平田仁子の発言 (環境委員会)

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○平田参考人 本日は、意見陳述の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 私の気候ネットワークという団体は、一九九八年、気候変動枠組み条約第三回締約国会議、COP3を機に設立されたNPO法人でして、地球温暖化、気候変動対策を市民の立場から進めるということで取り組んでおります。ここで審議されております地球温暖化対策推進法の制定も一九九八年ということで、京都議定書がきっかけで生み出されましたので、私たちも、そして私自身も、まさにこの法律と同じ年月を重ねて活動してきているというところでございます。
 まず、審議に当たりまして、私たちがどのように立法に向けて市民の立場から取り組んできたのか、若干振り返らせていただければと思っております。
 京都会議直後の九八年二月、地球温暖化防止活動推進法案というものを提出させていただきました。そのときには、図にありますように、短期のみならず中長期、超長期に向けて大幅削減を目指しながら重層的に削減計画をつくること、強力なリーダーシップがとれ、各セクターが参加する開かれた委員会を設置し、役所と審議会だけが主導する政策決定システムを変える必要があると提案いたしました。
 しかし、ちょうどそのころ、この温対法の策定が環境庁によって進められておりまして、当時、国会議員の皆様と対話させていただく中では、市民案への支持をいただけたこともありましたけれども、政府法案は悪い法律ではないということで、市民案が日の目を見ることはありませんでした。
 そして、この温暖化対策推進法は、京都議定書の実施のための最初の一歩を踏み出すためのものとして、中身はほとんどないまま、まずはスタートいたしました。二段ロケットの一段目と当時言われていたのが象徴的だと思っております。ただ、その後、今、浅野先生がおっしゃったように、幾度と改正を重ねて中身を備えてきたところです。
 そして、二〇〇八年、国際的に中長期的な対策に向けた機運が高まっており、洞爺湖G8サミット前後のころ、メーク・ザ・ルール・キャンペーンというものを立ち上げまして、気候保護法案を提案いたしました。
 レジュメの二ページの骨子案をごらんいただきますとおわかりいただけますが、二度未満に気温を抑制するため、短期の京都議定書の目標達成に加え、中長期の目標を設定し、国内排出量取引制度や炭素税などの炭素への価格づけをする仕組みの導入や、固定価格買い取り制度の導入、そして適応計画の策定、情報の開示や市民参加の仕組みなどを提案いたしました。
 この法案には、登山家の三浦雄一郎さんを初め、たくさんの著名人が呼びかけ人となり、全国の百二十三の地方議会が同法案の提出を求めた決議、意見書を採択し、また百四十名を超える学識経験者がこれを支持いたしました。
 これに呼応するように、政治の場でも、民主党が地球温暖化対策基本法を提案し、また、自民党、公明党も中長期的な目標を掲げた対案を提出いたしました。しかし、政治情勢の変化の中で、これらの法案の実現にはなりませんでした。
 ここで言えますことは、私たちは、この十八年にわたって一貫して、長期を見据え、気候変動を防ぐことに資する国内法の整備を提言し続けたということであります。そして、きょう私が申し上げたいことも、それをさらに強調することにほかなりません。
 といいますのも、今はパリ協定後の新しい脱炭素化時代に突入したからです。資料三枚目、参考資料をつけておりますのでそちらも御参照いただければと思いますが、パリ協定の幾つか重要だと思う点を改めてハイライトしたいと思います。
 一つは、明確な長期目標を設定し、これを法的拘束力ある国際法の条文に記載したということです。一・五度ないし二度未満の気温目標、さらに世界の排出量の頭打ち、そして人為的な排出と人為的な吸収を均衡させるということを盛り込みました。実質排出ゼロを意味します。図で見ると、富士山の尾根を描くように、今を頂点に大幅な削減をしなければいけないという非常に意欲的な目標でございます。
 この長期目標から言えることは、世界が向かうべきは脱炭素化、脱化石燃料の社会経済であるという明確なシグナルです。
 パリ協定の合意には、この目標に向けた各国の二〇三〇年までの目標案は、全くその二度を達成する水準には足りないということも明記されています。これから、今計画しているよりもさらに行動を引き上げなくてはならないということです。
 第二は、持続的な行動強化システムをビルトインしたことで、五年ごとに目標を設定し、それを国際的に公表、評価することで行動を引き上げていくということを狙うものです。
 そして、その対象は、排出削減を指す緩和だけではなく、適応や技術移転、資金なども含まれ、包括的なものとなりました。
 さらに、パリ協定は、前文や十二条に明らかなように、気候変動を防ぐということは、人権を保護し、先住民や子供、障害者など弱い立場にある人々を守り、また、女性の権利の向上を図り、世代間公平を尊重するということでもあり、市民参加と情報へのアクセスを拡大しなければならないとも規定しています。
 パリ協定が、これからの未来に向けて、誰もが不平等に扱われず、包摂し、共生していく精神に立った社会的仕組みをつくるものであるということがここに指し示されていると思っています。
 きょうは、ニューヨークでパリ協定の署名式が行われているという記念すべき日です。この歴史的合意を受け、日本はどのような法律を整備するべきなのか、これから述べさせていただきます。
 さきに申し上げたように、日本にはまだ中長期を見据えた法律は存在しないと思っております。地球温暖化対策推進法は、京都議定書の実施を念頭にした法律としてスタートしたものであって、これから中長期に取り組んでいくパリ協定を踏まえた国内体制整備にふさわしい内容にはなっていません。
 レジュメの三ページをごらんください。今回、法整備として提言したいことを六点書いております。パリ協定の実施を担保し、気候、エネルギー政策を統合する気候変動防止のための国内法の整備が私たちは必要だと考えています。
 ただし、内容の詳細は改めて読み上げません。なぜなら、ここに書かれているのは、二度未満ないし一・五度の気温目標の明記、長期目標の明記、炭素の価格づけや再生可能エネルギーの拡大計画、適応計画の法定化、そして科学的知見の反映と市民参加の仕組みの導入といった項目でありまして、さきの気候保護法案とほぼ同じ内容だからです。
 ただし、パリ協定後の今は、九八年とも二〇〇八年とも違い、今こうした議論が改めて必要だと考えています。まさに、長期を見据えた国際法ができたこと、そしてそこに向けて五年ごとに実施を促す仕組みが義務としてつくられたこと、こうした国際的な進展があったからです。二度目標の明記、長期目標の明記をすることは、パリ協定に準じた法制定の必要性を意味しており、その必要性はこれまで以上に高まっていると考えています。
 こうした問題意識と照らしますと、今回の法改正項目である普及啓発、国際協力の推進、地方自治体の実行計画の共同策定という内容は、パリ協定を受け長期的に取り組んでいく足がかりとしては全く不十分ではないかと言わざるを得ません。パリで非常に大きなモメンタムと時代の変革の兆しを私自身感じましたが、この今回の改正内容との落差には正直落胆を隠せません。今がどのような時代の転換期にあるのか、見えていないのか、それとも見ようとしていないのかと疑問も抱きます。
 しかし、今回の法改正も、もしかしたら大勢が、悪い改正ではないということで容認されていくのかもしれません。私自身も、可もなく不可もないと表現したいようなこの改正案ですが、悪いとは申しません。
 しかし、今ここで御議論いただいていることが、これからの日本にとって、国際社会の中でいかにこの問題に行動していくのかということで必要とされていることと比べてどれだけのギャップがあるのか、どれだけの大きな宿題を残し、まだその宿題に取りかかっていないのかを的確に見据えた上で御議論いただけると幸いに思っております。
 最後に、政府によってこの法案に基づいて策定が進められています地球温暖化対策計画案についても若干コメントさせていただきます。
 私が申し上げました一・五度ないし二度未満の気温目標や日本の八〇%削減という長期目標は、法改正ではなく、この計画に記載されています。言うまでもありませんが、この計画にこれらを盛り込んでいくことは必要最低限であります。国連では長期の低炭素戦略をつくることも要請していますので、二〇五〇年の長期目標を点で示すだけではなく、さらにそこへの道筋を示すことも必要になってきます。ですから、八〇%削減の明記は最低限のことであります。
 二〇二〇年、三〇年の目標は、エネルギー政策の見直しや大きな国民的な議論もなく、パリ協定採択前の目標がそのまま記載されることになりました。しかし、二〇三〇年目標については、正式に二〇二〇年までにもう一度提出しなくてはなりません。そのときに必ず再検討が必要と考えます。なぜならば、国際的に二〇三〇年目標は不十分であるという認識がなされており、日本を含めてどの国にも引き上げが要請されるからです。
 削減目標はエネルギーミックスを所与としていますが、その中でも大きな懸案は、CO2を最も出す石炭火力発電の新設計画です。
 参考資料の最後のページにグラフをつけておりますが、驚くほどのスピードで新規計画が進んでおります。先進国の中でもこのようなトレンドは日本唯一です。このままでは政府の二六%削減も危ぶませると思っておりますが、この問題への対応は電力小売事業者に対して自主的な取り組みに委ねることに寄りかかっており、この点は特に近々に見直しが必要です。
 ここ数年、国際的な研究機関、そして論文で、高効率な石炭火力発電の新設は二度未満とは矛盾するということが指摘されるようになりました。化石燃料の八割は埋めておかなければならないとも指摘されるようになりました。このことと日本の石炭火力発電の新設は完全に矛盾していると思います。
 進めるべき再生可能エネルギーも岐路に立たされています。足踏みをする再生可能エネルギー事業者の直面する障壁を取り除く仕事にも取りかからなくてはなりません。排出量取引制度や炭素税など、CO2を排出することには相応の責任を持たせ、一方、削減で努力することには優遇をするような仕組みも、まだまだこれから検討を深めるべき課題です。
 このように、日本は課題山積です。気候とエネルギー政策は一体的に議論し、温室効果ガス削減を進める施策についてさらなる検討をしていく機会を改めてつくり出す必要があります。
 以上のことを申し上げまして、今国会での法改正の審議におかれましては、改正内容の審議にとどまらず、これからの日本の気候変動対策のあるべき姿と長期展望に向けて着実に行動を実行させる仕組み、そして政策措置の強化について十分に御議論いただき、日本が脱炭素化に向けて世界をリードしていただけるよう、政治のイニシアチブを期待したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119004006X01020160422_004

発言者: 平田仁子

speaker_id: 1285

日付: 2016-04-22

院: 衆議院

会議名: 環境委員会