安倍晋三の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 山本順三議員にお答えをいたします。
我が国を取り巻く安全保障環境の変化についてお尋ねがありました。
我が国を取り巻く安全保障環境はますます厳しさを増しております。例えば、北朝鮮は、日本の大半を射程に入れる数百発もの弾道ミサイルを配備し、核兵器を開発をしています。東シナ海においては、中国が公船による領海侵入を繰り返しています。南シナ海においては、中国が活動を活発化し、大規模かつ急速な埋立てや施設の建設を一方的に強行しています。自衛隊のスクランブルの回数は、十年前と比べ約七倍に増えています。我が国周辺における中国軍やロシア軍の活動が大いに活発化しています。アルジェリア、シリア、そしてチュニジアで日本人がテロの犠牲となるなど、ISILを始めとして暴力的な過激主義が台頭しています。
このように、我が国を取り巻く安全保障環境は、昭和四十七年に政府見解がまとめられたときから四十年以上の年月を経て大きく変化しており、今や脅威は容易に国境を越えてきます。もはやどの国も一国のみでは自国の安全を守れない時代となっています。
法整備の必要性及び個別的自衛権の拡大で対応できない理由についてお尋ねがありました。
現在の法制度の下においては、例えば、日本のため公海上で警備、監視の任務に当たる米軍が武力攻撃を受けても、日本自身への武力攻撃がなければこれを守ることができない、我が国近隣で武力紛争が発生し、取り残された多数の邦人を米国の艦船が輸送している際に、その米船舶が武力攻撃を受けたとしても、自衛隊はこれを守ることができない、PKO参加中に自衛隊の近傍で我が国のNGOが武装集団に襲われた場合でも、自衛隊は駆け付けて助けることができないといった十分ではない点があります。何もできない、何もしない、果たしてこれでよいのでしょうか。
政府は、安全保障環境が大きく変わっている中において、国民の命と平和な暮らしを守るために必要な自衛の措置とは何かを考え抜き、あらゆる事態を想定し、切れ目のない備えを行う責任があります。平和安全法制はそのために必要不可欠です。
また、個別的自衛権と集団的自衛権は、国際法上、明確に区分されています。本来、集団的自衛権を援用して対処すべき場合に、我が国独自の考えで個別的自衛権を拡大して対処することは、国際法違反のおそれがあり、また、いわゆる先制攻撃を行ったと評価されかねないものです。したがって、そのような考え方は採用できません。
集団的自衛権の行使と戦争国家についてのお尋ねがありました。
集団的自衛権は、国連憲章第五十一条において、国連加盟国の固有の権利であるとされています。現実にも、世界中のほとんどの国が、必要な場合に集団的自衛権を行使するとしています。
今回の法整備において、限定的な集団的自衛権の行使を認めることで、我が国が戦争国家になってしまうという主張があります。仮にその主張に従えば、そもそも世界中のほとんどの国は戦争国家であり、そのような固有の権利を認めている国連憲章も国際社会の平和と安全を乱すものであるということになってしまいます。現実の国際社会を見れば、このような主張が全くの誤りであることは明白であります。
平和安全法制に対する各国の評価についてお尋ねがありました。
平和安全法制や国際協調主義に基づく積極的平和主義の考え方については、私自身、外国訪問や各国首脳の訪日の際に、直接丁寧に説明をしてきています。これに対し、米国はもとより、豪州、ASEAN諸国、ヨーロッパ、中東、アフリカ、中南米の諸国を始め、圧倒的多数の諸国から、我が国が地域や世界の平和と安定に、より一層の貢献を行うものとして大きな支持をいただいています。今後とも、我が国の取組について各国に対して丁寧に説明をしていく所存であります。
平和安全法制による抑止力の向上についてお尋ねがありました。
今回の平和安全法制が実現すれば、国民の命と平和な暮らしを守るために、グレーゾーンから集団的自衛権に関するものまで、あらゆる事態に対して切れ目のない対応を行うことが可能となります。このように、平素からいざというときの備えをしっかりと行い、隙のない体制を整えることが、紛争を未然に防止する力、抑止力を高めることになります。そして、これにより日本が攻撃を受けるリスクを減少させることができます。
また、日本が攻撃を受ければ、米軍は日本を防衛するために力を尽くしてくれます。そして、今でも、日米安保条約の義務を全うするため、日本近海で適時適切に警戒監視の任務に当たっています。
しかし、現在の法制の下では、私たちのためその任務に当たる米軍が攻撃を受けても、私たちは日本自身への攻撃がなければ彼らを守ることはできません。平和安全法制の整備により、日本が危険にさらされたとき、日米同盟は完全に機能するようになります。さらに、それを世界に発信することによって抑止力は更に高まり、日本が攻撃を受けるリスクは一層下がっていくと考えます。
法案の合憲性についてお尋ねがありました。
昨年七月の閣議決定では、安全保障環境の大きな変化により、他国に対する武力攻撃であったとしても、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得ることを踏まえ、新三要件に基づく限定的な集団的自衛権の行使は、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として憲法上許容されると判断するに至りました。
限定的な集団的自衛権の行使の容認について、憲法との関係では、昭和四十七年の政府見解で示した憲法解釈の基本的な論理は全く変わっていません。これは、砂川事件に関する最高裁判決の考え方と軌を一にするものであります。
砂川判決は、我が国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとり得ることは、国家固有の権能の行使として当然のことと言わなければならないと述べています。個別的自衛権、集団的自衛権の区別を付けずに我が国が自衛権を有することに言及した上で、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとり得ることを認めたものであると考えています。
私たちは、厳しい現実から目を背けることはできません。現実に起こり得る様々な事態にどう対応するのか、我が国の置かれた環境を常に分析、評価し、砂川判決の言う必要な自衛の措置とは何かをとことん考え抜いていく責任があります。
今回、限定的な集団的自衛権の行使を容認しましたが、それはまさに砂川判決の言う自衛の措置に限られます。あくまでも国民の命と平和な暮らしを守ることが目的であり、他国を防衛することそれ自体を目的とするものではありません。
憲法の解釈を最終的に確定する権能を有する唯一の機関は最高裁判所であり、平和安全法制はその考え方に沿った判決の範囲内のものであり、憲法に合致したものであります。
徴兵制についてお尋ねがありました。
そもそも、徴兵制は憲法第十八条が禁止する意に反する苦役に該当するなど、明確な憲法違反です。徴兵制の導入は全くあり得ません。このような憲法解釈を変更する余地は全くありません。いかなる安全保障環境の変化があろうとも、徴兵制が本人の意思に反して兵役に服する義務を強制的に負わせるものという本質が変わることはありません。
更に申し上げれば、自衛隊はハイテク装備で固められたプロ集団であり、隊員育成には長い時間が掛かります。安全保障政策上も徴兵制は必要ありません。長く徴兵制を取ってきたドイツ、フランスも二十一世紀に入ってから徴兵制をやめており、今やG7諸国はいずれも徴兵制を取っておりません。
なお、国際的に見ても、集団的自衛権の行使の有無と徴兵制か志願制かは関係ありません。例えば、スイスは集団的自衛権を行使しないが徴兵制を採用しており、集団的自衛権の行使を前提とするNATO構成国である米、英、独、仏などは志願制の下で軍を維持しています。
総理大臣が替わっても、政権が替わっても、徴兵制の導入の余地は全くありません。どうか国民の皆様には安心していただきたいと思います。
国民に対する説明についてお尋ねがありました。
国民の皆様の様々な御意見に真摯に耳を傾けながら、今後の法案審議においても工夫を凝らして分かりやすく丁寧な説明を行うよう心掛けてまいります。
また、政府の立場としてではありませんが、自民党のインターネット動画を通じて、私より今回の法整備の趣旨を直接国民の皆様にシリーズで分かりやすく説明しているほか、党としても説明会を開くなど、様々な機会を捉えて国民の皆様に幅広い御支持が得られるよう引き続き努力を重ねてまいります。(拍手)
─────────────