藤原帰一の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
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○参考人(藤原帰一君) 複雑な長い歴史があるということに反論をするつもりはありません。ただ、これでは問題の把握になるかどうか実は分からないんですね。また、植民地支配がいけないんだという話に持っていけば問題が説明されるというものでもありません。絶妙なバランスの秩序とおっしゃったものを具体的に解明することがいかに大変なことなのかは、地域研究をした者は誰でも知っていることです。ですから、問題をつかまなければいけない。
では、どこに問題があるのか。非常に大きなポイントは、欧米諸国の政策一般ではなくて、また民主化へのアプローチ一般でもなくて、その土地を支配している権力を倒してしまうこと、この一点に尽きます。それをイラクでやっちゃったんです。今は戦争を戦わないアメリカの下で混乱が広がるという恐慌的な事態になっていますが、その前に要らない戦争を戦ったわけですね。
イラクのフセイン政権は明らかに独裁政権でしたけれども、領土を支配する力は持っていた。私はこの戦争には反対でした。その戦争の大きな引き金となっていた議論は、正気とは思えませんけれども、民主化を広げていく機会になるだろうと。本当にそう思っちゃったんですね。いかにアメリカでもそのような政策を遂行する人ばかりではありませんけれども、あれはイスラエルのため、あるいは石油のためじゃなくて、本当に民主化が広がるという思い込みがあったんです。
結果的に何があったかというと、そこで実効的な支配をしている権力を倒してしまって権力の真空をつくっちゃったんですね。これに対する反対はリベラリズムではありません、むしろリアリズムです。悪い政府であっても、そこを支配している権力を倒した場合には権力の真空が生まれるという問題があるんです。ほかにも様々な問題がありますけれども、この一点にとどめておきましょう。
ヨーロッパ、アメリカ一般の問題というよりも、実効的な支配をしている政府を倒すことがどのようなリスクを伴うのかを考えることが今重要です。このことは同時に、中心拠点、悪者を倒せば問題が解決するといった単純化をしないことが必要なんですね。安定した統治が広がることなしにはこの問題の出口がない、それだけ申し上げておきましょう。