金子勝の発言 (国際経済・外交に関する調査会)

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○参考人(金子勝君) 当初、TPPを議論するときに、アメリカもそうですけど、輸出が増えて雇用が増えると、日本も内閣府が試算をして、どのぐらい成長率を押し上げるかというような試算が行き交ったわけですね。結局、アジアの成長を取り込むというのが名目なので、RCEPが出てくるとこの理屈が成り立たなくなって、いわゆる経済効果に関する説明は著しく日米両国とも後退をしているように思います。
 先ほど、輸出が伸びている十選挙区で支持する議員がほとんどいないというアメリカの状況も言いましたけど、現実には、世界経済全体が低迷している中で、政治的な中国との主導権争いというものが色濃くこの問題に影を落としていることは事実なんではないかなという印象を持っています。
 その意味で、私が考えるに、もう少し経済的、あるいは我々の国の自主的な判断というものを尊重しながら、問題を個々に冷静に見ていく必要がないかと。つまり、政治的に、先ほど申し上げたように、アメリカに付くか中国に付くかみたいな問題にこの問題を解消せずに、賛成するにせよ、反対するにせよ、個々の交渉内容の条項がその国の経済や社会にどういう影響をもたらすかということを冷静に分析し判断する、それを賛成する人も弊害を防ぐために一生懸命努力するという状況が生まれることが望ましいというふうに、むしろ今の状況を良くないと思っているがゆえにそういう発言をしたわけです。
 二番目に、非常に問題としてねじれているのは、アメリカが相対的にイラク戦争以降地位を落としてしまっていますので、影響力が落ちているので、アジアが言わば今ターゲットになっているわけですね。それは、EUがまたAIIBに入ってくるという組んずほぐれつの状況になってきている複雑な状況の中で、日本自身の置かれた国際競争上の競争力の低下というものを直視した方がいいというのが二番目の問題です、経済を考えるときに。
 とりわけてアメリカが強い情報、金融、バイオテクノロジー、医療、医薬品、医療機械、その他の保険を含んだ金融も全部入れて、アメリカが望んでいる分野は、やはり制度やルールを囲い込むと極めて独占的な利益が生じやすい分野だと。それから、スパコンの発達とICTを使った先端の技術が進行している分野であると。そこでは、やっぱり制度やルールを握るということが戦略的に重要になっていると。その分野を我々が諦めてしまって、古い旧来型の分野で何とか有利にいこうとすればするほど、アメリカの中ではそういう分野で衝突する分野がTPPに反対に回るという構図になっちゃっているんですね。
 実は、ねじれているんですけど、二重に、日本はもう少し先端的な分野でどういうポジションを取ってどういうふうに戦略的に行動すべきかということについて、実は非常に弱いんではないか。経済界も、政界、官界も含めてそういう戦略性が弱いために、日本は例えばIT、ICT分野、スパコン分野、こういう分野で決定的な後れを取って、携帯音楽プレーヤーから始まり、半導体、液晶パネル、あらゆる領域で非常に競争力を衰退させてきたと。真剣にその分野でどういう戦略を立てて反攻していくという戦略を立てていくことが重要なことなんじゃないかと。
 もっと言うと、電力システム改革も含めて国内の改革はむしろそういうところに求められているので、そこをネグって、新しいインフラとしてのスマートグリッドであるとか、建物の構造のスマート化とか、そういう全体のスマートシティー化とか、そういうものの中に耐久消費財も位置付けられていくわけですよね。ところが、グーグルはもう自動車端末に考えているのに、幾らトヨタがいい車造っても、そういうシステムができたら、ちょうどアップルにソニーのウオークマンが負けてしまうようなプロセスが起きるわけですよね。そういう何か先を読んだ制度やルールのせめぎ合いということを本来は考えるべきだろうと。つまり、二重の問題がある、政治化しちゃっていることが問題だと。
 本当に考えなきゃいけないのは、日本側が考えなきゃいけないのは、そういうことに夢中になることではなくて、日本がこの間衰退してきた産業をどういうふうに復活させていくかというところの中にしっかり戦略を持っているかというと、持っていない中で、TPPにずるずる巻き込まれていくと、本当の意味で競争力を育てることにはならず、旧来型の日本の産業が一部利益を得るだけで、日本全体は競争力を衰退させ、そして、実はそれはアメリカとの摩擦を決してなくさない、アメリカの中でもTPPの反対みたいなものを引き起こしていくという、何か非常に悪循環の構造にはまっているんではないかということを非常に憂えています。これは私の考えですけど。

発言情報

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発言者: 金子勝

speaker_id: 29845

日付: 2015-06-10

院: 参議院

会議名: 国際経済・外交に関する調査会