北澤俊美の発言 (本会議)

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○北澤俊美君 民主党の北澤俊美であります。
 私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました内閣提出の安全保障関連法案について、安倍総理に質問をいたします。
 憲法違反の法律案、立憲主義を理解しない総理、この二つの組合せが今回の安全保障法制であります。したがって、国民はノーと言っているのであります。世代を超えておかしいと思っているのであります。学生や若いお母さんたちが不安と怒りを胸に町に繰り出しているのであります。
 今回、政府は、昭和三十四年の最高裁砂川判決で集団的自衛権が認められていたという珍説を作り出しました。しかし、圧倒的多数の憲法学者が、本法案の集団的自衛権は憲法違反だと断じております。国民も、すぐさま政府説明のまやかしに気付きました。
 私の半世紀に近い政治生活の中で、そんな話は聞いたことがありません。岸信介、田中角栄、大平正芳、中曽根康弘、竹下登、橋本龍太郎、小泉純一郎、共に私の尊敬する総理大臣経験者です。自民党政権のほとんどの総理が集団的自衛権は憲法上行使できないと述べてきました。砂川判決が集団的自衛権を認めていたのなら、歴代総理は憲法違反の発言を繰り返していたことになります。
 昨年二月十二日の衆議院予算委員会で安倍総理は、解釈変更による集団的自衛権の行使容認についてこう述べました。最高の責任者は私だ、政府答弁に私が責任を持って、その上で私たちは選挙で国民の審判を受ける。勘違いも甚だしい。為政者が好き勝手にできないための一線を画すために憲法があるのであります。選挙で勝っても憲法違反は正当化できません。それが立憲主義であります。
 次に総理は、選挙で勝ったことに解釈改憲の正当性を求めようとします。でも、昨年十一月二十一日、衆議院を解散した日の会見であなたは何と言いましたか。この解散はアベノミクス解散であります、アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか、それを問う選挙であります。これがあなたの発言であります。
 しかも、自民党の選挙公約は、こそくにも閣議決定の引用でごまかし、集団的自衛権という言葉を使いませんでした。争点隠し以外の何物でもありません。これで集団的自衛権も選挙で認められたと強弁するあなたは、眼中人なしであります。御認識を伺います。
 国民の理解が深まるどころか、疑問と懸念が募るのを見た総理は開き直ります。かつての日米安保改定やPKO法案審議の際も反対が多かったことを挙げ、今では十分に国民的理解を得ている、法案が実施される中で理解が広がると述べました。
 安保法案に対して今は国民の理解を得られていなくてもいい、とにかく法案を通して既成事実化すれば国民は後から付いてくると言わんばかりの発言であります。あなたに未来の民意を独占する資格はありません。総理の御見解があれば伺います。
 憲法違反の指摘が増えてくると、総理は、自衛隊を創設したときは個別的自衛権すら憲法違反と批判する意見が主流だったが、今は多くの人が信任していると言うようになりました。しかし、当時と今回を同列に論じるのは詭弁であります。当時はまだ憲法制定から日が浅く、憲法解釈が十分に定まっていませんでした。これに対し、集団的自衛権行使が憲法上できないことは、戦後の歴史を通じて半世紀以上、国内的にも国際的にも評価が固まっています。
 何よりも、国家に先天的に付与された自然権的権利である個別的自衛権に対し、集団的自衛権は他国との同盟などの密接性によって後天的に導かれるものであります。その性質は根本から異なります。後者も時間がたてば合憲と思われるようになると主張するのは、知的退廃にほかなりません。
 総理、あなたは政治家として本当に責任を果たすつもりがあるなら、集団的自衛権の行使を可能にする憲法改正を正々堂々と掲げ、国民の信を問えばよい。それが王道であります。それなら憲法も立憲主義も傷つくことはありません。
 ところが、総理は、憲法解釈の変更という言わば抜け道を選び、国会での数に頼るという覇道を邁進しています。抜け道と覇道の行き着くところ、憲法の法的安定性は大きく損なわれます。
 安倍政権には、国民に誠実に説明しなければならないという気持ちが希薄であります。国会で何時間審議しても、政府が沈黙している部分にこの法案の危険が潜んでいる、この事実を私は強く危惧します。
 例えば、対ISIL作戦への自衛隊派遣であります。総理は、後方支援をすることは全く考えていないと言いますが、中谷防衛大臣は、今回の法律案によって、要件を満たせば理論上、対ISIL作戦への後方支援が可能になると答弁しました。つまり、法案成立後、安倍総理の気が変われば、自衛隊をISILとの戦いに派遣することもあり得るということであります。しかし、政府は、法案への反対が増えることを恐れ、都合の悪いことには触れようとしません。本法案の成立によって対ISIL作戦での後方支援が法律上可能になるのか否か、改めて総理の見解を伺います。
 総理は、パネルまで使って、邦人輸送中の米艦を守らなければならない、だから存立危機事態、すなわち集団的自衛権の行使が必要だと力説します。六月二十六日の衆議院特別委員会で我が党の岡田代表の質問に答えた総理は、存立危機事態となるのは米艦艇が武力攻撃を受けた場合だと説明しました。しかし、七月十日の質疑では、米艦艇への攻撃の明白な危険の段階で存立危機事態になると答弁しています。米艦への攻撃が実際にあった段階なのか、明白な危険の段階なのか、どの時点で存立危機事態と認定できるのかという基本的事項に関してすら、この一貫性のない答弁です。政府が制度を恣意的に運用するリスクについて懸念せざるを得ません。
 法案では、存立危機事態において我が国が武力を行使できるのは、存立危機武力攻撃の排除に必要な範囲に限られます。邦人輸送中の米輸送艦の防護の例について、いつ、どのような状況において存立危機事態となるのか、その場合の存立危機武力攻撃とは何なのか、明確に説明してください。
 存立危機事態は従来の武力攻撃事態等と重なる場合が多いという政府の説明に従えば、存立危機事態なるものが真に必要になるのは、従来の武力攻撃事態等とは重ならない、従来の武力攻撃事態等では対応できない事態ということになります。それは一体、いかなる場合なのか、どのような地域におけるものなのか、類型的に明らかにしていただきたい。
 参議院質疑の初日に当たり、昭和二十九年、本院で、自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議が採択されている事実を私はここにおいて強調しておきたいと思います。
 安倍政権においても、新三要件に該当する場合であっても、原則として他国の領域で武力の行使を行ういわゆる海外派兵は行わないとしています。その一方で、総理は、ホルムズ海峡における機雷掃海は唯一の例外であると答弁しています。
 我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるにもかかわらず、外国の領域で我が国が武力行使する事例は、政府の考えとして、ホルムズ海峡における機雷掃海以外に本当にないのでしょうか。ホルムズ海峡で機雷掃海をしたくても上空を敵戦闘機に制せられていて掃海活動ができないときはどうするのか。そもそも、イランの核問題に前進が見られた今日の状況を踏まえれば、ホルムズ海峡の事例は立法事実たり得ないのではないでしょうか。
 以上三点について、見解を明確にお述べください。
 存立危機事態は、日本の施政下にある領域における武力攻撃への共同対処を定めた日米安保条約第五条の適用範囲ではありません。したがって、存立危機事態では、米国からの要請によって日本自身が武力行使するにもかかわらず、在日米軍基地から米軍が戦闘作戦行動を行うことは、あなたの最も尊敬するおじいさん、岸・ハーター交換公文に基づく事前協議の対象となります。これは極めてちぐはぐな状況であります。これはまさに欠陥法案であります。総理はこの点についてどう考え、どう対応するつもりでしょうか。
 安倍総理、あなたは未来永劫総理大臣の職にあるわけではありません。しかし、自衛隊という組織はこれからも自衛隊であり続けます。自衛隊が実力を行使したという事実は、自衛隊が組織として存続する間、消えることはありません。法的安定性が重要なのはこのためであります。
 総理は、閣議決定と強行採決により、憲法九条の重要な解釈を変更しようとしています。しかし、将来別の内閣があなたの解釈変更を否定したら、また法律を改正すれば済むという問題ではありません。憲法違反の行為を行っていたことになる自衛隊、そして自衛隊員の心情を総理はどのように考えるのか、お聞かせください。
 ただいまも対案について発言がありました。そもそもこの法案は憲法違反であります。国民が求めているのは、対案ではなく廃案であります。十本の法律を一本にまとめて、さあ対案を出せなどという毛針の戦略にはくみしません。
 四月二十八日、我々は、安全保障法制に関する民主党の考え方を党議決定しました。その大原則は、憲法の平和主義を貫き、専守防衛に徹することであります。
 その一つは、近くは現実的に。離島など我が国の領土が武装漁民に占拠されるといった、いわゆるグレーゾーン事態への切れ目ない対応を可能とするため、領域警備法を制定します。
 国民の命と平和な暮らしを守るために必要なのは、専守防衛の理念に基づく個別的自衛権であり、安倍政権が進める集団的自衛権の行使が必要とは考えておりません。我が国の個別的自衛権に関する考え方は、従来から、座して死を待てというものではありません。相手方の武力攻撃の着手の評価を再検討することにより、朝鮮半島を含めた近くの有事には個別的自衛権で確実に対応してまいります。周辺事態についても協力内容を一部充実させます。
 二つ目は、遠くは抑制的にであります。周辺事態はあくまで日本周辺の事態に限定します。中東やインド洋、世界の果てまで自衛隊が米軍に付いていくことはしません。
 三つ目は、人道支援は積極的に。PKO法を改正し、国際貢献できる分野を拡充します。PKO以外の国際貢献については特措法で対処します。
 日本の強さは、精強な自衛隊員の努力やたゆまぬ外交によってのみ実現するのではありません。国家統治の柱である憲法の下、立憲主義と平和主義がしっかり機能してこそ、国民は団結し、諸外国も日本に信頼を寄せるのであります。
 アメリカ合衆国建国の父の一人であり、米海軍の創設者でもあるジョン・アダムズは、憲法は、それが理解され、承認され、愛される場合には、規範であり、柱であり、きずなである。しかし、このような理知と愛情がなければ、それは空に揚げられたたこか……

発言情報

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発言者: 北澤俊美

speaker_id: 15656

日付: 2015-07-27

院: 参議院

会議名: 本会議