後藤純一の発言 (法務委員会)

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○後藤参考人 慶應義塾大学の後藤と申します。
 本日は、衆議院法務委員会におきましてこのような意見を述べさせていただく機会をいただきましたこと、ありがとうございます。
 申しわけございません。ここで座って、ハンドマイクでお話しさせていただきます。
 私は、大学で少子高齢化と外国人労働者問題を長く研究しておりますけれども、その前はアメリカに長く住んでいまして、留学もしましたし、世界銀行と米州開発銀行で、ワシントンにございますけれども、働いてもおりました。したがって、日本人として受け入れ国の立場から、そして、実際に外国人として働いた経験を生かして、外国人労働者の立場からお話をさせていただきたいと思います。そういう経験を持っておりました。したがって、経済学の観点から、外国人労働者と人手不足の問題をどのように捉えていくべきか、そして、この二つの法案はどのような意義を持っているかということをお話ししたいと思います。
 まず、話の流れですけれども、総論といたしまして、人手不足と外国人労働者という問題を、特に経済学の観点からどのように考えることができるかということをお話しして、それから、こうしたことを踏まえて、各論として、二つの法案に対して私はどのような意見を持っているかということをお話ししたいと思います。
 皆さんのお手元に配っていただきましたパワーポイントに基づいてお話ししたいと思います。
 まず、総論でございます。
 労働力不足と外国人労働者。人手不足ということを考える場合には、それが短期的な人手不足であるのか、それが中長期的な人手不足であるのかという二つのことを明確に分けて考える必要があると思います。
 人手不足の短期的要因。景気がよくなったから人が足りない。それで、二〇二〇年にオリンピックがあるから人が足りないという短期的な問題と、そもそも日本が、人口学的に見て、少子高齢化を背景にして、何十年単位あるいは百年単位で人が減ってきている、そういう中長期的な人手不足ということを分けて考える必要があると思います。
 まず短期的な要因ですが、その下に人手不足の短期的要因と書いております。
 大きな要因としては、一つが景気回復だと思います。
 完全失業率の折れ線グラフをお示ししましたけれども、例えば、二〇〇九年の七月には五・五%だった失業率が、直近の二〇一六年の二月には三・三%、半分ぐらいに低下してきております。つまり、景気回復でこのように失業率が低下することによって人が足りなくなった。そして、もう一つが、特殊要因として一番大きなのがオリンピックですね。オリンピックのためにいろいろなものをつくらなくてはいけない。そのために建設労働者等々が不足してくるという問題があります。
 それで、いずれにしましても、短期的要因の場合は、この要因が去ったときにどうするかということを考えておく必要があると思います。
 景気がいいときにどんどんどんどん人を受け入れて、では不況になったらどうするのかという問題があります。オリンピックの場合も、オリンピックの建設要因があるからどんどん受け入れて、その後どうするかという問題があります。
 外国人労働者は物ではなくて人ですので、なかなか、必要なときに買って、要らなくなったらすぐにお帰りくださいというわけにはまいりませんので、その要因の後のことを考えた上での受け入れということを考える必要があるのではないかというふうに思います。
 続きまして、少子高齢化に伴う人口の減少及び年齢構成の変化。つまり、中長期的要因でございます。
 皆さん御案内のように、日本は少子高齢化の真っただ中にいます。出生率も、第二次世界大戦後の四ぐらいから、今一・四二まで低下してきています。一年に生まれる赤ちゃんの数も、三百万人ぐらいから百万人へと、三分の一になってきています。
 そのため、この図にお示ししましたように、この図は、一番下の青いのが年少人口、そして真ん中の赤いのが生産年齢人口、一番上の水色が高齢人口でございます。
 これを見ていただければわかりますように、昔は、生産年齢人口が非常に多くて、高齢人口が非常に少なかった。したがって、たくさんの人間で少しの人間をサポートすればよかったわけですが、これがどんどんふえてきまして、二〇五〇年を越えたあたりになると、もう生産年齢人口と高齢人口が余り変わらなくなってきて、一人が一人を支えなきゃいけないような状況になってきているということで、非常に問題となります。当然のことながら、働く人が減るわけですから、労働力不足の問題もございます。
 それで、労働力不足とか人口減少をどういうふうに考えるか、人口減少、労働力減少への対応ということでございますが、今申しましたように、基本認識は、少子化により日本の労働力は減少、高齢化していく。さまざまな数字がございますが、一つの数字だと、生産年齢人口は、今後二十年間に千三百万人も、すごく多い数字だと思います、減少していくということが予想されております。
 それで、この際にどうするかということですが、私は、人口政策的な対応と労働政策的な対応があると思います。
 言うまでもなく、出生率が低下したことが根本要因であれば、出生率を上げる、そして子供をふやすという人口政策的な対応が長期的には必要だと思います。
 ただ、もし、あした出生率が二にどんと上がったとしても、子供が生まれるまでには約十カ月なり一年かかるでしょうし、そして、その生まれた子供がすぐに仕事に行くわけではございませんので、人口政策的な対応がどれだけうまくいっても、短期、足元の解決にはならないということがあります。つまり、二十年なり三十年なりは、人口政策的対応がどれだけうまくいっても人手不足に悩まなきゃいけないということがございます。
 そこで重要になってくるのが労働政策的対応だと思いますが、これには、外国人労働者受け入れが唯一の政策ではないと私は思います。労働生産性を引き上げること、つまり、少ない人間でもたくさんのものがつくれるようになっていくこと。そして、物、金の移動の促進、つまり、人が日本に来て働いてもらうかわりに、外国の人が外国でつくったものを買うという形も可能だと思います。一つの研究としては、関税相当率を二%下げるということは、外国人労働者を八百万人受け入れるのに相当することのインパクトがあるということで、物の移動というのは大きなインパクトがあると思います。
 続きまして、女性、高齢者、若年者という国内の労働者を戦力化するということがあるかと思います。
 いずれにしましても、人口減少、労働力減少への対応としては、外国人労働者の受け入れだけじゃなくて、総合的な対策が必要であるということが重要だと思います。
 それともう一つ。外国人労働者というのは、人を受け入れるわけですから、物じゃありませんので、住居、医療、子女の教育等々、いろいろ必要なことがありますので、単に何人受け入れるという数値目標を掲げるだけじゃなくて、受け入れた場合、どのようにその人たちを処遇していくかということもセットで考える必要があると思います。
 こういったような総論を踏まえまして、各論として、二つの法案についての私の意見を述べさせていただきます。
 まず最初が、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案に対してでございます。
 技能実習制度、これは皆さん御案内のように、平成五年にスタートいたしまして、統計によって十七万人という数字と十九万人という数字がありますけれども、二十万人近くの人がいる。これは、下の日本で就労する外国人のカテゴリーを見てわかりますように、技能実習生の数というのは、一番上の専門的、技術的労働者とほぼ同じ数、つまり、非常に経済において大きなウエートを持っているものだということを考える必要があるかと思います。
 そして、これまで指摘されてきた問題点は二つあると思います。一つが建前と本音の問題。これは後で詳しく申し上げます。そして、もう一つが劣悪労働条件の問題。先ほど別の参考人の方が事例をおっしゃいましたけれども。
 建前と本音、つまり、建前は非常に崇高な理念がうたわれていますが、現実ではなかなかそうはなっていない。なので、建前と本音の乖離を少なくするような新制度が必要じゃないかというのが私の根本的な考え方でございます。
 それで、提出された法案を読ませていただきました。そして、技能実習に関する包括的な法案である、これは高く評価できると思います。これまでこういうきちんとした法案がなかったので、いろいろ問題もあったんでしょうけれども、包括的な法案として提出されたということは大きな意義があると思います。
 それで、その内容ですが、技能実習制度の適正化と技能実習制度の拡充の二つの軸がございまして、そのそれぞれについての意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、技能実習の適正化の部分、これは基本的に全面的に賛成です。非常に劣悪なことがありましたので、それを少なくするような体制も整備して、問題が起きた場合は罰するというようなことも必要だと思いますので、高く評価できると思います。
 私が意見を述べさせていただきたいのは、拡充部分の方でございます。つまり、建前と本音をそのままにしておいて拡充するということが正しいのかどうかということでございます。
 建前、いろいろなところにいろいろなものが書いてございますけれども、例えば、この委員会における政府の説明資料を読ませていただきますと、外国人技能実習制度は、諸外国の青壮年労働者等を日本に受け入れて、日本の産業、職業上の技能、技術、知識等を修得させ、それぞれの国の産業発展に寄与する人材を育成することを目的とするという理念がうたわれて、法案の三条二項は、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。」、つまり、受け入れる人は技能を授けることが目的で、自分ちの労働力不足に対処するようなことはいけないということが書いてあります。
 ただ、この建前ではつじつまが合わないことが幾つかあるんじゃないかと思います。
 つまり、NGOで受け入れるような場合は別ですけれども、企業が受け入れる場合、ビジネスとしてやるわけですから、ペイしないことをやれというのはなかなか難しいんじゃないかと思います。
 つまり、この技能実習制度の費用負担ですが、通常、教育の費用負担というのは、学ぶ者が教える人に払います。大学でも、外国人留学生から大学は金を取ります。しかし、この技能実習に関しては、教える方が、企業が、教材費、実習費、給与、それで多くの場合は渡航費用も全て払うという仕組みになっています。これが経済的に見て成り立つのかどうかというのは非常に疑問であります。
 インセンティブは、大きい企業でしたらCSRという考え方があるのかもしれません。何万人の企業で五人受け入れるのであれば、企業のイメージアップとかあるのかもしれませんが、従業員規模十人なり二十人のところがCSRを狙ってやるとは考えられません。やはり、法案では禁じられているところの必要な労働力の確保ということが根底にあるのではないかと思います。
 それで、もう一つが技能実習期間ですが、当該技能を修得するのに、きちんと学校でやれば、三年とか五年かからず、もうちょっと簡単に短く済むのではないかというふうな気がいたします。
 そこで私が重要だと考えますのは、そろそろ本音で制度設計する時期が来ているのではないか、もう始まって二十年以上たっていますので。
 つまり、高齢化の進展で介護労働者の不足に直面する日本ということと、世界経済の低迷で、所得減少、雇用機会減少に直面する開発途上国ということがあるので、海外からの労働力の秩序ある受け入れを図る制度として捉え、つまり、労働力不足に対処することであっても秩序ある形で受け入れればいいのではないかということを理念とした新制度の構築、これを雇用許可制と呼ぶのも可能だと思います。雇用許可制と呼ぶと、ちょっと何か別の国での制度で、余り、いろいろなイメージがありますけれども、呼び方はともかくとして、新制度をやっていくことが必要ではないかというふうに思います。それで、この新制度であれば教えることではありませんから、既に技能を持っている外国人労働者を受け入れるということも可能になっていきます。
 続きまして、もう一つの法案に関しては、基本的に私は賛成でございます。介護福祉士資格を取得した外国人留学生のための在留資格を創設し、偽装滞在の対策を強化する、まさに賛成でございます。
 ただ、一つ考えておかなきゃいけないのは、資格要件を緩めないことが重要だと思います。介護福祉士資格を修得した外国人留学生、これを、これに準ずる云々かんぬんで緩めて、事実上、なし崩し的に非熟練労働者を対象とすることがないような運用をしていただくということをお願いして、賛成いたします。
 時間も参りましたので、以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 後藤純一

speaker_id: 8370

日付: 2016-04-22

院: 衆議院

会議名: 法務委員会