明日香壽川の発言 (環境委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○明日香参考人 きょうは、このような機会をいただき、どうもありがとうございます。東北大学の明日香と申します。
私は、パワーポイントを用意してきましたので、それをごらんになりながら、それに沿ってお話をさせていただきたいと思います。特に読む原稿は持ってきていないので、いろいろ自分の言葉でしゃべりたいと思っております。
先ほど、前の参考人のお話にもありましたように、今回の法案は可もなく不可もなく、私もそう思います。それはどうしてかというと、具体的なことが余り書いてないので、なかなかうまくコメントできないというところがあるかと思います。
なので、きょうは皆さんに、地球温暖化問題で世界で何が起きているか、日本でどうして地球温暖化対策に対する取り組みが弱くなるのか、そういう根本的なことについて、私の考えを述べさせていただきたいと思います。
パワーポイントに沿ってお話をさせていただくので、ごらんになっていただければ幸いです。
タイトルは、「日本の温暖化問題(エネルギー問題)におけるガラパゴス化を憂う」というちょっと刺激的な言葉を選ばせていただきました。内容は、世界、日本、なぜ日本は温暖化問題でガラパゴス化するかということで、私の考えを述べさせていただきたいと思います。
本日伝えたいメッセージとしましては、温暖化対策、エネルギー政策と全く同じです、において日本はガラパゴス化しており、それは現在、国際社会から非難を浴びていて、かつ日本の経済成長も損ねているということを私のメッセージとしてきょうお話をさせていただきます。
最初に、世界の動きについて、パワーポイントで写真がありますので、ごらんいただきたいと思います。
二週間ぐらい前の朝日新聞に、ベトナムで百年に一回の干ばつというニュースがありました。その下は、四日前なんですが、ロシアで大規模洪水、原因は急激な気温上昇というニュースが流れておりました。
次のページで、アメリカのヒューストンで洪水、五人死亡、数百人が避難とあります。その下は、オマリー・メリーランド州知事、民主党候補のナンバースリーであった方ですが、彼が、二〇一四年の段階で、シリア難民問題と気候変動問題の関連性についてテレビのインタビューで答えています。
その次は、サンダースさん、皆さん御存じだと思いますけれども、彼はインタビューで、アメリカの国家安全保障に対する最大の脅威は何かと問われて、気候変動というふうに答えています。最近でも、IS、イスラム国よりもクライメートチェンジの方が重要な問題なのか、悪いのかという質問で、アブソルートリー、もちろんだというふうに答えています。
なので、世界は温暖化の被害が激しくなっていることもありますし、それにかなり、特にアメリカの政治は、政治家が気候変動に関していろいろな場でコメントをしているというのが現在の流れです。
その背景にあるのが温暖化被害なんですが、どうしても日本では、温暖化被害というと、せいぜい百人、千人、万人ぐらいだというようなイメージを持っている方が多いかと思います。ですが、実際、温暖化で被害を受ける方は千万から一億人です。
実は、温暖化の被害というのは洪水、干ばつがほぼ七割、八割を占めるんですが、洪水で既に被害を受けている方が二千万人、毎年世界にはおります。その人たちが、二度Cだったらその二千万人ほども変わらないんですが、三度、四度、五度という世界になると、その人たちの数が五千万人、一億人、二億人になる、それが気候変動問題でありまして、だからこそ安全保障問題というふうに認識されています。
石炭の話を少ししたいと思います。
二度目標、一・五度目標、何となく頭では数字はわかるんですけれども、それは何を意味するかというのは、多くの方は御存じないかもしれません。例えば、一・五度目標というのは、石炭火力発電所は先進国ではもうほぼ使えず、途上国でも新設は無理だというようなことを示しています。それが科学的な事実です。
なので、今日本は、後でもお話ししますけれども、石炭火力発電所を新設しようとしているんですが、これは完全に一・五度Cなり二度Cというパリ協定の目標を無視しているというふうに国際社会からは認識されています。
そういう流れの中で、一つ、ダイベストメント運動というのが今起きています。そこにありますように、化石燃料企業からの投資撤退、たくさんの企業、都市、財団、年金が、五百ぐらいの組織が今あるんですが、そこがもう化石燃料会社の株とか債券を買わないということを宣言しています。ですが、日本で実はこういうダイベストメントを表明している組織はまだ一つもありません。これが現実です。
もう一つ特徴的なのは、裁判が今たくさん起きています。
一つ興味深いのは、オランダのNGOが、オランダ政府を数値目標が低過ぎるといって訴えて、オランダのNGOは一審は勝っています。
今、ニューヨーク州ほか幾つかの州がエクソン・モービルという会社を訴えようとしています。まさにこれはたばこ裁判と同じような展開になっています。
最近も、アメリカで若者たちがアメリカ政府を訴えています。それは、若い世代が温暖化の被害を受けるのはおかしい、憲法違反だというふうにアメリカ政府を訴えています。
フランスですが、フランスはエネルギー転換法というのを去年つくりました。そこでは、企業活動なり投資ポートフォリオが二度目標に適合しているかどうかを情報開示することを義務づけています。なので、これからビジネスの世界では、二度目標に整合性のある投資をしないといけない、しないと、非常に、逆に、インベストメントバンカーなりそういう人たちが責任を問われるというようになっています。
これは全てつながっていまして、いわゆる個人、企業、政府が持つ法的責任や損害賠償をめぐるさまざまな告発や訴訟が各地で増加すると予想され、これまでとは異なるレベルのリスク認識及び管理が必要となるとされています。
簡単に日本のエネルギーミックスの問題の話をしますが、基本的にこれは、原発、石炭火力重視で、省エネ、再エネ軽視のエネルギーミックスが日本の数値目標を非常に低いものにしています。
日本では、日本の数値目標は遜色ないというふうに思っている方が多いかと思うんですが、国際社会ではそういうふうに思っていません。国際社会、幾つかの研究機関が各国の数値目標を比較しています。その中で、日本の数値目標というのは米、中、EUよりも低いというふうにランクづけられています。なので、まさにこれも、日本が遜色がない、日本の数値目標はすばらしいと思っている人たちというのは、日本の本当に一部の人たちだけです。
では、何で数値目標がおかしいかというと、結局エネルギーミックスです。
一つは、長期エネルギー需給見通しでの省エネの量が非常に少ないということです。
十九枚目のスライドの写真がよくわかるんですが、これは、配管保温断熱材、工場にいろいろな配管の断熱材があるんですけれども、それがかなり今、剥がれていたり、壊れていたり、そういう状況です。これだけでも実は原発七基分相当のエネルギーがロスされています。
実は、こういう省エネポテンシャルはたくさんあるんですが、それを計算しないでエネルギーミックスをつくっていて、そのエネルギーミックスに基づいているので、日本の数値目標は非常に低いという構造になっています。
もう一つ、日本の温室効果ガスが減らないのは、石炭火力がふえているからです。これはもう明白です。
二十枚目のスライド、二十一枚目のスライド、全てそうなんですが、先進国の中で過去二十年間、震災前も含めまして、石炭火力をこれだけふやしてきた国は日本だけです。ほかの国は、フランスは原発をふやしましたり、ドイツは再生可能エネルギーをふやしましたし、天然ガスをふやしている国もあります。ですが、日本だけがふえた需要の分を石炭火力で賄っています。なので、CO2の排出量が減るはずはない状況です。
では、そういう日本は今、G7の中でどう評価されているかというと、二十二枚目のスライドですが、脱石炭火力という観点からは、一番下の七番目にランクされています。これが現状です。
もう一つ問題なのは、日本政府による海外石炭プロジェクトへの公的資金支援問題です。これも、日本、韓国、中国、この三つの国が圧倒的に多く、公的資金で石炭火力発電プロジェクトをファイナンスしています。
日本の技術はという話もあるんですが、少なくとも国際社会からは、日本は、ちょっと古い言葉ですけれども、エコノミックアニマルというふうに見られています。日本人は日本企業の利益と地球益が同じものだと自分で勝手に思い込んでいるというのは海外の人の声ですけれども、基本的にはこれは事実だと思います。
では、日本の技術は効率が高いから、技術は非常にすぐれているからいいのかという議論がありますが、実際、石炭火力発電所に関しては、日本のJBICが支援している石炭火力発電所の効率は、実は世界平均と同じくらい、または低いという調査結果が出ています。なので、日本の技術は効率が高いからいいんだというロジックは、世界には通じない状況になっています。
結局、政府の建前というのは、石炭火力も、多分まさに原発の問題も同じだと思うんですけれども、安全、高効率、クリーン、安い、あと中国もやっているからということで輸出に支援をしているんですが、結局は、海外からどう見られているかというと、単なる自国企業への輸出補助金なんじゃないかというふうに見られているのが日本の現状だと思います。
一つ、原発の話にちょっと触れましたので、原発がなくても温暖化対策と経済成長の両方が可能だということについて話をしたいと思います。
これは単純でして、ドイツがそれを示しています。ドイツの数値目標というのは日本よりも三七ポイント高いです。ですが、御存じのように、ドイツは原発をやめることを決めています。なので、原発がないと温暖化対策数値目標は高いものが持てないというのは全く、うそというのは言い方がよくないかもしれませんけれども、やり方次第では、ドイツのように数値目標、温暖化対策も高い目標を持つことができますし、かつ原発もなくてもそれが実現できるということはあります。
経済はどうかというと、御存じのように、ドイツの経済は今、ほぼひとり勝ち状況です。
なので、よく、脱原発と経済成長と温暖化対策というのは全てジレンマ、トリレンマにあるというふうに言われるんですが、そんなことはないです。
では、何で日本はガラパゴス化するか。簡単に、十二考えていたんですが、ちょっと十二全部お話しするのは難しいので、幾つかを選びたいと思います。
現在、やはり福島の原発事故の影響はあったと思います。原発事故の後、特に、温暖化対策の話をすると原発推進と思われるんじゃないかというような懸念を持つ人がいます。ですが、それも結局は、原発は温暖化対策に必要だという政府なり企業の方々の言説が、みんなそれを信じてしまっているということかと思います。
あとは、日本は環境立国だとか、日本は技術がすぐれているというような話があります。確かにそういう面はあるかと思うんですが、温暖化問題というのは技術の問題ではないです。技術はもう既にあります。それをどう普及するかの話でして、技術を革新するという話でなくて、技術をどう普及するか、どう制度をつくるかという話です。
三十一枚目に書きましたように、日本では、やはり、電力システム改革、再生可能エネルギー普及が欧米より、少なくともヨーロッパよりは二十年おくれています。
かつ、今の原発と石炭火力発電所に依存したシステムをやはり維持したい人たちがたくさんいまして、その人たちの勢力が強いということなんだと思います。基本的に、エネルギーミックスを決めますと一義的に温暖化対策数値目標というのは決まってしまいますので、エネルギー政策が一番重要なんですが、環境省も含めて、なかなかその政策立案にコミットできないというのが日本の政策決定プロセスの問題だと思います。
まとめたいと思います。
私は、楽観も悲観もしていません。温暖化問題というのは公平、責任の問題、モラルの問題で、なかなか難しい問題であることは確かだと思います。ですが、温暖化対策は、基本的には省エネと再エネです。やり方次第では国全体及び地域に経済的な利益を及ぼすことは、ドイツなりほかの国が証明しています。
そうはいっても、どこの国でもそうなんですけれども、いわゆる抵抗勢力の人たちはいます。その結果、日本の温暖化対策数値目標というのは非常に低い、国際的にも非常に低い評価しかもらえていない状況だと思います。
かつ、この前決まったパリ協定でも、実はそれほど強い内容ではなくて、多くの問題は先送りされています。
ですが、一方、冒頭にお話ししたように、いろいろな努力を市民社会が今行っています。一つは訴訟です。それは、企業が訴えられる場合もありますし、国が訴えられる場合もあります。いろいろな人たちがこれから、そういう訴訟を今用意しているのが現状だと思います。
そういう意味で、世界の状況も日本の状況も変化しつつあり、成功、失敗のお手本はあって、希望はあると思います。
希望のその一なんですが、三十六枚目のスライドを見ていただければと思います。これがある意味では一番希望をもたらすグラフかもしれません。
これは、アメリカですけれども、各発電技術の発電コストを比較したものです。これはラザードという、毎年発電コストを計算して発表しているんですが、ごらんのように、太陽光、風力が原子力、石炭よりもかなり安くなっています。いろいろあります。結局は、CO2の排出を削減するためには、太陽光、風力をふやして、省エネをふやすしかないです。国民運動といっても、結局、絵に描いた餅で終わる。
そのときに、ふやすのにどうすればいいかというと、結局、ビジネスでお金が回らなきゃいけない。ビジネスの上でお金が回るためには、やはり価格が安くなければなりません。アメリカの場合は、ヨーロッパもそうですが、太陽光、風力が原子力、石炭よりも安くなっています。日本はまだ実はいろいろな問題があって高いんですが、いずれ、コモディティー化していますので、太陽光、風力の値段は世界の価格に日本も近づいていくと思います。数年かかると思いますが、数年でそうなると思います。そうすると、原子力、石炭は、もうただ単純に高いということで要らなくなるということです。
希望その二ですが、三十七枚目、最後になります。
ドイツでは、約三十七万人の再生可能エネルギーによる雇用者が今います。一方、原子力は約四万人です。日本でも、再生可能エネルギーによる雇用者数は今二十二万人と言われています。これは六大CO2排出産業、鉄鋼、電力、セメント、製紙とか製油、六大CO2排出産業と原子力産業を合わせた数字よりも大きい。
なので、実はもう、産業という面から見ると、将来性という意味では、コストという意味でも雇用という意味でも、再生可能エネルギーが、そうではない、いわゆる重厚長大産業の雇用を凌駕しているというのが現状です。
最後になりますが、原発も石炭もそういう意味では世界では大きく、世界最大の石炭会社のピーボディーという会社が一週間ほど前に倒産しました。今、石炭会社の株価は一番高いときの一割ぐらいです。多くの会社が今倒産しようとしています、実際倒産しています。だから、世界はそういうふうに動いています。原発も同じように、今先進国で建てている国はほとんどない、御存じのようにない状況です。
そういう産業をどう考えるのか、再生可能エネルギーのような将来性がある産業をどう考えるか、それによってCO2をどんどん減らすことができるかどうか、雇用をどうするか、全て同じ、つながっている問題でして、日本の経済成長につながる問題だと思います。
なので、繰り返し言いますが、脱原発と経済成長と脱温暖化というのは、共存できますし、それを目指して、今回の法案では数値目標というのは特には触れられていませんが、一年後、二年後、三年後の日本での温暖化対策の数値目標、温暖化対策に関する議論に資するような議論をこれから活発にしていかなければと思っています。御協力をよろしくお願いしたいと思います。
きょうはどうもありがとうございました。(拍手)