多賀谷一照の発言 (法務委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○多賀谷参考人 獨協大学法学部の多賀谷と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、法務省にある出入国政策懇談会の委員、座長代理を長らくやっておりまして、このたび、この技能実習制度についても、技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇談会の座長を仰せつかって、昨年、平成二十七年一月三十日に報告書を出したものであります。その立場から、あるいは私の知見から、この技能実習制度のあり方について御報告したいと思います。
 第一に、技能実習制度というのは、既にもう御紹介ありましたけれども、資格に基づく在留資格でありまして、企業等で技能を修得して本国に帰る仕組みであります。送り出し国にとっては技能実習のニーズがあり、それを我が国で企業が、OJT、オン・ジョブ・トレーニングとして訓練をするという、まあ、日本でいえば学生が企業でインターンシップをするという、それにある意味では類似するような制度であるというふうに考えております。
 したがって、技能実習を受ける外国人は単純労働者ではありません。専門的技能をいまだ必ずしも有していないけれども、実習を通して専門職的な技能の修得を目指す者、そのような外国人による修業システムであります。外国人は、本国に帰国後、本国に貢献する、あるいは、日本を含めた第三国でも専門職として活躍するかもしれません。また、このような制度は、日本の企業が多国籍企業としてアジア各国に展開する場合において、日本の技術を修得した優秀な外国人が現地に行くということはアジア全体での日本の企業の経済的発展という点でも決して損ではない、そういう仕組みであります。
 そこで、第二に、管理のシステムですけれども、そのような技能実習生を企業、実習実施機関が受け入れる場合に、実効的にOJTがなされているかということをチェックするシステムとしてもともとありますのは、監理団体による監理というものです。監理団体というものは約千九百団体ありまして、そのうち中小企業事業協同組合が千六百八十であります。その千九百団体のもとに、実際に実習を行う実習実施機関は約三万五千あります。
 この監理団体の大半を占める事業協同組合は、今御報告いただいたJプロネットさんのように同業種組合といいますか、建設業とか運輸業とか、それぞれ業種ごとに組合をつくっている。そういう組合のメンバーであれば、お互いに、違反をすれば他の組合員に迷惑をかけるという意識があって自律性が保たれる、そういうことを想定して監理団体に任せたというところがあります。
 ところが、現実には、そういう同業種協同組合だけではなくて異業種協同組合、要するに、各種製造業、農業、建設業などを横断的に組合化するような組織が存在し、そして、それは監理団体でありますが、ある種のビジネスをやっているという面があります。Jプロネットさんのような監理団体ならいいわけですが、異業種監理団体の一部に、やはりそういう組織があることは否めないというところであります。
 すなわち、例えば、そこに書きましたけれども、傘下団体といいますか、協同組合の中には、どの程度の実習実施機関をその下部に設けているか。七五%、大半の監理団体は二十社以下。しかし、七%という一部は、五十社以上とか、あるいは百社以上の実習実施機関を抱えているという場合もある。この場合には、実効的なコントロールということは実際上なかなか困難である。そして、そういう監理団体のもとの実習実施機関は、同一都道府県にとどまっていることなく、極めて広範囲で、かなり複数都道府県にまたがっているような実習実施機関を抱えている監理団体もあります。
 その意味において、本来は監理団体というのは非営利団体なんですけれども、現実には、実習実施機関から年会費を徴収して、ある種の営利的な活動をしているんじゃないか。そして、これは私自体はよくはわかりませんけれども、しかし、どうもそういう監理団体が、外国の送り出し機関とブローカー的な形で活動をして外国人を受け入れている。そして、本来外国人に与えられるべき金銭が、途中で取り上げられてといいますか、途中でそういうブローカー的な存在に渡り、十分なお金が最終的に技能実習生には渡らないというような仕組みがあるのではないかという疑いがあります。
 その意味において、実習実施機関のコントロールというのは重大な問題があるということはよく言われているわけですけれども、監理団体以外のシステムというものも、必ずしもうまく今までは機能していなかったのではないか。いわゆる国際研修協力機構、JITCOによるチェックというものも、強制を伴う調査権限もありませんし、あるいはJITCO自体も実習実施機関の会費によって運営されているので、限界があるだろう。
 そして、入国管理局による入国管理、それから厚生労働省による外国人労働者就業管理という、それぞれ独自の観点でやっているわけですけれども、連携が十分ではなかった。それゆえこの懇談会で両方一緒に検討したわけですけれども、その意味において、どうも未熟練労働者が技能実習の名をかりて我が国に入ってきているのではないかという懸念が起きております。そういう点で、そういう仕組みを改善しようというのがこの研究会。
 ただ、一部からは、技能実習制度にかえて労働許可制、単純労働者をそのまま採用すべきだという見解がとられることがありますけれども、韓国のような労働許可制の導入の是非と技能実習制度の存廃は、私は別の問題であると考えます。
 確かに、技能実習制度では、今申し上げたように問題のある運用がされていますけれども、他方、Jプロネットさんのように、制度として有効に機能している、そういう場合がございます。
 その意味において、労働許可制の導入をするかどうかというのは、この懇談会ではそういう議論はいたしませんでしたし、それは、人口の一割を外国人が占めるというヨーロッパの仕組み、ヨーロッパと同じようになるのか、そういう点を考えると、やはりなお慎重に考えるべきだろう、まだ成案はないというのが我が国の現状だろうと思います。
 したがって、今回の制度改正は、実習実施機関、監理団体を、これまでの監理団体による自主的コントロール、あるいはその他のコントロールにかえて、公的機関がより強くコントロールする、そういうことを志向した仕組みであるというふうに私は考えます。
 その意味において、改正の方向性ですけれども、監督の仕組みのありようについては、法案の中身ですから、実習機関の届け出制とか、監理団体許可制とか、計画違反の場合の改善命令等、罰則の強化等について、あえてこれ以上申し上げませんけれども、公的機関による監督の意義、責任といいますか、実際に、実習実施機関による外国人雇用において人権侵害とかセクハラなどの事例があるというふうに外部から指摘されておるわけです。
 従来は、そういう問題の是正を監理団体に委ね、国が直接監督しないということについて、人権問題であるということで、欧米も含めて批判をされているわけです。その意味において、この法改正は、そういう同業者的な監督にかえて国が直接関与する仕組みを設けておく、そういう制度改正だろうと思います。
 そして、これは私の私見なんですけれども、先ほども言いましたように、この仕組みは今後どういうふうになるかはわかりませんけれども、いずれにせよ、外国人がさまざまな形で我が国に入っていらっしゃる、その場合に濫用的な仕組みにならないように、そういう公権力、法的な規制のモデルとなるのではないかという気がいたします。そのモデルとしてちゃんとそれを運用していただきたいところであります。
 もちろん、新しい機構による仕組みのほかに、業法との連携といいますか、我が国は建設業とか農水業、それぞれの分野ごとに業法の仕組みがありますので、その業法による仕組みと連携して規律をすべきだろう。
 東京オリンピックを迎えての建設労働者の場合が、ちょっとこの制度とは違いますけれども、その典型的な仕組みですし、また、地域協議会という仕組みは、協同組合の場合には都道府県がそれをコントロールするのが原則ですが、都道府県だけでやることはできないので、都道府県並びに地方出先機関、業法を担当する省庁の出先機関でそのコントロールをする、そういう仕組みになる。
 そういう全体の仕組みとして、外国人についての規律の仕組み、外国人の流入についても比率をコントロールすべきだろうと思います。
 それから、送り出し国との政府間取り決めですけれども、これにつきましては、外国の送り出し機関については我が国の主権が及ばないので、コントロールは限界があるわけですけれども、少なくとも、外国の送り出し機関と我が国の機関との間の、ちょっとそういうことを言うとあれですが、ブローカー的な連携というものを遮断する必要があると思います。
 最後に、この法案は、優良団体のもとでの技能実習生についての期間延長、再実習ということを志向しております。優良団体については、受け入れ人数枠の拡大とか対象職種の拡大、サービス業も含めた拡大とか多能化とか、あるいは受け入れ期間の延長というような仕組みが志向されております。
 それについては異論はありませんですけれども、ただ、やはりぜひ検討していただきたいのは、期間延長、人数枠等、優良団体へそれを認めるという仕組みを利用して、単純労働者の受け入れという技能実習制度の逸脱的な利用がくれぐれもないように、新たなる機関には責任を持って監督をしていただきたいと思います。
 今までは、技能実習制度を用いた人権侵害的な活動について、実は裁判が起きたことがありました。その場合においては民事裁判ということになりますけれども、新たな機関の場合には、認可法人でも国家権力の一部ですから、今回は国が責任を問われるということになりますので、そういうことがないように運用する義務があるというふうに言えると思います。
 以上で私の報告を終わります。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119005206X01320160422_006

発言者: 多賀谷一照

speaker_id: 30702

日付: 2016-04-22

院: 衆議院

会議名: 法務委員会