金子勝の発言 (国際経済・外交に関する調査会)

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○参考人(金子勝君) オバマ大統領は、自国の国内で低所得者に公的な医療保険を拡大しようとしていますので、直接国民皆保険を壊すということは主張はしていないと思います。
 結果として、アメリカが競争上優位にあるのが、先ほど申し上げたように医薬品、医療機械、それから保険分野なわけです。これは過去、貿易交渉で、もう先ほど申し上げたように、保険分野でかなり譲ったりして、むしろ割り当てて独占状態をつくってしまったわけですね。こういう過去に禍根を残すようなことをしてきたわけです。
 医薬品も医療機械に関しても、政府は成長戦略と称して審査基準を緩めれば日本の医療機械メーカーが育つんだという言い方をしているんですけど、事実上全く関係なく、外国の医療機械メーカーも同じある意味では効果を持つわけです。審査を規制緩和すれば何か日本の医薬品や医療機械メーカーが育つというのは幻想で、むしろそういう分野にどんどんどんどん入ってくるんです、競争上強い分野が入ってくる。これは統計で私が確認したわけではないので、正確なことはむしろ皆さんに調べていただきたいんですけど、大手の病院でドイツ製やアメリカ製の医療機械が、同じ日本製の機械があっても、かなり入るようになってきています。
 それから、薬も、日本の医療メーカーは合併合併を繰り返して研究所を閉じて、ある意味でMアンドAみたいな方式で外国のベンチャーを買っているんですけど、二〇一〇年を境にして、そこで医薬品の特許が、日本のメーカーが持っている特許が大量に切れてきたんですね。むしろ、MアンドAでやっても、そんなに薬の開発が成功した事例がないんですね。
 そういうふうに考えますと、ファイザーみたいにでかい企業は、ある意味で絶えず薬を作っていかないともたないほど巨大な企業になってしまっているので、特許権を長くすることが非常に彼らにとって利益になる状況なんです。片方で、インドのメーカーが、ジェネリックの会社がエイズの薬をすごく安く作ってしまい、それをアメリカの医薬品メーカーが訴えたんですけれども、南アでこれだけの人を救うのに何でそんな高い特許料を払うんだと開き直って、裁判で、アメリカ企業はどんどん特許料を落としていかざるを得なくなっちゃったんですよね。
 そういうプロセスを考えると、特許権をどれだけ保護するかということに絶対的な基準はむしろないわけで、日本は日本の利害として、日本の医薬産業を育てながら、日本の国民が健康保険上の負担が少なくなるようにするということが望ましいことだというふうに考えるわけです。
 その上で、国民皆保険に影響を与えるといったときに、保険財政を良くするときには先端の医療を保険内に、まあCTスキャンとかMRIとか入ってきますよね、こういうものを入ってくるのが医療費を伸ばす。それからもう一方で、医療機関に払う診療報酬が伸びていく、あるいは、患者のあるいは利用者の保険料と負担が減っていく、これが医療保険を悪化させるわけですよね。
 そうすると、これを保険外診療に追い出す、負担をこちらで増やす、診療報酬を抑えるということをやっていきますと、満遍なく全体が我慢する構造にならないんですね。特に低所得者は医療が受けられなくなる、保険外診療だと。もう普通の人は標準医療、ミドル以上はアメリカ製の医療保険に入って先端医療を受けられる。そういうところは、外国の、ある意味で審査が簡素化されて認定されていない保険外の医療機械を使ってばんばんやる。
 小泉改革のときに、まあ歯医者さんは非常に過剰なんですけど、今インプラントとか保険外でやっている人たちが、一、二割がもうかっているだけで、八割方はもうすごい、機械の更新もできないような状態になっているわけで、こういう医療機関の中でも格差が広がる。地方の場合には特に、救急医療を担当して、中核病院が保険外診療なぞをなかなかできないでやっていって、これで保険財政が悪化して診療報酬を抑えるということになれば、更に一段と地方の病院の再編みたいなことが起こらざるを得なくなってくる。
 そうすると、こちら側で負担をしている人たちに負担を大量に求めていかざるを得なくなると、また低所得者層の負担減免みたいなのをどんどんなくしていかざるを得ないという形で、医療機関も地域も個人も格差が広がることによって、今の医療保険の空洞化みたいなのが更に加速してしまう。あるいは、住んでいる地域によって著しく医療において格差が生まれるということが生じるんだと。これは、TPP本体だけじゃなくて、TPPの交渉に伴って日本側が譲るという形で実現している、そういう部分も併せて考えていかないと、この状況を止めることはなかなか難しいんではないか。
 それは、二〇〇〇年代の半ば過ぎ以降、非常に地方で顕在化した問題を更に悪化させると、本当に住めなくなってしまう。農業も含めてですけれども、雇用が壊れて、医療が壊れて、教育が壊れたら、多分その地域はもう住めないので、どんどんどんどん衰退してなくなっていくしかないということがより一層加速してしまうので、私はそういうことは、今の地方創生とわざわざ言わざるを得ないようなこの状況を考えるならば、やはり国会議員の方々がしっかりと効果を検証しながら、交渉に対してきちんとチェックをしていくということが求められているんではないかなというふうに考えております。

発言情報

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発言者: 金子勝

speaker_id: 29845

日付: 2015-06-10

院: 参議院

会議名: 国際経済・外交に関する調査会