勝山教子の発言 (国の統治機構に関する調査会)

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○参考人(勝山教子君) 同志社大学の勝山でございます。
 本日は、このような席で発言する機会を与えていただき、大変光栄に存じております。どうぞよろしくお願いいたします。
 では、説明を早速始めさせていただきます。
 まず最初に、参議院における行政監視の活性化というテーマをいただきましたので、特にその基本的な視点というのを少し考えるところをお話しさせていただきます。
 今、飯尾先生からお話がありましたように、日本国憲法が定める議院内閣制においては、内閣総理大臣の指名、内閣不信任決議の規定にも見られますように、内閣は実質的には衆議院の多数派の支持に基づいて成立しているという存在です。したがって、その関係から当然衆議院の方では、政府・与党と野党との対決色というのが濃厚になってくるわけです。参議院が、特にその存在意義を発揮しつつ政府統制活動を行うという、そういう観点からすると、衆議院のような対決色一辺倒ではなく、そこから一歩距離を置いた客観的な立場から行政を監視する、そういう活動に力点を置いて活動を進めていくことが重要なのではないかというふうに思っているところです。
 つまり、官僚の不正行為などを取り上げて、批判型、対決型で政府追及を行うような、そういう統制の仕方ではなく、レジュメにも挙げましたように、例えば法律の執行の適法性、妥当性、予算の適正処理、政策の有効性といった問題について客観的な基準が引き出せるような、そういう事項について客観的に評価、分析する。そして、それを基に行政の行為や事業の見直し等の必要があれば政府に対して説明を求めていく。そして、必要な場合には、そういった情報を集めて参議院の方から立法提案を行っていける、そういったような統制活動というのが重要になってくるのではないかというふうに考えているところです。
 もちろん、こうした調査活動というのは、質疑で政府を追及するようなそういう華々しいような形のものではありませんので、注目を集めるものではありません。確かにうまみというものはないのかもしれませんが、長期的に考えれば、参議院の立案能力というのを非常に向上させる、そういった活動だというふうに思っております。特に情報が入手の点で若干与党には劣る野党にとっては、法案の起草に関する影響力であるとか政権担当能力を向上させる、そういったことにも役立っていくものだと思います。
 こういった活動を通して衆議院とは違う参議院の存在意義というのを示していく、そういった方向性が取られるべきなのではないかというふうに考えているところです。
 そこで、本日は、政府の統制手段の中から、レジュメにも挙げましたように、政策評価と法律の施行状況の調査を取り上げて、行政監視の活性化ということについて考えてみたいと思います。その上で、監視活動の仕組みづくり、どうやって効果的につくっていくのか、これも非常に大事なことですので、例を示しながら御説明申し上げたいと思っております。
 まず最初に、政府統制における少数派の役割ですが、先ほど参議院では対決型姿勢ではなくというふうに申し上げまして、やや矛盾するところかとは思いますけれども、やはり政府統制という活動になりますと、野党側の役割、これが非常に重要になってくること、これは否めないところだと思います。現実問題として、与党議員は政府を困窮させるということ、これは望んでいませんので、やはり野党が積極的に関われるようなそういう仕組みづくり、これが大事なんだと思います。
 そうした例として非常に有名なものにドイツの少数者調査権というものがあるわけなんですけれども、近年私が研究対象としておりますフランスの方でも少数派による調査委員会の設置要求権というようなものが制度化されていましたので、例としてそこに挙げさせていただきました。
 フランスでこういう野党の権限強化ということが最近行われているわけなんですけれども、その背景には、二〇〇八年に憲法改正が行われまして、かなり大規模な改正でございまして、このときに憲法の条文の中に野党の権利を承認するというそういう規定が明記される、そういうことになりました。この今お話しさせてもらっている政府統制との関連からいえば、つまり、効果的に議会がその任務とする統制活動を行っていくためには野党の主導性を強めなければならないんだ、そのためには権限を付与しなければならないんだということが憲法で明文で確認されたというふうに考えることができるということです。
 そのような観点から、日本の行政監視ということを、政府統制の仕組みを考える上でもやはり野党に積極的に関われるような、そういう仕組みづくりというのを模索していくべきだろうというふうには思っております。
 次に、先ほど御指摘しました、参議院として、特に政策評価や法律施行調査といった、そういった客観的な視点から検討し得るような、そういう活動に取り組むべきだということを申し上げました。その点についてもう少しお話をさせていただきます。
 この政策評価でありますとか法律の施行状況の調査というのは、元々立法者たる議員のそもそもの責務なんではないかというふうに私は思っているところです。といいますのも、政策の多くというのはもちろん政府・与党側から提示されてくるわけなんですけれども、その実施を最終的にオーソライズしているのは議院ですから、参議院も衆議院も、その後の結果についてはそれを監視し、もし自分たちがオーソライズした内容と違うものであればそれについて是正を図っていくような、そういう活動をするということは元々の職務だというふうに考えているところであります。
 それに加えまして、こういった政策評価、法律施行調査というものは、元々の法律、自分たちが制定した法律の目的が何であったのか、法律に規定された条文に何が書いてあったのかというような比較的政策論争とは別の客観的な基準によって判断が下されるということが可能になるものですから、そういった意味では対決色が弱い統制活動に位置付けられるんではないかというふうに思っております。
 先ほども申し上げましたように、こういった形の情報を収集していくことによって、今後、もしかしたら提出されるかもしれない法案に対する資料を十分に整え、議員の審議能力、立案能力というのを高めていく、そういう非常に重要な活動だというふうに思っているところです。
 次に、そうであれば、ではその活動を、そうした政策評価であるとか法律の施行調査又は広く政府統制という形の活動をどのように効果的に行うのか、仕組みづくりも重要になってくるところですので、次にこの点についてお話をさせていただきます。
 レジュメのところには、フランスで、やはり先ほど紹介しました、二〇〇八年の憲法改正を受けまして下院に設置された公共政策評価・統制委員会の内容をお示ししております。
 このときの憲法改正では、先ほどは野党の権利を保障するという条文が盛り込まれたのだということを御紹介しましたけれども、それと同時に、憲法条文の中にまた別に議会の任務として、立法だけではなく、政府活動の統制、公共政策の評価、これも議会の任務なのだと、憲法上の任務なのだというふうに規定されたところです。非常に大事だという、そういうことがここでも確認されているということです。
 その上で、その憲法改正を受けまして、政策を評価する、そういうための機関として新しく公共政策評価委員会というものが設置されたわけですが、この組織を見ますと、組織方法や活動方法について非常に注目されるところがあるということで、ここではこれを紹介させていただきます。
 まず、この組織を設計するに当たって何に注目したかというと、フランスがそれまで行ってきた、フランスの議会が行ってきたことに対する反省に基づいて設計されていたというところです。政策評価といいましても、新しく二〇〇八年の憲法を受けてこの機関が設置されたわけなんですが、もちろんそれ以前からフランスの議会も政策評価活動というのは行ってきていたところです。
 ところが、その当時、以前はどういう形でやっていたかといいますと、各常任委員会がそれぞれ個別に所管事項について政策評価的なことを調査を行ったり又は一定の重要事項についてはそれ専門の政策評価組織というものを両院合同の機関として設けたりして活動を行ってきたわけです。ただ、総じて期待に応えることができなかったということから、それ以前の、それまでのこうした組織の活動方法の反省点というのを列挙しながら、二度とそれにはならないぞという形でつくられたというところです。
 では、以前の組織、組織方法、活動方法に何が問題があったかということを御紹介しますと、まず失敗の原因として第一に挙げられたのが、多くの場合これが、両院合同の組織、政策評価のための専門組織というのが両院合同でつくられていたというところで、日本にもありますように、やはりねじれ現象になった場合には全く機能しないということがあったというところです。
 第二番目の点としましては、やはり政策評価であるとかいった問題については議院の力だけで行っていくことは非常に大変であると。したがって、外部組織の専門家に要請を求めるのが一番効率的な方法なんですけれども、それ以前は、以前はそういった外部に対しての支援要請を行わなかったということです。
 第三の点として挙げられますのが、こうした政策評価であるとか立法の施行調査であるとかいったことというのは、政府に対する質疑で華々しく責任追及するというあのような姿からすると、そうではなくて、調査活動をやっていくということですから非常に地味であって、余り、とはいえ、労力が掛かるということ。まあ議院としてもそういった活動に余り積極的ではなかったということも挙げられています。
 また、反対派、野党側の役割を、特に積極的な役割というのを認めていたものでもなかったので、そういう仕組みも組み込まれていなかったということ、それから、それまで常任委員会であるとか各種政策評価の専門組織がそれぞれで行っていたその評価活動、これに連携を持たせなかったという、そういった失敗原因というのが挙げられていたところです。
 そこで、新たに設置された公共政策評価・統制委員会というのは、こういった点を改めて、参考にしながら、反省を踏まえてつくられた、そういったものです。
 まず、レジュメにお示ししましたように、調査事項ですけれども、従来、常任委員会が、その壁となっていた省庁別の所管という限界、これを取り払いまして、横断的、総合的な調査を行うことができるというような形にしております。これは、こちらの参議院の調査会であるとか行政監視委員会であるとかいったところもやはり同様にそのような観点から行っているというふうに存じております。
 さらに、注目されるのが、フランスのこの公共政策評価・統制委員会の組織方法及び活動方法です。
 組織方法のところですが、お手元のレジュメに構成員となる者を列挙して記載させていただいております。これを見ますと、議長が委員長になりまして、そして各常任委員長も全員入る、各種評価局長も全員入るんだと、その他政策評価に携わる組織の長であるとか会派の長も入ってくると、そういった者で構成されておりまして、実はこの組織というのは、議院が行う統制、評価の活動を総体的に、総合して全体としてのプログラムを調整する、そういう評価・統制活動も取りまとめていく、そういう機関として設置されているということです。
 さらに、この機関の活動方法ですけれども、先ほど言いましたように、政策評価を行うなんということになりますと、技術的、専門的な知識というのが非常に必要になってきますし、労力的にも議院だけで行うというのはなかなか限界があるところですので、外部に対しても協力を求めるということを自由に行っていくと、かなりの予算措置も付けられています。
 また、この委員会のメンバーだけで調査を行うというのではなく、調査対象となっている事項の関連常任委員会の委員、専門性を持つ委員を招いてきて実際には調査を主導してもらうというようなことをしております。例えば、ほかの委員会が行った法律の実施の施行調査などに関する評価報告なんというのは、やはり全てここの委員会に提出されて集められるというようなことになっているところです。
 このような形で、この組織を中心としまして議院の内外の機関と連携を持たせながら組織的に調査活動を進めていくという、そういう手法を取っているということが非常に注目されることなんだというふうに思います。
 さらに、重要なことなんですけれども、調査活動というのは地道なものではありますけれども、やはり調査するだけに終わるのではなくて、報告書に取りまとめて、それをホームページに掲載して国民にその情報を提供するという、そういったことも行われているところです。
 時間がかなり少なくなってしまいましたが、もう一点、申し訳ないんですけれども、一点追加させていただきますと、この組織の非常に最も注目される点として最後に一つだけお示しさせていただきます。
 この組織の調査活動の方法としまして、実際には二名の議員が指名をされまして調査の報告者として活動を進めていくということになっているんですが、この二名のうち一名は必ず野党議員でなければならないということになっておりまして、与野党議員二名が共同で調査を進め、そして、最終的にはこの二人が議論を重ねて一つの報告書を作成するという、そういう形を取っているところです。
 もちろん、見解も対立する議員ですので一つの報告書にまとめることにはなかなか難しいところがあるんですけれども、協力を与野党議員が行って議論を重ねるうちに最終的に合意形成がなされることが多いというふうにされるところです。ですので、こういった与野党議員二名のペア方式によって最終的に取りまとめられた調査結果というのは非常に客観的、公正的、中立な内容のものとなっており、非常に信頼の置ける資料として議院に蓄積されていくということになっております。
 この形を見ますと、実は、言ってみれば政府統制というのは、実際は政府・与党対野党というような、そういう対立図式を描きがちなんですが、この形の統制方法というのは政府・与党対野党ではなくて、与党と野党が一体となって議院として内閣に対立軸として存在し、そして統制を行っていくという、そういう形のものであって、非常に、参議院の一体的な形で政府に対抗していくというような、そういう仕組みづくりにも参考になるのではないかというふうに思い、挙げさせていただいたところです。
 済みません、かなりお時間を超過してしまいましたけれども、以上で説明を終わらせていただきます。

発言情報

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発言者: 勝山教子

speaker_id: 34696

日付: 2016-02-10

院: 参議院

会議名: 国の統治機構に関する調査会