柳澤協二の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(柳澤協二君) おはようございます。柳澤でございます。
私は、先般与党協議会で合意されました安全保障法整備の具体的な方向性というものを題材に、今後具体的な法案の作成、審議に入っていくわけでありますので、そこで当然議論されなければならないであろう幾つかの問題提起に絞って今日はお話をさせていただきたいと思います。
お手元に安全保障法制についてと書かれた資料を用意してございます。これは、与党協議会の表現とは多少、私流に簡略化した表現の違いがございますが、おおむねその内容に沿った形で整理をさせていただいております。
まず、原則的な、全般というところに相当する原則事項として三つのことがうたわれていると思います。一つは国際法上の正当性、国会関与等の民主的統制が必要だということ、そして自衛隊員の安全確保という三つの原則的な考え方が示されたわけでありますが、実はこれ、それぞれ実際にこれ実現していくということはなかなか難しい問題を含んでいるというふうに私は認識しております。
まず、国際法上の正当性というときに、今国際法上正当である、これは他国軍隊を支援する際の他国軍隊の行動についてでありますが、その武力行使が国際法上正当であるために必要な要件は、国連安保理決議のマンデートがあること又は自衛権行使であるということだと思いますね。安保理決議がない場合でもこれを何とかやっていこうというお考えのようでありますから、そうすると、特定の国の自衛権行使が正当であるということを日本国として認定するためにどういう条件が必要なのかといったところ、あるいは自衛権行使ではない、例えば人道介入と書かせていただきましたけれども、もう目の前にある人道的な危機に対して果たしてどこまで強制力の行使が許されるんだろうかというところは、まだ国際的にも決着が付いていない論点であります。この辺をどういう基準で日本が判断していくのかというところが問われてくるのかなと思います。
それから、国会の関与等の民主的統制。これはもういずれにしても是非とも必要なところなんでありますけれども、現実問題として考えますと、国会の事前承認を基本とするという考え方を取った場合に、国会に事前の承認を求めるためには国会に事前に状況に関する説明をしなければ当然いけないということになると思いますが、これは、相手、他国軍隊の、もうありていに言えば作戦についてどこまで国会で説明することができるんだろうか。
私の実感としては、特定秘密保護法があろうがなかろうが、他国の軍隊の作戦あるいは位置といったようなことは、実は最高度の守るべき情報ということになると思います。それがオープンになったら、作戦目的が達成されないし、攻撃の対象になるという危険性があるわけでありますから、この辺の必要性をどうバランスを取って国会の審議に堪えられる説明ができるのかという大きな課題があるんだろうと思います。
それから、自衛隊員の安全確保でありますが、私も官僚の頃は、イラクのサマーワでの自衛隊の派遣を、官邸にいていろいろ毎日情勢の会議をやらせていただいて、見させていただく仕事をしておりました。ありていに言いまして、結果として一人の犠牲者も出さなかったわけでありますが、それはいろいろ現地の部隊がもう大変な努力をしたわけですね。
少なくとも地元の住民に銃を向けることもないわけだし、結果、こちらが銃、武器を使わなかったということが、もちろんそれだけでは済まない、それでもロケット弾は飛んでくるし、当たりどころが悪ければ犠牲者は出たのかもしれません。しかし、やはり犠牲者がなかった背景には、自衛隊が果たすべき任務が直接武器の使用を前提とした任務ではなかったという点が大きい。武器を使わない、道路を直したり、学校を直したり、医療の指導をしたりということ、そのこと自体は武器使用を必然的に伴うものではない、ただ、万々が一の身の安全のために自己保存型のいわゆる武器使用権限を与えていたという、そういう条件で犠牲者が出なかったという側面があるというふうに私は今感じております。
そうすると、新しい法制の中でいろいろ武器の使用が拡大する、それはなぜかといえば、そういう任務を与えるからなんですね。治安維持でありますとか、駆け付け警護でありますとか、そういう任務を与えるということは、やはりそれでどうやって安全を確保するんだろうかということ、これは実は非常に大きな二律背反になってくるんだろうというふうに思います。そういったところを是非しっかり法案審議の中でお考えいただきたいと思っております。
以下、個別のテーマごとに少し敷衍して申し上げたいと思いますが、二枚目は、この表現、武力攻撃に至らない事態ということですが、グレーゾーン事態と書かせていただいていますけれども、ここで法律の手当てが必要だとされているのは、米軍等の武器等防護ということであったと思います。
これは今の自衛隊法九十五条の考え方を踏まえて、他国軍の武器等も防護の対象にするというお考えでありますけれども、この規定の一番のポイントは、武器等防護の任務を与えられた、海上自衛隊でいえば艦長の判断で武器等の防護をするということなんですね。したがって、これは、もちろん総理大臣の承認といったような手続は入ってくるだろうと思いますけれども、現場の判断でありますから、そこに事態拡大のおそれというものを絶えず認識しながら運用していかなければいけないという問題があると思います。そこをどう防ぎながら武器等防護をしていくのかというところが非常に大きなテーマになるんだろうと思います。
こういうことが必要なのは、やはり情勢緊迫時なんですね。平時の全く平穏にやっている共同訓練をいきなり襲ってくるようなことはあり得ませんので、つまり、防衛大綱に書かれているような情勢緊迫時に抑止を目的とした演習を日米で行うようなケースで、それが一種の相手から見て挑発になるようなケースで相手が襲いかかってくるかもしれないという心配はあるんだろうと思うんですね。だとすれば、そういうこと自体がどうなのかという、それを国会承認の対象にするかとか、そういうことも含めて是非幅広い議論をしていただきたいと思います。
それから、次の紙でありますが、他国軍隊への後方支援の枠組みについてであります。
これは、周辺事態という、周辺事態が地理的概念ではないという考え方ではあるんですが、さはさりながら、やはり日本が米軍を支援するというのは、日本の能力が及ぶ範囲という意味では日本の周辺にならざるを得ないと私は思っておりましたが、周辺事態法でどう定義されているかというと、周辺事態というのは、そのまま放置すれば我が国に対する武力攻撃に至るなど我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ということなんであります。それを今度は重要影響事態、言葉がどうなるか分かりませんが、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ということに変更されるようであります。
そうすると、これは武力攻撃予測事態との関係を一体どう整理するんだろうかと。武力攻撃予測事態であれば、むしろ日本防衛にもっと資源を集中しなければいけないんだろうかというような状況設定の問題はありますが、地理的にこれは拡大していくという前提になると思います。
その場合に、その重要影響事態って一体どういうことなんだろう。中東とかインド洋のシーレーンが危ういときとか、いろんなケースはあり得ると思うんですが、それは具体的にイメージできるような議論を是非していただく必要があるんだろうと。そして、そういうケース、仮に相手が相当な軍事力を持った国であるとすれば、その他国の軍隊を支援するということは、日本も戦争当事国とみなされて、日本に対する反撃ということも当然考えておかなければいけない。そういうリスクをどう最小化していくかという枠組みを同時に考えていく必要があるということだろうと思っております。
それから、次でありますが、いわゆる恒久法の問題であります。
これは、日本の平和と安全に影響という観点というか、日本防衛とのつながりの観点ではなくて、より広い国際協力の観点からの他国軍の支援ということだと思うんですが、この中でも、従来この種の法律では、私どもは、非戦闘地域ということで活動の地域を整理しておりましたが、今回は戦闘現場以外ではやれるというふうになると聞いております。
これをありていに言いますと、法律ですから、そういうことは、やるかやらないかということは別にして、この法律を適用したときに一番ぎりぎりの外縁に当たる一番ハードな任務を考える、それが法律の授権でありますから、それが一体何をもたらすかという議論をしっかりしておかなければいけないんだと思うんですね。
そうすると、この場合は、言わば前線部隊に弾薬輸送ができるということになってくるんだろうと思います。今まで自衛隊がやっていましたのは、イラクの場合でもC130がバグダッド空港に物資を運ぶ、これは拠点輸送なんですね。そこから先の前線部隊への輸送は、それぞれの前線部隊あるいは前線部隊に組み込まれた輸送部隊がやるということであったわけで、それ以上のニーズは、私は実はそんなにないんじゃないかと思っているんですけれども。
ただ、そういう輸送までやっていくようにした場合に、相手は弾切れで困っている前線部隊ということになりますと、戦闘が始まったからといって中断しますというわけにはいかない。これはもう信義にもとることになってしまうので、なかなかその中断の枠組みを本当にこういうシビアなケースでどう確保できるんだろうかという問題。
あるいは、そういう前線部隊がいる地域というのは、そこに指揮系統のはっきりしない他国の部隊がのこのこ入っていくというのはそれ自体非常に危険なことでありますから、その際の指揮系統なりをどのように考えていったらいいのか。非常に現場に即した問題意識でそこは議論をしなければいけないんだろうと。
それからもう一つ、国連決議、ずばりの武力行使容認決議がなくとも、なくて活動している他国軍隊への支援もできるということであります。
それは、例えばイラク戦争とかISIL有志連合への支援はしないと政府は答弁しておられますけれども、それは政府の政策の、今の政策の問題であって、法律から出てくる論理ではないはずなんで、じゃ、それは法律の中に仕組めないのか。少なくとも、それは今の内閣だけではなくて後の政権も拘束するような形で、何らかのいわゆる歯止めがなくてもいいんだろうか。こういったことを是非お考えいただきたいというふうに思います。
それから、さっきも申し上げました、安全確保ができないと部隊長が判断した場合に、それはまずいからやりませんと、その多国籍軍の司令部でそういう主張が果たしてできるんだろうか、これは誰がお断りするんだろうかということも、非常に技術的な問題ではありますが、こういう手当てをきちんとしないと、現場の自衛隊は安心して行かれないということにもなりますので、是非具体的に、やはり部隊も非常に悩ましい任務になると思いますので、是非、政治の場でもここのところはもうお悩みいただく必要があるだろうと私は思っております。
それから次に、五枚目は、いわゆるPKO等であります。
PKO等という中に、国連統括外の活動も入ってくるというのが今度のお考えのようでありますので、その際も、五原則に相当するような厳格な参加原則を打ち立てるということを言っておられますが、一番の問題は、中立維持ができるかということだと思うんですね。
今のPKO、非常に、何というんでしょうか、停戦に従わない連中をどう押さえ込むかということが非常に大きな課題になってきているんですね。そういうところにそういうミッションも含めて入っていくということになると、大変これも難しい話になっていかざるを得ないんだろうと思います。
特に、従来の国又は国準でないという認定をしていけば、武器の使用が憲法に触れることはないという、それは今までの考えの延長線上でそう言えると思うんですが、憲法に適合するかどうかということと、では、そういう組織と本当に、そういう組織に強制力を働かせていくということが本当に日本にとって得意な分野なのかどうか、あるいはそこで隊員の安全が守られるのか、そういったようなことを考えていただく必要があるんだろうと。
特に、治安任務なんかは非常にリスクの高い任務でありますから、今までPKO任務で、PKOの治安任務で各国で犠牲者も出ていると思います。その辺の状況も是非検証していただいて、政治家の皆さんが、うん、これなら大丈夫だという確信を持っていただきたいと思うのであります。
それから、六ページ目でありますが、いわゆる集団的自衛権の限定行使のときについては新三要件がそのまま、七月一日、昨年の、閣議決定にうたわれた新三要件がそのままにされておりますけれども、やはりこれはより具体化した基準を書いていただかなければ政府の自由裁量ということになってしまう。それを極力、どうその基準を設けていくかということが非常に大きなテーマになるだろうと。そして、新事態というようなことも言われていますが、是非、我々は今まで考えていたのは、武力攻撃事態か予測事態かなんですね。そうすると、武力攻撃事態ではないが予測事態よりも厳しいという、そういう新事態というのがどういうふうに考えられるのか。これをすっきりさせていただく必要があるだろうと思います。
それから、国会の事前承認についても、冒頭申し上げたのと同じような問題があると。
最後に、船舶検査等については、邦人救出のことだけ問題提起させていただきますが、領域国の同意あるいは総理大臣の承認があれば自衛隊が武器使用を前提にした邦人救出ができるようにするというお考えのようでありますけれども、これは事前に公表されるようなことになりますと、邦人が非常に危険な状態になることはもう常識で分かることだと思うんですが、あるいは、イナメナスのような内陸千キロに入ったところに部隊を展開するためには一体どれぐらいのものを持っていかなきゃいけないのかというような、ここはもう非常に現実的にイメージできることでありますから、そういうイメージに基づいてしっかり議論をしていただき、国民あるいは自衛隊に不安を残すことがないような法律を是非目指していっていただきたいと思います。
私の発言は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。