2016-02-17
参議院
小黒一正
国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会
小黒一正の発言 (国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会)
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○参考人(小黒一正君) ありがとうございます。
ただいま御紹介にあずかりました法政大学経済学部で教授をしております小黒と申します。本日は、このような場にお招きいただきまして、ありがとうございます。
お手元のプレゼン資料がございますけれども、財政再建をどう進めるかという資料がございます。基本的にはこちらの資料に従いまして御説明させていただきたいというふうに考えております。(資料映写)
基本的に財政再建を進めるために何が重要かというときに、三つポイントを挙げるというふうにした場合、ここに挙げておりますような三つですね。
一つは、財政の長期推計、それから世代会計の作成を担う独立推計機関の設置、こういったものを国会の議員の先生方に、ここに書いてありますが、例えば世代間公平基本法といったようなもので、そういった法律を作ってそういうインフラを整備していただきたい、それを整備することがまず重要だということです。
そのほか、下に二つ、社会保障版の諮問会議の創設であるとか、あと、将来分布の推計。これ、年金では、例えば標準世帯モデルを中心とした改革の議論がされておりますけれども、二〇三〇年それから二〇四〇年を見据えた場合、将来の年金分布がどうなるのか。あるいは、医療、介護でいいますと、供給側の医療のいろんな機関がありますけれども、これ、人口減少で地方消滅という議論もありますけれども、例えば国土交通省の二〇五〇年、国土の新たなグランドデザインというのがございますが、こちらでは、大体六割ぐらいの自治体の人口が半分以下に、人口減少で消滅してしまうというような話もある中で、きちっと人口動態と医療の供給状況を見ながら議論を進めていくと、そういうような司令塔をつくるべきだというのが二つ目になります。
そのほか、事前積立てとか管理競争とか社会保障の予算のハード化というお話がありますが、今日は最初の一点目に議論を絞ってお話をさせていただければと思います。
御承知のとおり、今財政は非常に厳しい状況でして、一九四五年に債務残高GDP比が二〇〇%を超えたわけですけれども、現在はそれをしのぐような形で引き続き債務残高GDP比が伸びているという状況にあると思います。それと対を成すように、マネタリーベースのGDP比の方も実は一九四五年の直前と同じような形、若しくはそれを上回るような形で伸びているというような状況にあると思います。
戦後直後に結局何が起こったかといいますと、黒い実線になりますが、消費者物価指数、これは右の目盛りになりますけれども、三〇〇%を超えるようなインフレーションになったと。現在はどうかといいますと、お手元の資料を見ていただければ分かりますし、あと、我々が今実感しているとおり、物価はそれほど上がっていないというような状況になっていると。ただ、もしかすると、このままそのマネタリーベースのGDP比がどんどん増えていけば、いつかは戦後直後と同じような状況に陥る可能性もあるのではないかというふうに少し危惧しているというような状況であるのかなと思っております。
これは、直近の平成二十八年度予算になります。
そういった中で、今財政再建を進めるために大きく三つ必要なものがあるというふうに多くの有識者は、それから国会議員の先生方も認識されていると思います。一つは歳出削減を進める、それからもう一つは増税を含めて課税ベースを増やしながら税収を増やしていく、それから三番目は経済成長というような話があると思います。
直近の議論ですと、二〇一四年に消費税を引き上げたこともありますが、税収が上振れているというような議論があります。
ただ、一つ税収の上振れについては気を付けなければいけない点があるのではないかというふうに考えておりまして、これは一般会計予算の税収の見積りと決算の段階での税収の誤差率を一九八一年から二〇一四年までプロットしたものになります。この青いバーが基本的にはプラスの領域にあるものが、実は見積りよりも決算の方が税収が多かったところになります。ただ、ちょっと見ていただければ分かりますけれども、名目GDP成長率が比較的高い、そういうふうに景気が良かったときには見積りよりも実は決算の税収の方が増えていて、逆に、景気循環で成長率が落ちてくると実は見積りを下回って税収の決算値が下がっているというような姿が読み取れると思います。
じゃ、今はどうなのかということなんですけれども、内閣府が出しております景気基準のサイクルがございます。第一循環から第十五循環までありまして、実は今は非常に景気が拡張期にある場所に我々はいるんだということを認識する必要があるのかなと思います。第十五循環の谷というところを見ていただきたいんですけれども、二〇一二年十一月、これは一番景気が底で、これがちょうど民主党政権がまだ野田政権だったわけですけれども、ちょうどこの後に今の安倍政権に替わっていくという場所にいたと。問題はその拡張期がどれぐらい続くのかということですが、当然これは景気のサイクルによって違います。ですけれども、平均しますと、この資料の真ん中にありますけれども、大体三十六・二か月、大体三年というのが平均的な姿になります。
そういうふうに考えますと、今は大体もう、二〇一六年の既に今二月ですので、この三年というスパンを過ぎているということで、むしろこれからは、景気の拡張期どこまで続くか分かりませんけれども、景気のサイクルが終わって、税収の見積りよりも逆に決算の税収が減っていくようなリスクも抱えるような状況にあるんだということを認識することが重要かなと思います。
そういう姿で見た場合、その税収の上振れ分については、基本的には財政再建の原資として活用していくということが私個人的には必要だというふうに思っておりますが、そうではなくてそれを利用する、例えば補正予算等で利用していくということになりますと、将来的には将来世代に追加的な財政負担を負わせるんだと、そういう姿になるのではないかというふうに思います。
今スライドの方でお見せしております、世代会計と生涯純負担率というタイトルの資料ですけれども、これは、二〇一〇年時点のところで、ゼロ歳、それから五歳、十歳、十五歳、二十歳と、各世代ごとの生涯の政府から受け取る純便益とそれから純負担、それに政府に納める税金、社会保険料の差額がどうなるのかというものを計算しているものでございます。一番下に将来世代がございますけれども、これを見ていただければ分かりますように、大体この時点では七千五百万円程度、将来世代は受益よりも上回る形で負担を強いられているというような姿になっているということです。
こういった金額で表すやり方自体は、政府の内閣府が以前出していた世代会計と同じような仕組みになっておりますけれども、一番右側の方に生涯所得、それから生涯純負担率というものがございます。これは何かといいますと、各世代ごとの生涯所得というのはその時々に応じて直面する物価であるとか名目賃金によって当然変わりますので、各世代の生涯所得で割ったときにどれぐらいの負担になっているのかというものを計算したものになります。したがって、その生涯所得で生涯純負担を割り込んだものが一番右側になっております。これを見ても、将来世代は大体四七%ぐらいの負担率になっていると。これは、ありていに言いますと、生涯賃金の大体半分ぐらいを背負わされていて、損しているというような姿が読み取れるような資料になっております。
以上のような状況の下で今我々が考えなければいけないのは、日本銀行のいろんな金融政策とか、昨今もマイナス金利とかいろんなものが発動されましたけれども、やはり誠実に財政再建を進めていく必要があるんだということではないかと思います。
そういう意味では、政府の方も昨年の六月末に新しい財政再建計画を出しております。目標としましては、従来であれば、二〇二〇年度に、御承知のとおり、プライマリーバランスの黒字化を達成するという目標がございましたけれども、これに加えて、中間時点の二〇一八年に基礎的財政収支の赤字幅を基本的には一%程度に持っていくんだと。それから、それを達成するために、国の政策経費である一般歳出の伸びを実質的に一・六兆円程度、二〇一八年までの三年間で抑制するんだというような改革の姿を出しているということかなと思います。
これは非常に重要なことであると私も認識しておりますけれども、直近の内閣府が出しました中長期の財政経済に関する試算というものがございますけれども、これを見ても、まだまだもうちょっと踏み込まないと難しいのではないかというふうに考えている次第でございます。
その理由はなぜかと申し上げますと、一番この資料の右側に、よく基礎的財政収支が財政再建の第一目標になっておりますが、それだけを見ているとなかなか本当の姿は分からないと。
国、地方の財政赤字のGDP比を見ますと、ちょうどこの右上のようなグラフの形になっております。これは、経済再生ケースは実質経済成長率が二%で、赤いラインのベースラインケースは実質経済成長率が大体〇・八%ぐらいで推移するケースですけれども、直近、ここもう十年間ぐらいどれぐらいの実質経済成長率だったかというと、もう一%を切るぐらいの成長率だったわけです。ですので、実質経済成長率が二%になれば非常に望ましいわけですけれども、仮になったとしても、二〇二四年度にはマイナス四・三%の財政赤字になるんだというような姿になっていて、結局、基礎的財政収支の方は、下の方で、この一個下のところですけれども、若干黒字に向けて改善していくルートがありますけれども、やっぱり財政赤字の方は非常に厳しい状況になっているんだと。
その左側の方に、中長期な財政の姿に関する機械的試算というものがございます。これは、今の行革担当大臣の河野大臣がまだ閣内に入られる前に、例の財政再建計画を作る段階で内閣府に、内閣府の推計は大体二〇二三年度までしか出しておりませんが、それをもうちょっと延長したら債務残高がどうなるのか、経済再生ケースでどうなるのかということを計算させたケースですけれども、内閣府が出してきた資料は結局どうなっているかといいますと、一回、二〇二三年度でボトムに向かうんだけれども、その後また債務残高GDP比は膨れ上がっていくというような姿になっていると試算を出してきたということです。
そういうふうに考えますと、もうちょっとよく踏み込んで財政再建をしていく必要があると。その場合、やはり重要なのは名目経済成長率の予測になると思います。
これは、過去、内閣府が出しております政府経済見通しの予測になります。赤いラインが政府の予測になるんですけれども、黒いラインが実際にその後実現した名目成長率になります。これを見ていただくと分かりますけれども、過去十七年間で政府の経済見通しが予測が実績よりも低くて、実績の方が非常に良かったケースというのは、二〇〇〇年度、それから二〇〇三年度、二〇一〇年度の三回しかないということです。残りの十四回は全部外れていると。これ、打率でいうともう一五%ぐらいしかないような打率でありまして、非常に厳しいと。
じゃ、足下の経済成長率はどうかということですけれども、これ四半期ベースの季節調整済みなので実際の成長率自体は年率にした場合四倍にする必要がありますけれども、足下ではほぼゼロ%になっているということです。
そういった状況の下で、先ほどの財政赤字のGDP比と名目経済成長率の関係から、経済学ではドーマーの命題というのがございますけれども、これは、名目経済成長率が一定の経済で財政赤字を出し続けても、最終的にはその財政赤字GDP比を一定に保てば、債務残高のGDP比は一定値に収束するという数学的な命題を表しているものです。
この命題を使って行き着く債務残高GDP比の収束値、これは真ん中の二番目のところになりますけれども、これどういうふうになるのかというのを簡単に計算することができます。これは、名目成長率をn、それから財政赤字をqとしますと、n分のqという形で求められると。
これはもう絶対的にこうなるのでちょっと証明は省略させていただきますけれども、先ほどのあの財政赤字がどうだったかといいますと、経済再生ケースでも四%ぐらいの赤字、ベースラインケースでも二〇二四年には五・八%の赤字でしたので、仮にその経済成長率が名目で一%だとすると、債務残高GDP比は行き着く先は四〇〇%ぐらいになってしまうと、そういう姿が分かるということです。
そういう意味では、もうちょっと、例えば四〇〇%、五〇〇%になっていった場合に、これ財政がじゃ持続可能なのかというと、これは当然持続可能ではありませんので、そういう意味でももう少し踏み込んだ改革が必要なのかなと思います。
その中で、やはり重要なのは社会保障の改革だと思われます。政府は基本的には国の一般会計を中心とした部分を見ているわけですけれども、地方を合わせた社会保障給付費自体は足下で、これ予算ベースですけれども、百十六兆円になっております。じゃ、十年前はどれぐらいの金額だったかといいますと九十兆円ですので、大体十年間で二十六兆円増えている、一年間で大体二・六兆円増えているということですので、これ消費税一%分と同じぐらいのスピードで伸びているということになります。
じゃ、これからはどうなのかということですが、これは政府が出している平成二十四年三月時点の給付の見通しですけれども、二〇一五年時点で、医療と介護を合わせると、おおよそ大体合わせると五十兆円ですけれども、二〇二五年、十年後、これ医療と介護を合わせますと大体七十五兆円という姿になっております。十年間で二十五兆円伸びるということで、現在のトレンドが続いていくような見通しになっているということです。
このような姿から、この資料にありますように、いろんな経済学者が推計している中で、もし社会保障改革に踏み込まない場合、消費税で増税をすると、もう三〇%を超えるようなところまで財政再建しなければいけないというようなことが出ている。
それと同時に、やはり重要なのは、これ一時期いろんなところで広まったと思いますけれども、再建をしなかった場合、どこまでその先送りができるのかということもよく認識しておく必要があるのではないかというふうに思います。
これ、消費税を五%で据え置いた場合、どんどんどんどん債務がGDP比で膨らんでいくわけです。その場合どこかで消費税を一〇〇%に上げるという推計ですけれども、それがいつまで先送りできるのかと。消費税五%ですと、この下の先送りプランみたいな形で二〇二八年だと。逆に、消費税一〇%にしたとしても二〇三二年までだと。今、大体、消費税は八%ですので二〇三〇年ぐらいであると。二〇三〇年ぐらいに消費税を一〇〇%にしないと、もう財政はサステーナブルじゃないというような一つの推計の結果になるんだと思います。
そういう意味では、今は二〇一五年ですけれども、あと十五年しかありませんと。九七年に消費税を引き上げてから今回の増税までに十七年間掛かっていて、三%引き上げているというような現実を考えますと、そんなに時間はないんだということをやっぱり認識する必要があるのではないかなと思います。
それからもう一つ、異次元緩和の方ですけれども、今政府が発行している国債自体は大体八百兆円です。日本銀行が、今度マイナス金利が入りましたので、本当に日本銀行のバランスシートで年間で八十兆円ずつ増やしていけるかどうか分かりませんけれども、仮に増やしていったとすると、もう十年間ぐらいで全部国債を買い切ってしまうというような姿になりますので、そういう姿を見ても、今の金融政策自体、足下でいろんな改革をサポートする機能はあると思いますけれども、そんなに我々に残されている時間はないんだということをやはり認識する必要があるのではないかと思います。
そういう意味では、まず、国民にきちんと現状の足下の財政の姿を認識してもらう必要があるのではないかと。そのために一番最初にやらなければいけないのは、内閣府が出しています中長期試算は、直近では二〇二四年度まで、一年間従来よりも延長されましたけれども、それでも短いと。やはり欧州のように二〇六〇年ぐらいまでは出していくというようなことが必要なのかなと。
ちょっとお手元の資料、別紙で、こういう法案化を進める、青い資料がございますけれども、これは超党派の先生方とそれから東京財団とがまとめたペーパーが基になりまして、やはり政府の中で直接そういう厳しい推計をするのは難しいので、国会の下に独立推計機関を設置したらどうかというようなことで、ちょっとページめくっていただければ、経済財政将来推計委員会法案という形で法案の形になっているもの、それから具体的な資料が後ろの方にペーパーとしてくっついております。
こういったものを国会議員の先生方主導でつくっていただいて、まずは、これ、誰も悪者にはなりたくないと思うんですけれども、厳しい推計を出すような機関というものを与野党の先生方一緒になってつくっていただいて、まずは我々のその現状をきちっとただしていくということが必要なのではないかなと思います。
それからもう一つ、これで最後になりますけれども、以前、内閣府の方ではこれと同時に世代会計の方の推計をきちっと出していくための専門チームをつくっておりまして、今ちょっと一緒に出ております佐藤先生が一橋大学ですけれども、これ、一橋大学の國枝先生が座長で世代会計専門チームというのが立ち上がりまして、一時期はここで世代会計をどういうふうにちゃんと公表していくかという議論をされていたんですけれども、これは消滅してしまっております。ですので、こういったものもきちんともう一回稼働させていただいて、インフラをきちっと整えていくということが求められているのかなというふうに思います。
あと、スライドの方はいろいろ見ていただければと思います。いただいている時間は大体二十五分ぐらいですので、取りあえず私の説明はこれだけにさせていただいて、あとは質疑の中で御説明させていただければと思います。
本日はありがとうございました。