田島優子の発言 (厚生労働委員会)
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○田島参考人 弁護士の田島でございます。
雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、雇用均等分科会及び雇用保険部会の一員として議論に参加し、報告書の作成に参画しました者といたしまして、意見を述べさせていただきます。
第一点は、仕事と介護の両立支援制度についてです。
雇用均等分科会では、仕事と介護の両立支援制度は、家族の介護が必要な労働者がみずから介護を全面的に引き受けるのではなく、さまざまな介護保険サービスを十分に活用しながら働き続けられるようにするためのものであるべきとの基本的考え方に沿って、議論をいたしました。
また、介護休業制度は、介護の体制を構築するために一定期間休業する場合に対応するものとし、介護休暇制度につきましては、日常的な介護のニーズに対しスポット的に対応するものと位置づけました。
所定労働時間の短縮措置等、介護との両立のための柔軟な働き方の制度については、日常的な介護のニーズに対応するものとしています。
休業や柔軟な働き方の制度と介護保険サービスを組み合わせて、介護に対応できるようにすることが重要であり、その意味で、介護休業を三回まで取得可能とする分割化や、介護休暇の半日単位取得、選択的措置義務の期間を、介護休業と合わせて九十三日とされている現状から独立させ、三年に延長したことなど、多様なメニューを柔軟に利用できるようにしたことは、妥当な結論であると認識しております。
使用者側からも、家族の介護を行う中堅あるいは基幹的立場にある労働者の問題は非常に重要と考えているとの趣旨の御発言がありました。
今回、仕事と介護の両立支援制度について、大幅な拡充を労働政策審議会で合意することができましたのは、使用者側にも、そのような課題認識のもと、雇用管理の負担との兼ね合いで最大限の御努力をいただいたものと考えております。
第二点は、仕事と育児の両立支援制度についてです。
仕事と育児の両立支援制度の関係では、有期契約労働者の育児休業取得要件の緩和について、労使で合意することができました。
要件上、特に問題とされたのは、現行の、子が一歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれることという要件のわかりにくさでした。そこで、この要件を削除し、さらに、子が二歳に達するまでの間に労働契約が満了し、かつ、契約更新がないことが明らかである場合を除くとしていた要件について、一歳六カ月に達するまでと期間を短縮しました。
育児休業取得の促進のためには、よりわかりやすい取得要件とする必要がある一方で、育児休業が、休業を取得した後、復帰して働き続けることを前提とする制度でもありますので、今回の育児休業取得要件の見直しは、双方を踏まえた妥当な結論であると認識しております。
この見直しによって、育児休業対象者の範囲が拡大するとともに、労働者も育児休業の申し出をしやすくなるなど、有期契約労働者の育児休業取得が促進すると考えております。
第三点は、マタハラ防止措置についてです。
事業主による妊娠、出産、育児休業取得を理由とする解雇、降格などの不利益取り扱いは、既に法で禁止されていますが、近年、事業主による不利益取り扱いのみならず、上司、同僚からの嫌がらせなども問題となっております。昨年実施した調査でも、上司、同僚から嫌がらせが行われることが多く、このことが原因で不本意な退職をした者がいることがわかりました。
このため、今回の改正案では、上司、同僚からの言動によって、妊娠、出産、育児休業等をした労働者の就業の継続が困難とならないよう、事業主に防止措置を義務づけることとしたものです。これにより、妊娠、出産、育児休業等を経ても、継続就業しやすい環境の醸成につながることが期待されます。
第四点は、雇用保険の基本手当及び就職促進給付についてです。
基本手当のあり方について、労働者側委員は、給付日数、給付額、給付率等の給付水準や給付制限期間の見直しを行うべき旨の意見でしたが、使用者側委員は、基本手当受給者の再就職状況、基本手当支給額と再就職時賃金の状況等についてのデータに前回改正時との間で大きな変更が見られないことや、モラルハザードの観点などから見直しに慎重姿勢であり、意見が大きく分かれて、合意には至りませんでした。
この問題は、リーマン・ショックの際に創設された個別延長給付等の暫定措置が平成二十八年度末までとなっていることを踏まえ、これらの取り扱いとあわせて引き続き検討することとされました。
また、就職促進給付についても議論を行い、その結果、再就職手当の給付率の拡充や、就職面接の際に子の一時預かりを利用する場合の費用等に対する給付の創設等を行いました。
雇用保険は、失業者の失業期間中の生活保障とあわせて、再就職の促進を目的としています。そのような観点から、雇用保険制度の今後の検討課題として、基本手当と就職促進給付をセットで検討することとされたのは、妥当な結論であったと認識しています。
第五点は、雇用保険の六十五歳以上の者への対処についてです。
六十五歳以上の雇用者数やハローワークにおける求職者数などは大幅に増加しており、また、経済的な理由も含め、六十五歳を超えても高齢者の就職希望は非常に多くなっています。
六十五歳以上の者への対処は、雇用保険部会でも長年の懸案事項であり、今般、六十五歳に達した日以後に雇用される者についても雇用保険の適用対象とするとともに、これまでの保険料の徴収免除措置について、企業負担に配慮して、一定の経過措置を設けた上で廃止することにしました。
この結論に至るまで、雇用保険部会では、企業の保険料負担が重くなることや年金との関係など、さまざまな意見がありましたが、六十五歳以上の雇用をめぐる社会の構造変化と、失業者のセーフティーネットの確保という雇用保険制度本来の要請を踏まえ、労使ともに、いずれは対応すべきという問題意識は共有できたと理解しており、妥当な結論であると認識しています。
第六点は、雇用保険の財政運営についてです。
失業等給付に係る雇用保険料率については、平成二十四年度以降、各年度について弾力条項の発動が行われ、現行制度の下限である千分の十とされています。こうした中で、財政収支は近年黒字基調で推移しており、平成二十六年度の差し引き剰余は千九百六十五億円、二十六年度末の積立金残高は過去最高水準の六兆二千五百八十六億円となっています。
近年、雇用情勢が改善し、完全失業率が低下する中、過去十年間の平均的な雇用情勢を想定しますと、収支がおおむね均衡となる雇用保険料率は千分の十二程度になります。これを踏まえ、今般、法律上の原則の雇用保険料率を千分の十四から千分の十二に引き下げ、さらに、弾力条項を発動すれば千分の八まで引き下げができるようにいたしました。
なお、雇用保険部会では、かねてより雇用保険の国庫負担の軽減に係る暫定措置を廃止するよう求めてまいりました。これは、雇用保険法附則第十五条にも規定されており、平成二十三年の雇用保険法改正審議において全会一致で成立したと聞いております。今回の見直しの議論に際しましても、労使双方から暫定措置廃止の強い意見があったことを申し添えさせていただきます。
第七点は、育児・介護休業給付についてです。
介護休業の分割取得、有期契約労働者の育児・介護休業の取得要件の緩和、育児休業の対象となる子の範囲の追加等に伴い、介護休業給付及び育児休業給付についても対処されることとなりました。
また、介護休業給付については、平成十三年以降、給付率が四〇%のまま据え置かれておりますところ、少子化対策等の観点から順次給付率が引き上げられてまいりました育児休業給付に合わせて、今般、六七%に引き上げられることになりました。あわせて、賃金日額の上限額も引き上げとなっております。
急速な高齢化が進行する中、要介護の認定者数は増加傾向にある一方、家族の介護や看護を理由とする離転職者数は年間約十万人に上っており、介護休業期間中の所得保障の拡充は、雇用継続に一定の効果をもたらすものと期待しております。
最後に、本改正についての所感を申し述べますと、このたびの改正は、働き続けたいと願う国民の一人一人が、妊娠、出産、育児期や家族の介護が必要な時期に、無理なく仕事と家庭の両立を図れるようにするために必ずや役立つものと考えます。
育児期であろうと介護期であろうと、一旦仕事をやめてしまうと、その期間を脱した後の原職復帰は容易ではありません。原職どころか、希望職種への再就職が全くかなわない例も数多く見受けられます。使用者の立場でも、時間と費用をかけて教育し訓練した労働者がやめてしまう事態は労働経済上好ましいものではなく、労働力の確保、定着は重要課題です。今回の法改正により、これまでは不本意にもやめざるを得なかった労働者が働き続けられる環境づくりに役立てていただけることを強く願っております。
他方、介護休業や有期契約労働者の育児休業取得促進の実現のためには、これらの制度の周知が欠かせません。昨年の調査でも、介護休業や育児休業をとらない理由として、制度があることを知らなかったと答える者が多数いたことが大きな驚きでした。せっかくよい制度をつくっても、誰も知らないのでは宝の持ち腐れです。義務教育課程に労働法制のカリキュラムを取り込むなど、国民誰もが知る情報として、労働法制を活用することが重要と認識しております。
労働政策は、多くの場面で利害の対立する労使関係を規律するものであるため、その実効性確保のためにも、労使の間で議論を尽くし、両者の合意を得て進めることが重要です。今回の法改正に際しましても、その点に十分配慮して一致点を見出すことに努めた結果、議論が熟さず、結論を今後の検討に委ねたものがありました。
そうした課題も含め、今後とも、労使と丁寧な議論を重ねながら、よりよい労働政策の実現に向けて力を尽くしていきたいと考えております。
どうも本日はありがとうございました。(拍手)