井上久の発言 (厚生労働委員会)

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○井上参考人 本日は、このような場を与えていただきまして、ありがとうございます。
 幾つか所見を述べたいというふうに思いますけれども、まず、私が感じていることの第一は、これだけ多岐にわたるものを、しかも、一つ一つ重要な内容を、なぜ一つの法案にまとめなければならないのか、しかも、予算関連ということで年度末に成立を図る、これはやはりおかしいのではないのかということを感じています。私、配付した資料の中に、施行期日を脚注で入れたものを入れました。必ずしも四月一日施行ではないものも含めてあるわけですから、切り離して、一つ一つ十分御議論いただきたいということをまず思っているところであります。
 育児や介護、それからマタハラ対策等、いずれも重要な課題であります。また、シルバー人材センターにおける要件緩和の問題は、たとえごく一部であっても、生きがい事業だというシルバーの原則を外れるものです。やるべきではないと思いますし、ガイドライン等の内容は一切明らかになっていません。慎重な議論が、四月一日施行ではなくて、行われる必要があるんだと思います。
 本体の雇用保険制度の課題であります。
 私は、これも、雇用保険の役割は何かということをよく考えて、しっかりとした議論をお願いしたいと思います。
 時間の関係から、以下、雇用保険制度に限って私の意見を述べたいというふうに思います。
 まず第一は、雇用情勢は着実に改善しているという基本認識が示されていますけれども、ここがそもそも誤っているからこのような法案になったのではないのかということを私は感じています。確かに数字上は、求人数もふえました、失業率も下がっています。しかし、現場の実態というのは、やはり再就職は困難だというのが本当のところだというふうに思います。
 資料の七ページから、別紙として、我々の加盟組合が時々行っていますハローワーク前アンケートの結果を入れさせていただきました。
 これは、ハローワークの前で求職者らの方々に直接お話を聞いてとっているものでありますけれども、八ページから、自由記載、聞き取りの内容がございます。そこを見ていただければ、再就職が困難だというのが求職者らの実感だということは一目瞭然だというふうに思います。
 十二ページから、ハローワークの職員らでつくる全労働の労働組合の見解を入れさせていただきました。その最初のところに「雇用保険制度の現状」という部分がありまして、数字も詳しく載せられていますけれども、求職者の希望している賃金と実際の求人の賃金数字には大きな乖離があります。結果として、たとえ再就職できても、前の仕事から大幅に賃金が下がる、多くが非正規雇用にならざるを得ないというのが今の現状です。
 問題は、なぜそういう中でも失業率が下がっているのかということがあるんだと思います。
 私は、いろいろな相談を見ていて感じるのは、蓄えが乏しいゆえに、生活が困窮しているがゆえに、たとえ悪い仕事だというふうにわかっていても飛びつかざるを得ない、そんな人たちがたくさんいるんだということだというふうに思います。裏を返せば、失業給付の不十分さが日本の雇用を劣化させている、それが今の現実なのではないでしょうか。
 私は、年越し派遣村であるとか、翌年の公設派遣村のときのワンストップの会で実行委員をやり、その後もいろいろな相談を受けてまいりました。
 年越し派遣村には五百五人の方が見えましたけれども、その大半が蓄えが底をついた方々でした。残念ながら、生活再建のためには生活保護しか使える手段がありませんでした。あのとき、年明けには百名強の方が出ていきましたけれども、そのかなりの部分が、年明けの配送などの仕事が数日間あるという方でした。いろいろ説得しましたけれども、生活再建だと言うけれども、うまくいかなかったらどうなるんだ、きょうもらえる六千円をあなたたちは補償してくれるのかと。日々の暮らしに追われている中ゆえの反応だったと思いますけれども、そんな方たちがたくさんいました。
 今も、そうした方々はたくさんいらっしゃいます。変わったのは、リーマン・ショックみたいに一どきに大量の派遣切りが行われるということではなくて、切ったり復職したり、そういう苦しい状況が続いている、そういうことなんだというふうに思います。
 近年、さまざまな分野で人手不足が深刻化しています。しかし、余り賃金は上がっていません。相変わらず非正規雇用がふえ続け、ワーキングプアも増大をしています。労働法制の規制緩和が問題であると同時に、もう一つは、生活保障の不備がこうした状況をつくり出しているということを踏まえて考える必要があるのではないかと思います。
 さて、保険料率の引き下げの問題です。
 雇用保険は、保険財政の悪化を理由に、二〇〇〇年以降幾つもの改悪が重ねられてきました。離職理由での区別といいますか差別が持ち込まれ、それから、実際の給付日数、給付額も大きく減退しました。一九九〇年代まで、実際の失業者のうち、失業給付を受けている方は四割台でしたけれども、それが二割台にまで下がってしまいました。雇用保険が十分に機能していないというふうにやはり言わざるを得ないと思います。
 だとすれば、雇用保険財政が好転した今こそ、給付の内容を改善していくということ、そして、雇用保険が本来果たすべき役割を果たせるようにしていくことが必要なんだと思います。
 なお、国庫負担割合については、本則は二五%ですが、現在一三・七五%になっております。やはりこれを戻すことなども含めて、経営が大変な中小零細企業やそこに働く労働者への軽減措置等も考えることができるのではないかというふうに思います。
 経済界の方からはモラルハザード論なども出されていますけれども、むしろモラルハザードは、膨大な利益を上げながら、内部留保をふやし、飛躍的に株主配当をふやしている大企業の側ではないのか。多くの求職者は、何とか仕事を見つけたいということで日々奮闘しています。やはりそうした現実を見る必要があるんだと思います。
 そこで、私は、できるだけ速やかに再就職という考え方はやはり見直した方がいいと思います。
 求職者の方々は、突然の解雇であるとか雇いどめで痛手を受けた人です。その人たちに早く早くというふうに急がせても、なかなか面接までたどり着きません。自分は社会に必要とされていない人間、そんな思いに陥っている人がたくさんいます。そして、運よく仕事が見つかってもブラック企業、またやめて、そして心が打ち砕かれ、人が壊れていく、そんな実例を私はたくさん見てきました。
 そうしたことも考えれば、やはり失業給付できちんとその人の生活を支え、ハローワークの相談体制や公的な職業訓練等の充実によって、良質な仕事、長く働き続けられる仕事にいざなっていく、そうしたことが今求められているんだというふうに思っています。
 労働移動支援助成金の問題がこの委員会でも問題になったと見ていますけれども、私は、あれは悪質な業者の問題ではないと思います。制度のたてつけそのものがそういうふうになっているという点に最大の問題があると思っていまして、例えば電機産業などでのいろいろな相談の実例を聞いていても、同じような話がたくさん転がっています。中には、ようやく紹介された再就職先がもとの職場で、部課長だった方が、もとの部下に使われている派遣労働者という実例なども幾つか聞きました。
 こうしたことを考えたとき、雇用保険制度の優位性というのははっきりしているんだと思います。そうした点では、これをきちんとしていただきたいということで、離職理由による差別、区別をなくすこと、所定給付日数や給付額をもとに戻していくことなど、本来あるべき姿を考えた改正を十分御議論いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 井上久

speaker_id: 9115

日付: 2016-03-15

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会