佐藤博樹の発言 (厚生労働委員会)
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○佐藤参考人 ただいま御紹介いただきました中央大学の佐藤です。専門は、企業の人事管理、あるいは、ワーク・ライフ・バランスとか女性活躍の場拡大みたいなことに取り組んでいます。
きょうは、そういう意味で、人事管理の観点から、仕事と介護の両立支援のあり方について少しお話しさせていただければというふうに思います。お手元にパワーポイントの資料をお配りしているかと思いますが、それにのっとって簡単に御説明させていただければというふうに思います。
一枚目の下でありますけれども、仕事と介護の両立に向けてどういう条件整備が必要かというと、大きく三つあるかと思います。
一つは、国として、介護の社会化を前提として、特に大事なのは、要介護者の家族が働いている、最近であればフルタイムで働いている、こういうことを踏まえた上で、その働いている家族が仕事と介護を両立できるような仕組みをつくっていく。
一つは、介護保険による介護サービスであります。もう一つは、ここで議論する法定の両立支援制度で、これが仕事と介護の両立を可能とする仕組みかどうかということで、今回は、介護休業の分割ということが入っていますし、介護休暇についても半日単位で取得できる、これは両立にとって非常に重要なことかなというふうに考えております。
例えば、在宅介護でいうと、月に一回、要介護者の家族がケアマネジャーさんと会うということになります。十二回ですよね、年間でいうと。もちろん、時間はそんなに長くありません。介護休暇、今まで五日だったわけであります。そうするとどういうことが起きるかというと、家族からケアマネジャーさんに、平日は仕事です、土日来てくださいとか、夕方会いましょうということになります。これはもちろん、家族からすればやむを得ない面もあるわけでありますけれども、ケアマネジャーからすると、ケアマネジャーさんのワーク・ライフ・バランスを阻害することになるわけであります。
そういう意味では、今回、半日単位でとれますから、これで十回分です。あと、もちろん有給休暇がありますので、そういう意味でも、家族が平日、例えば昼間半休をとってケアマネジャーさんと会える。そういう意味では、ケアマネジャーさんのワーク・ライフ・バランスの観点からも大事だろうというふうに思います。
こういう介護保険サービスなり企業の両立支援制度についての情報を得られるように情報提供をする、これが大事なこと。これは後でお話しします。
二つ目は企業ですけれども、当然そういう法定の制度を整備すると同時に、それが使いやすく、その使い方について正しい情報を事前に社員に提供する。これも後でお話しします。
それともう一つは、働き方なんですね。後でデータを示しますけれども、過度な残業が多いとか有休がとりにくいとか、あるいは介護の課題があったときに上司や同僚に相談しにくいというような職場風土だと、やはりこういう会社では、介護の課題に直面すると仕事を続けられないのではないかなというふうに思いがちになります。そういう意味で、こういう整備を企業としてやる必要があるだろうというふうに思います。
最後に、要介護者の家族自体が、介護保険による介護サービスあるいは勤務先の両立支援制度、こういうものについてきちっと利用の仕方を理解した上で、自分が仕事を続けながら、かつ要介護者の家族が、必要な介護サービスを得られるようなマネジメントをする。もちろん、家族は何もするな、しないで済むというわけではありません。そういうマネジメントと同時に精神的なサポート、これは家族がやらなきゃいけないわけでありますけれども、そういうようなことをやっていくということかなというふうに思います。
次のページ、もう既にお話ししたことでありますけれども、二枚目の上、スライドの二であります。残念ながら、働いている人の側から見ると、今お話ししたような、介護保険制度でありますとか勤務先の両立支援制度についての情報を欠いている人がすごく多いです。その結果、介護の課題に直面すると、自分が直接介護を担わなくてはならないのかと思い、そうすると、仕事を続けられるというふうに考えられませんよね。やめなきゃいけないのではないかということで、介護不安を持っている人はすごく多いです。
そのデータが二ページの下であります。介護の課題に直面したときに、続けられるというふうに明確に答えた方は二割程度であります。残りの方は、わからないとか続けられないというふうに答えています。
その結果、三ページの上ですけれども、非常に不安だと。介護の課題に直面したら仕事と介護を両立できない、仕事をやめなきゃいけないんじゃないか。その不安の背景には、その下にありますように、例えば公的な介護保険制度についてどういうサービスなのかわからないとか、もちろん、介護はいつまで続くかわからない、そういう中でどう両立していいか、あるいは勤務先の両立の支援制度があるかどうかわからない、あるいはどうやって両立するのか。
例えば、子育てであれば、勤務先に育児休業をとった人とか短時間勤務をとっている人がいるわけです。ただ、まだまだ仕事と介護を両立しながら仕事を続けるというモデルがないわけですね。そういう情報を欠いているということが背景にあるのではないかと思います。
例えば、具体的に、本当に介護保険の制度を知らないのかなということで、三ページ、スライドの五ですけれども、これは、四十歳代、四十になると介護保険の被保険者になるわけでありますけれども、四十代、五十代でも、自分が介護保険の被保険者ということを知らないという人が、このデータですと三割、ほかのデータですと四割ぐらいいます。
なぜかといいますと、四十になったときに介護保険の被保険者になります。給与から天引きされます。ただし、多くの企業では、給与明細が電子化されています。多くの方は手取りしか関心がない。それだけじゃないんです。企業や国として、あなたは介護保険の被保険者になったんですよというような情報提供をしていないわけであります。
保険料を取られるけれども、保険証がないんですね。健康保険であれば、当然保険証があるわけですけれども。では、いつ保険証が来るのかというと、六十五歳の誕生月であります。つまり、自分が介護保険の被保険者であることを知る機会を欠いているというわけであります。
他方で、実際六十五歳を過ぎて保険証が来て、自分が要介護、要支援であれば、認定を受ければ使えるわけでありますけれども、そのことを知らないわけです。ですから、親が要介護になったときに、認定を受けて、介護保険のサービスを使いながら仕事と介護を両立する、例えばそのことを知らない要介護者の家族がいるということであります。
もう一つ大事なのは、四十から六十四歳でも、特定疾患であれば介護保険によるサービスを使えるんですけれども、そのことも知らないということであります。
次、スライドの六でありますけれども、今は介護保険のサービス等を知らないというお話をしましたけれども、もう一つは、勤務先の両立支援制度についても十分な情報を得ておらず、あるいは知っていてもその使い方を誤解している、こういう人が少なくないです。その結果、介護休業はあるけれども、その使い方を間違っている。
例えば、法定の介護休業は九十三日ですけれども、大企業は、半年なり一年、延ばしている企業は少なくないです。そうするとどういうことが起きるかというと、どういうふうに誤解しているかというと、介護休業は自分で介護するための制度だというふうに考えている人も少なくないです。
例えば、うちの勤務先は六カ月介護休業がある、ですから介護休業をとる、ただ、実際上六カ月で介護が終わるわけじゃないわけです。では、六カ月自分で介護していた後、六カ月たったので、では仕事に復帰するか、なかなかそうはなりません。やはりやめるということが起きたりします。
そういう意味で、やはり介護休業というものが仕事と介護を両立するための準備の期間だということを十分知らないというようなことが問題にあります。
ですから、七ページは、これは正社員として働いていた方が、離職した人なんですけれども、離職する前にどういうことをしていたかというと、かなり、直接介護も含めて自分が抱え込んでいるんですよね。介護保険のサービスは余り使っていないんですね。
他方、八ページですけれども、両立している方は、もちろんいろいろな支援をしているんですけれども、直接的な介護は自分はできるだけ少なく、やらないようにしている。要するに、マネジメントに徹する、あるいは精神的支援をやっている。そうしないと両立は難しいということであります。
十一ページですけれども、そういう意味では、やはり介護休業制度についての知識をきちっと教えるということが大事で、例えば、十二ページですけれども、介護の課題に直面したときに働き続けられるか働き続けられないか分けてみますと、働き続けられるという人は、勤務先の両立支援制度について理解度が高い。十三ページにありますように、介護休業の使い方、これは自分が介護を担うのではなくて、もちろん緊急対応はする必要はあると思いますけれども、介護認定の手続をするとかケアマネジャーさんを探すとか両立の体制をつくるとか、そういうふうに使うのだという人は、介護の課題に直面しても続けられるというふうに思っています。
あとは、十四ページ、十五ページは、既にお話ししましたように、やはり普通の働き方であります。子育てと違って、介護は急に訪れます。ですから、例えば、元気だったんだけれども、庭で倒れて病院に入院する、病院から電話がかかってきて、来てください。そうすると、一週間、十日、急に休まなきゃいけなくなるんです。急に休むようになっても職場が回るような仕組みをつくっておくということは大事であります。そのためには、当然、いつもいつも残業であるとか、有休がとりにくいという職場ではそういうことができませんので、そういう意味では働き方改革というのが大事になります。
最後ですけれども、十六ページであります。
これから国に求められる施策としてどういうことがあるかというと、一つは、ケアマネジャーの役割をもう少し広げるということであります。
ケアマネジャーは、要介護者の状態をきちっと把握して、その人が質の高い生活を送れるようなケアプランをつくるということはケアマネジャーでありますけれども、同時に、要介護者の家族が仕事を続けられるようなケアプランをつくる、あるいはアドバイスをすることがすごく大事であります。実際上、要介護者と要介護者の家族、両方見れる人は誰かというとケアマネジャーなんですね。
そういう意味では、ケアマネジャーさんの上乗せ資格として、両立支援ケアマネジャー、こういうものをつくるということがすごく大事かなと。
企業は、要介護者の家族は働いているんです、でも、要介護者を直接見ることはできないわけであります。基本的には、家族が、ケアマネジャーさん等の、あるいは包括支援センターのアドバイスを受けながら、どう両立できるのか、あるいは要介護者がどういうサービスを受けたらいいのか。つまり、要介護者の家族がきちっと両立をマネジメントし、仕事を続けられる、そういうためには、例えば両立支援ケアマネジャーが大事なのではないか。
もう一つは、既にお話ししましたように、さまざまな制度についての知識が事前に、介護の課題に直面する前に要介護者の家族が知識を持っているというのが一つであります。そういう意味では、介護保険に入ったとき、四十歳のときに基本的な情報提供をするというのが国の役割ではないか。もう一つは、企業も、社員が介護保険の被保険者になったときに、自社の両立支援制度の内容なり、どう使ったらいいのかというような情報提供を四十のときにやるということがすごく大事かなと。
もう一つは、やはり介護保険制度、これがすごく大事であります。
企業の両立支援制度だけでは仕事と介護の両立は難しいわけであります。そういう意味では、介護保険制度を、要介護者の家族が働いている、働き続けられる、そういうことを考えた介護保険サービスにやはり見直していくということが大事かなというふうに思います。
一応、これで私の説明は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)