熊谷亮丸の発言 (予算委員会公聴会)

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○熊谷公述人 おはようございます。大和総研の熊谷と申します。
 本日は、お招きいただきまして、心より光栄に存じます。御審議の御参考としていただきたく、平成二十八年度の予算案につきまして賛成の立場から意見を申し述べたいと思います。
 お手元の資料で、こちらの「日本経済と財政の動向について」という資料をごらんください。
 まず、一枚おめくりいただきまして、一ページでございますけれども、ポイントとしては三つ申し上げます。
 第一点として、日本経済の展望ということでございます。
 日本経済は、国内の状況はかなりよくなってきている。ただ、海外については、そこにあるような四つぐらいのリスク要因が存在する。中国経済、そして、アメリカの出口戦略に伴って新興国からお金が引き揚げられる可能性、地政学的なリスク、ユーロの動向ということでございますが、この中で、中国については、これからも下振れリスクとして細心の注意を払っていくことが必要である、これを第一点目として申し上げます。
 二点目は、アベノミクスに対する評価及び課題ということでございます。
 私は、基本的なアベノミクスの方向性は正しいのではないか、こういう考えをしておるわけですけれども、ただ、これからまだ課題が残っている。例えば、社会保障制度の抜本的な改革ですとか、第三の矢、成長戦略の強化、さらに、分配政策をこれからさらに推進していくことが必要である。
 三点目として、財政再建という話でございます。
 経済成長すればそれで財政再建ができるかというと、そこまで今の日本の状況は甘い状況ではないのではないか。経済成長と増税、それから歳出のカット、これを三位一体でバランスよく行っていくということが必要である。
 私からきょう申し上げたい点は、以上の三点ということでございます。
 二ページ以降は、ちょっと簡単に御説明をしていきたいと思いますけれども、まず二ページ、一番上のところに書いてございますが、一六年度の経済成長は〇・九%程度、ただ、一七年度は増税を一応見込んでおりますのでマイナスの〇・一%、こういう見方をしております。
 三ページをごらんください。
 日本経済は踊り場という状況でございますが、黒い線でお示しをしているのが生産の動き、赤い線が輸出ということでございますけれども、昨年は、四—六月期以降、一旦、日本経済は若干厳しい状態に入った。ただ、今は、一進一退のいわゆる踊り場という状況でございます。
 四ページ以降で、日本経済を支える要因が四つあるということを申し上げます。
 まず一点目としては、いわゆる在庫循環ということでございます。縦軸が出荷の伸び、横軸が在庫の伸び。時計回りでぐるぐると回るわけでございますが、少し前までは右下のところにあって、在庫調整の局面であった。ところが、現状は左上の方に動いてきているわけですから、国全体として見れば、在庫の負担はかなり軽くなってきたということがございます。
 五ページをごらんください。
 二つ目のプラスの要因でございますけれども、原油が安いことが、中長期的に見れば、日本経済を支えていく。
 五ページの左上の部分に赤い丸を打っているところがございますが、これが、私どもがマクロ経済モデルを使って原油が百五ドルで高どまりしていたときと現状で比べたときに、これから日本経済がどの程度支えられてくるか。経常収支が改善することですとか、もしくは物価が落ちて実質所得が上がってくるということがございますので、百五ドルのときと比べると、日本経済は二〇一七年度には〇・九%程度支えられてくるという形でございます。
 六ページ、三つ目のプラス要因ということですが、実質賃金。ずっと二年余り低迷してきたわけでございますが、ここに来て、原油安で物価がゼロ近傍の状況ということでございますので、足元で見ると実質賃金はかなりプラスの方向に動いてきている。
 国民にとって重要なのは、そこの左下の凡例で下から二つ目に書いてある、一人当たりの賃金に雇用者数を掛けた国民の懐に入るお金の総額、紫色の白丸で打ってあるものでございますけれども、これは前年比で二%以上伸びている状況でございますので、実質賃金は今着実にプラスの方向に回復してきた。これが三点目です。
 七ページ、四つ目ということでございますが、アメリカの消費者コンフィデンスは比較的良好な状態が続いている。グラフで灰色で網かけをしてある部分が日本の景気後退期、そしてブルーの線がアメリカの消費者コンフィデンス、消費者がどういうようなマインドでいるかということでございますが、日本の景気に対して最もクリアな先行性を持っているのがアメリカの消費者コンフィデンス。ここは比較的しっかりした状況だということです。
 以上の四つぐらいの理由が日本経済を支えてくるという見方です。
 八ページは、一七年に消費税増税を行ったときにどれぐらい影響があるか、私どものモデルを使ったシミュレーションでございます。
 右側の赤で囲んであるところですが、一六年度は、GDPが駆け込み需要によって〇・三%程度上がってくる。他方で、一七年度は〇・六%程度落ちていく。そして、その下の部分に一・一と書いてあるところがございますが、軽減税率の導入によって、かなり、駆け込みですとかその後の消費の落ち込みを支える効果、一・一兆円程度の消費に対する下支え効果が出るということでございます。
 九ページをごらんください。
 先ほど来申し上げているように、国内経済はそれほど悪い状況ではありませんけれども、海外経済についてはいろいろなところに地雷が埋まっている。特に、中国経済については細心の注意が必要であるという考え方です。
 十ページ。ここで中国の全体のイメージをお示ししておりますけれども、金融の過剰がおおむね一千兆円程度、設備の過剰が四百兆円程度。これに対して、まだ財政出動余地は、諸外国と比べれば、六百兆円から八百兆円程度、理屈としては存在する状況だということでございますので、こういう人類が経験したことがないような未曽有の金融の過剰などがある中で、本当に中国がソフトランディングを図れるかどうかというのが、これが中国問題の本質である。
 次のページは、三つシナリオが書いてございます。一が標準シナリオ、おおむね六%台は維持する、こういう考え方が一般的でございますが、ここではリスクシナリオを二つお示ししています。二のシナリオは、設備の過剰が調整に向かったシナリオ、三は、メルトダウンシナリオという、かなり厳しい設備の調整が起きるという三つのシナリオでございます。
 この三のメルトダウンシナリオ、十二ページのところに詳細をお示ししておりますが、この悪いケースのときは、潜在成長率、実力の成長率が一・六%程度まで落ちる可能性がある。
 グラフで見ていただくと、経済成長は三つの要因があるということで、技術要因、資本要因、労働要因でございますけれども、これから、悪いシナリオとしては、ピンク色の技術が大幅に停滞をしていく。それから、ブルーの部分の資本というのが、これから設備の調整が起きる中で、中国の実力の成長率がゼロに近いところまで落ちてしまう。こういうシナリオを頭の片隅に置いておくということが必要であると思います。
 十三ページ以降は、アベノミクスの話でございます。
 私は、基本的な方向性は正しい、こういう考え方をしておるわけでございますが、そこにあるのは、財界の首脳の方が命名されたと言われる追い出し五点セット、もしくは電力不足だとか日中関係の悪化などを含めて、日本企業は七重苦にさいなまれてきた。これを、今、アベノミクスは全て反対の方向に転換をしてきた。
 例えば、十三ページの七というところでいえば、日本が原理原則を曲げなかったことによって、むしろ中国サイドが秋波を送るような形で、今、日中関係は雪解け、改善の方向に向かってきた。
 これらの面で、私は、基本的なアベノミクスの方向性は決して間違っていない、こういう考え方をしております。
 十四ページは、経済の好循環。
 三つ線がございますけれども、一番上のブルーの線が企業の売上高、二番目のオレンジの線が個人の所得、三番目の緑の線が物価でございますけれども、微妙に右斜めに傾きをつけてこの三つを一定の時間差で重ねていくと、比較的似たような動きをしてくる。
 申し上げたいことは、景気回復の一丁目一番地というのは、まずは、一番上のブルーの部分、企業が元気になって、企業の売上高だとか収益などが上がってくる、そこから今賃上げの動きが徐々に進んでいるわけでございますから、経済のサイクルから見れば、まずは成長戦略を打って、そこから三年たって分配政策を打つという、この政策の手順は正しい方向で打たれている、私はこういう考え方です。
 十五ページをごらんいただくと、ずっと、雇用がふえても非正規ばかりである、こういう批判がなされてきたわけでございますが、足元で見ると、前年比では、正規の伸びが非正規の伸びを上回ってきた。
 経済は、残念ながら今の仕組みからすれば、最初は非正規が伸びるということですが、体温が温まってくると徐々に正規が伸びてくる。加えて、これから同一労働同一賃金の原則をさらに議論していくということでございます。
 十六ページをごらんください。
 アベノミクスの課題ということで申し上げると、一つは社会保障制度の抜本的な改革、二点目として成長戦略、従来の第三の矢の強化、三点目として分配政策を今まで以上に推進するということでございますが、きょう私が強調したい大きなポイントとして、三の分配政策だけで経済が上がるということにはなりにくい。二と三は一体の課題であって、二の成長戦略と三の分配政策、これを同時並行的にバランスよくやっていく、これが最大の課題です。
 なぜそう考えているかというと、次の十七ページでございますけれども、日本でなぜ賃金が低迷しているか。時間当たりの実質賃金を日米独で比較をしておるわけですが、この中で日本が低迷している理由、一の労働生産性、二の広い意味での企業の競争力、三の労働分配率、この三つの要因に分解をしたものです。この三段の数字は寄与度といって、三段の数字を足し込んでいくと、一番上の段の賃金の伸び率に一致をする。
 最初に御注目いただきたいのは、一番下の三の労働分配率。確かに日本の労働分配率は若干賃金を下げているわけですけれども、諸外国もほとんど同じぐらいのペースで下がっている。国際的な潮流にはなかなか逆らえない部分もあるわけですから、日本が分配政策だけで賃金を上げようとしても、そこの伸び代はかなり限定的なものにならざるを得ない。
 どこに問題があるかといえば、一の労働生産性、二の広い意味での企業の競争力。これらは分配政策では上がらないわけでございますから、従来の三本目の矢の成長戦略、TPPへの参加であり、法人税の減税であり、岩盤規制の緩和、こういうものをやって一と二を上げていくことこそが、国民の賃金を持続的に上げるための鍵であるということでございます。
 十八ページ。ここから財政の課題ということですが、経済成長だけで財政再建をしていくというのはなかなか難しいのではないか。
 ドーマー条件と書いてございますけれども、名目成長率が長期金利より高いというこの条件が満たされるのであれば、プライマリーバランスを均衡すれば、あとは財政が徐々に改善の方向に向かっていく。そういう意味で非常に重要な条件でございますけれども、左の図表の右上のところに、我が国におけるドーマー条件の勝率が書いてございますが、ここはやはり、過去の例で見ると決して勝率は高いものではない。
 右の図表、これはOECD諸国の中でドーマー条件を満たした国の割合をお示ししておりますが、一時的にバブルなどが起きるとドーマー条件は満たされる。ただ、これは、長い目でならして見ると、なかなかドーマー条件を持続的に満たすのは難しいということでございますので、結論として、やはり、経済成長だけではなくて、歳出のカットですとか社会保障制度の合理化、それから一部は増税、これらをバランスよく行っていくということが、財政再建のための鍵であるということです。
 十九ページは、財政の再建に成功するためにどうすればいいか。
 大分時間も押してまいりましたのでポイントだけ申し上げますと、景気頼みだけでやると、過去の事例で見ると、また景気が悪くなると税収が落ちるということを繰り返してきた。やはり、社会保障制度を中心とした抜本的な改革をして歳出をしっかりと抑える、それから成長をしていく、一部は増税をする、これを三位一体でバランスよく行うことが必要であるということです。
 二十ページ、二十一ページ。これは、私どもの財政の中長期のシミュレーション。かなり改革をしっかりと行っていかないと、中長期的な財政状況は厳しいということでございます。
 ちょっとおめくりいただいて、二十三ページをごらんください。
 このグラフは、縦軸が長期金利から短期金利を引いた長短スプレッド、横軸が政府の債務状況でございますが、国際的に見ると、大体一本の均衡線の上に並んでくる。今、日本は、日銀が大胆な金融緩和をやって、かなり実力より金利を抑えている状況でございますが、長いスパンで見ると、やはり、しっかりと財政の規律を守っていかないと、この線上に日本が来てしまうリスクというのが一定程度存在するということでございます。
 最後に二十四ページで、せっかくの機会ですので、一つ明るい話をさせていただきます。
 これは、一九〇一年の、今から百年以上前の報知新聞の正月の特集でございますけれども、二十世紀の予言といって、当時から百年後の二十世紀にこんなことができたらいいという夢のような話を二十三項目取り上げた。
 この中で実現していないのは六項目あって、まだ人と動物が自在に話せるようにはなっていない。他方で、十七項目は当然のように実現をしている。八十日かかった世界一周が七日でできればいいと思ったのが、もう七日もかからない。人声十里に達すというのは電話のことでございます。写真電話というのはテレビ電話。そして、買い物便法というのは、これは、インターネットショッピングのことが百年以上前に夢のような話として予言されていた。暑寒知らずは、読んで字のとおり、エアコンのことでございます。
 そういう意味では、五十年、百年の時間軸で見れば人類の技術進歩には限界はないわけであって、しかも日本は、物つくりだとかイノベーションの面では圧倒的な強さを持っている。その意味で、これから日本としては、こういう科学技術だとか物つくりだとか、そういうところに力を入れていけば、私は、日本の五十年先、百年先の将来というのは決して暗いものではないのではないか、そういう考え方をしております。
 私からの御報告は以上でございます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 熊谷亮丸

speaker_id: 14410

日付: 2016-02-24

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会