辰田雄一の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(辰田雄一君) 東京都八王子児童相談所所長の辰田でございます。よろしくお願いいたします。
 本日、私は、一児童相談所の所長として、また一部都の立場を代表して参考意見を述べさせていただきます。
 まず、東京都における児童相談所の現状について申し上げます。
 都内十一か所の児童相談所において平成二十六年度に相談対応いたしました件数は三万一千二百六十八件であり、そのうち児童虐待の相談件数は過去最高の七千八百十四件でした。この件数は、二年前の平成二十四年度と比較して一・六倍の件数となっております。件数増の主な要因としては、平成二十五年八月にあった国の子ども虐待対応手引の改正に伴う虐待定義の広がり、また警察からの通告件数の増加が挙げられます。
 児童虐待の通告がありますと、児童相談所では緊急受理会議を開催いたします。そして、児童の養育状況について学校や医療機関等の関係機関に調査し、原則として四十八時間以内に児童の安全確認をいたします。児童の最善の利益の確保のため、保護者の意に反してでも児童を速やかに一時保護することも多くあり、夜間、休日も関係なく対応しております。
 また、何度も家庭訪問や面接、関係機関への調査を行わなければ援助方針を決定できないケースがほとんどでございます。通常、児童相談所における対応は児童虐待の初期対応や一時保護までがクローズアップされますが、その後も継続して援助が必要なケースについては、在宅での指導や里親への委託、児童養護施設等への措置を行っております。この過程の中で、必要により、施設等への措置に保護者が同意しない場合の家庭裁判所への審判申立てなどの法的対応を行っております。
 さらに、里親への委託や施設等への措置を行った児童については、本来家庭において養育されることが望ましいことから、家族再統合に取り組んでおります。この家族再統合に向けては、児童と保護者との面会から始まり、外出での交流、短期の外泊、長期の外泊へと計画的に段階を踏みながら取り組んでいきます。また、家庭復帰の際には、地域の関係機関と支援体制を確認する会議を複数回開催し、児童虐待の再発防止に努めております。
 こうした一連の虐待対応だけではなく、児童相談所は非行や傷害等、十八歳未満の児童に関するあらゆる相談に対応しており、虐待の相談対応件数の増加と相まって、児童相談所業務は非常に逼迫した厳しい状況にあります。全国的にも各児童相談所は同様の状況にあり、児童の最善の利益を確保するために児童福祉法等を改正し、児童虐待に関わる一連の対策の更なる強化を図っていくことは非常に重要だということをまず申し上げたいと思います。
 次に、児童相談所の体制強化について申し上げます。
 まず、児童相談所のケースワークの中心となる児童福祉司、子供や保護者等にアセスメントや心理ケア等を行う児童心理司についてですが、先ほど申し上げた厳しい状況を踏まえ、都においてはこれまで大幅な増員を図っております。十年前の平成十八年度と現在を比較しますと、児童福祉司は百五十九人から二百二十七人へ、児童心理司は四十一人から九十一人へと職員定数を増やしております。改正案では、児童福祉司については標準となる基準を政令で定めることになっており、また児童心理司については配置について規定されており、前進が図られたと考えております。各都道府県にとってこうした規定は児童相談所の体制強化の後押しになるものであり、今後、規定にのっとり体制強化を着実に進めていくことが必要と考えております。
 また、国は今年の四月二十五日に児童相談所強化プランを作成しております。児童相談所の体制強化に当たっては財政面の裏付けが不可欠であります。国におかれましては、このプランの実現を図るため、児童相談所設置自治体への財政面の支援をよろしくお願いいたします。
 さらに、児童心理司については、今回の改正案により配置については規定されたものの、児童福祉司と異なり、配置の具体的な基準については設定されておりません。今後、必要な配置を進めていくために、児童福祉司と同様に配置基準を明確にしていただきたいと思っております。都としては、児童福祉法の改正を踏まえ、今後とも児童相談所の体制強化に努めてまいりたいと思います。
 次に、児童相談所は、一時保護を始め立入調査、家庭裁判所の審判による施設入所、親権停止等様々な法的対応を行っており、これらの対応には法律の専門家である弁護士の助言が不可欠であります。
 都においては、十一か所ある児童相談所の各所に一名ずつ非常勤の弁護士を配置し、定期的に児童相談所職員への法的な助言を行える体制を取るとともに、緊急案件等への対応のために、この十一名の非常勤の弁護士に加えて二十六名の弁護士を協力弁護士として登録し、随時相談に応じる体制を取っております。こうした柔軟な体制の中で、複数の弁護士から法的対応に必要な助言を適時適切に受けることができ、また弁護士にとっても児童相談分野の専門性の向上が図られ、双方にとって非常に有用な制度と考えております。
 こうした中で、この度、改正案に弁護士の配置又はこれに準ずる措置について規定されたことは、都としてこれまで取り組んできたことが制度的にも担保されることとなり、今後とも弁護士の方々の協力を得て効果的かつ円滑に制度を運用していきたいと考えております。
 次に、区市町村の体制強化、児童相談所と区市町村との連携について申し上げます。
 御案内のとおり、平成十六年の児童福祉法の改正に伴い、区市町村は児童家庭相談の第一義的窓口となっております。都はこれに先駆け、平成七年度より区市町村に子ども家庭支援センターを設置するとともに、虐待対応力の向上を図るため、センターに虐待対応の専門職員の配置、また職員増員も行えるよう区市町村を支援してきました。
 子ども家庭支援センターは、子供と家庭に関する相談に対応するとともに、ショートステイや一時預かりなどの在宅サービスの提供や調整の役割、そして要保護児童対策地域協議会の調整機関としての役割を担うなど、地域の児童家庭相談の拠点として機能しております。また、児童相談所と子ども家庭支援センターの役割分担を明確にした上で緊密な連携を図り、両者の支援に隙間ができることのないよう、都では両者の連絡調整のルールそして共有ガイドラインを策定しており、これに基づき日々の円滑な連携を図っています。さらに、児童相談所は、子ども家庭支援センターの受理会議に参加し様々な助言を行うほか、同行訪問を行うなど、日頃から支援を行っております。
 今回の法改正では、国、都道府県と併せて区市町村の役割、責任の明確化が図られるとともに、区市町村における支援の拠点の整備、児童相談所から区市町村への事案の送致などについて規定されました。
 これは、児童相談所と区市町村がそれぞれの役割を踏まえながら相談対応を行っていく上で非常に重要なことと考えております。支援拠点の整備については都の子ども家庭支援センターが法的に位置付けられたと受け止めており、都としては、引き続き、この制度の円滑な運用を図るとともに、児童相談所として子ども家庭支援センターとの緊密な連携を図りながら、適切な役割分担の下、児童虐待等に対応していきたいと考えております。また、改正案に規定されている区市町村への事案送致については、身近な地域での支援を区市町村がより主体的に担えるようにしたものと理解しております。
 次に、里親委託の推進について申し上げます。
 都内には、虐待等の理由により社会的養護を必要とする児童が約四千人おり、里親、児童養護施設、乳児院などで暮らしております。本来、子供は家庭的環境の下で愛情に包まれながら健やかに養育されることが望ましいため、都においては、昭和四十八年から、養子縁組を前提としないで児童の養育を委託する養育家庭制度を独自に創設し、児童の委託を推進してきました。
 都の児童相談所では、児童の措置委託先の決定に当たり、児童の一人一人の状況を総合的に勘案した上で、まず最初に養育家庭の委託を検討しております。また、委託後も児童相談所と里親支援機関等が連携し、養育家庭をきめ細かく支援しております。
 今回の改正案では、里親の開拓から児童の自立支援までの一貫した里親支援が児童相談所の業務として位置付けられました。児童相談所としましては、引き続き養育家庭委託をより一層推進していきたいと考えております。
 最後に、養子縁組について申し上げます。
 都の児童相談所においては、特別養子縁組を希望する相談があった場合、面接などを通じて実親の意向や養育力等を十分に確認し、その必要性を判断しております。その上で、養子縁組が必要と判断した場合には、適切な家庭を選定し、交流、委託、養子縁組成立に至るまできめ細かく支援をしております。
 今回の改正案では、養子縁組に関する相談や支援が児童相談所の業務として位置付けられました。児童相談所としましては、引き続き、できるだけ早い段階から交流に努め委託につながるよう、子供の福祉を第一に考えながら、養子縁組を含め、社会的養護を必要とする児童への支援を行っていきます。
 私からの参考意見は以上でございます。

発言情報

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発言者: 辰田雄一

speaker_id: 1247

日付: 2016-05-26

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会