藤岡毅の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(藤岡毅君) 障害者自立支援法違憲訴訟全国弁護団事務局長、弁護士藤岡毅です。
お手元、三十三ページの資料に即しますが、十分以内ということで駆け足でまいります。
本題に先立ち申し上げます。
ALS当事者岡部宏生さんが、本日、当委員会にて参考人意見陳述を実施できることは喜ばしいことですが、五月十日衆議院厚生労働委員会の事件について、弁護士の一人として一言申し述べます。
この事件は、障害のある人が障害を理由として民主的意見表明の場を奪われたものであり、障害のある市民の国政に参加する権利、表現の自由を侵害した人権侵害であり、法の下の平等と民主主義原理に反する、許されざる差別と言わざるを得ません。本年四月一日施行の障害者差別解消法を率先して推進しなくてはならない国会がこのような典型的な差別を犯したことは、この国の障害者施策の水準を露呈したものと言えます。
この事件に抗議するとともに、どうかこの事件を教訓に、国会が先頭に立ってこの国の障害者差別解消のために全力で取り組んでいただくよう、具体的なアクションを始めてください。
本題です。
冒頭に結論を申し上げます。国は障害者改革の心を思い出してください。人権保障法としての障害者支援法の確立を求めます。基本合意、骨格提言、権利条約を実現させましょう。
基本合意は、政権や政治の変動に左右されず、国政において履行されるべき法的文書です。基本合意では、新たな障害者福祉法制の制定は、障害者の基本的人権を保障し、その行使を支援する法律に転換すること、権利条約を実施するために、障害者を中心とする障がい者制度改革推進会議の意見を基に行う、すなわち骨格提言を法制度化することが予定されています。
今回の見直し法案は、基本合意を履行したものとは到底言えません。国は改めて、基本合意、骨格提言、権利条約を実現するという基本姿勢に立ち返ってください。
現在の法案について述べます。
一言で言えば、障害者改革の心を忘れたがっかり法案です。確かに、入院中での重度訪問介護利用を認める改正は一日も早い実現を望みますし、医療的ケアの必要な障害児者支援の重要性を確認していることなど、望ましい改正点がないわけでないことは率直に評価いたします。しかしながら、全体評価でいえば、このままでは永遠に障害者改革はなし得ないのではないかという危機感を抱かざるを得ません。
そもそも、自立支援法違憲訴訟で国が確認したことは何でしょう。二〇〇八年から九年、我々は違憲訴訟を全国で起こしました。そこにおいて、サービスメニュー羅列法から権利保障法へと題して主張しました。すなわち、権利の裏付けのない法を実質的な人権保障法に変えようという政策形成訴訟でした。そして、二〇一〇年一月七日、国は基本合意を調印し、その年の四月二十一日まで、十四全ての地裁の裁判官の面前において確認され、違憲訴訟は終結しました。
基本合意では次のような重要事項が確認されていることを担当大臣、国会の委員の先生方、皆様は御確認いただきたい。総理大臣にも御確認いただきたいことです。国がこの訴訟を理解したこと、国は、憲法十三条、十四条、二十五条、ノーマライゼーションの理念に基づき違憲訴訟を提起した原告らに共感し、真摯に受け止めること、二〇一三年八月までに障害者自立支援法を廃止すること、国は、障害者の尊厳を深く傷つけたことに対し心から反省の意を表明し、この反省を踏まえ、障害当事者の声を基に新法を制定すること、新しい法律は当事者の基本的人権を支援することを基本とすることです。
三ページ、四ページ、五ページ、基本合意文書を改めて掲載していますので、よくお読みください。五ページに大臣の署名及び大臣の公印が押印されています。
六ページに訴訟上の和解の和解条項を掲載しております。
七ページから十一ページにかけては、実際の裁判所における司法上の和解文書を掲載しております。
九ページを見れば分かりますように、法務大臣権限法に基づき、法務大臣が国家を代表して訴訟上の和解を成立させています。訴訟上の和解の主体は国会を含めた国です。違憲立法審査に関する訴訟ですから、国会には司法上の和解を遵守する義務があります。これを信じた原告らは訴えを取り下げ、請求を放棄いたしました。基本合意文書が十ページ以下に書いてあるのは、これは訴訟上の和解の中身に基本合意文書がなっているということを皆さんに御理解いただくためです。
十二ページ。二〇一〇年四月二十一日に、官邸において内閣総理大臣が原告一人一人に陳謝をし、基本合意を守るということを約束いたしました。そして、この年の六月二十九日、平成十七年法律百二十三号を廃止と閣議決定され、その方針に一切変わりがないと政府は国会で何度となく答弁しております。
十三ページです。二〇一一年八月三十日、骨格提言がまとまりました。しかし、翌年、二〇一二年、国会には、骨格提言を無視した現在の障害者総合支援法が制定されました。うそつき、このとき私は原告の一人から批判されました。国の約束を信じれば、自立支援法は廃止され、障害者の声に基づく新しい法制度が制定されると説明されて訴訟を取り下げた、事務局長も同じ説明ではなかったか。当然の批判です。まさか、国務大臣が調印した政府の合意、裁判所における合意が守られないはずがないと考えた私は甘かったのでしょうか。国が国民を欺くのは当然なのでしょうか。今回のこのような法案のままでは、うそつきの汚名は晴れません。
平成十七年法律百二十三号がいまだに存在していること自体が基本合意違反です。何より、基本合意を軽視することは、あらゆる社会保障制度を危うくします。
十四ページ、十五ページに、様々な集団訴訟からの、自立支援法違憲訴訟基本合意を破ることに対しての共同抗議声明があります。薬害肝炎、ハンセン、原爆症、生存権、B型肝炎、残留孤児、HIV、ノーモア・ミナマタ、薬害イレッサその他多くの集団訴訟が、自立支援法違憲訴訟基本合意を守らないことに対して強い抗議を上げています。
十六ページ以下、去る四月二十一日に訴訟団がこの法案に関して意見書を提出したものです。時間がないので全部読めませんので、補足のコメントだけにいたします。
二十ページですが、障害者の範囲について、依然として医学モデルを採用し、障害者基本法の定義を採用しないという点についての問題です。
先日の衆議院の審議で、政府は、サービス給付法だから対象を明確にする必要があるので仕方がないと言っていますが、障害者虐待防止法や差別解消法においては社会モデルが採用されていますので、答弁に整合性はありません。
また、家族の収入に依拠する利用者負担制度を廃止してください。この点は、お隣の韓国が国連から是正勧告を受けております。このままでは恐らく日本も同じような改善勧告を国連から受けます。国連から勧告を受ける前に改善するのが国会の仕事と思われます。
二十一ページ。基本合意では、どんなに重い障害を持っていても安心できる支給決定システムを求めていますが、この点の改善が一切なされていません。
二十二ページ。介護保険優先原則が維持されていることも問題です。基本合意は、「介護保険制度との統合を前提とはせず、」としています。この方向性を改めて確認してください。障害福祉法制における自立は、公的支援を利用して、障害者が自ら主体的に社会参加し、生活を営み、他の人と平等に生きることです。目的の違う介護保険との統合や接合には無理があります。
二十五ページ。小手先の改革の末に、介護保険に似た自立支援法の復活法になってはなりません。行政実務では六十五歳以上の障害者福祉利用を上乗せ支給と呼んでいますが、どうして障害者が障害福祉制度を使うことが付け足しのごとく上乗せなのでしょうか。この辺の考え方は根本的に誤っています。介護保険を利用したくない、今までどおり障害福祉法制を利用して生活したいと望む障害者に介護保険を強要するべきではありません。介護保険も利用したいという方の希望に応えるため、基本合意に基づき、障害特性に応じた選択制を採用するべきです。
二十六ページ。権利規定が設けられていないということが問題です。骨格提言十二ページでは、総則規定として権利規定を設けろと提言しています。是非これを実現してください。
二十八ページ。自立支援医療の低所得者無償化が毎年ほごにされています。この点の実現も求めます。
二十九ページ。病院内での重度訪問介護利用については評価できますが、障害支援区分の程度にかかわらず利用を解禁させるべきです。
最後、三十ページですが、国連に対する権利条約第一回政府報告案に問題があります。当初の昨年十月に発表された政府案には、骨格提言のコの字も、基本合意のキの字も入っておりませんでした。そのため、三十一ページから三十二ページにある我々は抗議の申入れをいたしました。その結果、三十三ページですけれども、この申入れは、いまだに基本合意と骨格提言が実現されていないことを正直に国連に報告せよというものです。ところが、政府は、基本合意と骨格提言に基づいて総合支援法ができたと報告しており、これは国際的な虚偽報告であり、大問題です。
今回の法案は小手先をいじっただけです。そして、その小手先修正案が国際的に基本合意、骨格提言、権利条約が履行済みであることのアリバイづくりに使われるのであれば、むしろ、改革の妨げになりかねないと危惧するのです。
どうか、国は障害者の声を取り入れた制度改革の心を取り戻し、基本合意、骨格提言、権利条約を今後とも真剣に実現、推進することを改めて誓ってください。
以上です。