黒田東彦の発言 (国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会)

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○参考人(黒田東彦君) 本日は、参議院国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会において、日本銀行の金融政策について御説明する機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 御案内のとおり、日本銀行は、長年続いたデフレから脱却するため、二〇一三年四月に量的・質的金融緩和を導入しました。それから二年余りがたちましたが、この間、我が国の経済・物価情勢は大きく改善しました。
 以下では、量的・質的金融緩和のこれまでの効果と先行きの経済、物価の見通しについて御説明させていただきます。
 まず、お配りいたしました資料の表紙をめくっていただいて、一ページ目の図表一を御覧ください。
 量的・質的金融緩和は、二%の物価安定の目標を二年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するという強く明確なコミットメントをした上で、それを裏打ちするために大規模な長期国債の買入れを含む異次元の金融緩和を行う政策であります。
 量的・質的金融緩和では幾つかの波及メカニズムを想定しておりますけれども、その主たるメカニズムは、実質金利の低下を通じて効果を発揮するものです。すなわち、大規模な長期国債の買入れによりイールドカーブ全体に下押し圧力を加えることで名目金利を引き下げます。同時に、二%の物価安定の目標の実現に強く明確にコミットすることで人々のデフレマインドを転換し、予想物価上昇率を引き上げます。この二つの組合せによって、予想物価上昇率を勘案した金利であるいわゆる実質金利を引き下げることができるわけであります。
 実質金利が低下しますと、様々な民間需要が刺激されて、経済が好転することが期待されます。その結果、財・サービスや労働市場の需給バランスが改善し、現実の物価上昇率が高まります。実際に物価上昇率の高まりを経験すると、人々の予想物価上昇率は更に高まるというふうに考えられます。量的・質的金融緩和では、こうした好循環の下で、経済の好転を伴いながら二%の物価安定の目標に向けて物価上昇率が高まっていく姿を想定しております。
 実際に、量的・質的金融緩和の導入以降の経済、物価の動きを見ますと、この政策は今申し上げた効果を発揮しております。
 まず、この一ページの下の左側のグラフを見ていただきますと、名目金利、これは十年物国債利回りですけれども、量的・質的金融緩和の導入前と比べて低下しております。また、予想物価上昇率については、このところ、原油価格下落の影響から実際の物価上昇率が縮小する中でも、昨年の十月の量的・質的金融緩和拡大の効果もあって、この下の右側のグラフで見ていただくように、やや長い目で見れば全体として上昇しております。実際に名目金利が低下する一方、予想物価上昇率は高まっていますので、実質金利は大きく低下しているというふうに考えられます。
 このように、量的・質的金融緩和によって実質金利が低下する下で、我が国の経済金融情勢には前向きな変化が現れております。
 めくっていただいて、二ページの図表二を御覧ください。
 まず、金融市場の動きを見ますと、(1)のグラフにありますとおり、人々の経済・物価情勢への見通しが改善したことを反映して、株価は六割程度上昇しております。また、為替相場については、金融政策はそれを直接の目的としているわけではありませんが、金融緩和を進める中でドル・円レートは三割程度の円安となり、かつての過度な円高水準は修正されました。
 実体経済面を見ますと、右の(2)ですが、企業部門では企業収益が過去最高水準まで改善しておりまして、実質金利の低下を始めとする緩和的な金融環境も後押しとなって、設備投資は緩やかな増加基調にあります。
 また、家計部門では、(3)のグラフが示すとおり、失業率は三%台半ばまで低下するなど労働需給が引き締まる中で、賃金は緩やかに増加しています。先ほどのお話にもありましたとおり、この春の賃金交渉では、多くの企業で昨年を上回るベースアップを含めた賃上げが実現する見通しです。この結果、右の(4)のグラフが示すとおり、賃金に雇用者数を掛けた雇用者所得は緩やかに増加しており、個人消費は底堅い動きとなっています。
 このように、量的・質的金融緩和を進める下で、我が国経済は、企業、家計の両部門で所得から支出へという前向きな動きを伴いながら緩やかな回復基調にあります。
 次に、物価面を見ますと、消費者物価、除く生鮮食品の前年比は、(5)のグラフにありますとおり、量的・質的金融緩和直前にはマイナス〇・五%と水面下にありましたが、昨年四月にはプラス一・五%まで上昇しました。もっとも、その後は前年比上昇幅が縮小し、直近三月は消費税率の引上げを除いたベースで見てプラス〇・二%となっています。
 この物価上昇率の低下の主因は、昨年夏場以降の急激な原油価格の下落です。右の(6)のグラフが示しているとおり、こうした原油価格の下落による物価上昇率の低下は、実は我が国だけでなく世界的に見られている現象であります。実際、消費者物価総合の前年比は、米国、英国、ユーロ圏などでゼロないし小幅のマイナスとなっております。
 もっとも、物価情勢を判断する上で重要な物価の基調は着実に改善しております。この点、物価の基調を規定するのは、経済全体の需給バランスと人々の予想物価上昇率であります。先ほど御説明したとおり、量的・質的金融緩和の導入以降、需給バランスは改善し、予想物価上昇率は上昇してきています。また、企業の賃金、価格設定行動にも変化が見られております。
 したがって、消費者物価の前年比は、これまでの原油価格下落の影響から当面ゼロ%程度で推移すると見られますが、先行き、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、二%の物価安定の目標に向けてその伸び率を高めていくと考えられます。
 以上、御説明いたしましたとおり、量的・質的金融緩和は所期の効果を発揮しており、その下で我が国の経済・物価情勢は着実に改善しているというふうに思います。
 それでは最後に、三ページの図表三を御覧ください。
 日本銀行が先月三十日に公表いたしました展望レポートに沿って、先行き三年間の我が国の経済、物価の見通しについて御説明をいたします。
 まず、先行きの実質GDP成長率については、家計、企業の両部門で所得から支出への前向きな循環メカニズムが働き続ける中で、二〇一五年度から一六年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続けると予想しております。その後、二〇一七年度にかけては、二〇一七年四月に予定されている消費税率引上げ前の駆け込み需要とその反動などの影響を受けるとともに、景気の循環的な動きを反映して減速いたしますが、プラス成長を維持すると見ております。
 具体的には、この真ん中の表の青いシャドーを掛けた数字を御覧になっていただけますとおり、政策委員の見通しの中央値で見ますと、二〇一五年度はプラス二・〇%、二〇一六年度はプラス一・五%、二〇一七年度はプラス〇・二%であります。
 また、消費者物価の見通しについては、先ほど申し上げたとおり、当面はゼロ%程度で推移すると見られますが、物価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、物価安定の目標である二%に向けて上昇率を高めていくと考えております。二%程度に達する時期については、原油価格の動向によって左右されますが、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提に立ちますと、二〇一六年度前半頃になるというふうに予想しております。その後は、次第にこれを安定的に持続する成長経路へと移行していくと見ております。
 具体的に政策委員の物価見通しの中央値で申し上げますと、この赤いシャドーをしたところでありまして、二〇一五年度はプラス〇・八%、二〇一六年度はプラス二・〇%、二〇一七年度はプラス一・九%です。
 以上御説明いたしましたとおり、量的・質的金融緩和は所期の効果を着実に発揮しております。したがって、今後とも二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続していく方針であります。その際、経済・物価情勢について、上下双方向のリスク要因を点検し、二%の早期実現に必要であればちゅうちょなく必要な調整を行うという考え方にも変わりはありません。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 黒田東彦

speaker_id: 19167

日付: 2015-05-13

院: 参議院

会議名: 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会