宮沢洋一の発言 (本会議)
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○国務大臣(宮沢洋一君) 礒崎議員にお答えいたします。
平成十六年改正特許法の検証結果及び改正理由についてお尋ねがありました。
平成十六年改正以降、職務発明の対価をめぐる訴訟は四件あり、いずれも社内の職務発明規程の整備の在り方が争点の一つとなりました。その中で、一億円を超えるような高額判決は確認されていないことからも、平成十六年改正によって職務発明の対価の額について予見可能性は一定程度高まったものと認識しております。
しかしながら、近年、製品の高度化、複雑化により、一つの製品が数百、数千の特許から構成されるようになっており、適切な知的財産管理がますます重要となっております。
こうした環境変化を背景に、産業構造審議会において制度改正が検討されました。改正特許法案は、こうした検討を踏まえ、特許権の帰属が不安定とならないようにするべく、職務発明に係る特許を受ける権利を初めから法人帰属とすることを可能とし、企業が特許を円滑かつ確実に取得できるよう環境整備を図るものであります。
さらに、政府が企業と従業者の間での発明のインセンティブを決定する手続に関するガイドラインを策定し、従業者との協議や意見聴取などの在り方について明確化いたします。
また、この改正による職務発明制度の実態の変化についてお尋ねがありましたが、企業が特許を円滑かつ確実に取得し、スピーディーに知財戦略を実施することが可能になると同時に、発明のインセンティブに対する発明者の納得感が高まり、イノベーションをより促すものとなると考えております。
クローズ戦略が増加することによる技術の進歩や発明につながる機会損失の可能性、また日本再興戦略との関係についてお尋ねがありました。
法人帰属が選択される場合であっても、特許は秘匿されるものではなく、技術内容が公開されることによって産業の発展がもたらされます。いずれにしても、市場や製造拠点がグローバル化する状況において、企業が事業戦略を優位に進めるために、研究開発の成果の一部をオープンにすることで市場拡大や技術の普及を図る一方、独自の技術を自社で囲い込み、クローズすることで付加価値の最大化を図る、いわゆるオープン・クローズ戦略の構築が重要となっております。
また、このように企業の知財戦略の高度化によって我が国全体のイノベーションを促進するという方向性は、日本再興戦略と整合的であると考えております。
現行の職務発明制度における法定対価請求権と同等の権利の保障についてお尋ねがありました。
我が国のイノベーションを促進するためには、発明のインセンティブを適切に確保することが大前提であります。現行の特許法第三十五条第三項は、従業者が職務発明に係る特許を受ける権利を企業に承継した場合に相当の対価の支払を受ける権利を有することを規定しております。一方で、改正特許法案第三十五条第四項では、現行法第三十五条第三項の相当の対価を金銭以外のインセンティブも含めた相当の利益に改め、従業者がその給付を受ける権利を有することとしています。したがいまして、職務発明をした従業者には現行の職務発明制度における法定対価請求権と実質的に同等の権利が保障されます。
次に、従業員のインセンティブに与える影響についてのお尋ねがありましたが、本改正特許法案で定めるガイドラインに従ってインセンティブ基準が定められることにより、従業者のインセンティブはより高まるものと考えます。
金銭以外の相当の利益に関して、考え方と判断基準についてお尋ねがありました。
研究者向けに行ったアンケートによると、金銭以外のインセンティブも発明を奨励するためには重要であるとの結果が得られたため、本改正特許法案において相当の利益という文言に変更し、金銭以外の経済上の利益も読めるように柔軟化を図りました。具体的には、従業者へのストックオプションの給付や留学の機会の付与等を想定しております。
この相当の利益は、職務発明をしたことを理由とした経済上の利益であり、かつガイドラインに従い企業と従業者が協議などを行って決定したものであることが求められます。したがって、例えば発明が生まれる前より予定していた研究設備への投資などは、職務発明をしたことを理由としていないため認められないと考えられます。
クローズ戦略が取られた場合のインセンティブ確保についてお尋ねがありました。
近年の激しい国際競争の中において、各企業の事業戦略に応じ、知的財産を権利化して公表したり秘匿化したりするオープン・クローズ戦略が有効であるところ、秘匿化される職務発明であってもインセンティブを確保することが必要であります。
発明を出願せずに秘匿化した場合であっても、企業が特許を受ける権利を取得した場合には、発明者は特許出願される場合と同様に相当の利益を受ける権利を有するものと考えられます。したがって、企業が取得した発明が特許出願されなかった場合でも、発明者に相当の利益が与えられることにより、しっかりとインセンティブが確保されるものと考えております。
本改正特許法案では、企業と従業者の間のインセンティブ決定手続に関するガイドライン策定を法定化することとしており、このガイドラインにおいて適正な手続を明示することなどにより、成果に見合う評価が適正になされ、従業者のインセンティブ確保がなされるようにしてまいります。
ガイドライン策定の審議の場についてお尋ねがありました。
改正特許法案では、産業構造審議会の意見を聞いてガイドラインを策定して公表することとしております。この具体的な審議の場としては、今回の職務発明制度の見直しの検討を行った産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会を想定しております。
次に、小委員会の構成のバランスと外部のコメントの必要性についてお尋ねがありました。
特許制度小委員会の現在の委員構成としては、大企業や中小企業から複数の方々に御参加いただいている一方、労働組合の代表者や労働法学者、研究者からも複数の方々に委員として御参加いただいております。ガイドライン案の検討、審議に当たっても、こうしたバランスに配慮しております。また、ガイドライン案に対するパブリックコメントの結果や著名な研究者の御意見など、外部の方の意見も参考にしてまいります。
職務発明制度改正後の評価、検証の在り方についてお尋ねがありました。
発明の奨励とイノベーションの促進のためには、発明のインセンティブが適切に定められ、従業員のインセンティブが高められることが前提となります。本改正特許法案では、インセンティブ決定の適正な手続をガイドラインで明確化することにより、従業者の納得感が得られるようなインセンティブが決定されることを意図しております。
本改正特許法案が成立した場合には、職務発明制度の改正が従業者のインセンティブに実際にどのような影響を与えたのかについて、企業や発明者に対するヒアリングやアンケートなどにより調査、検証を行ってまいります。
平成十六年改正前、平成十六年改正特許法及び本改正特許法案に基づく三種類の職務発明制度に対する評価、検証についてお尋ねがありました。
本改正特許法案が成立した場合、御指摘のとおり三種類の制度が併存することとなります。国としては、先ほど申し上げた評価、検証を行うに際し、三種類の制度が併存することを前提として、各制度に応じて従業者のインセンティブがしっかりと確保されているか、きめ細やかな調査を行ってまいります。
不正競争防止法の改正内容を周知徹底し、労働者などの過度の萎縮を防止すべきではないかとのお尋ねがありました。
刑事罰の強化などの改正事項については、その趣旨や改正内容について、全国の知財総合支援窓口で無料で相談を受け付けるほか、弁護士、弁理士などの専門家や企業実務者などを対象とする説明会を全国各地で開催し、改正内容の周知徹底に力を尽くしてまいります。
関係省庁間の連携や取締り体制の充実についてお尋ねがありました。
営業秘密を国としてしっかりと守っていくためには、不正競争防止法改正案による制度面の抑止力の強化のほか、その適切な執行も重要な課題です。このため、営業秘密窃取に関する相談が企業からあった場合には、警察庁を経由して都道府県警につなぐ仕組みを新たに構築いたしました。さらに、警察庁や公安調査庁等との連携を強化し、技術情報の窃取動向や手口に関する情報の共有、産業界への注意喚起等を行ってまいります。
以上です。(拍手)