澁谷和久の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
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○政府参考人(澁谷和久君) 内閣官房の澁谷でございます。着席のまま失礼いたします。
お手元に内閣官房の資料、「TPP協定について」と題した資料がございます。これに基づきまして二十五分間で御説明をさせていただきたいと思います。
表紙をめくっていただきまして、一ページ目でございます。TPP協定交渉の経緯でございます。
もう今から三年前になりますが、二〇一三年の三月に安倍総理が正式に交渉参加を表明いたしまして、この年の七月、マレーシアのコタキナバルで我が国が正式に交渉に参加したわけでございます。その後、何回か交渉会合を重ねたわけでございますが、昨年の十月の五日、アメリカのアトランタにおきまして大筋合意を見たところでございます。また、先週、二月四日でございますが、ニュージーランドのオークランドで署名式が行われまして、これで協定の案文が確定したということでございます。
二ページを御覧いただきたいと思います。
TPP協定の意義と書いてございますが、経済連携協定なわけですけれども、十二か国ございまして、この十二か国、人口で八億人でございます。世界のGDPの四割、三千百兆円でございます。言うなれば、我が国の人口の八倍のマーケットを我々は目の当たりにするということでございます。
それから、右下の方に、ちょっと小さくて恐縮でございますが、棒グラフがございます。FTAのカバー率というものでございます。我が国のFTAのカバー率、貿易に占めるそのFTA国との貿易の比率でございますけれども、日豪のEPAを結びましたので、それまでは一八%だったFTA比率が二二%まで上がっておりますが、お隣の韓国を見ていただきますと、既にもう六〇%を超えてございます。中韓がもう発効いたしましたので六〇%を超えているところでございます。アメリカが四〇%でございます。
このFTAカバー率が低いとどういうことになるかといいますと、FTAを結んでいる国、FTAをたくさん結んでいる国に立地いたしますと、例えば韓国に立地いたしますと、韓国に工場があると、ヨーロッパ、EUにもアメリカにも無税で輸出できるということで、我が国の国内にあった企業が例えば韓国に流出するといったようなことが起きているわけでございます。
このFTA、二国間のFTAというものは貿易の転換効果という効果を持っておりまして、FTAを結んでいない国から結んでいる国に産業拠点が移転するという傾向にございます。したがいまして、FTAのカバー率が低いままですと、我が国の産業の空洞化が強く懸念されるわけでございます。安倍内閣の成長戦略の基本方針はFTAカバー率を七〇%まで高めるということでございますが、TPPが発効いたしますとこのカバー率が三七・二%まで拡大いたしますので、まだまだ、遅れを取り戻すということではありますけれども、かなりの拡大になるわけでございます。
次のページでございます。
三ページでございますが、TPP協定の概要を一枚にまとめると、無理やりまとめるとこういうことになるわけですけれども、三十の章から成り立っております。交渉に参加する前は二十一分野ということを申し上げておった記憶がありますが、その後、交渉を重ねるにつれてチャプターが細分化されまして、最終的な条文は前文に加えまして三十の章で構成されているものでございます。非常に多岐にわたる分野でございます。環境とか労働といったような従来の通商協定にはないような分野もカバーする非常に幅広い分野ということが言えると思います。
四ページでございます。
TPP協定の特徴と書いたものでございますが、関税はまた後ほど御説明いたしますが、関税についても含めて高いレベルの自由化を実現したというところでございますが、我が国は農産品を中心にその中でも例外を数多く確保しているということでございます。
それから、二つ目の丸でございますが、攻めの分野として、我が国は他の十一か国に対して工業製品を中心に関税の撤廃を強く迫りまして、ほぼ一〇〇%に近い関税撤廃を実現したところでございます。
それから、ルールの分野でございますけれども、特にサービスとか投資の分野で、様々な我が国の特に中小企業などが海外展開をする上で非常に有り難いルールを数多く勝ち取ったところでございます。また、サービスや投資につきましては、ルールの交渉を行うだけではなくて、それぞれの国の投資やサービスを自由化するような、そういう市場アクセスの交渉も併せて行っておりまして、これについても数多くの約束を取り付けたところでございます。
この箱の中に書いてあるところを若干御紹介をさせていただきますと、例えば投資というところがございます。投資というチャプターは、投資を受け入れる国が海外からの投資に対していろんなことを、注文を付けたりそういうことをしちゃいけないという、そういうルールでございます。投資先の国が投資企業に対して技術移転等を要求することを禁止とありまして、日本がどこかの国に投資をして工場を建てたら、技術移転をしろということを無理やりその政府から要求されるということがあってはならない、このTPPの十二か国はそういうことをしないということを約束する国なので安心して投資ができるということでございます。
また、この投資のチャプターではいろんなルールが書いてございますが、例えば収用、公共事業などでその土地収用などをするときは適正な補償金を支払わなければならないという、我が国にとっては当たり前でございますけれども、こういうルールを明文化して確認をしないと日本以外の国では非常に危ないということもございまして、こういうルールを明確にしたということが我が国の企業が海外に出ていく後押しにつながるというふうに思っております。
それから、貿易円滑化というチャプターがございますが、これはやや地味な章ではあるんですけれども、実は中小企業からの要望が数多くありまして、それにかなり応えた内容でございます。
関税分類等に関する事前教示制度の義務付けというのは、これは、目立たないようですけれども、特に、中堅・中小企業などが自ら海外展開をするときに相手国に対して書類を提出するわけですけれども、関税分類とか原産地の規則が知らない間に変わっていて、さんざん待たされた挙げ句突き返されるということが現にあるわけでございますけれども、この事前教示を義務付けるということでそういう行ったり来たりがなくなるという、これは大筋合意後、中小企業を対象に経産省、ジェトロなどが説明会をしておりますけれども、非常に喜ばれている事項の一つでございます。
その一つ上に、急送貨物の迅速な税関手続を確保するため、六時間以内の引取りを明記ということでございます。例えばメロンとか生鮮食品などを日本から輸出しても、税関でこれ、手続が単に遅いということもあれば、半ば嫌がらせということもあるのかもしれませんが、さんざんほっておかれてそのうち腐ってしまうということがありますと、農産品なんかの輸出がなかなかできないということになるわけですけれども、TPPの協定上はこれ義務化したわけでございまして、急送貨物として指定をした場合には六時間以内にリリースするということを各国の義務としたわけでございます。
また、通常の貨物につきましては、これは義務規定ではありませんが、四十八時間以内にリリースすることを努力義務と、これも明記したものでございまして、WTOとかにはない新しい規定でございます。これでTPPの十二か国に関しては安心していろんなものの輸出ができるということでございます。
ビジネス関係者の一時的入国につきましても、多くの国で滞在可能期間の長期化など、それから経済界から要望が強かった家族の同伴などについても認めていない国がありましたが、これも約束をしていただいたりしているところでございます。
それから、電子商取引というチャプターがございまして、これもかなりテクニカルな章ではあるんですけれども、ソースコードの移転、アクセス要求の禁止と。これは実際にあった話で、新聞でも報道されていましたが、アジアのある国で日本の企業がソフトウエアを輸出、オンラインで輸出をしようとしたら、その国から、ソースコードというのは設計図のようなものなんですけれども、これを開示しないと輸入認めないという、そういうことを言われたということが報じられておりました。TPPの十二か国はそういうことをしないということを約束をする国だということで、これも義務規定として明記をしたところでございます。
知的財産についても非常に数多くの規定を設けておりまして、特に模造品などに対する厳格な規律を設けております。また、ここに書いておりませんが、例えば、営業秘密を盗んだりした者に対しては刑事罰を科す、そういう制度をつくるということをこれも各国の義務としたものでございます。我が国は既に法律があるわけでございますが、まだアジアの国の中にはそういう制度がない国がございます。
こういう制度を義務化したということで、こういう説明を中小企業の方などにいたしますと、これで安心して海外に投資ができるということを言ってくださる経営者の方が多数いらっしゃいます。
長野県に従業員十五人という非常に小さな中小企業があるんですけれども、そこの社長さんがおっしゃっていましたが、医療機器といいますか、陶磁器の粉末で、これが防菌作用があるということで、これで医療用のマスクなんかを作っている、そういう企業なんですけれども、例えばベトナムのようなところに海外展開をしようとずっと思っていたけれども、果たして、投資に関してルール変更が急にされちゃうんじゃないか、あるいは自分たちの知的財産が守られないんじゃないかという懸念があって海外展開をためらっていたけれども、このTPPのルールができることで安心して展開ができると。このような声も聞こえてきているところでございまして、早速このTPPを活用して海外展開をしたいというふうに準備をされている企業の方が既に多数いらっしゃるという状況でございます。
それから、一番最後に、ちっちゃい、二行だけ書いてございますが、原産地規則の完全累積制度、非常に分かりにくいんですけれども、原産地規則というのは、メード・イン・どこそこという、メード・イン・マレーシアと言うためには、マレーシアの国内でマレーシアのものを使って何割ぐらいまで積み上げないとマレーシア原産にしない。これは二国間のFTAではそういう原産地規則をずっと品目ごとに決めているわけでございますが、そういたしますと、例えばメキシコに自動車工場を大手のトヨタとかホンダが造るわけですけれども、メキシコの原産地規則が非常に厳しいので、部品メーカー、ねじを供給したりする日本の技術力を持った中小企業が日本からねじとかを輸出しますと、日本産になってしまってメキシコ産に積み上がらないので、結局ホンダとかトヨタがメキシコに工場を造ると部品メーカーも一緒にメキシコに移らなきゃいけないというのが今の現状でございます。
TPPは、十二か国による多国間の協定であるというこのメリットを最大限に生かしまして、完全累積と言っていますけれども、メード・イン・TPPという概念、TPPの十二か国ならばどこで積み上げてもTPPの優遇関税の適用が受けられるということになりますので、メキシコに自動車工場ができても、日本国内の部品供給メーカーは日本にいながらにしてその出ていった自動車工場に部品を供給できるという。ハイテク、技術力を持った中小企業が、このままですとそういうところまでが空洞化してしまう危険性があるのをこのTPPのルールで何とか食い止めることができるんじゃないかという、そういうふうに思っているところでございます。
五ページでございますが、TPPは成長戦略の重要な柱というふうに書いてございます。
A社と書いてございます。これは実際に愛知県の一宮にある繊維の中堅企業でありますけれども、ベトナムに既に投資をしているところでございます。ベトナムはTPPを活用してアメリカに繊維製品を輸出するという期待を込めてこのTPPに参加しているわけでございますけれども、ベトナムには糸を紡いで布を織るような技術がまだ確立しておりませんので、日本のこの愛知県の中小企業は、ベトナムの国有企業があるんですけれども、軍服を作っている企業があるんですけれども、ここに投資をいたしまして、ベトナムの中でちゃんと普通の一般向けの繊維製品が作れるように今技術指導をしているところでございまして、TPPが発効すればここからアメリカなどの市場に向けて輸出する。
アメリカにそういうものが輸出をされますと、今度は、ここから先はTPPとはまた別な世界かもしれませんが、日本の小売のノウハウを活用して更に付加価値を付けてということが可能になるわけでございます。そうすると、この技術は日本の愛知県の中小企業の技術を活用したものだということがアメリカの市場で知られるようになり、そうすると、今度は直接愛知県の企業に対して、うちにもこういうものを作ってほしい、こういうものを技術提供してほしいというような投資の話が舞い込んでくる。こうやってぐるぐると循環をしていろんなバリューを、新しいバリューを次から次へと生み出していくというのがこのTPPの最大のメリットであるというふうに考えているところでございます。
六ページが衆参農林水産委員会の決議でございます。
後ほどまた御質問をいただくと思いますが、七ページでございます。農林水産委員会の決議、その中のサブに関わるところが一から五でございます。
一がいわゆる農産品の重要五品目でございまして、後ほど農水省の方から御説明があるかと思います。これについても関税撤廃の例外を数多く勝ち取ったということでございます。
ちょっと順番に結果を御紹介いたしますと、二番が食の安全でございます。SPSとかTBTというチャプターに絡むことだと思いますが、食の安全に関してTPP協定の中に我が国の制度変更を求める規定は一切入っておりませんので、ここは全く大丈夫だということでございます。
三番が合板と製材の関税でございます。マレーシアとカナダの合板、製材が、業界団体としては懸念を表明していたようでありますけれども、結果としてかなり長い期間のステージングを取っておりますし、非農産系では多分初めてだと思いますが、セーフガードを付けるなどかなりの配慮をした結果になっているところでございます。
それから、四番目が漁業補助金でございます。環境というチャプターの中で漁業補助金についてどう扱われるかということが懸念されていたんですが、これは我が国が力強く主張をした結果、既に乱獲の状態にあるものを悪化させるような、そういう補助金だけが禁止でございますので、我が国の漁業補助金は全く問題がないという結論でございます。
五番目が、また後ほど御質問があるかもしれませんが、ISDS条項について濫訴防止策を含まないのは駄目だということでございますが、過去のFTAにあるような濫訴防止策はほぼ全て取り込んでおりますし、TPPで初めてというようなものも含めて濫訴防止策は相当程度盛り込んでいるということでございますので、これも、むしろISDSは日本にとって攻めの分野でございますので、積極的な活用を期待しているところでございます。
それから、八ページからは関税の話でございまして、もう既に御存じだと思いますが、関税撤廃率、我が国は九五%でございますが、ほかの国は九九ないし一〇〇ということですので、我が国がかなりの例外を確保したということでございます。
九ページは、また農水省から御説明があるかもしれませんが、農産品について約二割ぐらい関税撤廃の例外を確保したということでございます。
十ページがその詳細でございます。これはまた後ほど農水省の方からお話があるかと思います。
十一ページちょっと飛ばしていただきまして、十二ページでございますが、昨年の十一月二十五日に総合的なTPP関連政策大綱というものを決定をしてございます。大きな柱が三つございまして、新輸出大国、グローバルハブ、農政新時代でございます。
新輸出大国というのは、何が新かといいますと、これまでは大企業が輸出の担い手の中心であったわけですけれども、これからは中堅・中小企業も輸出の担い手に十分なり得るという、そういう認識でございます。
まあTPPはともすればグローバル企業だけが利益を得るというような、そういう御批判をいただくわけでございますが、グローバル企業は既にグローバル化しているわけでございまして、むしろ、様々な海外展開に伴うリスクを自分でしょえない中堅・中小企業がルールが確立をすることによって安心して海外展開できる、これが彼らにとってのチャンスだというふうに我々思っておりまして、そういう中堅・中小企業の海外展開を様々な形で支援するような施策を盛り込んでいるところでございます。また、この新というのは、それだけではなくて、物だけではなくてサービス、コンテンツなどの輸出も積極的に行っていくという、そういう意味も含んでいるところでございます。
二つ目の柱のグローバルハブでございますが、これは外に、海外に展開をしていくだけではなくて、それによって日本の中堅・中小企業の高い技術力が世界中に知られることになると、今度は逆に日本国内に対して一緒にやっていこうという投資が返ってくるのではないかと、そういう意味でこのハブという言葉を使わせていただいております。国内への投資を促進するような施策を各省で打っていくということがこの中に盛り込まれてございます。
農政新時代につきましては、攻めの農業、それから重要五品目中心に発効後を中心とした対策を盛り込んでいるところでございまして、後ほど農水省から御説明があるかと思います。この政策大綱、十一月二十五日に決定をいたしまして、平成二十七年度の補正予算の中にこの関連予算として約三千四百億円の予算を盛り込ませていただいているところでございます。
十三ページでございますが、TPP協定の経済効果分析を昨年の十二月二十四日に公表したところでございます。参加する前の三年前は関税が全て撤廃されるという、かつ対策は何も打たないという前提で計算をして三・二兆円のGDP増という、そういう試算であったわけですけれども、今回は関税引下げも含めた今回の合意内容をモデルに投入をして、さらに貿易のコストが下がること、また生産性が向上することなども、総合的な観点を盛り込みましてGTAPというモデルを回した結果、これGDPのベースでいいますと二・五九%の増、安定的な成長経路に乗った後ということですのでこれ時期はなかなか明示できないんですけれども、安定的な成長経路に乗った時点でプラス二・五九%、約十四兆円のGDPの底上げという、そういう結果でございます。
十四ページがその解説でございます。
それから、ちょっと飛ばしまして十六ページでございますが、この数字はいろいろ国会でも御議論の対象になっているところでございますが、世界銀行が先月公表した世界銀行の試算によりますと、我が国のGDPを二・七%の押し上げという結果でございますので、ほぼ私どもの試算と同じ結果になっているということでございます。
ただ、この私どもの分析は予測ではないわけでございまして、TPPの効果を最大限に活用するという場合に、GDPをこういうメカニズムでこういうふうに押し上がるんだというメカニズムを表すことが分析の主眼でございます。国内の生産性を向上させること、また投資を増やすこと、そうしたことがGDPに効くんだということが明らかになったわけでございますので、これからそうしたことを重点的に、TPPを契機とした新しい成長に乗せるための政策を打っていくということが私どもの考え方でございます。
最後に、十七ページでございますけれども、先週、ニュージーランドのオークランドで署名式が行われました。これがその際の閣僚声明の日本語訳でございます。下から二つ目の段落でございますが、「協定の署名は、重要な節目であり、TPPの次の局面の始まりを示す。我々の焦点は、現在、各国の国内手続の完了に向けられている。」ということでございまして、署名が終わりまして協定の案文が確定いたしましたので、関連法案の今準備をしているところでございまして、なるべく早く国会にお出しをして御審議をいただきたいと思っております。
なお、ニュージーランドは、二月九日にTPPの関連の議案を既に国会に提出したというふうに承知しているところでございます。
内閣官房からの説明は以上でございます。