辻山幸宣の発言 (予算委員会公聴会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○公述人(辻山幸宣君) ただいま御紹介いただきました辻山でございます。
 着席させていただきます。
 昨年暮れ近くに、衆議院の地方創生特別委員会にも招請されまして、その冒頭で法律名を間違えてしまいました。ひと・まち・しごと創生法と呼んでしまいまして、そのときにも若干言及したのですけれども、やはり「ひと」が最初に来るということが大事ではないか、そして私たちの口をついて出る言葉も「ひと」から始まる方が言いやすいことは間違いないのでございまして、もちろん法律は通りましたので、この法律名でいくんだろうということはいいのでありますけれども、是非とも、その運用については、人を生かしてこそ、あっ、これはどこかのポスターにあったな、人を中心に施策を組み立て、運用していただくことをお願いしておきたいというふうに思います。
   〔理事岡田広君退席、委員長着席〕
 最初に、この地方創生政策あるいは構想と言われるものの前提になっている認識について申し上げたいと思います。
 まち・ひと・しごと創生法の第一条には、「人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、」云々というふうにあります。これは、言うまでもなく、あの日本創成会議が示したレポートで言われている人口減少、消滅自治体、この議論を背景にして登場してきた法案であろうというふうに考えているのでございます。
 また、昨年六月に閣議決定された骨太の方針においても、五十年後も人口一億人を保持するという目標を設定しているわけであります。これらの背景には、人口減少が日本社会に大きな問題を引き起こす、だから人口減少にストップを掛けないといけないのだという認識があるように思います。
 さて、果たして、人口が一億人を切ったらどのような困難が襲ってくるということになるのでしょうか。この点についての議論もなく、また研究実績もございません。にもかかわらず、ただ人口減少ストップと言い募っている現状でございます。
 もちろん、市町村も同様に、現在の市の人口が何人を切ったら、この町は、この市はどうなるのかというようなことについての検証を進めていく必要があるのではないかというふうに思っています。なぜか結論が先にあって、人口減少ストップ、このためだけに多くの人手と金と能力を消費してしまうような気がしてなりません。
 そこで、検討しなければいけないのは、これまでも、実は各地の地方自治体や地域は、それぞれ地域の活性化とかそういったことにずっと取り組んできているのですね。一九七〇年に制定された過疎地域緊急対策法、これから始まって、数次の改正を経て今日まで来ておりますし、また一九八八年の竹下内閣で進めたふるさと創生事業、このような各種の取組を通じて、過疎対策、人口減少対策、地域活性化対策、ずっと取り組まれてきたのでございます。
 にもかかわらず、それでもなお東京一極集中、地方衰退が進行してきたのであります。なぜそうなったのか。
 これまで政府が打ち出してきた様々な政策に対する検証がなされていません。これがまず第一に不可欠でございます。過去の政策への検証、反省がない限り、今回の地方創生も失敗に終わる可能性が強いと言わざるを得ないのでございます。
 さてそこで、まち・ひと・しごと創生法、この法律について若干意見を述べさせていただきます。
 この法が制定された以降、まち・ひと・しごと創生総合戦略というものを策定して、国は総合戦略を策定して、都道府県、市町村は、それぞれそれを勘案しながら総合戦略を策定する。これは、恐らくこの十二月ぐらいまでが大変な山場を迎えるだろうということを考えております。
 一般には、自治体の総合戦略は義務付けじゃないよと、努めるものとするというようなことで勧めているだけですというような言説があるのでございますけれども、例えば今回の新交付金と言われている四千二百億円の交付について見ても、自治体はこぞってこれに向かって計画を提出していくわけでございます。
 やらないわけにはいかないのですね。住民に対して説明が付かない。これだけ、言ってみれば、明確なひも付きとも言えないような有利な交付金が出されているのに、おまえはなぜそれを取ってこないのだと。こうなりますと、義務付けていないということは単なる形式論にすぎないのであって、みんなこの計画の策定に向かって走るということが予想されます。まさに国主導の地域づくりという感じになりますが、果たしてそれでうまくいくのかという心配をしております。
 現に、四千二百億円が予算化された二〇一四年度補正予算のこの地方創生関係新交付金、この交付をめぐっても、各地の自治体に大きな混乱を生みました。
 先ほど三次公述人の話にもありましたように、自由で使い勝手のいいというようなことではなくて、実は、ここにも持ってまいりましたが、その交付に当たっての、何というんでしょうね、指導書というんでしょうかね、これを見ますと、この交付金を使ってできる事業の参照資料ということでありますけれども、何と載っているのは、プレミアム付き商品券、ふるさと名物商品・旅行券、UIJターン助成金、この三例だけが事細かに、どのように記入して、どうやって申請すればいいかというようなことが書かれているだけでありまして、現に、既に御承知だと思いますが、自治体の九七%に当たる千七百三十九の自治体がプレミアム付き商品券の発行ということで交付金を受け取っているのです。まさに一色なのでありまして、どこが地域の特性と言えるのかということを疑わざるを得ない。
 その背景には、先ほどの三次公述人の話にもあったように、中央の指導、介入があったように言われておりますが、まさしくこのようなやり方で地域創生、地方創生ということができるというふうにお考えなのかどうか、そこのところを十分にこれから国も地方も考えていっていただきたいというふうに思います。
 何せこの国主導の進め方の問題性というのは大きなものでございまして、自治体もこれに追い立てられて、成功の見通しや、あるいは緻密な計画性を持たない状態でプランを提出し、そしてそれが認められていくと、もしかすると、かえってその事業の失敗による負債を増やしてしまう、そして消滅を早めてしまうのではないかということさえも危惧しているところでございます。
 第一、この総合戦略でも述べられている人口減少に歯止めを掛けて、そして人口を増やしていく、こういう事業は極めて長期にわたる課題でございます。にもかかわらず、どうも来るべき統一地方選挙に向けて地方向けのプレゼントというようなニュアンスがまかり通っている。まあ、これはもちろん報道の責任もあるのでございますけれども。
 やはり、短期的に解決すべき課題と、それから長期に取り組んでいく課題というふうなことについてきちっと分けて議論していかなければ、これから作られる計画、何年ぐらいで人口はどれぐらいになるだろうというようなことを言って、誰がその検証の責任を取るのだというような問題まで私には気になってしようがありません。
 ちなみに、政府がまち・ひと・しごと創生長期ビジョンというものを示しているのでありますが、その中にはOECDレポートの例を引いておりまして、こういうことを言っているんですね。日本は、育児費用軽減や育児休業の取得促進、保育サービス拡充等の対策が講じられれば、出生率は二・〇まで回復する可能性がある。これはOECDのレポートにある記述でございます。しかも、それを政府の長期ビジョンで引用しているのであります。
 私に言わせれば、まずもってこうした政策を徹底して進めていくということからこの人口問題ということを考えていくべきではないか、そのことをどこかにおいておいて、やれ婚活を盛んにするとか、やれ都会に若い女性をやるなとか、そういうことにだけ走っているこの政策については、私はちょっと優先順位が違うのではないかというふうに感じております。
 さて、以上申しましたようなことも含めて、このような政策で地方創生ということをやっていけば、全部の地方が人口を回復し、あるいは人口を維持することができるかというと、そうはならないのです。
 どう見ても、私に言わせれば、今回のような交付金、ほぼ全ての自治体が同じ使い道で使いますというようなことが二度と起きてほしくないのでありますが、そうでない限り、これは自治体間の競争になります。何の競争か。人の奪い合いになる。Jターンにせよ、Iターンにせよ、Uターンにせよ、人口過多の都会から地方へ人を呼び込む、その人口の奪い合いになる。
 そして、その競争には必ず敗者が生まれます。この敗者のことを考えてかどうかは知りませんけれども、昨年の地方自治法改正で、地方中枢拠点都市という概念と、そこへ周辺町村、標準的な公共サービスの提供を持続できなくなったそういう町村を抱え込んでいけということを法律で作ったのであります。
 今回の地方創生の総合ビジョンを見ましても、このことに大変大きな紙幅を取って、自治体の連携が大事だと。しかも、この総合戦略では、自治法が言った地方中枢拠点都市という言葉を国交省の地方都市連合でしたかね、と一体化して、連携中枢都市という概念でまとめるということをやってのけました。そして、そのようにして、人口減少にあえぐ、困っている自治体を競争させ、そしてこれに敗北してますます窮地に陥った自治体は中心都市、中枢都市が抱えろというような図式になっているわけであります。
 そのときに失われるその周辺町村の自治というもの、地域があって住民がいればいいというものではありません。そこで人々が、自分たちの手で自治を行っていくんだ、隣の市にお世話になって生きていくんじゃないんだということを大事にしていかなければならない。是非とも、この地方創生はそのようなことが起きないように、これからも運用、予算措置、その他で考えていただきたいと思います。
 以上でございます。失礼いたしました。

発言情報

speech_id: 118915262X00120150326_210

発言者: 辻山幸宣

speaker_id: 25543

日付: 2015-03-26

院: 参議院

会議名: 予算委員会公聴会