真山勇一の発言 (本会議)
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○真山勇一君 維新の党、真山勇一です。
ただいま議題となりました刑事訴訟法の改正案について、会派を代表して質問いたします。
少し前まで戦後最強と言われていた安倍政権の支持率がこのところ低下しています。なぜこんなことになってしまったのでしょうか。私は、国民の皆さんの心に広がる疑心暗鬼が最大の原因ではないかと思っています。安倍政権に今、ノーを突き付け始めた国民の多くが、安倍政権は何をやるか分からないと警戒し始めているように私には思えるのです。
無論、安保法制の論議は重要です。確かに、外敵から攻撃されることはとても恐ろしいことです。私たち維新の党は、自国をしっかり防衛できるよう法整備の充実を訴えてきました。
しかし、人類の歴史を振り返ってみると、外敵の侵入と同じか、あるいはそれ以上に恐ろしいのは、自国の政府が暴走し、国民の基本的人権を踏みにじったり、制限することではないでしょうか。ソ連もナチス・ドイツも中国共産党も、自国の人々に過酷な弾圧を加え、大きな災いをもたらしました。戦争の世紀となった二十世紀、戦争で他国から殺された人は数千万にもなりますが、その一方、自国の政府によって殺された人もまたそれに匹敵する数に上っているのが事実です。
だからこそ、イギリス、フランス、アメリカといった民主主義の先進国は一様に、権力者に暴走を許した過去の歴史を教訓として、政府に厳重な縛りを掛けています。我が国もまた、戦前、戦中の一時期、国民の基本的人権がないがしろにされた重苦しい時代を経験したからこそ、日本国憲法によって厳重な上にも厳重に政府の行為に縛りを掛けているのです。
たとえ政治家や官僚の一人一人がいい人であったとしても、権力というのは、自己保身、組織の論理、その場の空気といったものでどう暴走するか分かりません。つい最近だけでも、薬害エイズ、福島原発事故、年金記録、新国立競技場など、政府が迷走と暴走を繰り返し、国民の基本的人権が制限されたり、国民の財産が不当に侵害されたりしても、当局は責任を取ろうとしなかったではありませんか。だからこそ、権力を行使する側にフリーハンドを与えてはならないと多くの国民が考えているのです。そして、それが、私たち立法府の構成員、わけても良識の府と言われている参議院議員が最も肝に銘じておかなければならない点ではないでしょうか。
時の政権の都合で憲法解釈をどうにでも変えるようになったら、それは薄暗い世の中と言わざるを得ません。権力者が法的安定性は関係ないと言ったり、戦争に行きたくないというのは利己的と決め付けたりすれば、いつ基本的人権の定義まで解釈変更されるか分かりません。こうしたことを目の当たりにすれば、国民の不安は高まり、国民の心に疑心暗鬼が広がるのも当然ではないでしょうか。ただいま議題に上がった刑事訴訟法改正案の審議においても、注意すべきはそこではないかと私は思います。
私たち維新の党は、衆議院において修正の上、本法案に賛成しましたが、参議院においても法律の中身、そして運用を厳密にチェックすべきと考えますので、以下、政府にお尋ねをいたします。
まず、上川大臣、立憲体制を堅持すると改めてお約束ください。憲法は、言うまでもなく、権力者にフリーハンドを与えないように国民が政府に課した制約です。時の権力者に都合のいい形で基本的人権の解釈などを変更していいものではないということを、上川法務大臣、改めて御確認ください。そして、その上で、捜査、起訴、公判は全て法と証拠に基づいて行われ、不偏不党で一切の政治性や恣意性を排除するとお約束ください。国策捜査、政治裁判を許さないという立場に今も変わりはないか、お答えください。
そもそも、今回の改正は、取調べを全て録音、録画する、いわゆる可視化を全面的に取り入れることによって冤罪を防止し、国民の基本的人権を守ることが目的でした。しかし、本改正案には、通信傍受や司法取引の導入など、捜査当局の力を増大させる内容が随分と盛り込まれており、かなり逆行する印象を受けます。
せっかくの取調べ可視化も、本法案では取調べ全体のうちの僅か三%で認められるにすぎません。可視化の対象は、将来的には必ず拡大されると改めてお約束ください。
また、当然ながら、取調べの最中に捜査当局に都合よく機械が故障することなどあってはなりません。私は、録音・録画機器が故障した場合は調書自体が無効になるくらい厳密にやるべきだと思いますが、大臣の見解はいかがでしょうか、お聞かせください。
司法取引も、捜査当局に有利な制度です。司法取引の協議の過程で生じた重要な事項について記録、保管されることが附帯決議で盛り込まれましたが、これは法文に直接書き込むべきではないでしょうか。また、司法取引の事実関係は、義務として裁判官に示されるべきではないでしょうか。さらに、衆議院での修正によって、司法取引捜査の対象は同一事案の共犯関係に限定されたと理解してよろしいのでしょうか。違うのであれば、どこまでが捜査範囲なのか、お答えをください。
通信傍受も、同じように捜査当局に大変有利です。やはり、警察署以外の場所、そして第三者の立会いの下で行うのが公正なやり方のはずです。できない理由は何なのでしょうか。基本的人権を守るためであれば、必要な人件費を通信事業者などに支払ったり、弁護士会など法曹関係者の協力をお願いしたりしてでも、客観性、検証可能性を担保すべきと考えます。まさか、人権よりお金の方が大事などと考えてはいらっしゃらないでしょうが、いかがでしょうか。
通信を傍受する際、どうしても第三者の立会いが不可能というのであれば、捜査当局内ではどのように客観性を担保するのでしょうか。私は、基本的に身内のチェックは当てにならないと思っていますが、それでもせめて、警察の監察官など監察部門を充実して、通信傍受の全過程を検証する体制を整備するつもりはないでしょうか。これは山谷国家公安委員長にお伺いします。
そして、どうしても第三者がチェックできないのであれば、通信傍受によって得られた証拠が捏造、改ざん、編集されていないことを裁判官や弁護人はどう確認できるのでしょうか。上川法務大臣、その確認ができる技術的な方式について御説明ください。
また、証拠リストが開示されるのは裁判の公正性を確保する上で一定の前進であるとは考えますが、リストを作った段階で捜査当局に都合の悪い証拠が破棄されている懸念はないのでしょうか。
さらに、もう一つ政府に伺いたいことがあります。証拠の中に特定秘密が係ったものがあれば、それはどのように取り扱われるのかということです。テロ組織や外国勢力、反国家組織が絡む事件も本改正案の対象になります。政権にとって都合の悪い人物に嫌疑が掛けられ、捜査も裁判も特定秘密というベールで覆ってしまえば、簡単に冤罪がつくり出されてしまうということを、特定秘密保護法の審議のときから私たちは問題提起し、懸念を表明してきました。そのため、捜査、裁判の信頼性を担保するべく、刑事訴訟手続全般における特定秘密の取扱いについて政府には検討をお約束いただいていたはずです。現在の状況を御説明ください。
法律、特に憲法をめぐってよく引用される言葉に、ドイツの哲学者ニーチェの次のようなものがあります。怪物と戦う者は、自らも怪物とならぬように心せよ。政府にかみしめていただきたい言葉だと思います。
犯罪は当然ながら憎むべき怪物です。その怪物を退治するために国民は政府に強大な力を与えています。しかし、その政府自身が強大な力を持った怪物になってしまっては困るのです。強大な力が決して時の政権の都合などによって無実の国民に向けられるようなことがあってはならないということを確認させていただいて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣上川陽子君登壇、拍手〕