牛嶋素一の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(牛嶋素一君) 日本エンジニアリングアウトソーシング協会の牛嶋でございます。本日は、当協会の意見を述べさせていただく機会をいただき、誠にありがとうございます。
 当協会といたしましては、今回の派遣法改正案につきましては基本的に肯定的に捉えており、その立場からお話しさせていただきたいと思います。なお、具体的な内容につきましては、我々の業界の産業構造や、そこで働く労働者の視点を交えながらお話しさせていただきます。
 日本エンジニアリングアウトソーシング協会は、お取引先企業とそれから働く人々が安心、信頼できるアウトソーシング業界を目指して、物づくりの上流工程であります設計開発サービスを派遣若しくは請負という形で提供することで日本の物づくりを支えるアウトソーシング事業者の集まりでございます。
 御存じのとおり、日本の製造業におきましては、競争力強化の観点から外部戦力の活用が進んでおり、我々の業界もそれとともに成長してまいりました。また、多様な働き方を求めるエンジニアという職業の労働者にとっても、非常に意義のある業界であるというふうに自負しております。
 我々の業界の企業の社員は、そのエンジニアという職業の人生において、複数の顧客企業であるメーカーに派遣されたり、請負という形で設計開発等の業務を経験いたします。我々は、この働き方を、会社を軸とした会社型ではなく、エンジニアという職業を軸とした職業型の、我々の言い方ではプロフェッショナルエンジニアの働き方というふうに考えております。我々の社員にとっては、仕事をするフィールドは一つの会社ではなく日本のエンジニアリング市場全体となります。
 派遣は不安定だという意見を多く聞きますけれども、我々の業界では社員はほとんど無期雇用であり、その雇用は非常に安定しています。例えば、顧客企業若しくはその業界ごとの好不況をエンジニアリング市場全体で吸収できますので、その点でも一つの会社に所属するよりも安定しているというふうに言えます。一部、リーマン・ショック時には無期雇用でも派遣労働者は解雇されたという話がありますが、少なくとも我々の業界では一般企業と同等以上に社員の雇用を守ることに努力してまいりました。
 また、一般的にエンジニアは、メーカーに入社し長年その会社一社で業務するわけですけれども、一定の年齢に達しますと、業務内容は設計開発だけではなく管理業務等を行うことを求められる場合もあります。これは会社型の働き方であり、生涯エンジニアとして最前線で活躍したいという職業型の働き方を求める社員にとっては望まない働き方となる場合もあります。
 我々の業界における無期雇用派遣若しくは請負業務は、生涯にわたってエンジニアという仕事を全うしたいという社員のための合理的な選択肢の一つです。派遣法改正関連の報道を見ますと、生涯派遣という言葉が非常にネガティブなものとして使われていますが、我々の業界では、生涯にわたりエンジニアとして仕事を全うできることは非常にポジティブな尊敬すべき働き方と捉えています。
 そして、近年、当業界においても定年退職を迎える社員が年々増えてきており、生涯にわたりエンジニアという働き方を全うし、満足している社員が多くいることも事実であります。派遣という働き方は、テンポラリーな労働サービスを提供するという側面もありますが、職業を軸としたプロフェッショナルな労働サービスを提供できるものであるということも御理解いただきたいと思います。
 以上のような業界にいる事業者、労働者の観点から、今回の派遣法改正について、当協会の意見を何点かお話しさせていただきます。
 まず第一に、政令二十六業務が廃止される点についてです。
 現行法では、専門性の観点から、いわゆる政令二十六業務とそれ以外の業務を区分して、専門性の高い業務に関しては派遣の期間制限は設けずに、それ以外の業務を行う場合は一年又は三年という期間制限が設けられています。改正法案では、二十六業務が廃止され、業務区分による派遣期間の制限はなくなり、派遣元との雇用契約が有期か無期かにより派遣の期間制限が規定されるようになります。有期雇用労働者は三年間の期間制限、派遣元に無期雇用され雇用の安定が図られている派遣労働者は派遣期間の制限がなくなるという分かりやすい制度となります。
 現行のいわゆる政令二十六業務ですが、度々問題が指摘されているとおり、区分基準が不明確であり、労働局により見解が異なるなど、現場で混乱を招いてまいりました。また、労働の現場において合理的とは言えない区分がされていることも多くあります。例えば、機械設計は二十六業務とされていますが、パソコンに向かって設計をしている業務は二十六業務になりますが、担当プロジェクトの会議準備など、通常、メーカーの設計エンジニアが行う業務が二十六業務にならないなど、現場のエンジニアにとって理解に苦しむ内容となっております。
 そもそも、業務の専門性は業種、業態により異なること、そして時の経過により変化するものであることから、法律で画一的に区分することは非常に困難なものと言えます。二十六業務が廃止され、専門以外の周辺業務が期間制限なく同様に行われるようになるということは、派遣エンジニアの業務の幅が広がり、彼らのキャリア形成、能力開発の観点からも歓迎すべきことです。経験が少ない新人エンジニアにとって、専門以外の周辺業務も行うことでスキルアップを進めていくのが自然ですし、派遣先のチームの一員として仕事をスムーズに進めるためにも必要なことであります。
 二つ目のポイントとして、全ての派遣事業を許可制にすることについてですが、これまでは許可が必要な一般派遣事業と届出だけの特定派遣事業がありましたが、改正案により一般と特定の区分がなくなり、全てが許可制となり厳格化されることは、派遣業界全体の健全化に資するものとして歓迎される変化であると考えます。
 三つ目に、キャリアアップ支援措置の義務化については、キャリア支援が全ての派遣元事業者に義務化されることや、派遣先にも必要な研修等を提供する配慮を求めることも非常に良いことであるというふうに思います。
 実は、元々、無期雇用派遣事業者は派遣労働者のキャリア支援に力を入れておりますが、我々の業界はエンジニアリングという特殊な知識を取り扱うため、日進月歩の技術にキャッチアップするために会社が個人のキャリアアップ支援を行うことは当然のことであります。
 また、先ほどほとんどの社員が無期雇用であるとお話ししましたが、無期雇用は労働者にとって雇用が安定するという意味において大変良いことである一方で、派遣元事業者にとっては、誤解を恐れずに言いますと、派遣先での仕事がないときでも雇用を維持し給料を支払うため、常にコストが発生するというリスクでもあります。無期雇用派遣事業者がこのリスクを軽減するためにも、派遣労働者が常に働ける状態をつくっておくことが必要になります。このために、最も大きな事業上の対策が労働者の能力アップを行うキャリアアップ支援であります。
 無期雇用派遣においては、労働者のキャリアアップを行わないと顧客の要望に応えることができず、事業運営が厳しくなるというプレッシャーを常に抱えております。逆に言うと、派遣労働者のキャリアアップが事業の業績を上げるという構造を持っており、これまでも社員のキャリアアップ支援に力を入れてきたという業界であります。労働者派遣事業が全て許可制になること、キャリアアップ支援が義務化されることなどは、中小事業者にとっては厳しい条件になると思いますが、労働者を直接雇用する派遣事業者にとっては、社会的な責任を果たすという意味においても、当然求められるべき義務であるというふうに考えております。
 以上のような点から、改正派遣法案は、派遣労働者の雇用安定やキャリアアップに資するだけでなく、業界全体の健全化にもつながるものと考えております。
 最後に、既にお話ししたこととも関係しますが、派遣はテンポラリーな労働サービスを提供するという側面と職業を軸としたプロフェッショナルな労働サービスを提供するという側面を持っておりますが、今般の改正法案においても、この二つの面が混在し、正しく整理されている状況とは言い難いと考えております。今後は、その点を踏まえた改善が進むことを望んでおります。
 以上になります。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 牛嶋素一

speaker_id: 4269

日付: 2015-08-26

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会