江崎孝の発言 (国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○江崎孝君 先般実施されました海外派遣重要事項調査団第二班の調査結果について、その概要を御報告申し上げます。
 本調査団は、財政再建に対する先進諸国、国際機関の取組状況に関する実情調査並びに各国の政治経済事情等の視察のため、平成二十六年九月の八日から十七日までの十日間、ベルギー王国、ドイツ連邦共和国及びスウェーデン王国を訪問いたしました。
 残念ながら緊急の用務により自民党代表委員が急遽参加を中止せざるを得なくなったことにより、本調査団の派遣議員は、共産党の辰巳孝太郎委員、社会民主党の吉田忠智委員及び団長を務めました私、民主党の江崎孝の三名でありました。非常に少なかったんですが。
 訪問国においては、欧州委員会の副委員長を始め、各国政府及び国際機関の高官並びに関連団体との意見交換、在外公館からの説明聴取、資料収集及び関係施設の視察等を行いました。
 以下、順次報告をいたします。
 まず、ベルギーについて御説明をいたします。
 ベルギーのブリュッセルにはEUの本部が置かれており、欧州の政治の中心都市となっております。調査のため同本部を訪れ、カタイネン欧州委員会副委員長、経済・通貨問題を担当されておられます、カタイネン副委員長と欧州経済全般、財政金融政策について意見交換を行いました。また、欧州委員会競争総局のコープマン次長から、投資環境整備としてどのような競争政策を展開をしているのか、加盟国間の競争政策の差異、規制の強弱を調整しているかについて、また、欧州委員会経済財務総局のペンチ局長から、欧州委員会が加盟各国に対して財政均衡を求めるのか、ある程度の許容範囲で収支差を認めるのか、また、欧州委員会が各国の財政収支をモニターしているのか、赤字国に対して何らかの要請、指導を行うのか等について、それぞれ説明を聴取いたしました。
 まず、カタイネン欧州委員会副委員長との意見交換では、当時は今と違いまして、ギリシャ問題が今再燃をしていますけれども、冒頭、副委員長が、EUは金融危機を脱しつつあると極めて印象深い発言をされておりました。一つの中央銀行の金融政策、各国の財政当局による財政政策というユニークな実験のさなかにあるEUにあって、欧州委員会は各国の財政運営状況をチェックするサーベイランスルールを設定してモニターしているとのこと、そのルールは、基本的には、赤字を生じさせないよう抑止的で、財政の持続可能性を確保できるようにすることを目的としており、中央銀行がインフレ基調の政策を取らなくてもよいように設計されていました。
 特に、財政赤字をGDP三%以内に、公的累積債務を同六〇%以内にするのが一般的基準であり、それに反する場合、GDPの〇・二%の罰金や、EUからの補助金の返還要請を行うとの厳しい対応は特筆すべき点であります。また、当時検討中であった、加盟国が政府から独立した機関、財政カウンシルを設置して、そこが政府の財政運営をモニターするルールは、我が国においても参考になるものと考えます。これらの対応に対する自信がさきの副委員長の発言につながっているように思われました。
 公正な企業間競争についてであります。
 効率的な企業の活動が阻害されることがないよう、国家補助が不適切な形で実施されないように監視し、反競争的な障害を取り除き、逆に非効率な企業を再編、更生させる、若しくは市場から退出させるようにすることで持続可能な成長が達成されるようにすることが重要とされました。例えば、日本の航空会社救済策のようなケースでは、EUではより厳しい規律を課し、高利潤が期待できる路線などは放棄させることが考えられ、効率的な企業が活動しやすい競争環境を提供するのがEU委員会の役割であるとのことでありました。
 次に、ドイツについて御説明いたします。
 ドイツはEUの牽引車として欧州経済を引っ張ってきましたが、他方で、財政は均衡を堅持しております。連邦財務省総合政策局のヘレス次長から、財政政策に対する基本的スタンス、財政赤字をどのように抑制しているか、金融政策との整合性、連携をどのように図っているのか、成長促進戦略の中で財政金融政策をどのように位置付けているか、法人税を三〇%弱としているが、今後もこれを堅持するのか、海外直接投資を呼び込む際、法人税率は支障となっているか、それとも問題はないのか等について説明を聴取いたしました。
 説明によりますと、短期的な景気対策が有効なのは金融危機やリーマン危機のような緊急時のみであり、財政は雇用を促進し、投資環境を整えるといった構造改革に用いるべきであると指摘されました。ドイツでは、構造改革として、一つ、労働市場改革、二つ目に金融市場改革、三つ目に企業税制改革、四つ目に社会保障制度改革を実施しているということでありました。
 また、ドイツのフランクフルトには欧州の中央銀行である欧州中央銀行、ECBがあり、EU内の金融政策のかじを取っております。ECBの金融政策戦略局のホルムハドゥラ首席エコノミスト及び国際局のロッジ首席エコノミストから、加盟各国の金融政策へどのようにコミットメントしているのか、財政赤字の加盟国に対してどのような要請、指導を行っているのか、デフレ対策としてどのような措置を講じているか、また、ソブリン危機に際し、それまでの物価安定第一のECBが最後の貸し手として大量の資金提供をちゅうちょしない政策に方針転換しましたが、今後も同様か、あるいはマイナス金利、当時はマイナス金利が非常に有名になっていました、マイナス金利政策を採用した理由とこれまでの評価等についての説明を聴取いたしました。
 ソブリン危機においては、ユーロを守るためには何でもするとのドラギ総裁発言と併せて、国債市場が混乱した際には、二〇一二年九月、OMTと呼ばれる新たな国債買入れ策の枠組みを決定し、一定の条件を満たせばECBが無限に国債を買い入れることを明らかにし、南欧諸国の国債の利回り低下に貢献したという自負は大変強いものでありました。また、十七という加盟国の全ての国にそれぞれに合った政策を取ることは困難であることに言及し、各国はECBの金融政策と矛盾しない経済政策を行うべきであるという姿勢も見せておられました。
 最後に、スウェーデンについて御説明いたします。
 欧州各国は、九〇年代以降、財政赤字の悪化に苦しみましたが、その中でスウェーデンは最もスピーディーかつ大幅に赤字削減に成功した国であります。その成功例、体験について政府関係者から説明を聴取いたしました。社会省のヘミングストン社会保険部長からは、持続的な社会保障システムをどのように構築したか、人口減・少子化対策、子育て、教育等次世代のための投資をどのようにして促進しているのか、あるいは雇用省のハルト企画局長から、高齢者、女性の雇用をどのように確保しているか、成長産業への労働力のスムーズなシフトのためにどのような政策を実施しているかについて、また、財務省のベルグストランド予算部担当官及びノーリン経済部担当官から、財政再建をどのようにして成し遂げたか、その際、障害となった点とそれをどのように克服したか、国民負担率が日本より高いが、国民から集められた税や社会保険料をどのような基準で分配しているのか、成長促進戦略としてどのような分野に政府資金を投入しているのか、海外直接投資を呼び込むためにどのような措置を講じているか等について、それぞれ説明を聴取いたしました。
 説明によりますと、年金は国の歳出とは別会計で運営されており、人口構成の変化に即して自動調整されるように設計されているとのこと、また、女性の社会参加については、七一年の所得税制度改正、七三年の育児休業法、児童福祉法、公的施設での老人介護の実施によって促進され、高齢者雇用については、雇用保護法で六十七歳まで働く権利が保障されていることなど説明を受けました。また、スウェーデンの年金改革は日本でも広く知られておりますが、次なる改革の必要性を認識し、既に改革内容の検討に入っているとの報告には驚きでありました。
 さらに、財政赤字削減については、全党が協力して削減策と新しいルールを決定し対応しているとの説明を受けました。その主な中身は、一つ、長期的視点での予算フレームワークを構築する、すなわち、予算編成は単年度であるが当該年度には三年後の歳出案を策定をすること、二つ目に予算額の数値的目標を設定をする、すなわち、政府はGDPの一%の余剰を捻出し、これを経済危機等の不測の事態に対する予備費として活用するとともに、その必要がない場合過去の債務の返済に充てられること、三つ目にトップダウン方式の採用、すなわち、まず議会が年度予算総額、支出上限を決定をして、内閣がその割当てを決め、それを各省レベルに下ろして予算要求を確定されるということでありました。
 極めて厳しい内容の対策です。実現した背景を尋ねると、スウェーデンでは危機が瞬く間に惹起したので危機感を共有でき短期間で対策決定が行えた、日本は危機が長期間掛けて徐々に進行している印象にある、対応が難しかったのではないかという指摘がありました。
 以上、各国政府、国際機関の高官との会談のほかに、ドイツにおいては、再生可能エネルギー施設、地産地消、産業振興を行っている農場、エネルギーの自給自足を実現したコミュニティー、スウェーデンにおいては、コンパクトシティー、まちづくり、公共インフラ投資の実施状況について、関連施設や現地を視察する機会を得ました。それぞれに特徴深く、我が国の参考になるものを数多く視察することができました。特にスウェーデンでは、総選挙の投票日と重なったこともあり、実際の選挙を見る機会に恵まれました。投票率を上げるため、日本でいう期日前投票所として、人が多く集まるアーケードやダウンタウンの中心に特設ブースが設置されていました。投票日でもある日曜日も期日前投票所で投票できる制度になっており、この制度は低投票率が問題となっている我が国でも参考になる制度との印象を受けました。
 以上が海外派遣における調査の概要ですが、詳細は報告書を御参照ください。
 最後に、今回の調査に当たり多大な御協力をいただいた訪問先の関係者各位及び在外公館に対し衷心より厚く謝意を表し、報告を終えます。
 ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 118914332X00120150225_009

発言者: 江崎孝

speaker_id: 2258

日付: 2015-02-25

院: 参議院

会議名: 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会