淺田正彦の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(淺田正彦君) ありがとうございます。
北朝鮮に対する経済制裁ですけれども、経済制裁がどれだけ効果的かという点については、基本的には非常に経済制裁が効果を持つというのは難しいと。全ての国が一致して経済制裁を実施すればそれは効果的でしょうけれども、そういうことというのは歴史上ほとんどありません。
したがって、経済制裁というのはなかなかうまくいかないんですけれども、しかしイランの例を見ますと、あれはうまくいった希有な例ですね。イランが核合意に至った背景にはやはり制裁があったというふうに言われていまして、それはほぼ一致しております。
じゃ、同じ時期にイランと同じように経済制裁が行われた北朝鮮に対してどうして効果がないのかということがよく聞かれるわけですけれども、多分三つぐらい理由があると思います。
一つは、北朝鮮の経済体制ですね。イランのように国際経済に完全に組み込まれている場合には経済制裁というのがかなり直接の影響はありますけれども、北朝鮮のように、場合によっては中国との間の国境のバーター取引のような形のローカルな経済がかなり残っているようなところでは、国際的に何らかの形で制裁を行っても、それがどれだけ効果があるかということはかなり疑問だということがあります。
それからもう一つは、北朝鮮は独裁だということですね。イランの場合には曲がりなりにも一応選挙をしながら民主主義の形を取っていますけれども、北朝鮮の場合には、いかに制裁の結果として一般民衆が影響を受けても、だからといって国家の政策が変更されるかといいますと、そこに直結しないところがあるというのはやはり独裁制の問題ではないかというふうに思います。
それから、これが恐らく最も重要だと思うんですけれども、北朝鮮は制裁の結果としてどんどん中国との関係が強くなって、現在の中国との貿易関係というのは全体の北朝鮮の九割を占めているというんですね。そうすると、ほかの国がどんなに頑張っても中国が対応しないと全く効果がないというふうな状況になっておりまして、日本が例えばぜいたく品の禁輸を行うと、安保理決議でぜいたく品の禁輸というのは義務付けられているんですけれども、定義がないんですね。そうすると、日本のような国は例えばマグロとかなんとかを指定して制裁しますけれども、定義がないからできないという国が大部分なわけですね。そうすると、真面目に自分でこれがぜいたく品だというふうに決めて、その制裁を行う国が輸出をやめた部分をほかの国がカバーして、どんどんそこで輸出をしていくと。例えば中国などはそういったことをやっているということが実際データで出ています。ですから、そういうところを見ると、経済制裁は元々なかなか効果的になるというのは難しいんですけれども、その辺の問題があるというふうに思います。
今申しましたように、中国がどれだけ本気になるかということが大事なんですけれども、最近のニュースを見ていますと、北朝鮮の核実験に対して最も怒っておる韓国でさえ本当に安保理決議を実施しているかといいますとかなり疑問でして、例えば開城工業団地を停止しましたけれども、あの開城工業団地での賃金の支払が北朝鮮の核開発に行っていたということを先日韓国の統一省が言っていますけれども、そういう形で北朝鮮の核開発につながるような金融資産の移転というのは安保理決議の二〇九四というので禁止されているんですね。これは義務付けられているんです。
にもかかわらず、そういうことがまさか韓国で行われているということになりますと、本当にどの国がどれだけ真面目にやっているかということがかなり疑問になるわけで、その辺りの制裁の実施状況を監督するというのが北朝鮮の制裁委員会というのを安保理の下につくって行っているわけですけれども、なかなかそれぞれの、北朝鮮自体の制裁逃れの手法もいろいろと巧妙ですけれども、そもそもやっている国でさえ、しかも韓国のように一番影響を受けている国でさえそういう決議を実際に真摯に履行していないというふうな状況があるので、これはなかなか簡単ではないと思いますけれども。
一つ、どうするかという点で可能性として考えられるのは、金融制裁というのは効果的であるというふうに思われます。物の禁輸というのは、誰かが送ってしまうと、それで制裁逃れで効果がなくなるわけですけれども、金融制裁という形で北朝鮮の例えば銀行資産の海外にあるものを凍結するということになりますと、北朝鮮は、例えば北朝鮮のドル預金をアメリカにやっていると、そうすると、アメリカから買うということはないでしょうけれども、いろんなところで置いている預金を凍結すると、そもそも何であれ買えなくなるわけですね。この金融制裁というのはかなり効果的で、イランも金融制裁が実施された後というのがかなり軟化したというふうな状況もあります。
この金融制裁というのは一つの方法かなというふうに考えておりますけれども、余り締め上げると逆に体制の崩壊につながるかもしれないというので、中国などというのはそれに対して消極的になると。安保理決議が通らなければ実施もできないということで、なかなか八方塞がりのところがあるというのが現状でして、こうすればうまくいくというふうなことはなかなか言えないんじゃないかというふうに思っています。