藤原帰一の発言 (国際経済・外交に関する調査会)

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○参考人(藤原帰一君) かなり広いお話になるのを、要点をまとめるのが難しいんですが、イスラムという焦点がアメリカの外交にどう生まれてきたのかということで考えますと、これは、決定的な瞬間は何よりも九月十一日の同時多発テロ事件。その前に導火線はありました。既に、湾岸戦争の後、冷戦終結期ですけれども、サダム・フセイン、イラクの政府との関係が湾岸戦争が終結した後でも国内政治の争点となります。
 私はこの湾岸戦争において越境攻撃を控えたことは正当だったと考えていますけれども、それはもう今は改めて説明するまでもない状況になってしまったと思いますが、攻撃すべきであった、フセイン政権を倒すべきであったという議論が出てくるんですね。そして、これはアメリカの講釈になりますが、議会制民主主義への転換が様々な地域、ラテンアメリカ、東南アジア、あるいは旧ソ連、東欧諸国などで進む中で、中東だけが残されているということが問題になります。
 制度の問題で申し上げますと、地域の専門家が国務省で大幅に交代して、民主化を進めるとかいったアジェンダ、争点を第一にした組織がクリントン政権の時代に生まれます。このことが、板橋先生がおっしゃったこととつながるんですが、地域の専門家の判断が政策に反映しづらい仕掛けをつくってしまいます。
 結果論から申し上げますと、中東の民主化の非常に大きな機会をお父さんのブッシュ大統領が逸してしまったというところから、これは少数派の意見でしたけれども、フセイン政権を力によって倒すべきだという議論がクリントン政権のさなかに繰り返される。そして、クリントン政権のときには、空爆をして地面から空を攻撃する拠点を破壊しては、しかしながら軍事行動はそこにとどめるというイタチごっこが続いてきたんですが、子供の方のブッシュ大統領が生まれて、二月ですか、やはり同じような事件が起こります。このときにも、こんなイタチごっこを続けることはない、やはりあの政権は倒すべきだという元気のいい議論が出てくる。
 念のために申し上げますが、このときにイスラム社会全体に対する偏見とかあるいは反発とかがアメリカの外交を支配していたとは必ずしも言えません。というよりは、言うことができません。これはマイノリティーの議論でした。ですから、二〇〇一年の春に私が国務省の皆さんなどからお話をお伺いしたときには、本当に簡単に言えば、そんな素人みたいなことを言っている、とんでもないといった議論で、ほとんど一蹴していたんですね。それが九月の十一日、同時多発テロ事件で全部転換することになりました。
 説明が長くなり過ぎました。このお話を更に広げて申し上げますと、最初の方でお話に何回か出てきましたが、根源ということを市田さんがおっしゃって、それから最初の御質問で二之湯さんですか、やはり構造的な問題に目を向けるべきだというお話がありました。このことで申し上げれば、イスラム系の移民を抱えている社会における中東諸国との関係、これが大きな争点となっていて、しかもイスラム系の移民に対する迫害の強化、ムスリムはテロリストだといったような動きがオランダからデンマークといったところにまで広がってしまっている。アメリカの場合にはイスラム系の住民の数が少ないですから、ですから移民問題ということに必ずしもならないんですが、そのことは逆に現実離れした悪魔的なイメージを非常に広げやすい土台があるということです。日本は、今のところその中には入っていません。イスラム教徒だから敵だといった観念が生まれるほどイスラム教徒に出会った人がそもそも少ないという状況でしょう。
 ただ、今申し上げたように、敵と味方をそれぞれ一括するような認識が一旦社会の中に生まれてしまいますと、これを増幅するような扇情的な政治家と結び付いて一気に紛争が根深いものになってしまいます。残念ながら、この状況はヨーロッパの比較的移民問題が少ないとされていたところまで今広がっている最中だという認識です。
 以上です。

発言情報

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発言者: 藤原帰一

speaker_id: 15403

日付: 2015-05-13

院: 参議院

会議名: 国際経済・外交に関する調査会