合の考え方を示しました。
 スライド十五で、派遣労働は臨時的、一時的な労働力需給調整であるとの位置付けを堅持して、実態として常用代替を防止すべきです。そのためにも、専門業務は今日的な内容に絞り込んだ上で、業務区分による期間制限を維持すべきです。また、同時に、均等処遇の実現、実効あるキャリアアップ措置などの派遣労働者の保護を図る派遣法とすべきでございます。派遣労働者を保護することは、低賃金のまま派遣を続けられるようにすることではありません。
 スライド十六及び十七で詳細を記述しておりますので、後に御覧いただければ幸いでございますが、臨時的、一時的であることは、それから均等待遇であることは、EUを始め韓国、中国でも法で定められており、言わば世界標準でございます。経営者の皆さんからよくイコールフッティングを言われますが、こういうときは余り言われないのが不思議でございます。
 スライド十八では、均等処遇をイメージ図で示しております。EU型と韓国型の説明もしておりますが、本来、労働力の需給調整のメリットを享受することが目的であるとすれば、それに伴うコストは派遣先が負うべきであり、均等待遇一〇〇にマージンを例えば三〇を上乗せすることにより、必然的に、派遣を活用すれば直接雇用よりも高く付く、一三〇になって当然だという考えになります。労働者派遣法の制定はそういうイメージで議論をされてできたはずですし、実際にEUなどはそのようになっております。それでも派遣先にとっては労働力の需給調整のメリットはあるはずでございます。
 十九スライドでは、実効あるキャリアアップ措置をまとめております。また、派遣先の団体交渉応諾義務の明確化でございますとか、派遣先労働組合等がしっかり関与できる仕組みの構築を求めております。
 二十スライドからは、これまでの問題点を踏まえた上で、今回の改正法案についての評価です。
 まず、派遣は臨時的、一時的な働き方という原則が骨抜きになっております。文言では考慮するとしながらも、従来設けられておりました最長三年の期間制限を撤廃しております。雇用安定措置は実効性が全くありません。特に②の新たな就業機会の提供は、労働市場での需給調整機能を担っている派遣会社なら当然の本来業務でございます。処遇改善策も、配慮義務では全く実効がありません。均衡を考慮したことを労働者に説明するだけでは私が妻に言い訳するのと同様でございまして、しかも均等でなく均衡です。バランスを取ることも配慮義務でしかありません。この条文から、どうしたら労働者の処遇改善につながるのでしょうか。
 二十二スライドは、期間制限が撤廃されることを説明した図でございます。これについては省略をさせていただきます。
 二十三スライドは、問題点の続きです。登録派遣のままで、キャリアアップ措置も派遣元、派遣先共本気でやるかどうか疑問です。正社員化の促進も、教育訓練の内容が大きく後退していることや、直接雇用申込義務が削除されており、促進するという根拠がありません。
 立法のプロセスにも問題がございました。労政審の論議に使用者側のオブザーバーとして出席をされた直接の利害関係者である派遣業界団体の方が使用者側意見の五割以上発言されるという異例な事態でございました。派遣業界団体が当時の厚生労働大臣に要請して出席がかなったと聞いております。
 それから、今回の閣法提出に当たって、自公の政調会長合意に基づく修正内容については労政審の論議を経ていないことも問題でございます。また、過去の改正が施行日から最低でも五か月ありましたが、今回は、業務区分を廃止するという派遣法制定以来の大改正にもかかわらず、施行日まであと十日しかありません。新聞情報では修正案の記述もございますが、それとて僅か一か月でございます。
 二十四スライドは、十月一日施行される労働契約申込みみなし制度でございますが、時間の関係で説明は省きたいと思います。
 以上、本法案の問題点について申し上げました。
 最後に、本法案は、臨時的、一時的及び均等待遇の両方を満たしておらず、生涯派遣で低賃金の労働者を増やし、経済成長、少子化、社会保障などなどに悪影響をもたらすものであることを御指摘申し上げ、再度反対の意を表し、連合としての意見といたします。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 安永貴夫

speaker_id: 6162

日付: 2015-08-20

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会