前川清成の発言 (本会議)

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○前川清成君 民主党の前川清成でございます。
 ただいま議題となりました議院運営委員長中川雅治君解任決議案につきまして、提案理由を説明いたします。
 昨夜も今日も、冷たい雨が降る中、大勢の皆さん方がこの国会を取り囲み、強行採決絶対反対、安保法案廃案の声を上げておられます。自民党、公明党の皆さん、これら主権者の声を踏みにじろうとするのでしょうか。圧倒的多数の世論が国会を取り囲む中、安保法案がまさに強行採決されようとしています。戦後七十年の平和国家としての歩み、そして憲法を最高法規とする法の支配の危機であります。私たちは今まさに歴史の曲がり角に立っています。
 いまだ議論が尽くされていないにもかかわらず、鴻池委員長の表現をお借りするならば、私たちの参議院が、あたかも安倍官邸の下請機関であるかのように、安保法案を成立させるためにこの本会議を職権でセットしてしまった中川議院運営委員長の責任は極めて大きいと言わなければなりません。
 さらには、先刻のあの混乱。採決は存在したでしょうか。何が諮られて、誰が賛成し、誰が反対したでしょうか。
 日本が海外で軍事力を行使するためのこの法案、国際的にも注目をされております。私たちの参議院が、国際的にあの程度のものと評価されても同僚議員の皆さん方は構わないとお考えになっておられるのでしょうか。
 いまだ議論が尽くされていないことは、中谷防衛大臣らの答弁に照らせば、誰の目から見ても明らかであります。私たち参議院安保特別委員会での審議時間、委員部によりますと九十七時間二十七分でございましたが、中谷大臣が答えられないなどの理由で百十一回も審議が中断しています。衆議院でも同じ百十一回であります。この法案に最も精通しているはずの防衛大臣が、防衛省や内閣官房など数多くの優秀な官僚に支えられながら、しかも審議の最終盤に至っても、最も基本的な論点にさえ満足に答えることができません。答弁が二転三転してしまいます。この有様で安保法案に対する国民の様々な不安を払拭することができたでしょうか。それにもかかわらず、審議は尽くされたと自民、公明両党の皆さん方は強弁なさるのでしょうか。
 確かに、特別委員会での審議時間は積み上がりました。しかし、審議を続ければ続けるほど、安保法案の矛盾が明らかになりました。安保法案が憲法に違反していることを多くの国民が理解しました。日本を守るために、日本人の命や財産を守るために集団的自衛権も安保法案も必要ではないことを国民は納得しました。
 その結果、最近の世論調査でも、安保法案について審議が尽くされたかの問いに対して、八割の国民が尽くされていないと答えています。すなわち、一億人の日本人が審議が尽くされていないと考えています。安保法案を今国会で成立させる必要があると答えたのは二割に対して、成立させる必要がないと答えたのは七割です。すなわち、九千万人もの日本人がこの国会で成立させる必要はないと考えています。
 中川委員長、この世論を御存じの上で、なお審議は尽くされたと御判断されたのでしょうか。中川委員長は、一億人の民意を、九千万人の願いを無視されるのでしょうか。
 日本を守ること、日本人の命、財産を守ることは政治に課せられた最も大事な使命の一つです。私たちも、ただ平和を唱えるだけで日本を守れるとも、日本人の命や財産を守れるとも考えておりません。しかし、集団的自衛権の行使は、日本が攻撃を受けていないのに、日本と密接な関係にある国、例えばアメリカが戦争を始めたときに、その戦争に参加すること、アメリカの戦争に助太刀することです。日本を守るために、日本人の命、財産を守るための戦争ではありません。
 安倍総理は、我が国を取り巻く安全保障環境が変化したこと、具体的には、北朝鮮が核兵器を開発し、弾道ミサイルを配備していること、中国が東シナ海で領海侵入を繰り返していることを理由に集団的自衛権が必要だと説明しておられます。
 確かに、万一弾道ミサイルが日本に着弾したならば、しかも核兵器が搭載されたミサイルが日本に着弾したならば、その被害は甚大です。しかし、七月三十日の質問で私が安倍総理に指摘し、そして安倍総理もお認めになったとおり、現行自衛隊法第七十六条第一項に基づいて、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した場合、自衛隊は出動し、その武力攻撃を排除することができます。
 日本に対するミサイルの発射は我が国に対する外部からの武力攻撃にほかなりませんので、現行自衛隊法に基づいて自衛隊が出動することも、日米安全保障条約に基づいてアメリカ軍が共同して対処することも可能です。集団的自衛権か個別的自衛権かと問われれば、個別的自衛権です。万が一中国が尖閣を占領した場合も同様です。
 したがって、北朝鮮のミサイルや中国の海洋進出は現行自衛隊法でも対処可能であり、集団的自衛権は必要ありません。それにもかかわらず、なぜ安保法案か、なぜ集団的自衛権か、総理から、中谷大臣から納得できる説明はあったでしょうか。ありません。それにもかかわらず、審議は尽くされたと採決を強行してしまうのでしょうか。参議院の自殺であります。
 昨年七月一日の閣議決定は、集団的自衛権は日本の自衛のためだけ、限定的に行使することになっています。安保法案においても、存立危機事態に、すなわち、外国に対する攻撃でありながら、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に集団的自衛権を行使し、日本が攻撃を受けていなくてもその戦争に参加すると定められています。
 この点、仮に外国に対する攻撃であったとしても、万一日本の独立や国民の生命等が脅かされるのであれば、拱手傍観して座して死を待つべきでないことはもちろんです。
 あえて繰り返します。国民の命や財産を守ることは政治の最も大事な役割の一つです。しかし、国の存立が脅かされるとは、日本語においていかなる事態を表現しているのでしょうか。日本という国が成り立たなくなる、日本の独立が脅かされ植民地になってしまうと解するのが通常の日本語の用法です。
 それでは、外国に対する攻撃であるのに日本の存立が危うくなる、つまり日本が植民地になってしまう場合などあり得るでしょうか。日本が攻撃を受けていないのに、国民の生命等が根底から覆される明白な危険が生じるでしょうか。荒唐無稽であります。だからこそ、安倍総理も、限定的な集団的自衛権を行使する具体例としてホルムズ海峡の事例を挙げ続けていたにもかかわらず、審議最終盤の今月十四日に至って撤回するに至りました。
 審議は尽くされたと言い張る自民、公明両党の皆さんにお尋ねをいたします。
 集団的自衛権はいかなるケースにおいて必要でしょうか。日本を守るために、日本人を守るために集団的自衛権が必要なケースを具体的にお答えになることができるでしょうか。それにもかかわらず、審議が尽くされたと、これから採決を強行してしまって本当にいいのでしょうか。
 言うまでもなく、憲法九条第一項は、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄し、第二項は、その目的を達成するため、陸海空その他一切の戦力を保持しない、交戦権も認めないと書かれています。
 この憲法九条は、決してアメリカから、GHQから押し付けられたものではありません。第二次大戦で、日本人だけで三百万人もの命が失われました。東京も大阪も、全国の主要都市が空襲で焼け野原になってしまいました。広島と長崎には原子爆弾が落とされ、沖縄では地上戦の巻き添えで県民の四人に一人が亡くなってしまいました。この悲惨な戦争を再び繰り返してはならないとの日本人の願いが不戦の誓いとして表現されたのです。
 この憲法九条の下で、戦後七十年間、日本は、万一侵略を受けたならば、独立と国民の命、財産を守るために毅然として戦う、そのために自衛隊も整備するものの、日本が攻撃を受けていないにもかかわらず先制攻撃をすることはない、自衛隊が海外に出ていって外国で戦争することはない、すなわち専守防衛を国是としてまいりました。
 ところが、集団的自衛権の行使は、日本が攻撃を受けていないのに戦争に参加することです。だから、歴代自民党政権も集団的自衛権は憲法違反と国会で明言してまいりました。だからこそ、憲法学者の大半は安保法案は憲法違反だと述べています。だからこそ、政府の憲法解釈を担ってきた内閣法制局長官さえ憲法違反だと声を上げています。
 この事態に対して、安倍総理らは、憲法の番人は最高裁だと反論されました。しかし、山口繁元最高裁長官も濱田邦夫元最高裁判事も、集団的自衛権の行使は憲法違反だと明言しておられます。将棋でいえば、憲法違反か否かは完全に詰んでいます。十五日の中央公聴会において小林節先生も、憲法違反は明々白々に立証されたと述べておられます。
 安保法案を成立させるために本会議を職権で立てた中川委員長は、教養もあり、キャリア官僚として上り詰めた聡明な方であります。中川委員長は、この安保法案が憲法に違反していることを十分理解しておられるはずです。そして、中川委員長は、国会議員として憲法九十九条に基づいて憲法尊重擁護義務を負っておられます。それにもかかわらず、本会議を立てて、憲法違反の安保法案を成立させる首謀者の一人になってしまうのでしょうか。
 私はその立場に立ちませんが、自民党、公明党両党の皆さんが真実日本を守るために集団的自衛権が必要だとお考えならば、まずは国会で憲法九条の改正を提案するべきです。自民党の党是は自主憲法の制定です。閣議による憲法解釈の変更という裏口入学ではなく、正しい政策であれば正しい道を通るべきであります。国会で憲法改正について議論を尽くし、最終的には主権者である国民の国民投票によって憲法改正の是非を決して、主権者も集団的自衛権を容認したならば、改正された新憲法の下で安保法案を提出するべきであります。
 憲法は、国民の自由や平等を保障するために、国家権力といえども従うべきルールを定めています。そして、今その憲法によって縛られている国家権力は安倍総理と安倍内閣です。憲法九条が気に入らないからと、歴代自民党政権が積み重ねてきた憲法解釈を自分たちだけで変更し、憲法の意味を変えてしまったならば、およそ憲法は意味を成さなくなります。憲法というルールに基づくことなく、そのときの政権が自分たちのやりたいように権力を行使したならば、それは法の支配の否定であり、王様の時代の政治に後戻りであります。
 集団的自衛権を行使したならば、自衛隊は日本を攻撃していない国への攻撃に加わることになります。その結果、攻撃を受けた国は日本へ恨みを抱くでしょうが、アメリカは世界一の軍事大国です。アメリカ軍と自衛隊の連合軍に正面から太刀打ちできないとなれば、テロによる報復を企てるかもしれません。イギリスやスペインはアメリカに従いイラク戦争に参戦しましたが、イギリスでは二〇〇五年、ロンドンの地下鉄で爆破テロが起こり、五十二名が死亡し、七百名がけがをしました。スペインでも二〇〇四年、マドリードで電車の爆破テロが起こり、百九十一名が死亡し、二千人がけがをしています。
 結局、集団的自衛権の行使は、むしろ逆に国民を危機に巻き込んでしまうのではないでしょうか。今夜、安保法案に賛成票を投じようとしている皆さん方、万一将来日本において不幸にしてテロが生じたときに、皆さん方は責任をお取りになるのでしょうか。テロ対策について議論は尽くされたでしょうか。
 智者は、性、臆病と考えていい、その人の中の臆病が、敵の意図をそんたくさせ、情報を集めさせ、事態の本質を察しさせるかのようである、若い頃の家康は露骨に臆病であった。司馬遼太郎さんの絶筆、「街道をゆく 濃尾参州記」の最後の文書、「家康の本質」の書き出しですが、イラク戦争に参加したスペインやイギリスの悲劇は今紹介したとおりです。
 しかるに、安倍総理から、担当大臣から、テロ対策の具体的な内容が示されたでしょうか。何もありません。逆に、テロのリスクはない、自衛隊のリスクも減ると言い張っています。これが智者の対応でしょうか。テロのリスク、自衛隊員のリスクも無視して安保法案を成立させてしまっていいのでしょうか。やはりまだ審議は尽くされておりません。
 さらに、国民の多くが徴兵制に関してもいまだ不安を払拭できないままです。私は徴兵制に関して絶対反対です。根拠のない不安もあおりたくはありません。しかし、与党の議員の質問でさえ再三指摘されています。質問に立つたび、毎回徴兵制について質問しておられた自民党女性議員もいらっしゃいます。やっぱり今、お母さんたち、お父さんたちは、この安保法案が成立したら、自衛隊が中東の砂漠へ、地球の裏側まで出かけていって戦争することになる、そうなれば残念ながら戦死者も出る、我が国を守るためなら危険も顧みず自衛隊の勇士は戦ってくれるかもしれないが、日本から八千キロも離れたホルムズ海峡で死ぬのは嫌だと思って当然、その結果、自衛隊員が集まらない、集まらなくても日本を守るために自衛隊が必要、自衛隊を維持するために、自衛隊員を確保するために徴兵がしかれてしまう、これがもしかしたら徴兵制かと、多くのお母さん、お父さんが心配しておられる理由です。
 これに対して、安倍総理も、徴兵制は採用しない、徴兵制は憲法違反だと答弁しておられます。しかし、憲法違反に明確な根拠は示されたでしょうか。まず、中谷大臣もお認めになったとおり、徴兵制を禁止する憲法上の明文はありません。中谷大臣らは、徴兵制は憲法十八条が禁止する意に反する苦役に当たると答弁しておられます。しかし、かつて防衛庁長官を務めた石破地方創生担当大臣は、平成十四年五月二十三日、徴兵制を意に反する苦役だというような国は国家に値しないと述べておられます。
 集団的自衛権は、安倍総理が一年生議員の頃からこだわり続けてきた政策です。安倍総理は、総理になって、七十年間積み重ねられてきた憲法解釈を変更してでも集団的自衛権の行使を実現しようとしておられます。それならば、石破さんが総理になったならば、やはり憲法解釈を変更して、徴兵制は憲法十八条が禁止する意に反する苦役には当たらないと閣議決定し、徴兵制がしかれてしまうのではないでしょうか。
 いや、違うと、明確に根拠を述べることができる与党議員はいらっしゃるでしょうか。明確な根拠に関して申し上げます。
 私は押し付け憲法論に立ちませんが、現行憲法は、アメリカ合衆国憲法の強い影響を受けていることは明らかであります。憲法改正草案はGHQから英文で示されています。GHQから提示された英文の憲法草案はマッカーサー草案とも呼ばれていますが、その第十七条後段にはインボランタリー・サービチュードと書かれていました。このインボランタリー・サービチュードは意に反する苦役と訳されましたが、インボランタリー・サービチュードなる言葉はどこから来たのでしょうか。
 それは、アメリカ合衆国憲法十三条に、やはりインボランタリー・サービチュードとあります。アメリカ合衆国憲法修正十三条のインボランタリー・サービチュードがマッカーサー草案のインボランタリー・サービチュードとなり、そして現行憲法十八条の意に反する苦役となりました。サービチュードとは、奴隷状態、隷属という意味であります。
 アメリカ合衆国憲法に言う修正とは、改正されたという意味です。十三条は一八六五年、南北戦争の後、奴隷制度を廃止する趣旨で改正されました。したがって、修正十三条に言うインボランタリー・サービチュード、意に反する苦役は徴兵制を射程に入れておりません。だから、一九一八年の連邦最高裁判決は、国家の防衛に寄与する義務の遂行を意に反する苦役というのは、単にその文言に基づいて論破されていると判示しています。
 このように、十八条の沿革、文言に照らせば、意に反する苦役は徴兵制を禁止するとは言えません。だから、昭和四十五年十月二十八日、高辻内閣法制局長官も、私どもから言いますと確かに疑問なんですと述べておられます。
 以上のとおり、徴兵制が意に反する苦役に当たるという政府答弁は根拠が薄弱です。かつ、戦後七十年、議論の積み重ねがある憲法九条、集団的自衛権でさえ閣議決定だけで百八十度変更されてしまいました。徴兵制は議論の積み重ねがほとんどありません。根拠も理由も薄弱です。したがって、解釈変更ははるかに容易です。だから国民は心配しておられます。
 そこで私は、九月二日、安保特別委員会で提案をいたしました。自衛隊法を改正してはいかがかと。すなわち、自衛隊法に、何人もその意思に反して隊員に任用されないと追加したらいかがかと。徴兵制を心配しておられる国民の皆さん、この条文が追加されたならば、閣議決定だけでは済みません。密室の会議だけでは終わりません。必ず国会で議論されます。政府答弁のままよりもはるかに安心していただけるはずです。自民党、公明党の皆さん、我田引水で申し訳ありませんが、国民の皆さん方の不安を払拭するために、何人もその意思に反して隊員に任用されない、自衛隊法にこの条文を追加することを検討していただけないでしょうか。(発言する者あり)
 まだまだこの安保法案、議論が尽くされていません。一番前でふざけるなとやじっているあなた、国民の皆さん方の声を聞いてください。それにもかかわらず、自衛隊出身のあなたがそんなやじをすること自体、国民に対する背信であります。
 こんな強行採決を断じて許してはならない。それを許した中川委員長の責任は極めて重大であることを申し上げて、私の趣旨説明といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
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発言情報

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発言者: 前川清成

speaker_id: 22257

日付: 2015-09-17

院: 参議院

会議名: 本会議